ガルマ・ザビを討ったホワイトベースは、二度目の補給を受けるため海岸に停泊し、クルーは海水浴で束の間の休息を楽しんでいた。
一方、ヤンは自室でガルマ・ザビについて調べていた。ガルマ・ザビは占領軍の司令官としては有能であり、軍規の維持に成功するのみならず、現地の住民とも友好的な関係を築いていたという。これはコロニー落としで地球に住むほとんどの人がジオン公国に強い憎悪を持っていたことを考慮すれば大成果である。
もし、ガルマが権勢を得たら、ジオン公国のザビ家独裁の政治体制は激変したかも知れないだろうし、地球連邦とも友好な関係が築けたかもしれない。
ヤン個人としてはその一大変革を観たいものだったが、地球連邦軍の軍人として、市民の払った税金から給料を貰う身として、ホワイトベースの艦長代理としては、彼を討たざるを得なかった。
「私は歴史を変えてしまったかもしれないな」
歴史を紐解く人生を歩みたかったはずが、歴史を動かしてしまうとは。思い描いていたものとの相違に自嘲の笑みを浮かべる。
ホワイトベースの休息は哨戒に出たリュウのコア・ファイターがジオンの偵察機と交戦になったことで、唐突に終了した。
近くに故郷があるアムロは、コア・ファイターで立ち寄っていた。そこには宇宙暮らしを嫌い、地球に残った母、カマリア・レイがいるはずだった。アムロは幼い頃に母と離別し、父、テム・レイと共に宇宙へ移民していた。
故郷を訪れたアムロを待っていたのは予想外のものばかりであった。自宅には荒れた連邦軍兵士が上がりこみ、周辺にも戦火の爪痕が深く刻みこまれている。
ようやく、ジオン軍の前線基地の近くにある避難民キャンプでボランティアの救護活動をしていた母との再会を果たす。しかし、見回りに来たジオン兵に自衛のため銃を発砲したことで叱責され、昔の優しかった頃に戻って欲しいと諭された。
「アムロ、私はお前をこんな風に育てた覚えはないよ。昔のお前に戻っておくれ」
「今は戦争なんだ!」
母との断絶を感じたアムロは、ホワイトベースからの緊急コールで逃げるようにその場を走り去る。
アムロのコア・ファイターはガンダムに空中換装し、戦闘を開始する。途中、補給部隊のミデアが合流して敵基地を徹底的に叩くが、それは物資が消耗していたホワイトベースにとって単なる消耗戦にすぎなかった。
それを見ていたカマリアは、変わり果てた息子に泣き崩れる。
「男手で育てたからかしら。あんな子じゃなかったのに。虫も殺せなかった子が……」
戦いを終えたアムロは母から共に暮らそうと申し出を受けるも、何も言わずにホワイトベースへと戻ろうとする。
見かねたヤンは、アムロに声をかけた。
「余計なお節介だが、これが最後になるかもしれないから、別れは言っておいたほうがいい。私は墓石に不平を鳴らすしかない」
その言葉を受け、思い直したアムロは母にホワイトベースのクルーとして敬礼し、キッパリと別れを告げる。
「こ、これからもお達者で、お母さん」
以降、アムロ・レイが母と会うことはなかったという。
U.C.79年10月5日。一年戦争終結まであと88日。
宇宙世紀の歴史がまた1ページ。