今作のチーム名は【漆黒】ではありませんのでご了承ください。
第13話でオリ主の職業盗賊から聖騎士に変更しました。これもご容赦ください。
3月26日午前4時25分 旅の宿り木亭
冒険者の朝は、というかこの世界の朝は早い。
リアルでは夜間には街灯があちこちで煌めいており夜からが稼ぎ時という店が数多く存在する。
しかし22世紀以降、一般人はゲームセンターかコンビニしか利用しない。スナックやキャバクラ、レストラン等は富裕層(日本では全体の16%)しか利用しない。一般人の食事は手料理など週に1,2回食えれば良い方で、ほとんどは味の付いたサプリメントと水で済ませているからだ。
農民は畑の世話や食事に使う水を井戸から汲みに行く為、町民は商品のチェックや料理の下拵えの為、そして冒険者は割の良い依頼を受ける為日の出と共に起きる。これは夜に明かりに使う魔法のランプや油を使って明かりを灯す道具の燃料が勿体ない為だ。何しろ値が張る為に大店でも21時には家族全員寝てしまう。
ここの宿屋の店主は日の出前に起きて朝食に出すオートミールを作る為の小麦粉を煉る。何しろ『旅の宿り木亭』の客層は銅等級「カッパーランク」~金等級「ゴールドランク」の冒険者で上位の冒険者と違い、指名を受けられる程の実績が無く、いつも組合で条件の良い依頼の取り合いをしている奴らだ。今日は昨日の夜から猪の肉と骨でだしを取ったスープを温めていた頃、宿泊客が下りてくる。
各々がカウンターに行き猪のスープに豆と小麦粉を煉った物が入ったオートミール、レタスとトマトに少量の塩を振ったサラダが乗ったカートを受け取り、空いた席に座って食べる。皆殆ど話さず黙々と食べていく。早く食べて冒険者組合に新しい依頼が貼られる前に行かなきゃならないからだ。
最初に食事を済ませた客がカートをカウンターに返しに行った時、階段が軋む音がしてふと階段の方を見て一瞬固まり何人かの客が食事の手を数舜止めた。昨日騒がせた4人組。モンガー、ジークムンド、レギナ、そして仮面の女ルカ(宿泊客はまだ彼女の名を知らない)が下りて来たからだ。
※ここからはジークムンドこと闇信刃がお送りいたします。
3月26日午前4時。私とモモンガさんはアルベドとデミウルゴスに現在の状況を説明した後、頃合いを見て『旅の宿り木亭』の4人部屋に〔転移門=ゲート〕で来た。そこで待機していた二人に声をかける。
闇「ルプスレギナにハルカ。おはよう、侵入者はいなかったかい?」
ルプスレギナ(以後レギナ)「おはようございますモモンガ様、そして闇信刃様。ハルカが「野伏系=レンジャー」と盗賊系スキルを駆使して警戒しておりましたが侵入者はおりませんでした」
モモ「まあ、貸し切りの部屋に入ったのがばれたらすぐにけいさ・・・じゃなくて衛兵?が飛んでくるし昨日の騒動を見聞きした連中ならそんな無謀はことはせんだろうよ。それより今日の予定だが…ハルカ、お前はどうすべきと思う?」
ハルカ(以後ルカ)「私はこの町に来た目的である情報収集に専念すべきだと思います」
モモ「ルプスレギナは?」
レギナ「私も同じように考えます」
モモ「その為には何をすべきだ?」
ルカ「私は昨日行った冒険者組合に行き、諜報活動すべきと判断します。難しい仕事があれば受けて名と顔を売っておくのも有効かと」
レギナ「私は至高の御方々がおっしゃってたように酒場で聞き込みをすべきだと思います。酒場は情報の宝庫だと私の創造主獣王メコン川様もおっしゃっておりました」
盟主は「ほう…」と感心した様子を見せた。私も今の発言は成長を期待できる返答だった。
闇「両者とも良い意見だ。だが惜しいな。今の意見はいずれ行う事だが現時点では時期尚早だ」
ルプスレギナとハルカは真剣な眼差しをこちらに向けた。その顔は気迫に満ちており至高の御方々の話を何一つ聞き逃さないという決意が伺えた。
闇「価値のある情報とはある程度の信頼が無ければ聞いても答えてくれないものだからだ。例えば見知らぬ人間からナザリック地下大墳墓はどこにあるのかと聞かれたら貴公らはどう答える?」
レギナ&ハルカ「その者を捉えて情報を吐かせます」
モモ「なかなかの答えだがそのような人間がもしいたら必ず報告するように」
闇「ではもしその人間が私と盟主が信頼を寄せる者だったら?」
レギナ「話していいものかどうか〔伝言〕で伺います」
闇「実によい判断だ。つまりは私たちが冒険者になった目的の一つ情報網の構築は相手を信頼させる何かが無いと不可能なのだ。そして我々には信頼を得られるような身分証のようなものは無い」
モモ「私からもいいか闇信刃。付け加えるなら我々はこの世界の事をほとんど何も知らない。何しろこの国の物価の相場も理解していないのだ。これではいずれ足元を見られ悪徳商人のカモにされてしまう。故に登録に身分証が必要ない冒険者や傭兵などの職業で実績を積み上げ、金と信頼を得る。そうすればおのずと有益な情報が入ってくる」
闇「我からもひとつ、ハルカは先程「難しい仕事をして名前と顔を売れば」と言ったが信頼は小さい仕事をいくつかこなして次に難しい仕事をこなすことが最も効果的で近道なのだ。それ以外の方法で信頼を得るにはさらに大きな労力が必要でありまた、目立ちすぎて周囲から目の敵にされてしまう。そもそも小さな仕事がこなせない者に大きな仕事を任せる者はいない。我らにとって目先の問題は小さな仕事を着実にこなし鉄級「アイアンランク」に昇格することだ。そうすればモンスター退治の依頼がもらえるからその時ナザリックからレベル30位のモンスターを現場に仕掛けて見物人の目の前で倒して見せれば名声も高まり特例で昇格なんてこともあるかもしれない。だが信頼が全くない最下級冒険者では怪しまれて要らぬ詮索をする者が出てくるだろう。此処は耐えるべきだ」
私はNPC達をそう説明し、一階の酒場に降りて食事を受け取った。最も私と盟主は食えないから朝食はハルカたちに食ってもらったけど。
ちなみにルプスレギナとハルカには人間の町に居る時は偽名で呼び合う事を徹底させた。ルプスレギナはレギナ、ハルカにはルカと。
冒険者組合の扉を開けると予想通り多くの冒険者が詰めかけてた。
来る人の三分の一は熱心に掲示板を見ている。ほとんどが長剣と小盾を持っていることから戦士系の職業であることが伺える。恐らくリーダーなのだろう。既に1組が他者を押しのけて割の良い依頼書を取り受付に持っていっている。早速自分も割り込んで見ようとするが自分たちはまだこの世界の字が読めない。一応ロックやゴンドに一通りの単語は教えてもらったが長文読解はとても無理だ。結論として依頼書で理解できる内容は報酬の金額とモンスター名(ゴブリン、オーガ、ゾンビ、ワームだけで他は無理)と銅等級で受けられる依頼かどうかだけで鉄等級以上の階級は読むことも出来なかった。最も現状では必要ないんだけどね…。
ジーク(ヤミシバの偽名)「モンガー殿今は無理ですね。幸いユグドラシル時代の古代語や暗号が解読できる眼鏡持ってますがこの混雑では落として割ってします可能性があります。実際ユグドラシルでは落としても割れたりしませんでしたが今はこの状況が現実になっておるからな」
モンガ「やむを得ません、見た所「金等級=ゴールドランク」と「白銀等級=プラチナランク」の冒険者もいますし、新人の内は上位の冒険者の恨みを買うと後々面倒でしょう。此処は待ちましょう」
レギナ「私が追い払いましょうか?」
ジーク+モンガー「「今そういうことするとヤバイって言ったろ」」
突っ込んでから20分。ようやく空き始めた。まだ少し混雑してるが余裕で躱せるしユグドラシルではほとんど役に立たなかったが今では必須のアイテムを落として破壊することもないでしょうね。
うっかり女口調になってしまうのをこらえ掲示板を見た。
やはりろくな依頼が無いな。初心者だから仕方がないとはいえ昨日と同じドブさらいと荷物持ちだけだ。モンスターの中で一番弱いとされるゴブリン、スケルトン、ゾンビ、ジャイアントラット、食肉植物などの討伐も鉄等級からしか受けられない。
ジーク「モンガー殿、やはりポーターが一番ましな依頼ですな」
モンガ「上位冒険者の荷物持ちですか。正直『冒険者』の仕事じゃないと思いますけどね。預かった荷物を届けるとかならユグドラシル始めた頃受けたことがありましたけど」
闇「奇遇ですな我もです」
ルカ「失礼ながらこのような依頼は至高の存在がお受けするような依頼ではないと愚考いたします」
レギナ「私も同感っす。モンガーさんやジークさんが人間の荷物持ちなど…」
ジーク+モンガー「「だからそういう仕事をこなして信頼を得るんだよ」」
ジーク「嫌だと言っても来てもらう、万が一敵対関係のユグドラシルプレイヤーにあったら盾が無いと色々と不味いからな」
レギナ+ルカ「「至高の御方々を一人になどできません」」
そんなやり取りがあって『ポーター、人数は二人まで可、報酬は一日銅貨10枚、食事は依頼者持ち』と書かれた依頼書を受付に持っていこうとした時後ろから声がかかった。
???「それでしたら我々の仕事を手伝いませんか」
後ろを振り向くと一人が10台後半と30代後半、二人が20代前半と思われる4人組の冒険者がいた。
3月26日 午前5時10分頃 冒険者組合二階 談話室
私たちは現在別の冒険者チームに誘われ一つのテーブルに向かい合うように座った。
これは私たちにとっては幸運だったと思う。私はリアルで人の本質を見抜く目は訓練してきた。何故かと言うと私はリアルでは一応、あくまでも一応裕福な家庭で生まれたため貧困層の人間に絡まれて騙され金品を巻き上げられることが多いのだ。そのためその人が信用に値するかどうか嘘を見抜く訓練を受けていた。(例えば特定の癖を探すとか、かならず儲かる、リスク無く大ヒットするとか言うやつは信用するな等)
しかし、目の前にいる者たちは真剣な眼差しで此方を値踏みしているようだった。こういう人間はこちらが信頼を損ねるような態度を取らなければ真摯に対応してくれる者たちだと長年の勘が言っている。社会人経験は10年足らずだけどね…。まあ、最終的な判断は我らが盟主が下すがその時は私の感じたことも伝えるつもりだ。
ちゃんと仲間の意見を拾い全体の気持ちを利益を考えた上で結論を出す。だからギルドメンバーたちは盟主を信頼しているのだ。
ペテル「先ずは自己紹介を。私が【漆黒の剣】のリーダー、ペテル・モークです。左端に座っているのはチームの目と耳である「野伏=レンジャー」のルクルット・ボルブ」
自分たちから見て右側に目を向けるとルクルットと呼ばれた男が頬を赤くしてレギナに向かって手を振っていた。この土地でよく見かける金髪碧眼で背格好も160~165㎝でやや細身と平均レベルだ。顔つきは優男の様に見えるがルプスレギナに色眼鏡を使っている所から軟派な印象を受ける。服は布製の服の上に革鎧を装着している。その革鎧も野伏として動きやすいよう利き手の肩部分を外したりと手を加えてある。武器は背中に背負った「長弓=ロングボウ」と腰に下げたブロードソードと胸に下げた短剣。確かに典型的な野伏だ。
ペテル「続いて「森司祭=ドルイド」のダイン・ウッドワンダー」
続いてペテルは右側の男を紹介した。
くすんだ金髪と落ち着いた雰囲気を出す薄く開く切れ長の碧眼、短いが立派な髭を生やしている。体格は丸みのあるずんぐり体型だが太ってるというよりどっしりとした感じがしており薬材で染まったのか薄緑色のハードレザーアーマーが良く似合う。長く戦闘をこなしてきた雰囲気がある。年齢は恐らく30代後半から40代前半だろう。食事がサプリメントで完全に栄養管理されているリアルでは60代に見えるが栄養士が存在しない中世じゃあそのぐらいが妥当だろう。
ダイン「よろしくお願いする」
挨拶はそっけないものだったが年長者故だろうか。
ペテル「そして最後はチームの頭脳、ニニャ・ザ・スペルキャスター」
ペテルがペテルとルクルットに挟まれた少年に左手を向けた。
髪は短く刈り込まれた茶髪。目鼻立ちは整っており青い目は人形のようにクリクリしている。年齢は恐らく10代後半だろうが身長が145㎝位しかないから10代前半にも見える。よく見れば女性のようにも見えるがこれくらいの年齢層は中性的な顔つきが多い。15歳以上でないと就業できないから10代前半は無いと思うが…。
ニニャ「よろしく…。ってペテル、その恥ずかしい二つ名やめませんか」
ペテル「いいじゃないか。モンガーさん、ニニャは此処では有名なタレント持ちなんですよ」
モンガ「ほう、それはどのようなものなのですか」
タレント・・・確か修練して修める武技と違いこの世界の生物が生まれつき持ってる特殊スキルだったな。ドワーフ国の摂政会の一人が確か〔万能鑑定〕ってタレント持ってたな。『どんな物質もその詳細な情報が解る』ってどんだけレアスキルなんだよ。正直魔法で洗脳してナザリック地下大墳墓に監禁してじっくり調べようとまで検討したが、せっかくこの世界で初めて友好的な関係を築けた国と仲違いはしたくないと却下したが。
ペテル「確か〔魔法適正〕と言って習熟に2年かかる魔法が1年で済むというものです」
モンガ「それは凄い」
隣でレギナがクスリと声を漏らしたが私と盟主が怒りの目を向けて黙らせた。
ルクルット(以後ルクル)「まーこの町にはもっと有名なタレント持ちがいるけどな」
ダイン「バレアレ氏であるな」
聞けばこの町にはンフィーレア・バレアレという有名なタレント持ちがいるという。リィジー・バレアレという王国で一番有名な薬師の孫で、〔魔道具制限解除〕と呼ばれているらしい。(だれが名付けたか不明)
モンガ「それはどのようなタレントなのですか?」
ペテル「なるほど…。バレアレ氏を知らないと言う事はこの辺りの人ではないのですね」
モンガ「ええ。私と言うよりルカ以外はこの国の出身ではありません」
ペテル「ええと、話がそれてしまいましたね。ンフィーレア・バレアレ氏のタレントはあらゆるマジックアイテムを自在に使えるというものです。マジックアイテムには特定の人物や暗号を知ってる人しか使えない物があったり、インテリジェンス・アイテムという意思を持ち特定の資格を持つ者にしか扱えない物もあります。彼はそういった制限を無視して使用することが出来るんですよ」
それを聞いた私は戦慄した。
ユグドラシルにもそういったアイテムが多数存在した。ゲームを盛り上げる意味もあるが最大の理由は種族や職業ごとの難易度を調整する為だ。そうしないと皆強い種族や職業しか選ばずせっかく職業選択の幅や自由度を上げた意味が無いからだ。
しかし、その人物のタレントはそれを無視してしまう。それはつまりモモンガさんしか使えないギルド武器すら使用可能という事だ。ユグドラシルプレイヤーならこの力が如何に危険か良く分かる。だがしかしその人物を手懐ける、あるいは利用できれば強力な戦力になる。しかし、もし敵対するユグドラシルプレイヤーにその人物の身柄が渡った場合、最悪暗殺も視野に入れておかなければならない。恐らく盟主も気づいているだろう。後で他のギルメンにも伝えておこう。
レギナ「モモンガ様、その人物、危険かと」
ルカ「私もそのように思われます」
モンガ「分かっている。だがくれぐれも早まったマネはするな」
ジーク「殺してしまっては利用できなくなる」
NPC達にしっかりとくぎを刺しておいたけどハルカは制作に携わったからともかくルプスレギナの設定は知らない。心配だ…。
おっと【漆黒の剣】の皆様が疑念の目を向けてるな。ひとまずこのことは置いといて目先の依頼に集中しよう。
モンガ「ちょっと待って下さい」
モンガーが顔を寄せたので私も耳を向けた。
モンガ「ジークムンド、あなたも気づいてるだろうけどそのタレント持ちの件は後でゆっくり話しましょう」
ジーク「了解」
疑いの目を向けられる前に盟主は依頼の話を進めた。
モンガ「すいません皆さん。依頼の話を進めましょう」
ペテル「そうですね。実は今回の仕事は組合を通したものじゃないんですよ」
モンガ「というと?」
ペテル殿の話ではモンスターを狩って証明部位を持ち帰ると町から組合を通して報奨金が出るのでそれが今回の仕事らしい。
ニニャ「5年前に第3王女の提案で施行された法律です。これには冒険者はみんな喜んでます」
ルクル「俺達には飯のタネになる、町や村の人間は危険が減る、国は検問所から通行税がしっかりとれる、損する人間は誰もいないって寸法さ」
聞けばリ・エスティーゼ王国の第3王女は平民の為の法案を多数発案してるらしい。近年では奴隷売買禁止などが有名だ。
他にも冒険者に支払う依頼料を下げる為各領地への足税(通行料のようなもの)を無くせなど発案してるらしいがそれでは税収が減ると貴族たちからの反対でとん挫してしまったらしい。
そう言えば学生時代、中世の貴族たちは貴重な収入源として半ば強制的に通行税を取っていたと教わった記憶がある。個人的には足税を無くして町ごとの商売許可証などを作成した方が金の流れが活発になり税収も増えると思うけど。
ペテル「どうでしょう?私達に協力していただけますか」
モンガ「ええっ喜んで。ジーク、君も構わないか」
ジーク「ん、我も断る理由は無い」
モンガ「それでは一時とはいえ共に仕事を行う以上、顔を見せておきましょう。ルカ、お前もいいな」
ルカ「モンガーさんがそういうのなら」
私の心配をよそに、二人は同時に兜と仮面を取った。
やはり【漆黒の剣】のメンバーからは動揺の声が上がった。私もナザリックにいた時一度見たがこの二人の顔は異国情緒あふれるものだったからだ。
まずモンガーさん。確か自分のリアルの顔を3割ほど手を加えて長身で筋肉質の男にふさわしく少しごついがややイケメンに見えるようにしたものだ。(ガチのイケメンは体格と合わず魔法による偽装を疑われる危険が高い為)
そして、ルカはたしか某忍者ゲームのヒロインをモデルにしたんだよね。ストロベリーブロンドの髪は後ろで白いリボンでまとめてある。目の色はこの地方にも時折見かける蒼眼で(狙ったわけでは無い)目鼻立ちはやはりメイドの性か個人的にはルプスレギナ以上の美人だ。年齢層も16~18位の設定なのでこの地方の駆け出しから中級冒険者と言うにぴったりだろう。
などと考えている内に【漆黒の剣】から質問が来た。
ペテル「黒髪黒目…。男性のお二人は南方の人種がそうだと聞いたことがありますが」
ルクル「うっひょー、そっちの女の子もすっげー美人じゃん。なあなあジークさん、こんな美人どうやってひっかけたの?」
ジーク「ひっかけたとは失礼な。この娘は偶然盗賊に襲われていた所に出くわして、その時共闘した縁で一緒に行動するようになったのです。一応信頼はして貰ったようなので。そうですなルカ殿」
ルカ「はい、私はこの国の田舎村の出身です」
ルカはスラスラと「偽装経歴=カバーストーリー」を並べる。幸い疑問に思われることが無くてよかった。
実は特訓中に恐怖公の眷属に廃村が有るか調べてもらっていた。そこで3年ほど前にモンスターにやられて全滅した村があったらしいのでそこの出身という事にした。村人もほぼ全滅状態だったらしいのでそう簡単にばれることは無いだろう。
ルクル「ところで男性のお二人と女性のお二人はどのようなご関係なのでしょうか」
明るい声でルクルットが私と盟主に質問してきた。ため息が聞こえてきた方向を見ると【漆黒の剣】のメンバーがうなだれていた。リーダーのペテル・モークはこめかみを抑えている。どうやらルクルットは女がらみで問題を起こし、それに仲間を巻き込むタイプのようだ。私もリアルでこうゆうやつに絡まれたことがあるから良く分かる。(自覚は無いが私の外見は平均よりやや上らしい)
私は気づかれないよう小さいため息をつくと盟主と決めた答えを返した。
ジーク+モンガ「「仲間です」」
ジーク「一般的に言う友人程度に仲は良いと思いますが別に恋人と言うほどでは・・・」
ルクル「惚れました。付き合って下さい」
レギナ「アハハッ面白い人っすねー。この人より強ければ考えてあげるっすよ」
ルカ「私も気さくな人は嫌いではありませんが、私はこの人たちに恩があるので今から恋人として付き合う事は難しいですね」
おおっ上手いスルーだ。なんだNPCにも考えた受け答えが出来るんだな。ルプーは若干危ないが…。
ルクル「ではお友達から始めて下さい!」
レギナ「ン~まあ友人程度ならいいっすよ」
ルカ「私もそれなら問題ないです」
ルクル「ありがとうございます。イヤッター!」
一時はどうなることかと思ったが上手くまとまったね。これがナーベラルやソリュシャンだったらどうなっていたやら…。
話がひと段落したので、早速初仕事の準備に入ることにした。先ずは飲み水の確保だが『無限の水差し』を持っているのでそれは問題ないのだが食料はレギナとルカ用に焼き立てパンとベーコン、ゆで卵等嗜好品をひと月分ナザリックから持ってきているが、こっちの食材も数十種購入してある。これにはいくつか理由がある。
一つ目はやはり何も食べないというのは周囲から奇異の目に映るためだ。もしかしたら人間ではないのかと疑う者も出て来るかもしてない。
二つ目はこの世界の料理をメイドであるルカに食べさせてナザリックの料理のレパートリーを広げて貰うためだ。
最後はこの二人の料理の感想を聞くことで誰かに料理の話を振られた時ある程度答えられるようにするためだ。我らは現在食事が不可能の為味や食感などは外聞に頼るしかない。基本的な料理の味も答えられないようでは要らぬ詮索をされてしまう。
以上の理由から食料の買い出しは必要ないのだが彼らが見たこともない食材ばかりでは色々と答えに詰まってしまうので買い出しに付き合い、少し購入して残りはナザリックの料理長に見てもらうとしよう。
二階の階段から降りた所で受付嬢から声がかかった。
受付嬢「モンガーさん、ご指名の依頼が入っていますが」
私と盟主は恐らく同時に頭に疑問符を浮かべた。
指名とはベテランの冒険者が信頼を得た客から「ぜひあなたに頼みたい」と言われる事だ。指名依頼は通常の依頼より迅速に話が進むし、優先的に引き受けてもらえるがその分手数料がかかる為顧客と冒険者の信頼関係が重要だ。昨日来たばかりの新米冒険者にくる話じゃない。どういうことだ。
盟主も同じことを考えたのか緊張が伝わってくる。
モンガ「一体どなたが?」
受付嬢「ンフィーレア・バレアレ氏です」
受付嬢の後ろには金髪の前髪が目を覆い、薬草のしみ込んだ麻と革製の服と靴を身に着けた10代後半くらいの男の子が立っていた。
白金等級「プラチナランク」
金等級の冒険者が依頼を5回以上達成すれば昇格試験を受けられる。
難度68以下のモンスター討伐(30人以下の衛兵が常駐する町が壊滅するレベル)、ボディーガード、希少な薬草や鉱石(オリハルコン、アダマンタイト等)の採取のベテラン(大体2年以上)と見なされる。基本的に二年以上冒険者を続けられなければここまで来られないので新人冒険者の指導を任せられることもある。このランクから最低報酬額が跳ね上がる為、実質的な勝ち組。
割合:モンスター討伐40% 子爵家以下の貴族、商人の護衛30% 希少な薬草や鉱石の採取20% 新人冒険者の指導10%
ミスリル等級
白金等級の冒険者が依頼を10回以上達成すれば昇格試験を受けられる。
仕事の割合は白金等級と同じだがこのランクは白金等級の仕事を最低半年以上経験しないとなれないのでより難しい仕事を任される。引退後は大貴族や王家の衛兵として雇われたり商人になるものもいる。冒険者組合のギルドマスターも最低ミスリル等級の冒険者でなければ荒くれ者をまとめられないのでミスリル等級の実績があることが就任の条件となっている。
オリハルコン等級
ミスリル等級の冒険者が依頼を10回以上達成すると昇格試験を受けられる。
仕事内容は難度70以上(常駐する兵士が50名以上いる人口1万人規模の町が壊滅するレベル)のモンスター討伐や伯爵家以上の大貴族の護衛、希少なマジックアイテムの運搬等を任される。
冒険者歴5年以上の大ベテランであり、才能にあった職業を選択した戦士、野伏、魔法詠唱者がバランスよく揃ってなければまずこの等級にはなれない。
一般的には英雄級の実力者と認知されている。
アダマンタイト等級
最高峰の冒険者の称号で名実ともに英雄級の戦力と認知される。
昇格試験は存在せず、国家級の危機を解決したり、歴史的な偉業を成した者が最低二人以上の冒険者組合長の認可を得て就任することが出来る。