死の支配者とその影『六天将』達   作:暗愚丸

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カルネ村の前に別の村によります。
冒険者の割合
銅等級30% 鉄等級36% 銀等級15% 金等級10% 白金等級5% ミスリル等級3% オリハルコン等級1%未満


第16話 初依頼~王国編③

 私(闇信刃)達は現在殲滅したゴブリンたちの耳又は手首を切り取って革袋に収めている。5年前から王国第3王女の発案で倒したモンスターのパーツを組合に提出すると組合を通じて町から報奨金がもらえるらしい。この法律ができるまで冒険者の暮らしはひどかったらしい。今でも銅~鉄等級の冒険者は食うや食わずの生活だがこの法律が制定されたおかげで冒険者の地位も向上し何より消費が活発になり経済効果も高いらしい。

 しかもこの国の第3王女は「黄金姫」と言われるほどの美貌を持ち、求婚者が絶えないそうだ。同じ女として羨ましいやら同情するやら複雑ね。

 ちなみにユグドラシルと同じようにクリスタルなどのアイテムがドロップするわけでは無いらしい。此処がゲームとは違う所ね…。ニニャがキョトンとしているがこれはどうしても聞いておかなければならなかったのだから仕方がないよね。

 地位が低いうちは生活が苦しいのは仕方がない。でもその生活苦を味わってるのは銅+鉄等級で、冒険者全体の7割弱を占めてるんだけどこのままでほんとに良いのか疑問視せずにはいられない。国を敵に回したくは無いから何も言わないけどね。

 

3月26日午後4時30分 スフォル村前

 出発してから約10時間。綺麗な夕日が見え始めたという時エ・ランテルから一番近い村にたどり着いた。いつもここで一泊するらしい。そして二日目の昼過ぎにカルネ村に到着するらしい。

 が、近づくにつれンフィーレア氏がいつもと様子が違うと言ったため皆移動を急ぐ。

 そこで目撃した光景に皆絶句した。

 そこはかつて村と思しき廃墟だった。所々の家の屋根が燃えてドアや壁が壊れている。かなり時間がたっているはずなのに幾つかの家が未だ燃えている所を見ると油を撒いてから火をつけたのだろう。これは明らかに人為的な物だ。ユグドラシルには火を吐くモンスターはいても油を撒くモンスターなどいない。

 

ルクルット「ひでえな…」

ペテル「全滅だな…。盗賊にでもあったのか?」

ニニャ「かもしれません。あの家を見てください。土壁まで燃えています。あれは錬金術で作った油を撒いてから着火したんですよ。私も師匠が作って火を灯したところを見たことがあります。土壁を燃やし、更に長時間消えない。間違いありません」

ダイン「ん?ペテル、生存者がいるである」

 

 全員がダインの言葉で指さす場所へ駆け寄った。30代くらいの男性が崩れた屋根の下敷きになっていた。「ううっ」といううめき声が聞こえてので間違いなく生きている。私は重しとなった屋根を排し脈をとる。

 

???「あ…ありがとう…ございます」

ジーク「無事ですな。レギナ、〔軽治療=ライト・ヒーリング〕を」

ニニャ「待って下さい。無償で治療すると神殿勢力から文句が…」

ジーク「では黙ってていただきたい。これは情報収集に必要な行為です。情報が代金という事で如何か」

 

 強引な理屈だがなぜこうなったのかは知りたい。やむを得ないと皆納得してくれた。

 

ンフィ「マックスさん?」

マックス「ん、ンフィーレア君か、助けに来てくれたのか?」

ンフィ「ええまあ、結果的にはそうなるのかな、とにかくなにがあったのか教えてください」

マックス「帝国軍が・・・攻めて来たんだ」

ペテル「帝国軍が?・・・何故?」

 

 話を聞いてみると今日の午前6時頃、朝食を済ませて畑仕事に精を出し始めた頃、物見やぐらにいた村の男が騎士のような格好をした一団が村の近くで隊列を整えていると知らせに回っていた。騎士様が一体何用でこんな辺境の村に来たのか当初解らなかった。この村はトブの大森林の近くにあり、『東の巨人』と呼ばれるモンスターの縄張りに近い為皆無とは言えないがトブの大森林から離れている村に比べモンスターに襲われる可能性が低い為曾祖父の代からこの村に住んでいる。一応物見やぐらと1m弱の浅い堀と申し訳程度の柵で村を覆っているが。

 リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国は4年前から一年に一度、秋の収穫期にこの村から北東へ3日ほど行ったところで戦争をしているがその間、この村から徴兵令が来ることがあっても(マックスも二年前駆り出された)帝国軍がこの村に攻めてくることは無かった。

 

マックス「助かった。本当にありがとう。えーと、・・・お名前は?」

レギナ「レギナっす。イヤー、体力レッドゲージのあなた、中々っあだ」

ジーク「ご無事で何よりです」

 危ない危ない、ルプスレギナ、後でゆっくり話そうね。

マックス「すまねえ、助けてもらって悪いがおれ、行かなきゃいけねえんだ。話はあと…おっと」

 

 マックスと言う人は走り出そうとして転んだ。やはりずっと屋根と言う名の重りの下にいたんだ。傷は治っても体力はそうはいかない。

 彼、マックス・タイソンは村人が襲われているのに気づくと、真っ先にそばにいた妻子に森の中に逃げるように言ったらしい。

 しかし、騎士に回り込まれ奥さんはその兵隊に全力で体当たりし、息子さんを逃がした。残念ながら奥さんは捕まって、犯された後殺されたらしい。

 全く、どこの時代にもいるよねそう言うやつ。もし出会ったら八つ裂きにしてやる。

 それにしてもあちこちにある死体を見ても大して驚かない。感じるものは有るけど明らかにリアルにいた時とは違う。人間のまま転移していればこの光景に卒倒してた、というより生きていけなかった。今頭に来てるのは連中が村人に対してやった行為であって、殺人その者じゃない。

 そのうちある程度残っている人間としての残滓が消えてしまったらどうなってしまうんだろうとネガティブなことを考えてしまう。

マックス「そうだ、助けてもらって厚かましいが頼みがある。今生き残ったやつは村長の家にいるんだが森の中に逃げたやつが何人かいる。連れてきてほしい。頼む、俺の息子もいるんだ」

ジーク「了解した。モンガー殿、我とルカが探索してみる。モンガー殿はレギナと共にけが人の治療に当たってくれ。ああ、ルクルット殿。野伏であるあなたも手伝ってくれると嬉しいのだが」

ルクル「リョーカイ。今度はルカちゃんにいい所見せるぜ」

ルカ「…それは楽しみですね」

 

 こうして私とルカとルクルットさんは森の中に探索に乗り出した。今はとにかく動こう。暗いこと考えてたら足が震えて前に進まない。

 幸いルカが索敵したらすぐ発見できたが、ウルフハウンド(犬型のモンスター、LV3)に襲わていた。

 

 急いで駆けつけると一人の少年が木の棒を振り回してウルフハウンドと対峙している。

 視認した時ウルフハウンドは少年に飛び掛かり噛みつこうとし、少年は木の棒を水平にして噛ませた。木の棒がバリバリと音を立てて壊れる直前、ルカの一閃が間に合った。

 ハアハアと息を切らしながら呆然とこちらを見てルカが出した手を取って立ち上がった。

 

???「ハァハァ…あ、ありがとう。あ、あの、あなた達は一体」

ルカ「そこはこの方が説明します」

ジーク「大丈夫か少年、我は冒険者ジーク。そして仲間のルカとルクルット殿だ。君はスフォル村の子供で良いか?」

マーカス「あ、ああ。おいらはマーカス・タイソンて言うんだ。後ろの子供や爺さん婆さんもスフォル村の住人だ」

 

 マーカス君(12)の視線の先を見るとそこには小学生くらいの男子1名、女子3名、老人の男女1名づつが震えながら縮こまっていた。

 

ジーク「各々方、もう大丈夫です。おお申し遅れた。我はジークムンドと申す者でまだ駆け出しですが冒険者をやっている者である薬師の依頼でこの村に立ち寄らせていただいた者であります」

 

 それを聞いた子供や老人たちは安堵した。やはりンフィーレア君は森の周辺の村では顔見知りであり一定の信頼は得ているみたいだ。だとすればンフィーレア君と縁を持つことは我々にとってもプラスになるはずだ。

 

 森から戻った後、私は比較的まともな形で残っている中央の大きな家へ行ってみた。するとやはり家には【漆黒の剣】の他初めて見る顔が4人いた。30代の男が一人、後は3~40代の女性だ。ん、見た所生き残っているのは同世代のようだが何故だ?何か理由があるのだろうか。

 

 その人達からも話を聞いたが皆同じ内容だった。さらに恐ろしいことに一か月程前からこの森から離れたスレイン法国に近い村でも同じようなことがあり生き残った村人がわずかに残った食料を手に5日もかけてエ・ランテルの都市長に知らせに行ったらしい。近々王国騎士団が派遣されるとか。

 そしてスフォル村の生存者の一人が「よし、次は明日朝5時にカルネ村に出発だ。最後の詰めに入るぞ」と兵士が行っていたのを聞いた人の台詞にンフィーレア氏の顔色が変わった。

 

ンフィ「冒険者の皆さんお願いです。今すぐカルネ村に出発してもらえませんか!」

 

 ンフィーレア氏のこのセリフには皆が驚いた。何故なら夜は活発化するモンスターが多い為夜の行動は非常に危険だからだ。更にンフィーレア氏を除く全員が十数㎞の距離を歩きっぱなしでここまで来たのだ。最低5時間は睡眠を取らないと明日の行動に支障が出る。

 だから当初この村で一泊し、明日の昼過ぎに目的地のカルネ村に着く予定だったのだ。

 だから皆この意見に反対した。

 

ペテル「待って下さい。もう夕日が沈み始めてます。松明を使っても周囲の把握は困難です。これじゃあモンスターに襲われた時対処が難しくなります」

ニニャ「一応視界を昼間の様に視認できる〔暗視=ナイトビジョン〕は使えますけど効果は5分程です。この魔法を全員にかけていたら10分で私の魔力は尽きてしまいます」

ルクル「それに馬車引いてる馬だってそろそろ限界だ。今日はもう休ませねーと途中でぶっ倒れちまうよ」

ダイン「それが自殺行為であることはエ・ランテルとカルネ村を何度も往復しているンフィーレア氏なら承知しているはずである」

ンフィ「解ってます。でもどんな危険が待っていようと明日の朝までに行かなくちゃいけないんです」

 

 ンフィーレアさんの目はマジだね。強い意志を感じるな。

 

ルクル「なあンフィーレアさん。ひょっとして村に恋人でもいんの?」

ンフィ「いえ…僕が片思いしているだけです。僕にとって一番大切な人です」

 

 やはり恋人がらみか…。

 そうこうしているうちにモモンガさんがンフィーレアさんの前に出た。

 

モンガ「ンフィーレアさん。この村とカルネ村の間に休憩適した場所は有りますか?」

ンフィ「此処から3時間ほど歩いた所に森から適度に離れていて見晴らしがよく川も近くにあるのでモンスターの襲撃にも備えられる場所が有ります」

モンガ「なるほど…ジーク、ルカ、レギナ、ちょっと来てくれ。皆さんは其処で待機しててください」

 

 モモンガさんは私達を外に連れ出し小声で話し始めた。

 

ジーク「モンガー殿、ンフィーレア氏の要請を受けるおつもりか?」

モンガ「ええ、我々の実力を示す、いいチャンスだと思いませんか?」

ルカ「モンガーさん、ジークムンドさん、発言宜しいですか?我々は食事睡眠不要のマジックアイテムを所持しておりますが、モンガーさんとレギナさんは明かりがあろうとなかろうと視界に問題は有りません。しかしンフィーレア氏自身と馬は夜間行軍に耐えられないでしょう」

レギナ「私からもいいっすか?もしあの人間に食事睡眠不要のマジックアイテムを貸し出した場合、セバス様から聞いたこの世界の技術水準からして後々問題になってくる可能性があります」

モンガ「ああそれは問題ない。ジークが自走式馬車を作るから」

ルカ「よろしいのですか?その様な者が作れる技術があると知れれば後々問題になるのでは…」

モンガ「大丈夫だ。旅先の錬金術師から貰ったものだから作り方など知らないと言い張ればいい」

 

 モモンガさんはその根拠を教えてくれた。

 

ジーク「なるほど…確かにただのもらい物で技術的なことは何もわからないと言い張ればそれ以上追及されないかもしれませぬ。それに我もこのような非道を平気でやるものは非常に好かぬ。一体どんな理由があってこんなことをするのか問いただしたい」

モンガ「決まりだな。ルカ達もいいな、何を聞かれてももらい物で技術的なことは解らんと押し通せ」

ルカ「かしこまりました。御方々のお気持ちに応えられるよう最善を尽くしましょう」

 

 私は誰も見てないところで〔伝言=メッセージ〕を発動し、アルベドに隠密能力に長けるか透明化の能力を持つものを10体ほど送ってほしいと頼んだ後、自走式馬車と馬型ゴーレムの製作に入った。モモンガさんは再び村長宅に戻るとンフィーレア氏に提案した。

モンガ「ンフィーレアさん、私達の馬車でお送りいたします。実は魔力で動くゴーレム式の馬車を持っているのでまずそこの休憩場所まで進み、そこでわずかでも睡眠を取れば明日の朝には間に合うでしょう」

ペテル「本気ですかモンガーさん、3時間後なら間違いなく闇夜の中進むことになりますよ」

ルクル「そうだぜ、夜の行動がどれだけ危険か旅の経験が一度でもあればわかるはずだ」

ダイン「しかしモンガー氏、問題は他にもある。襲撃したのが帝国軍なら我々はその場所へ向かうわけにはいかぬのである」

モンガ「それは何故ですか?」

ダイン「冒険者組合は基本的に国家間の争いに介入するのは厳禁なのである。何故なら王国と帝国は4年前から毎年争ってるがそれに応じたら今後冒険者は無償で戦争の道具にされてしまうのである。しかも熟練の冒険者は百人力の戦力、そうなるとより大勢の死傷者が出るのである」

ニニャ「さらに熟練の冒険者を戦争で大勢失ったら各都市はモンスターへの対処が出来ないのです。だから戦争に限らず冒険者組合は国家間のもめごとには介入しないことを基本方針にしており、それを破れば冒険者資格を剥奪するように規則を作ってるんです」

モンガ「大丈夫ですよ。我々は偶然村に通りかかり騒動に巻き込まれたと言えば誰もがやむを得ないと納得してくれます。それに帝国兵の格好をした山賊と言う線もありますしね」

ジーク「モンガー殿、用意できましたぞ」

 

 どうやらジャストタイミングのようだったわね。

 

 全員外に出ると周囲が夕日で赤くなっている所に〔永続光=コンティニュアル・ライト〕で昼間のような状況になってる馬車があった。

 それはこの世界の水準ではすさまじいものだった。

 まず馬は砂と同じ橙色で目から光を放っている。荷車の方は藍色を基調としあちこちに金細工が施された上高価な〔永続光〕が施されたランタンも前と後ろに計4つ付いている。上級貴族のものとしか思えない作りこみだ。車輪も太く特殊な材質が使われており悪路も進めそうだ。

 

ニニャ「な、なんか凄いのが出てきましたね…」

ダイン「しかもそこかしこに魔化が施されているであるな」

ンフィ「凄い…。馬型のゴーレムは噂には聞いてましたが見るのは初めてです」

 

 噂?なるほどゴーレムを魔法で生み出す技術は有るみたいね。どの程度か確認する必要があるわね。セバスにはゴーレムの技術についても調べるように言っとこ。

 

モンガ「とにかく急ぎましょう。マジックアイテムとはいえ永続的ではなく魔力の補給も必要なためンフィーレアさんが言った場所で、休憩を入れる必要がありますがこれを使えば休憩所で5時間寝て、夜明け前に出発すれば明日の早朝にはカルネ村に着きます」

 

 【漆黒の剣】の皆さんには生存者をエ・ランテルまで連れて行ってもらい、自分たちがカルネ村に先行することを伝え、私とモンガー、ルカ、レギナは一足先にカルネ村に向かった。




次回はいよいよカルネ村編スタート
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