死の支配者とその影『六天将』達   作:暗愚丸

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この話が原作9巻の所まで続いたら設定に迷っております。
この話は作者のオリジナル設定が多数含まれております。(法国軍の部隊名等)その点に関してはノーコメントとさせていただきます。もちろん人物の名前が原作と違う等の指摘は是非ともお願いします。


第18話 初依頼~王国編⑤

3月27日 午前4時50頃 カルネ村付近

 

 スレイン法国第9軍副隊長ロンデス・ディ・クランプは軍馬に乗りながら自国が信仰する6大神に祈りを捧げていた。 

 彼は自分たちが正しいことをしているとは思えないからだ。

 自分たちが上官である闇の神官長に命じられたことはリ・エスティーゼ王国所属の王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの抹殺。しかし実際にやるのはスレイン法国が誇る特殊部隊、『陽光聖典』であり、ロンデスの役目はその下拵え、王国戦士長を呼び出すための撒き餌を作ること。

 スレイン法国は人類至上主義を掲げ日々亜人やモンスターと闘ってる。今回の任務も当然人類救済の為の布石だ。

 しかし、今回の任務は六大神官長が説いている『人間種の救済』に本当に結びついてるのか疑念を抱かざるを得ない。

 確かにリ・エスティーゼ王国は腐敗している。人類支配権の中でも特に肥沃な土地に住んでおり、建国当初は誰もがリ・エスティーゼ王国が人類の救済と発展を促すと信じられてきた。

 しかし、建国から100年以上が過ぎた頃、優秀な兵士や冒険者を数多く輩出した副作用なのかこの国は少しずつ腐敗し始め、25年程前から【八本指】という裏社会の組織が台頭し始め、この国の腐敗を加速させ、更には著しい発展を遂げた帝国やわが祖国スレイン法国にまで麻薬を流し、多くの民を苦しめているという体たらく。

 そして2年前、六大神官長はついにリ・エスティーゼ王国に見切りをつけ、帝国に併合させようと画策し始めた。

 

 その手始めに腐敗が進んでると思われる貴族、それも伯爵家以上の上級貴族を懐柔し始めた。

 次にバハルス帝国皇帝とコンタクトを取り、麻薬の流通を徹底的に取り締まり、リ・エスティーゼ王国との戦争を促した。

 そして今回、去年の戦争で反抗作戦で帝国に一撃を入れ、帝国軍正規兵に600の損害を出した王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの暗殺である。周辺国家最強と呼び声高い彼が失脚すればリ・エスティーゼ王国の軍事力は一気に低下し、3年後には帝国が全面攻勢に出て併合と相成る。そうなるはずだ。

 

 しかし、我々が今やっている撒き餌作りはスレイン法国と国境を接しているリ・エスティーゼ王国の王族領、エ・ランテル近隣の、それもスレイン法国寄りの村々を襲い、わざと数人残しその生き残りがエ・ランテルに知らせるようにし、懐柔した貴族どもを動かして王国戦士長に軽装の状態で本来100名で組むはずの討伐隊を現地協力者を含め55名まで削って率いさせ誘いだす作戦だ。その為に多くの無辜の民を犠牲にした。王国戦士長一人を殺害するために。これも人間種全体の繁栄のためだと必死に言い訳し神に許しを請いながら。

 

???「隊長、カルネ村が見えてきました」

 

 部下の一人の声にロンデスは大きくため息をつくと雑念を取り払い走り続けた。目的地であるカルネ村が見えてきた。これ以上この作戦の意義を考えたら足が前に進まない。今考えるべきは、箔付の為にこの作戦に参加している資産家のボンボンの隊長をどう手綱を取りながら作戦を上手く遂行するか。それだけ考えるようにした。

 

ロンデス「よし、予定通り部隊を二つに分け、西と東の入り口から突入する。ベリュース隊長は私と一緒に西の入り口へ、東口はマイルズ副長に任せる」

 

 

 

 

3月27日 午前4時58分 カルネ村東入り口

 

 蹄の音が近づいてくる。私(闇信刃)は作戦を思い出しながら村の入り口を睨んでいた。現在ンフィーレア君の護衛は私とモモンガさん、そしてルプーに〔二重延長化・完全不可視化=ツインエクステンドマジック・パーフェクトアンノウアブル〕をかけて貰ったわが娘ハルカちゃん。

 ルプーは村を一通り見回ったモモンガさんが村には入り口が二か所あり、自分だったら部隊を二つに分けて襲撃するという意見を聞き彼女に〔完全不可視化=パーフェクト・アンノウアブル〕を使って西口を見張るよう命じた。まあ確かにそれには私も同意見かな。

 彼女一人で大丈夫かなと思ったけどモモンガさんの提案が魅力的なので受けた。それはルプスレギナはカルマ値が-200の為、所謂残虐行為が好きな性格なのだ。(ヒーラーなのにおかしいよねー)何よりも【漆黒の剣】や町の人との会話で彼女がもしかしたら命令よりも欲望を優先するのではないかという疑惑が生まれたのだ。

 そこでルプスレギナにある命令をして自分の欲望より命令を優先できるか、確かめようという試みだ。

 ルプスレギナに命じたのは2つ。一つ目は〔完全不可視化〕を使い、西口へ潜み、最低10人位が殺されてから襲撃者たちを倒すこと、その際、最低3人は捕虜として捉えること。二つ目は村人は最初に犠牲になる何人かを残し可能な限り助けること。もちろん最初に犠牲になる数人は仕方がないが間違っても村人が半分以下にならないようにしろ、村の生き残りが半数以下になったら任務は失敗だと思えと言い含めた。理由は犠牲が出てからでなければ助けられても感謝する人間は非常に少ないからだ。そして生き残りが少なすぎてもお礼が期待できないためだ。感謝して貰う人数は出来るだけ多く作りたい。

 

 話を戻すけどそんな訳で西口はルプスレギナ一人に任せて私達は東口から見えた襲撃者に対処している。

 蹄の音が次第に大きくなりやがて鎧を着て馬に乗った兵士が姿を現した。昨日マークって人が言った通りの格好ね。鉄、もしくは鋼でできた鎧とロングソード。リアルにいた時の歴史書で見た古代~中世に使われた鎧に似てる。ホントに此処の文明は中世レベルなんだなー。

 私はエモット家の人はモモンガさんに、ンフィーレア君のことはルカに任せて向かってきた帝国兵の格好をした何者かに問いただした。

 

ジークムンド(以後ジーク)「お待ち願いたい。我はジークムンドと申す者。貴公らは何故このような所にそのような格好で来られたのかお聞かせ・・・!」

 

 全て言い終わらぬうちに騎乗した兵士の一人がロングソードを私に振るってきた。私はその剣を最小限の動きで躱すと軽く跳躍し騎乗している兵士に向かって胴体を横なぎに切った。

 

ジーク「・・・願いたいが無理か」

 

 他の騎馬兵達は一瞬たじろくがすぐに「やりやがったな」というお決まりの台詞と共にこちらに再び攻めかかってきた。ちなみに私は馬が好きなので二人目は切りかかってきた拍子に頭上に飛び頭を真っ二つにした。着地した瞬間を狙いもう一人が袈裟懸けに切りつけてきたがそれは腕に取り付けたスモールシールドで弾き鎧の脇から剣を突き出した。剣はまるで豆腐に箸を突っ込むように大した抵抗もなく鎧ごと兵士を貫いた。

 私はその兵士をの腕を掴んで後ろから続く騎馬兵にぶん投げてやった。上手く馬を避けてあたった。さて、3~4人は殺さず捕縛しなきゃね。後、敵さんに習って私も騎馬戦と行きますか。

 

 幸いその馬は聖騎士のスキル〔威圧〕が効いて私に従ってくれた。

 

 

 結果は重畳と言っていいと思う。ンフィーレア君とエモット家の人はもちろん村人にも被害を出さなかった。途中で、標的を村人に変え私への対抗手段にしようとエモット家の人に襲い掛かったがモモンガさんの一閃で事なきを得た。25人ほど切ってから敵が撤退の笛を吹いた。私はすかさずルカに〔麻痺=パラライズ〕で残りを捕縛しろと命じて私自身は剣で峰内とかで二人ほど気絶させて捕らえた。結果的に東口では5人捕縛できました。ンフィーレア君にも彼と片思いの人を守るシーンを見て貰えたし、一応だいじょうぶだよね盟主?。

 

 それにしてもこの世界の強者のレベルがまだわからないんだよね。ユグドラシルプレイヤーの中には防御力を捨てて攻撃力を極限まで高めている奴もいたから(弐式炎雷さんとか)まだまだ油断できない。もしかしたらルプスレギナが担当している西口方面にレベルや低くても、攻撃力、防御力に特化した奴がいるかもしれない。

 ユグドラシル時代、その油断が元で何度煮え湯を飲まされたか知れない。こっちは片付いたからモモンガさんにこちらは任せて様子を見に行こうかしら。

 

 

 

 

3月27日午前7時20分 カルネ村倉庫

 

 ロンデス・ディ・クランプは地面に寝そべりながら沈思黙考していた。

 どうしてこうなった。いや、最初からおかしかったのだ。村に突入してから不意におかしなことに気づき止まった。村が閑散としているのだ。部下たちに周囲の探索を命じたら、村人が十人単位で森の中に逃げようとしていたのだ。おかしい、此方が到着する前に逃げるなんて・・・こちらの襲撃を知っていた。それ以外考えられない。

 しかし、村人が逃げ切る前に我々は間に合ったようだ。全員でなくても最低3分の1は殺さなければ今回の計画が失敗に終わるかもしれないからだ。

 

3月27日 午前5時 カルネ村西入り口

 

ベリュース「なんだこの村は、誰もおらんではないか❕おいロンデス、どういうことだ❕」

ロンデス「分かりませんが、恐らくこちらの襲撃を何らかの形で知りえて逃亡したのでしょう。どこから情報が漏れたか分かりませんが・・・ん、ベリュース隊長、あちらに逃げ遅れた村人がいます。あちらに向かいましょう」

ベリュース「おっ見つけたか、おい行くぞのろまども、あの集団を全力で追えっ、俺の手柄の為に❕」

部下たち「「「「はっ」」」」

ベリュース「おいっ探索している奴は集まれ、あー、後若い女は殺さずにとらえろよ、爺と婆は殺せ、忘れるな」

 

 ロンデスも部下たちもこの何度も変わらぬ台詞にうんざりしながらもこれも仕事だと割り切り剣を抜いて逃げ遅れた村人の背後を襲った。

 

 私達の最初の失敗は逃げる村人に気を取られて後続の兵達が突然落馬した事に気付かなかった事だろう。

 

 次に異変に気付いたのは逃げ遅れた村人を10人ほど切った時だった。ガキン、ドシャッという音で私(ロンデス)は振り向いた。理由はここ数日に聞きなれた村人が倒れる音と違ってたから。何と言うか金属鎧が何か別の金属で殴られ地面に落ちた音に似ていたから部下の一人が転んだのかとそう思ったからだ。

 そしてそれは聞き違いじゃなかった。私の視界には頭を潰された部下が横たわっていた。

 誰の仕業だ。自分が村人を見つけた時反対側に別の村人がいたのか。それに鉄兜を被った兵士の頭を潰して姿を消した。魔法か?、流石にそれは無いだろう。村人の中に白金等級以上の元冒険者がいたというならありえなくはないが…。と考えている内に続けてもう一人がゴシャッ、ンーリャアという音と共に落馬した。

 ロンデスは馬から降りて倒れた兵士の元へ駆け寄った。見ると腹に鎧を貫いて開けたような穴があった。穴の周囲もへこんでいることから棘の付いたメイスのようなものと推測できた。

 それよりどこから攻撃している?。部下の一人がいきなり吹っ飛んだ時何も見えなかった。それに金属音に交じって女の声がした…これはまさか…。

 ゴキン。再び金属の衝突音がした。そしてその攻撃で確信する。

 

ベリュース「な、何が起こっている。敵が見えない。おいっお前ら俺の周りを固めろ❕、俺を守れ❕」

ロンデス「隊長❕、敵は恐らく不可視化の魔法を使っております。敵は魔法詠唱者です❕」

ベリュース「ならどうすればいいんだ」

ロンデス「分かりませ・・・いや、円形の陣を組むんです。それなら敵の攻撃が誰かに当たればその者の目の前に敵がいるという事です❕、そこに集中攻撃をかければ…」

ベリュース「よ、良し、お前らっ全員集まれ、俺と副長を中心に円形の陣系を組むんだっ、いいかっ、何よりも俺を守れ、それが最優先だー」

 

 周りの部下たちは舌打ち、或いは殺気交じりな「隊長のお前が前に出ろよ」という視線を向けながら一方が隊長に、もう一方が副長の元に10人づつ集まり陣形を組んだ。生き残っているのは22名。すでに8名がやられていた。

 もうこれで隙は無い。一人二人やられても確実に敵は補足できる。

 これが二つ目の過ちだった。相手がマジックキャスターでなければ正解だったのだが…。

 

 

 ポウッと言う音がした方向に視線を向けると大きめの蝋燭の炎が現れ、ベリュース率いる一団に放たれた。

 第3位階魔法〔火球=ファイヤーボール〕ならロンデスも知っているし、反応して躱すことが出来る。しかし内包する魔力が低い魔法詠唱者でもこんな小さな物にはならない。内包する魔力や熟練度で火球の大きさが変わるのは知っているがこんなに小さくはならない。

 どういうことか分からない。ベリュース隊長率いる兵士達も同様だったようでベリュースは3歩下がったが前の兵士4人がそっちへ向けて防御を厚くしたが後の者はこちらに向かう蝋燭の火を黙ってみていた。

 その火は兵士の盾に着火した瞬間、その兵士を中心に直径10~12m位の炎の柱となって前で固まっていた兵士達を焼き尽くした。

 円陣はベリュース隊長を中心として兵たちは3m程間隔をあけて組んでいたので全滅は免れたが一撃で4人が即死、2人が重傷を負った。

 

ベリュース「うわあああっ」

 

 ベリュース隊長は悲鳴を上げながら逃げた村人と同じ方向に走り始めた。直感的に村人と一緒にいたほうが安全だと踏んだのだろう。

 しかし、「ぐぎゃっ」という間抜けな音と共にドサリと地面に倒れた。

 

レギナ「にっしっしっ。い~いリアクションっすね~」

 

 美しい声がした次の瞬間、ケガをした二人に肩を貸した数人を囲むように3つの魔法陣が現れ火球が生まれ、残り6人に放たれた。

 ロンデスが逃げろと声を上げる間もなく3つの〔火球=ファイヤーボール〕が着弾し、最低の隊長ベリュースを守っていた6人は業火に焼かれた。

 

兵士A「いやだ、いやだ」

兵士B「神よ…お助け下さい」

ロンデス「落ち着けー❕、撤退の笛を吹け。バラバラに逃げれば何人かは助かる。いけっ」

 

 スレイン法国だい9軍の兵士たちは今回の様に少数で行動する時も隊長、副長、そして連絡係は作戦成功時と失敗時用に使う合図の笛を用意していた。副長の檄に神にすがっていた兵士は意識を取り戻し、笛を持っていた兵士が作戦失敗用の笛を吹いた。これで東口から村を襲っていた者たちにも作戦の失敗が伝わったはずだ。

 それを確認してから皆がばらばらに逃げようとした時不意に周りを取り囲んでいた兵士たちが3人、一斉に倒れ始めた。

 恐らく魔法だろう。第1位階魔法〔眠り=スリープ〕か。ロンデスはやばいと敵の目を誤魔化すため東口へ向けて逃げようとしたらその方向に一人の男がいた。

 この非常事態に相手を確認する余裕など有るはずが無く、その男に向かって剣を振るった。

 しかし、剣閃はその男には当たらなかった。突如全身に悪寒と電流のような衝撃を受け、わずかに意識を保ったまま崩れ落ちた。この衝撃にはロンデスには覚えがあった。

 殺気だ。それも一般人やそこらの兵士や将軍が出せるものじゃない。漆黒聖典第一席次の者だ。

 以前稽古に付き合わされた時味わった悪寒と衝撃。その瞬間動けなくなりその場にへたり込んだ。意識を手放せれば楽だったのに…。

 

 

 

 

3月27日 午前7時35分 カルネ村飼葉保管用倉庫

 

 私は捕虜となった兵士20名を〔道具創造=グレーターアイテム〕で作った手錠と鎖を着けて、念のためもう一度全員に〔眠り〕をかけ倉庫に押し込み、ルプスレギナとハルカを労っていた。

 

ジーク「よくやったなルカ、レギナ、捕虜を20名も捕まえるとは我の予想以上だ」

モンガ「俺からも礼を言う。作戦は大成功と言っていい」

ルカ+レギナ「「ありがとうございます」」

 

 あの後、エモット家の人からも涙ながらに感謝された。襲撃者の捕虜も取れたし結果は上々ね。後は薬草採取をしてエ・ランテルへ帰還した時、私達を宣伝して貰えるように頼めば今回の依頼は大成功。

 村人たちは現在墓地に殺された10人の遺体を埋めに行ってる。殺された人の家族は敵を売ってくれてありがとうと言ってくれた。

 襲撃者たちに何人か殺させたのはやはり正解だった。こうして恩を売っておけば後で何かと役に立つ。

 でも再確認になるけど村人たちが目の前で殺されているのを見ると過去の体験が蘇り、虐殺行為をしたやつを殺したくなるけど、死体自体は見ても何も感じない。人間の残滓が無くなった時私達はどうなってしまうのだろうか?

 さてと、そのことで悩んでも仕方ない。治し方が解らない以上なるようになる、としか言えないし出来ない。今はそれより襲撃者たちの尋問をしよっと。

 

 

 

 尋問の結果様々なことが判明して、現在村長宅で私とモモンガさん、ンフィーレア君と村長さんを交えて相談会が開かれた。

 議題は襲撃者たちの正体と尋問の途中で何人かの兵士が血を吐いて死んでしまったことだ。

 

モンガ「しかしどう解釈すべきですかね…。バハルス帝国の騎士たちではなくスレイン法国軍第9部隊、か」

ジーク「バハルス帝国の鎧を着ていたのは帝国軍の仕業に見せかけるための偽装…か。そして目的は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの抹殺」

ンフィ「…本当にすみませんでした。まさかこんな大事に巻き込んでしまうことになるなんて」

モンガ「いえ、あなたに罪は有りません、ンフィーレアさん」

ジーク「作用。例え偶然村に通りかかっただけだとしても、それだけの為に無辜の民を虐殺するような輩は、例え組合のルールに反してでも我は介入していた。奴ら・・・悪道と外道をはき違えやがって…」

モンガ「ジーク、殺気が漏れてるぞ、ここにはただの村人もいる、お前ほどの奴が本気の殺気を向けたら女子供は死にかねんぞ❕」

ジーク「すまぬモンガー殿、連中の行為にいら立ちを隠せなかった」

 

 どうやら私達は3か国の陰謀にまきこまれてしまったよう巻き込まれてしまったようね。正直国に目を着けられることは避けたいんだけど。

 

ジーク「モンガー殿、ンフィーレア殿、今回一番積極的に介入した自分が言っても説得力が無いが、国がらみの事件となると一介の、それも最低ランクの冒険者の手におえる事案ではありますまい。敵が彼らの他に法国の特殊部隊が来ているのも確認できました。彼らの目的である王国戦士長が来る前に我々とンフィーレア氏とエモット家の皆で逃げるという手もあるがいかがか?」

ンフィ「待って下さい、この村を見捨てるって言うんですか?」

 

 そんな時不意にモンガーが左手で自分のこめかみを叩いた。〔伝言〕を使ってくれと言う合図である。

モンガ「待ってくれジーク、エモット家の人がこの提案を受け入れる可能性は低い。それに敵の別動隊が口封じに出る可能性もある。そして最大の懸念が敵の別動隊が我々を監視していた場合だ。その場合我々の存在はどの道法国に伝わる。何より薬草採取も終わってない以上初めての依頼が失敗だったなどと言う風評が立っては今後の仕事に差し支えるしな」

 

 私は〔伝言〕で話しながらンフィーレア氏や村長に悟られないよう2,3分悩んでる振りをした。

 

※ここからは〔伝言〕で悩んでる振りしながら話していた内容です。

 

モモ「闇信刃さん、確かに撤退は正解だと思います。コネクション作りも出来ていない今目立つことをして権力者に睨まれるわけにはいきませんから。でも今回、私はあえてここに残りスレイン法国の別動隊と闘うべきと判断します」

闇「その理由は如何に?」

モモ「一つ目は今撤退して村が滅ぼされた場合、せっかく苦労して培ったンフィーレアという貴重なタレント持ちとの縁が切れてしまう可能性が高いです。そうなるとエ・ランテルの権力者の一人である彼の祖母とのコネクションも失います。それにエンリ・エモットとその家族だけを村から連れ出すにも説得できる可能性は低いでしょう。それに何故エモット家だけなんだと村人たちが激怒して一緒に連れて行けという可能性の方が高いでしょう?、どう考えても」

闇「確かに・・・」

モモ「二つ目はスレイン法国の別動隊が村を滅ぼし、私達がその場にいたという事が後になってばれたらその悪評が我々の今後の仕事に悪影響を及ぼす可能性が有ります。」

闇「組合から回される仕事にも制限がかけられるかもしれませぬな」

モモ「最後にスレイン法国の別動隊は特殊部隊として扱われているからそいつらと王国戦士長とか言うやつが闘う所を『遠隔視の鏡』で見てみたいのです」

闇「…読めました。この世界のレベルを図る気ですな」

モモ「はいっ、ドワーフ族の味方をした際この世界のモンスターの中では強者の部類に入るフロストドラゴンと闘いましたが、まだ人間の強者とは一度も闘っておりませんしその戦いを見たこともありません。これって後々やばいと思うんですよね」

闇「盟主の慧眼お見事。そういたそう。では〔伝言〕を切ります」

 

※以上です。話を戻します。

 

ジーク「うーん、ではンフィーレア氏、こういうのはどうだろうか?。もしこの国の警察…失礼、貴族なり役人なりに今日の事を聞かれた場合、襲撃者たちからは何も聞けなかった。闘った相手はどこのだれかは解らない。そう伝えていただきたい。でなくばこの国はもちろん周辺国家の権力者から目を着けられる」

ンフィ「分かりました。彼らの正体については何も知らない。我々は薬草採取に訪れた村でたまたま襲われたので撃退した。村長もよろしいですね?」

村長「分かりました。役人が来たらそう伝えるよう私からも村人を説得しましょう」

ジーク「次の議題ですが、尋問の最中捕虜の兵士たちがいきなり血を吐いて死んでしまった理由について心当たりはありますか?」

村長「いえ、私に思い当たることは何も・・・」

ンフィ「あれは自害したのではないのですか?尋問していた相手に目立った外傷は有りませんでしたから」

モンガ「死ぬ直前、何か口の前に魔法陣が浮かび上がるのを見ました。私は魔法には詳しい方だと思っていますが・・・この世界特有の魔法なのでしょうか?」

ンフィ「この世界特有・・・?」

モンガ「あ、ゴフンゴフン、失礼、スレイン法国で独自に派生した魔法なのではと・・・例えば追い詰められた時苦痛を感じずに死ねる魔法とか…私は知りませんでしたが」

ジーク「我もそのような魔法に心当たりはありませんがモンガー殿の意見は間違っていると考える」

モンガ「その理由は?」

ジーク「もし自決用の魔法が存在しているのなら、何故捕虜にされた時点で使わなかったのか、仮に尋問している最中、これだけは話してはいけないという核心的な部分に触れた質問をしたから自殺を選択した場合だが、それだとタイミングが不自然すぎる」

ンフィ「タイミング?」

ジーク「如何にも。先程行った二人の尋問を思い出して頂きたい」

 

~回想~

 

モンガ「その別動隊とは?」

兵士「す、スレイン法国の特殊部隊『陽光聖典』です。特殊部隊『六色聖典』の内の一つです」

モンガ「どういう部隊なんだ?」

兵士「は、はい。陽光聖典は第3位階の魔法詠唱者で構成されたエリー、トト・・・うぐっ」

 

 その兵士は陽光聖典の概要を説明していた最中突然口元に見覚えのない魔法陣が浮かび上がったのよね。私は勿論、盟主も驚いてた。魔法に関しては盟主の方が遥かに詳しいと思ったけどやっぱり盟主も知らない魔法だったんだね。

 それから直ぐにその兵士は血を吐いて倒れた。魔法陣が発動してから僅か数秒でだ。即死系の魔法だろうか?、自殺?でもそれなら何故質問に答えているタイミングで?。

 

~回想二人目~

 

モンガ「その六色聖典の中で最強の部隊は?」

兵士2「特筆すべきは漆黒聖典です。漆黒聖典はスレイン法国の中でも貴族、平民問わず才能ある人材が集められ、隊員の中には第5位階の使い手までいるとか、中でも漆黒聖典の隊長は陽光聖典全員でかかっても・・・う、うぐ…がああっ」

 

 二人目の兵士も説明している最中に突然口元に魔法陣が現れたと思えば急に苦しみだし、死を迎えた。両者とも3つ目の質問に答えている最中だった。

 

~回想終了~

 

ジーク「以上の状況から少なくとも自殺ではありえません。自殺なら質問に答える前にしているはずですから」

 

 結局尋問はこれで打ち切りになっちゃった。これ以上続けたら自分で下を噛み切る奴が出てくると思うし、全員殺してしまったらこれから来るでしょう王国の軍勢と交渉できなくなっちゃうし。

 

 

 

 

3月27日 午後2時半 カルネ村東口前

 

 私達は村長宅で話をまとめた後、エモット家の家が見える位置でしゅういに村人がいないことを確認し、チーム全員で話し合った。

 

モモ「という事で、スレイン法国の特殊部隊とリ・エスティーゼ王国の軍隊の衝突を見学し、王国軍が負けそうになったら加勢するという方針となった。お前たちに相談せずに決めてすまなかった」

ハルカ「いえ、至高の…我らのリーダーがお決めになったことなら間違いはありますまい。我らは喜んで」

ルプー「私も問題ないっすよ」

闇「何か質問があれば聞くが・・・待て、盟主、どうしたシャドウデーモン・・・。よし分かった。盟主、八肢刀の暗殺蟲がこちらに向かってくる人間の集団を確認したそうだ。数は42、しかも先程の襲撃者たちとは明らかに装備が違うそうです」

モモ「いよいよ特殊部隊とやらのお出ましか」

闇「いえ違いますな。恐らくリ・エスティーゼ王国軍でしょう。しかもどういうわけか【漆黒の剣】のメンバーも同行してるそうです」

モモ「では王国の軍勢で確定だな。むしろ他に考えられん」。しかし42名だと…中世時代の軍隊にしては少なすぎるな…。その時代は討伐隊と言えば最低でも100人単位で行動していたはずだが…」

 

 話が終わった後、見張り台にいた中年が「た、大変だ―」と言いながら村長宅へ駆け足で向かっていった。

 

 

 

 

3月27日 午後2時55分 カルネ村中央広場

 

 私と盟主とルプスレギナは村長にせがまれて村の中央で素知らぬ顔をしながら王国の軍勢を待った。それを知らせに来た村長が捨てられた子犬のような眼をしていたのはおっさんとはいえちょっと辛かったね。言葉に出してなくても何を言いたいのか丸わかりでした。純真な目で潤まれながら迫られるとつらいね。

 ちなみにンフィ―君とエンリちゃんとそのご家族は村長宅の傍にある穀物用の倉庫に避難してもらってます。念のためハルカと八肢刀の暗殺蟲が一体同じ倉庫に待機してもらってるのでだいじょうぶだよね。・・・多分。

 

 やがて砂埃を上げながら馬に乗った集団が広場に駆けつけてきた。確かに装備は先程の帝国の者とは違う。基本的には同じ『複数重ねがけ革鎧=ハードレザーアーマー」だが何人かは動きやすいよう独自の改造をしてある。まるで傭兵集団だ。

 

ペテル「あっモンガーさん、ジークムンドさん」

 

 ペテルが馬から降りて手を振って歩いてきた。ルクルット、ダイン、ニニャも一緒だ。

 

モンガ「これは皆さん、どうしてここに、それにそちらの方々は一体…」

ジーク「見るからに傭兵団とお見受けするが」

ペテル「こちらは王国の精鋭部隊、王国戦士隊の方々です」

 

 戦士隊?・・・この時代国王直属の部隊と言えば騎士団と言うはずだが・・・。

 

ガゼフ「お初にお目にかかる。私は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。王のご下命を受けこの辺りの村を荒らしまわっている帝国騎士たちを討伐するために村々を回っているものである。この村の村長は何処に」

村長「は、はい。私でございます」

ガゼフ「この村に帝国騎士の格好をした賊が来なかったか?」

村長「ええ、確かにその様な者に襲撃され村人が10人以上殺されました。ですがこの方たちに助けて頂いたのです」

ガゼフ「その者たちは何者だ?」

村長「この方々は・・・」

モンガ「ご紹介には及びません。初めまして王国戦士長殿。私はしがないエ・ランテルの冒険者でモンガーと申すものです。後ろに控えますのはパーティーメンバーのジークムンドとルカです」

ガゼフ「この村を救っていただき感謝の言葉もない。ある程度の事情はこちらにいる【漆黒の剣】の方々にお聞きしましたが宜しければ詳しい経緯を聞かせていただけませんか?」

モンガ「分かりました。ジーク、レギナ、お前たちはペテルさん達と話していてくれ。私は戦士長殿に事情を説明しているから。失礼しました。私達はエ・ランテルでンフィーレア氏から【漆黒の剣】の方々と一緒に護衛と薬草採取の依頼を受けまして・・・」

 

 私とレギナは他の【漆黒の剣】のメンバーから質問攻めにあっていた。皆驚いたり呆れたり世話しなかったなー。

 

ルクル「レギナちゃーん。元気してたー?あなたのルクルット・ボルブが会いに来ましたよー」

レギナ「ドーモっす。相変わらずのダメっぷりで嬉しいっすよ」

ルクル「くーっ、レギナちゃん相変わらずキビシー❕」

ダイン「何はともあれ無事で何よりである」

ニニャ「ホント、ゴーレムが動かす馬車で夜道を進むなんて聞いたときは驚きましたよ。再会できてほっとしてます」

ジーク「陳謝いたす」

ニニャ「それでンフィーレアさんは、私達の依頼人は無事なんですか?他の村人は無事だったのですか?」

ジーク「それについても報告があります」

 

 私はこの村に来てからスレイン法国の兵士達との闘ったことまでを話した。しかし、ンフィ―君との約束で、スレイン法国が関わっていることなどは上手くぼかした。

 

ペテル「そうですか…。エモット家の人たちが無事だったことは僥倖でしたがその賊の正体は解らずじまいなんですね」

ダイン「しかし、話す前に自害したというのは気になるであるな…」

ルクル「俺もだ。もしただの山賊の類なら捕らえられたら情報と引き換えに命乞いとかするはずだが…」

ニニャ「それに帝国騎士の装備を全員がしているというのも気になります・・・仮に帝国の仕業だとしてもおかしいですよ。そもそも立地的に帝国が辺境の村を襲うメリットは無いはずです。」

ジーク「それはどういうことですかな?」

ニニャ「はい、リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国は4年前から毎年の9月から10月にかけて戦争をしています。ですがたとえ王国側にダメージを与えることが目的だとしてもこんな辺境の村を落とすメリットがどうしても思いつきません」

ルクル「でもニニャよー、実際に帝国の騎士たちはこうして襲って来てるんだぜ。国がらみの事件ならなんで無益な事すんだよ?。今の皇帝は聡明な人物って聞くぜ。現に帝国は今の皇帝になってから繁栄しているだろ?。」

ニニャ「そうなんですよね…。毎年の戦争を有利に導くためじゃないとすると・・・ん?戦略ってことは誰かを誘ってる…?いや、まさか…でもそれ以外可能性が…」

 

 へえー。ニニャ君って中々鋭いね。流石にスレイン法国が絡んでいるとは想像できないみたいだけど。

 

ニニャ「不味い・・・相当不味いですよこの事件❕。ジークさん、それに皆聞いてください。今すぐンフィーレアさんを連れてここから離れましょう」

ペテル「どうしたんだ急に?」

ニニャ「これは恐らく罠です。この襲撃事件は其処にいる王国戦士長を誘い出すためだったんですよ」

ジーク「待っていただきたい。その事なのですが…」

 

 私は彼の言葉を制し、ンフィ―君と話し合ったことを伝えた。

 

ペテル「そうですか…。バレアレさんが残ると…」

ダイン「別動隊が来ると予測される以上、そして子供や年寄りがいる以上、街道を通っていては直ぐに追いつかれてしまう。ならトブの大森林に避難する方が確かに生き残る確率は上がるであるな」

ニニャ「でもモンガーさん達はいいのですか?冒険者は基本的に国事に関わることはご法度なのですが…」

ジーク「それは大丈夫です。敵にとってこの作戦は言わば暗殺…。公に出来ない戦いです。関わったところで我々を責められませんよ。冒険者組合に訴え出たらそれは王国戦士長殿の暗殺を認めるのと同じ。戦争以外の手段で王国の要人を貶めたなんて知れたら政治的にも外交的にも大打撃です。その心配はありませぬ」

 

 こうして相談の結果、【漆黒の剣】のメンバーも本来の目的である薬草採取がてら数日トブの大森林に避難するという方向で落ち着いた。

 

 そして、モンガーさんと話があるとその場を離れてから間もなく姿を消した八肢刀の暗殺蟲からこの村に向かってくる一団があるとの報告が入る。人数は36名。恐らくスレイン法国の特殊部隊『陽光聖典』だろう。

 

 モモンガさんとハルカにもその事を伝え、打ち合わせの結果ガゼフ・ストロノーフを囮に使う事を決め、装備品の見直しを始めた。

 

 そして30分後、王国戦士隊の一人が凶報を知らせに来た。

 

王国戦士隊1「戦士長。複数の人影を確認。村を覆う形で接近しつつあります」

 

 

 

 さあ、Let's party❕

 

 




現在モモンガ達がどうやって王国と冒険者側にばれずに陽光聖典を倒せるかかんがえてます。次の掲載は遅れると思いますが応援お願いします。

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