※後書きに山明のデータベースがあります。
第2話 異世界転移
玉座の間に集まったギルメンは絶句していた。ギルメン全員の意識が一人…いや一体のNPCに視線が集中しているからだ。
さもありなん。会話などできないNPCが喋っているのだ。
基本的にNPCに会話などする機能はない。もちろん現代の技術ならプログラムを設定すれば特定の仕草や言葉や効果音を出すことは設定可能だ。しかし目の前のアルベドは明らかに設定にない会話をしている。しかも目を凝らせば唇が複雑に動いている。これはプログラムのプロであるヘロヘロさんにも不可能な設定だ。
モモンガと闇信刃とヘロヘロは何故か他のギルメンより冷静になっている為、アルベドをなるべく刺激しないように話しかけた。
モモ「大丈夫だアルベド…。どうやらGMコールが効かないようで、少し困っているだけだ」
私はモモンガさんグッジョブと内心思いながら、もしアルベドが今の異常事態の事を理解しているのなら教えてもらおうとお願いしようとした時返事は来た。
アルベド「申し訳ございません。私はGMコールなるものが何を意味するかも存じ上げません」
期待している答えではないが、NPCにも現状が解ってないようだ。
ともかく現状把握が最優先だ。とにかく皆を落ち着かせて話し合わなければならない。私は盟主に小声で提案した。
ヘロ「モモンガさん、闇信刃さん。皆の様子を見る限り冷静なのは我々3人だけのようですね。原因は不明ですが先ずは現状把握を急ぎませんと」
闇「盟主殿、先ずは皆を落ち着かせてるにはどうしたら」
モモ「いい考えがあります」
そう言うと頭に妙な電子音が響いた。何だと思った瞬間何故か頭に指をあてて意識を集中した。すると電子音が鳴りやみ頭に直接声が響いてきた。ナニコレ、長年やってるように自然に体が動いた。
モモ「皆さん落ち着いてください。俺です。モモンガです」
やま「ウワッ、モ、モモンガさん?まさかこれ〔伝言=メッセージ〕?」
山明「魔法が…使えてる?」
私も驚いてますよやまいこさん。しかも誰に習ったわけでもないのに〔伝言〕の魔法が来たらどうやって意識を繋げるか、忙しかったらいったん切る方法とかハッキリ解る。
弐式「ありがとうございますモモンガさん。私もようやく落ち着きました。〔伝言〕の効果といい、NPCといい、色々と検証が必要のようですね。」
武人「拙者も同意する。魔法やスキルに剣技等各個人の実力。現在の状況確認、やることが山積みですな」
アル「あの、モモンガ様。何か問題でもございましたか?先程から様子がおかしいのですが」
モモ「何でもない。それよりもアルベド、セバス、お前たちに頼みたいことがある」
アル「至高の御方々のご命令ならば何なりとお申し付けくださいませ。」
セバス「はっ、何なりとご命令を」
私はNPCたちの返答に若干の驚きと不安を感じながら話を聞いていた。
モモ「セバス、お前は〔伝言〕を使えるプレアデスを一名連れてナザリックの外周を見て回ってこい。範囲はナザリックを中心に半径一キロ。制限時間は2時間だ。もし人間などの知的生物を発見したら、なるべく穏便に話して連れて来い。もし何か要求されたらプレアデスに頼んで〔伝言〕を繋げてもらえ。要求を呑んでいいか検討する。」
セバス「承知致しました。モモンガ様」
セバスが立ち上がった時、ヘロヘロさんから声が掛かった。
ヘロ「私からも一ついいですか?セバス。もし外で知的生命体と出会い話が通じず交戦となった場合、闘うのはあなただけですセバス。ナーベラルは〔伝言〕で現状を伝えつつ撤退を優先してください。いいですか、もし外の生物と戦闘になったら絶対に撤退なさい。約束ですよ」
セバス+ナーベ「承知致しました。ヘロヘロ様」
そう言うとセバス達は玉座の間から去った。
モモ「残りのプレアデスたちは第9階層の入り口で侵入者が来ないが警戒に当たれ」
プレアデス(以下プレ)「畏まりました、モモンガ様」
プレアデスも退出した。
闇「さて、あと何が必要ですかな」
私は皆の方を向いて尋ねた。私としては自分のNPCと弐式さんと一緒に色々と話したいなー。実際初恋の人をモデルに作ったナーベラルが動き出したんだからあのひとどう考えてるのか気になるし。
やま「ねえ、私思ったんだけど他のNPCはどうなんだろう」
ヘロ「私もソリュシャンと一度じっくり話したいと思ってます。皆さん、私は一度NPC全てを一ヶ所に集め話し合いたいと考えてます」
その台詞に全員は頷き同意の色を見せた。
弐式「私も賛成です。正直ナーベラルたちが自動的に動いていた時はかなり動揺しましたけど、NPCとの会話は現状把握に必要なことかと。私もナーベラルの事が気になります」
やま「ねえ明美、あなたのNPCのアシェリート君はいる?」
私も山明さんのNPCに視線を向けた。前に一度聞いたがたしか明美というのは山明さんの本名だったと思う。
聞いた山明さんは頷き跪いてる自分のNPCを見た。
山「ねえ、アシェリート…君?ちょっと立ってもらっていいかな」
アシェリート(以下アシェ)「OK。マイプリンセス」
アルベドやセバスと違いやや軽い口調で彼?は立ち上がった。
その様子は一見女性を口説こうとしている優男に見えるが、自分の創造主を見ている時の瞳には敬愛の念が込められているように見受けられた。
山明さんは早速質問をした。
山「ねえ、アシェリート君は私をどう思ってる?」
アシェ「愚問だな、マイプリンセス。君は俺の創造主の一人であり守るべき主人であり全てだ」
闇「随分軽い口調ですな。セバス達と何が違うんでしょうか」
山「すいません。思い当たる節があるのですが…。多分私の友人が書いた『設定』のせいだと思います」
話を聞くとアシェリートは彼女の友人数人で作ったNPCらしく、そのうちの一人がこっちの方が面白いと設定欄に[キルドマスターと山明には忠誠を尽くしており騎士としての誇りも持っているが性格は育った環境のせいか公の場以外では顔に似合わずフランクな英国紳士だ]と書き込んでしまったらしい。
ヘロ「なるほど…。その設定がNPCの性格に影響を及ぼしている可能性は高いですね。もちろん断言はできませんが」
弐式「どうでしょうか。一度第6階層に集合しませんか?あそこならスキルや戦闘技術の確認も出来ますし」
武人「しかし、第4階層のゴーレムや第8階層のあれは動かして大丈夫か?特にヴィクティムは戦闘になったらあのスキルが」
全員がヴィクティムのスキルを思い出し絶句する。皆表情の変化が読み取れない外見をしているが私と同じひきつった表情をしていだろう。
咄嗟に提案してみた。
闇「盟友諸君。それでは第4と第8の守護者はそのままで後は集めてみてはどうだろうか。今はとにかく情報が欲しいし時間を無駄にしている時でもありませぬ」
モモ「名案ですね。よし、アルベド。お前に頼みたいことがある」
アル「何でございましょう。モモンガ様」
モモ「第4第8を除く各階層守護者を第6階層の『円形闘技場=アンフィティアトルム』に集合するように伝えろ。時間は今から2時間後だ」
アルベドが畏まりましたという前にヘロヘロさんからストップがかかった。
ヘロ「待って下さい。その前に確認したいことがあるのですが」
闇「ヘロヘロ殿、確認したいことは第6階層に移動してからでも」
ヘロ「いえっNPC皆の前ではできんことです」
やま「なーにそれ?」
NPCの事も含め確認したいことが沢山あるから第6階層の闘技場でまとめてやるという流れになっていたはずなのになぜ今ここでしか無理なのか。
ヘロ「お願いします。どうしてもNPCが集まる前にここで確認したい作業があるんです。そしてそれにはアルベドが必要なんです」
ヘロヘロさんの声からは真剣さが伝わっていた。アルベドが必要?そしてここでしかできない作業とは何なのだろうか?皆は話の腰を折られたが興味をそそられたようでヘロヘロさんに注視していた。
ヘロ「ここがまだゲームの中なのかそれともゲームが現実になったのかそれが解りませんのでそれを確認するのに一番手っ取り早い方法があります。しかしそれは大勢の前ではできんことです」
大勢の前ではできないことと言われても私には理解できなかったがモモンガさんは何かピーンときたようで、少し慌てた様子で話し出した。
モモ「そうか。解りましたよヘロヘロさん。たしかにそれをNPCの前でやったら混乱を生むかもしれません。山明さん。すみませんがアシェリートを玉座の間から出してもらえますか」
山「ちょっちょっと、その前に説明してもらえませんか?」
ヘロ「すいません山明さん。アルベドは必要なので仕方ありませんが詳しくは後で説明します。今はモモンガさんを信じてくれませんか?」
山「わ、解りました」
真剣な声に押されアシェリートに頼み、玉座の間の門の前で待機してもらった。
やま「さてお二人さん。説明はあるんですよね」
闇「我も気になります。盟主」
ヘロ「もちろん説明します。ただ、今からすごく変な事を言いますが決してふざけてはおりませんので心して聞いてください」
皆は固唾を飲んでヘロヘロさんの次の台詞を待った。
ヘロ「どなたかアルベドの胸を触ってくれませんか?」
その瞬間全員が固まり部屋の空気の気温が一気に下がった気がした。女性陣から非常に冷めた視線がヘロヘロさんに向けられていた。かくゆう私もリアルでは女なので正直今の発言には嫌悪感を覚えてしまう。仕方無いでしょ、私だってリアルじゃアラサーで恋愛コンプレックスのごく普通の女の子だよ。
弐式「…。たしかに事前に説明されてなければふざけてると取られますね」
やま「ヘロヘロさん、眠いの、寝かしましょうか?」
やまいこさんの台詞には殺気が込められていた。
モモ「落ち着いてくださいやまいこさん。時間が惜しいので簡単に説明します。要するにアカBANが来るか調べたいだけですよ」
全てのDMMO-RPGに共通していることの一つに18禁行為禁止というものがある。これは通称『6秒ルール』と呼ばれており18禁行為を初めて6秒を超えるとわざとやっているものとみなされ運営から違反者のメールボックスに警告文が送られてくる。それを無視してさらに12秒が経過すると強制ログアウトされ、一ヶ月間ログインできなくなる。さらに悪質なわいせつプレイヤーとしてSNSに投稿され侮蔑の対象とされる。
闇「確かに…。それは確認する必要があるな」
やま「たしかにここがまだゲームの中じゃないという保証は無いけど…そもそもあんな複雑な思考ができるNPCって製作可能なの、プログラマーさん」
ヘロ「ウーン、どうでしょう?。複合企業の技術開発部門には私以上のプログラマーは沢山いますけど、あんな如何にも自分で考え行動するようなプログラムは私の知る限り現在の高度AI技術でも不可能だと思います」
モモ「とにかく今はしらみつぶしに調べるしかないでしょう」
モモンガさんはそう言うとアルベドを呼んで向き合う。おい盟主。まさか行くのか?
モモ「アルベドよ…、胸を触ってよいきゃ」
あっ噛んだ。アンデットの精神鎮静スキルでも焦りを完全に消すのは無理か。それよりもアルベドはどんな反応を見せるんだ?。
アル「もちろんですどうぞ」
あっさり言ったな。盟主よ、6秒ルール忘れてないよね。
詳しい描写は省くが端的に言えば8秒揉んで(やまいこさんが測った)離したが運営からの連絡は来なかった。まあこれはたぶん全員が予測していたので驚く人はいなかった。
やはりもう皆薄々気づいてるんだ。ここはもうゲームの中じゃないって。そしてそれは18禁行為(あくまで運営が定める禁止された行為)が可能なことで確信に変わった。
その後アルベドが「私は此処で初めてを迎えるのですね」と言ってモモンガさんを襲ったが、私を含めたギルドメンバーは丁寧に無視してヘロヘロさんを除くギルメンは予定どうり第6階層の円形闘技場に向かうことになった。
ヘロヘロさん、言い出しっぺはあんたと盟主なんだから暴走したアルベドはあんた達が責任もって止めなよ。
オリジナル主人公のデータ
名前:山明「さんみょう」
種族:ハイエルフ※通り名は「錬金術魔導士妖精=アルケミスト・ウィザード・エルフ」エルフ族の上位種。元はダークエルフだが世界級アイテムにより進化した。(外観は銀髪碧眼、長髪をポニーテールにしている。身長167㎝、体重63kg、スリーサイズ97・56・90)
カルマ値:+50(中立~善)
レベル:職業レベル110※人間種だから種族レベル無し
錬金術師10(職業によっては10が最強)、鍛冶師10、薬師7(それ以上のアイテムは本拠地で生産できる)、ウィザード10、ハイウィザード5、ソーサラー10、ハイソーサラー5、ディザスター5、クレリック10、プリースト8、シーフ10、ナイトブレード5、ワールドチャンピオン5、ワールドディザスター5、合計110※世界級アイテムの効果
ステータス:HP100☞130(LV100プレイヤーの平均値を100とする。後の値は世界級アイテム使用後の数値)、MP182、物理攻撃力117、物理防御力130、魔法攻撃力182、魔法防御力169、特殊攻撃力0(人間種の為)特殊耐性117
所有スキル:
⓵限界突破:ハイエルフ「森の管理者」の固有スキル。レベルの最大値が110になる。但し、取得職業がワールドチャンピオン+ワールドディザスターが追加されただけ。
⓶戦士装備のコレクター:ワールドチャンピオンのスキル。全ての戦士職限定装備が装備可能。
⓷魔導士装備のコレクター:ワールドディザスターのスキル。全ての魔法職限定装備が装備可能。
⓸王冠の代償:ワールドディザスターのスキル。魔法の威力+回復力が2倍になる代わりにMP消費量が1.5倍になる。
⓹世界級アイテム無効:名前どうりのスキル。但し、『二十』は除く。
⓺全能力30%UP:世界級アイテム『神核』の使用で得られる。※現実にはスキルではない。何故30なのかは運営曰く「それ以上上げたら個人がワールドエネミーのステータスを上回ってしまいゲームバランスが崩れる」とのこと。
⓻精霊召喚:ハイエルフのスキル。LV30~95のエレメンタルを召喚できる。1日115体まで。LV95×1体、LV90×2体、LV30×40となっている。他は割愛。
⓼虹色の消滅光弾「オーロラ・フィニッシュ・バスター」:ハイエルフのスキル。一日3発まで。必中能力。30%の確率で即死。即死耐性があっても魔法攻撃力×2-相手の魔法防御力のダメージ+状態異常(麻痺又は、混乱)