姉は戦略級魔法師、その妹も戦略級魔法師!? 作:KIRAMERO
はい。今回からスティープルチェイス編になります。スティープルチェイス編もおそらくダブルセブン編と同じような話の長さになると思います。(ただ少し長くなるかもしれません)
九校戦へ向けて、スティープルチェイス・クロスカントリー
2096年6月の終わり、定期試験を数週間後に控える中今年はこれまでより1月早く九校戦のメンバー決めを行い各部活動に対して協力を仰いでいた。去年までは十師族七草家の七草 真由美、十文字家の十文字 克人、この2人に匹敵しうる才能の持ち主である渡辺 摩利がいたが今年はもういない。そのため早くから準備に取り掛かりこの3人がいなくても優勝出来るという意気込みで生徒会、風紀委員会、部活連は取り組んでいたのだがつい先日九校戦運営委員会から各魔法科高校宛にある連絡があった。それは競技内容の変更だ。スピード・シューティング、バトル・ボード、クラウド・ボールが外れてロアー・アンド・ガンナー、シールド・ダウン、スティープルチェイス・クロスカントリーが追加された。さらに前回大会は競技の掛け持ちは原則自由だったが今回大会はスティープルチェイス・クロスカントリーのみ掛け持ち可能であり、さらにアイス・ピラーズ・ブレイク、ロアー・アンド・ガンナー、シールド・ダウンはソロとペアに別れるというおまけ付きだ。これには生徒会・風紀委員会・部活連は衝撃を受けた。これまで準備したことが全てでは無いが無になりまた一からやり直すことになったからだ。彩海奈の家でも2人だけだが今回の競技変更のことは話題になった。
「彩海奈、大変そう。大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。ちょっと予想外のことが起きただけでそこまで変わりはないから」
「九校戦の種目変更になったんでしょ?どんな種目なの?」
「確かロアー・アンド・ガンナーは無動力のボートを操船しながら、水路脇や水路上の標的を狙撃する射撃競技でゴールタイムから破壊した的の個数分のタイムを差し引き、合計タイムが最も短いチームが優勝する競技で確か元々USNAの海兵隊が訓練として使っていたやつよ。シールド・ダウンは盾装備した選手が土俵の上で組み合って勝ち負けを競う格闘競技で原則、盾に対してのみ攻撃出来て盾を破壊されたり、奪われたり、5秒以上手放すと負けになるの。また場外に落ちても負けになる競技ね。そして最後のスティープルチェイス・クロスカントリー何だけど……簡単に言えば障害物競走ね。長さ4km、幅4kmの人工林の敷地を駆け抜ける競技で障害物には自然物、人工物、自動銃座や魔法による妨害もあるのよね」
「何というか…軍事色が強い競技ばかりね…」
「確かにここまで露骨に軍事色を強くするのは珍しいわ。確かに去年横浜事変があったとはいえね。ロアー・アンド・ガンナーやシールド・ダウンはともかく何故スティープルチェイス・クロスカントリーを九校戦の競技として採用したかね。余程の対策をして尚且つテレビ中継として問題無いくらいにしないといけないのは至難の業のはずよ。そうでもしないとドロップアウトする人が出てくるわ」
「何でそんなもの…」
「分からないわ…そしてレナーテ貴女の出る予定だった種目も変更ね」
「そうなの?」
「ええ、そうよ。貴女の魔法を使えば本戦とはいえ優勝確実だったのよ」
「そっか…それは残念…」
「でも貴女の魔法を使えばスティープルチェイス・クロスカントリーの優勝は貴女で決まりよ。さすがに少し疑われるかもしれないけどね」
「そうね……でもあの魔法は緊急時以外使用禁止ってことになってるし…」
「そっか…なら少し愛彩と考えてみるわ。さすがにあの魔法が使えないとなるとそこそこ厳しいもの」
「ありがとう、彩海奈」
「そんなことないわよ」
「それで何処に誰を出すのか決まったの?」
「とりあえず変わらなかったモノリス・コード、ミラージ・バットはそのままね。アイス・ピラーズ・ブレイクのソロは深雪に決まったわ。ペアは多分雫と千代田先輩で決まりね。後はもう一から決め直しよ」
「あれ?彩海奈って去年ピラーズ・ブレイク本戦で優勝してなかったっけ?」
「そうよ。でもアイス・ピラーズ・ブレイクに関しては深雪の方が圧倒的よ。今年は一高の中でも私と深雪どっちが勝つんだろうって期待してた声はあったみたいだけどそれは無理そうね」
「そっか……」
「私はおそらくロアー・アンド・ガンナーのソロかシールド・ダウンのソロのどちらかになりそうね。レナーテも多分どちらかかロアー・アンド・ガンナーのペアに私かエイミィどちらかと出ることになりそうね今のところは」
この運営からの通知は一高だけに留まらず二高や三高等他の高校にも衝撃を与えた。前年から3競技の変更と既存競技のソロとペア化というのはこれまでの九校戦からは逸脱したことだった。
5日後一高では代表選手の選考のやり直しを経てから決まった選手で競技の練習を行っていた。翌週の火曜日から試験を控えているが1度でも練習をしておこうということになり現在に至っている。私は結局ロアー・アンド・ガンナーにレナーテとのペアで挑むことになった。新競技でありさらにはレナーテが2年生に編入したこともありソロで出すにもまだ九校戦の雰囲気が未経験でいきなり本戦というのは荷が重いがそれでも出さないという選択は有り得ないというのが生徒会の判断だ。そこで私に白羽の矢がたったわけだ。そういう経緯で私はロアー・アンド・ガンナーのペアとスティープルチェイス・クロスカントリーにエントリーすることが決まった。
2週間が過ぎ無事テストも終わり学校は九校戦に向けての空気満載だった。ちなみに言うと一学期末テストの順位は1位が彩海奈、2位が深雪、3位がほのかでありレナーテは掲示板に載る順位では無かった。彼女の場合は日本語は読めても理解が乏しいという観点から彩海奈と共に勉強する時はまだしも1人でする時はからっきしである。それも相まって合計順位は100位以内ではあるものの下から数えた方が早いと記録しておく。この試験の結果を経て九校戦のエンジニアも決まった。昨年に引き続き中条先輩や五十里先輩、達也を初めとしたメンバーに今年も1年生から男女1名ずつスタッフ入りしている。男の子の名前は隅守 賢人、今年から新設された魔工科の先生の息子で深雪曰く去年の九校戦での達也の活躍を見て一高に入るのを決めたという子だ。もう1人の女の子は達也と深雪の従兄弟である桜井 水波、記憶にもまだ新しい「恒星炉」実験の中性子バリアを担当した子で私も幾らかは話したが何処か達也や深雪とは違う風に感じたりもした。
そして迎えた出発日。今年は去年と比べて特に何も起こらず(出発前に少しひんやりした程度)に宿舎がある国防陸軍富士演習場に着いた。今年は去年と違い姉さんが来ているわけでもないため(姉が来ている来ていない等は彩海奈は知らない)着いて早々に呼び出されることも無く今年の部屋の同居人であるレナーテと共に過ごしていた。そして時間は夕方になり今年もホテルのホールにて懇親会が行われようとしていた。
この懇親会で1番の注目を集めたのは言わずもがな彩海奈とレナーテだった。彩海奈は昨年も九校戦に出場し1年生ながら本戦で優勝するという偉業を成し遂げたのだ、各校からの注目の的でありメディアが選ぶ今年の注目選手の1番手に挙げられていた。彩海奈がこれ以上に注目をされたのは隣にいるレナーテがいることも影響しているだろう。もちろん各校も事前に出場予定選手の情報は入っている手前あまり影響しないだろうとレナーテは勝手に思っていたがそれは思い過ごしだったことに気付かされた。
「ねえ、さっきからずっと視線を感じるのだけど……」
「ええ、私もよ……やっぱり初見でレナーテを見るとやはり目立つのかしら」
「そりゃあそうだよ、彩海奈。皆普段から見ている訳じゃ無いからね」
「そうかもしれないわね……」
「はぁ……どうせならお母さんに似た格好が良かったな……身長だけは似てるけど」
「へぇーレナーテってお父さん似なんだ。まぁでもいいじゃん私は好きだよこのブロンドヘア」
「あ、ありがとう」
「それにしても今年は少しばかり不安ね。去年のままだったらそこまで気を使わずに済んだのだけど今年は色々なことに気を付けなきゃいけないから」
「そうだよね。最終日のスティープルチェイス・クロスカントリーなんて彩海奈が思ってるような競技なら本当にドロップアウトが出るかもしれないし私達も気を付けないとね」
「失礼します、お飲み物は如何でしょう?」
「え?あ、じゃあいただきます……もしかして芽愛さんですか…」
「はい、正解です。お久しぶりですね明智様もレナーテ様も」
「お久しぶりです、芽愛さん。それにしても何でここに?」
「少しばかり彩海奈様に報告したいことが……懇親会が終わった後に宿舎の裏に来ていただけますか?」
「……わかりました。飲み物ありがとうございます」
その後、来賓の挨拶やらが続いていったがこの九校戦の懇親会の場で何時も挨拶している九島 烈が今年は姿を表さなかったのだ。その報せにここにいた九校の魔法科高校生は驚いていた。その後恙無く会は終わり私は一旦自室へと帰り着替えてから宿舎の裏へと向かった。
宿舎を出てから裏側に回りそこで出迎えてくれたのは芽愛さんの他に弥海砂さんそして九重 八雲さんがそこにはいた。
「お待たせしました……それで何故ここにいるのですか?」
「ふむ、それを思うのは当然か。それで弥海砂くん、僕から話していいかな」
「ダメと言っても私達が調べたことより圧倒的に情報は多いので師匠にお任せします」
「そうかい、じゃあ話すけど弥海砂くん遮音・電磁波フィールドお願いしてもいいかな。よし、端的に言うと今回の九校戦、特に軍事色が強いのは気づいてると思うけどスティープルチェイス・クロスカントリーこの競技だけは別次元で危険だ。そしてこれがただのスティープルチェイス・クロスカントリーだったらわざわざ僕がここまでやってくることは無かったんだけどどうやら九島がこの競技で新兵器の性能実験を行うつもりなんだ」
「新兵器……」
「残念ながら詳細は分からないけど総称してP兵器と呼ばれてるみたいだ」
「P兵器……まさかパラサイトを兵器として活用する気なのですか?」
「さすがは弥海砂くんが賞賛しているだけはあるみたいだね。今回のP兵器…いやパラサイドールというべきかそれが今回の黒幕さ」
「何故今回も俗世のことについて関与してくださるのですか?」
「今回のことは伝統派が絡んでいるかもしれないからね。でも本当の首謀者はもっと別の所にいる。国防陸軍対大亜連合強硬派もその1つだろう。そして僕が俗世に関与するかは僕自身の判断だ。気になることが出来たらそれは調べるそうでもしないと落ち着かないからね」
「そうでしたか…色々ありがとうございます」
「いやいや、礼には及ばないよ。君とレナーテくんのロアー・アンド・ガンナー楽しみにしているよ。さすがにこれ以上僕と君達が一緒にいるのを見られていると本山や古式の闇が黙っていないからね」
「古式の闇?」
「それは君もよく知っているはずだよ。じゃあ僕はこれで失礼するよ。弥海砂くんもありがとうね」
そう言い残すと九重 八雲さんは闇の中へと消えていった。するとそこに何処から表れたのか全く分からなかったが1人のご高齢の方が此方に向かってやってきた。
「…貴女が……五輪 彩海奈さんか?」
「そうですが……おばあ様は……」
「私…は……貴女のお母さんの祖母の水無瀬 結那というんじゃが」
「?!貴女が水無瀬 結那様でしたか。初めまして」
「はい、初めまして」
「それで本日は一体どの様な用件で」
「さっき、八雲の話は聞いた。今回貴女は何もしなくてええ。これは古式魔法師の問題じゃ、"まだ"十師族でしかない貴女に世話になる訳には行かない。だから思いっきり九校戦を楽しみになさいな。今回のことは水無瀬が責任を持って行わせてもらうから」
「わ、わかりました」
「後ろのお嬢さん方も曾孫達のことよろしゅうな。貴女達のことも唯衣花、侑那、真唯から聞いてるから頼りにしてるよ」
「「あ、ありがとうございます」」
「それじゃあ、またね。九校戦頑張るんだよ」
「は、はい。曾お祖母様」
そう言い残し結那は何処から出てきたのか分からない護衛を引き連れて宿舎の中へと向かっていった。私達はというと少し3人で話してから芽愛さんと弥海砂さんは今年も来ているという姉さんの側に、私は自室へと戻っていった。
如何でしたでしょうか?2年生の九校戦、彩海奈にはロアー・アンド・ガンナーでレナーテとのペアで出てもらいます。そして今話で初めて水無瀬家先代当主 水無瀬 結那を初めて登場させました。今回からこの水無瀬 結那を登場させたのはこの後の古都内乱編にて重要な役割を果たすためにここで登場させて彩海奈との面識を持たせました。後は唯衣花と侑那が九校戦に来るのでその様子を見に来たというのもあります。
途中で出てきた「古式の闇」も古都内乱編にて詳細が出てきます。
今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想もよろしくお願いします。また誤字や脱字もありましたらよろしくお願いします。