病院のベッドの上で美しい黒髪を持つ少女、暁美ほむらは目を覚ました。すっくと腰をお越しうつむき加減に自分にかけられた白い布団を見る。
「……今度こそ」
そう呟くほむらは
ある一人の少女。自分にとって全てを投げ売っても良いとさえ思える友人の為に、ほむらは『魔法少女』と呼ばれる存在になった。
それからどれだけ同じ時間を繰り返した事だろう。時に同じ『魔法少女』と敵対し、死別さえも経験し、そして……守ろうとした友人さえも目の前で失い、或いは条件の悪さから客観的に見れば見捨てさえもしてしまった事さえある。
友人を助ける為なら全てを敵に回し、投げ売ってでも良い。しかしそれに一種の罪悪感を感じる事だってある。
ほむらは
だが、途中で投げ出す訳には行かない。友人との
「痛っ!」
だが、降りた瞬間何かを踏みつけてしまいほむらは足の裏に刺激を覚えベッドの上に足を押さえながら悶絶する。
「な、何よ! 何を踏んだの!」
今までこんな事は無かった反動からかほむらは取り乱しつつも先ほど足を置いた床を見る。そこには赤と銀のストライプカラーに胸の中心に青い球体を飾った携帯電話と同じぐらいの大きさの人形があった。
「……何これ?」
その人形を手に取り近付けてよく見る。まるで観音菩薩のようなアカルイックスマイルを持つ人形。まるで宇宙人のような、何かのキャラクター商品のように思えたが、こんなキャラはほむらの記憶に無い。
「……こんなもの今まであったかしら?」
幾度も繰り返してきた記憶の中にはこの病室にこんな人形があった事など一度も無かった。この時間軸で前に使っていた子供の患者が忘れていったのだろうか? と考えるがこんな物自分には関係ないとほむらはその人形をその辺に投げ捨てた。
――が
「なっ……どういう事?」
ほむらは目の前に起きた出来事に目を丸くした。自分が投げ捨てた人形は一度壁に当たってそのまま床に落ちるとばかり思っていたが、それは裏切られた。
人形は宙にフヨフヨと浮かびほむらに近付き始めたのだ。その様はまるでポルターガイストか何かである。
「……まさか魔女の使い魔か何か!?」
ほむらは自分が戦い続けてきた
ほむらは恐る恐る肩に停まった人形を再び手にする。触った感触はソフトビニールのような感触をほむらは覚えるがその人形はとても温かく、まるで掌に小さな太陽を乗せているような感覚を覚えた。
そして人形はほむらに挨拶するように腕を上下に動かす。
「……ほっとこう」
無害だが、珍妙。珍妙な存在は自分が忌むべきマスコットキャラを気取った白い悪魔で充分だ。人形は何かの玩具かと判断したほむらは人形をそっとベッドに置き、そして自分も病室を出ようとドアの前に立つ。すると人形はまた宙を飛びほむらの背中にしがみつく。
「……離れなさい」
ほむらは背にしがみつく人形を手に取り乱雑にベッドへと投げ捨てる。しかし人形は諦めが悪いのか何度もほむらに付いて行こうとし、ほむらもそれを拒否し人形がしがみつく度に何度も投げ捨てる。
「しつこいわね。踏むわよ」
とうとう辛抱が利かなくなったのかほむらは人形を床に投げ捨てその綺麗な足で踏みつけようとする。すると人形はその場に二つの足で立ち上がると目の部分が光り同時に病室にオーロラのような光が発生する。
その光は人形を踏みつけようとしたほむらの動きを止めてしまいほむらはピタリとも動けなくなってしまう。
「な、何よこれ……まさか私と同じ時間停止……!?」
ほむらには友人と建てた約束が元となりある『魔法』が使える。それは時間を逆行し、更に一時的に止めるというもの。人形が使った能力に気が動転してしまい自分の意識がはっきりしている事から厳密には時間停止では無い事にほむらは気付いていないが体が金縛りに合い動けないのは確かだった。
そしてある程度ほむらに金縛りをかけると人形はそれを解きほむらの肩に跳び移る。
「……どうあっても着いてくる気ね……でももしかしたらこれは、使える?」
ついに観念したほむらは人形を自分の側に置くことにした。だがほむらの頭の中にはこれから自分の行動する事にこの人形は利用できるのでは? そんな打算的な考えが生まれていた。