ほむら「……ウルトラマン」   作:まるだい

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予期せぬ事

 病院を退院したその日の内にほむらは行動を開始した。近隣の警察署、広域指定暴力団の事務所、果てには自衛隊基地や在日米軍基地等に得意の時間停止の魔法を用いて侵入し拳銃から手榴弾、更にはロケットランチャーや対空迎撃ミサイルの特殊車両まで手入れ魔法の発動キーになる腕の盾に収納した。

 

 これらは全て後に起こるであろう最大級の敵を倒す為に必要な物。ただこれまでの時間の繰り返しの中では軍基地ではいくら時間を止められると言っても電子セキュリティ等でロックされ手に入れるのに手間がかかる、或いは断念せざるを得ない武器もあった。

 

 だが、そこで役に立ったのはほむらについてきたあの人形であった。病院でのほむらとの一コマで見せた特殊な念力のような力を発揮しあっさりと電子セキュリティを解除しほむらの手助けをした。

 

 

 

 

 

 そして今、ほむらは見滝原の街にあるマンションの一部屋、驚くべきほど飾り気も生活感も無い無機質な部屋である学校の制服に着替え登校の準備を済ませていた。

 

「……やっぱりあなたもついてくる気なのね」

 

 そしてあの人形もほむらの肩にしがみつきどうあってもついていこうとする。ほむらもまだまだ年頃の中学生である。人の集う学校にこんな人形を堂々と持っていったらどんな反応をされるか分かった物でもない。

 

 それに今日はほむらにとっては全ての時間軸でも運命の始まりと言っても良い転校初日の日でもある。ヘタなミスは打てないとほむらは思案する。

 

 だが今回の時間軸で病院で遭遇して以来、不思議な力を見せつけそして自分の手助けとなったのもこの人形である。無下にする訳にも行かないし置いていったら置いていったで何をするか分かった物では無い。

 

「仕方無い、ついてきても良いけど絶対に出てきては駄目よ。……今日はとても大事な日なんだから絶対に私の邪魔をしないこと。良いわね、絶対よ」

 

 念を押して何度も『絶対』という言葉を使いほむらは人形を手に取り懐に入れた。

 

「今度こそ……『まどか』を救ってみせる……!」

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 全面ガラス窓張りという特異な建築デザインをした見滝原中学。その学校の廊下でほむらは今か今かと教室に入る機会を待っていた。

 これからほむらが入る事になるクラスの教室ではその担任の教師が交際していた男に ()()()フラれた事を腹いせに目玉焼きの焼き加減やかける調味料云々を延々と話続けていた。

 

『どうでも良いと思います……』

 

 と、生徒の一人が担任に振られた話題に答えようやく担任が話をひと纏めにし転校生を紹介すると次の話に移る。

 

 ようやくか、とほむらは教室前の扉の前でため息をつく。あの担任はいつ、どの時間軸でも報われないのかと何だか哀れに思えてきたほむらだが、入ってらっしゃいと声をかけられ 顔をキッと引き締め教室に入る。

 

「暁美ほむらです。よろしく……」

 

 と簡素な挨拶だけを済ます。教室の生徒達は転校生の登場にどよめくが自分に注目する生徒達を余所にほむらはある一人の生徒を見ていた。

 

 桃色の髪をリボンで結んだ少女。彼女の名は鹿目まどか。

 

 彼女こそ、ほむらがある『誓い』を建てた友人……なのだがこの時間軸ではまだそうでは無い。

 だがほむらにとって鹿目まどかという人間が今の自分の『全て』である事は確かである。ほむらの目的はただ一つ、鹿目まどかを『魔法少女』にしない事。

 

 

 

 

 

 

 

 自己紹介が終わった後、自分の席についたほむらは早速他の生徒達からの質問攻めにあった。今までどこの学校にいたか、今見滝原のどこに住んでいるか、綺麗な髪をしている等様々であったが当のほむらは意に介さず顔を背けかなり後ろの席に座っている鹿目まどかをそっと見る。

 

 一方のまどかもほむらの事をまるで何処かで見たことかあるような様子でほむらを見ていたが、ほむらはすっくと席から立つとまどかの方へと向かう。

 

「ごめんなさい、ちょっと体調が優れないみたいなの。鹿目さん、あなた保険係だったわよね? 保健室まで付き添ってくれないかしら?」

 

「え? あ、うん」

 

 まだ説明すらしていないのに何故自分が保険係だと分かったのか、とまどかは驚きながらもほむらと共に教室を出る。

 そして保険室へと向かう道のりをしばらく黙ったまま二人は歩くが、その静かな雰囲気にまどかは耐えきれなくなっていったのかなんとか会話をしようとしどろもどろになりながらもほむらに話題を振ろうとする。

 

「あ、あの暁美……さん」

 

「名前呼びで良いわ」

 

 とりあえず下の名前で呼んでも良いと訂正する。全てはほむらにとって想定内の事であった。わざとらしくも仮病を使い鹿目まどかを連れ出し二人きりとなる。全ては警告をする為である。時間軸にもよるが暁美ほむらの知る鹿目まどかという人間は何も出来ない自分とは違う、特別な何かになりたいという所謂『変身願望』を持つ少女であった。

 

 そんな彼女だからこそある事を切っ掛けに『魔法少女』への願望を持つ事になる。ほむらの至上目的は鹿目まどかを魔法少女にしないこと。その為にまず手始めに鹿目まどかに何の変哲も無いごく普通の、当たり前の日常への価値観を再認識させようとした。

 

 だが、今までいくらそれを説いても運命の悪戯か、或いはほむらの説明下手か何も変わらない。鹿目まどかはこの後起こりうるだろう数奇な出来事に巻き込まれていきそしてやがては……

 

 かといってこれまでやって来た事を今さら諦めてしまう訳にも行かずほむらはなけなしの可能性にかけて今回も()()()()()()に価値観を再認識させようとする。

 

 鹿目まどかが話しかけて来るのを余所にこちらから()()()()()()にやろうと振り向いたその時だった。

 それまでほむらの胸ポケットに入っていたあの人形が勝手に飛び出し鹿目まどかの目前に浮かぶ。

 

「え!? な、何これ!? 人形が浮いている!?」

 

 その光景にまどかは驚きの声を上げてその場にしりもちをついてしまう。そして人形はまどかにゆっくりと近付こうとするが、ほむらはああ! とそれまでの澄まし顔を焦りと苛立ちで歪ませ素早く人形を手に取りそれを懐に閉まった。

 

「ほ、ほむらちゃん……今の何?」

 

「な、ななな何でも無いわ!」

 

 

 いても立っても居られなくなりほむらは一人その場から走り去ってしまった。

 ほむらにとって肝心な最初が、()()()()以上に最悪のスタートダッシュになってしまった。

 

 

 

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