短め
「落ち着けたか?」
「…はい」
「そうか」
目を真っ赤にして答えるフィレス。
「心は折れてないか?」
「………わかんないです」
死んだ顔ではにかむフィレス
そんな顔を見ていられなくなったのかクラーナが手を空に掲げる。
《浮かぶ灯火》
イザリスのクラーナが後に教えることの無かった呪術。
炎を浮かべ、亡者を集めることが出来る。
全てを焼く火も時として、心の灯火となるという。
絶望の世界には焼くための火よりもそんな光が必要だ。
小さな火の玉が辺りを照らす、今は陰ってしまった日の光のような暖かな光がフィレスの心を照らした。
希望を失い、消えてしまった心に。
「…あったかい。」
クラーナの腕の中で安心したようにフィレスは笑った。
「よかった。生気が戻ったみたいだな…」
「…ありがとうございます、なんというか、急に1人になった気がして…」
「わかるよ。」
「え?」
「昔の話さ、気の遠くなるような…昔の。」
寂しげな視線の先には灯火があった。
______
「これからどうなるんでしょうか。」
フィレスは不安そうに言った。
生きていくことが、この世界のことが、とても不安で。
「分からない。お前はもう死ぬことは無い、その印がある限りな。」
フィレスの手の甲を指さす。
そこにはダークリングと呼ばれる傷が刻まれていた。
「これが、“ダークリング”ですか。」
「そう、人を不死にする呪いだよ」
「はい、聞いた事があります。これが…」
「焼かれても切られても潰されても生き返るんだ、常人なら心が折れて亡者になってしまう…それでも。
1人だけ、過去1人だけ見たことがある」
「誰を?」
「こんな理不尽な呪いを受けながら死地に赴き死んで死んで死んで死んで最後には使命を全うした狂人をな」
「そんな、人が居たんですか」
「そう。でもそれは“果たすべき使命”があったからなんだよ」
「?」
「お前は…何も無い、ダメだよ、そんな人間は早く折れてしまう。」
「何も…なにも。」
「フィレスが生きていきたいなら、生きる意味を見つけるんだ、それは強い力を持つ。神をも殺せる力を。」
「生きる意味…」
「そう、生きる意味。」
「そんな、急にいわれても…」
手を組んで唸るフィレス。
いい案は浮かんでこないみたいだ。
するとクラーナが口を開いた。
「あの馬鹿も他人から貰った使命を継いだんだったな。
フィレス。」
「はい?」
「生きたいか?」
「………はい。」
沈黙の後、フィレスは答えた。
覚悟を持った目で。
「いい返事だ。ならお前には私を分け与えよう。」
「?クラーナさんを?」
クラーナが右手に火をともした。
「これをお前に託したい。」
「“呪術の火”、ですか?」
「私たちの罪を、後に伝えて欲しいんだよ。」
「混沌の魔女の話…たしかおとぎ話には…」
「そう、
フィレスは力強く答えた。
「