悪戯の神は希望を拾った 作:乾パン中毒者
「これで、よし……」
ガチャリと、籠手を固定する紐を結ぶと鎧が軽く磨れる音がする。その後軽く身体を動かしてみるが、違和感は極小。完全とは行かないが十分馴染むことに、私は小さくガッツポーズを取った。
現在の場所、前回ロキ様と共に武器・防具を買いに来たバベル八階のテナントの小さな防具屋。前に此処に来た時に採寸したデータが残っているかもしれないと思い訪ねて、予想通りデータがまだ残っていたので私はほぼ全壊状態に陥った《
因みに価格は前回と違い三五〇〇〇ヴァリス。何故か何も言って無いのに値引きされた。これはつまり「今後ともご贔屓に」という意思表示なのだろう。此処まで名と顔が広まるとは、
「んー……念のためにコレも買っておこうかな」
当初の目的は達成されたが、私は直ぐに防具屋を去らずに少しだけ商品を物色する。
何故かと言うと、盾の代用品になりそうな
最初は大きめの盾を持とうと思ったが、すぐにダメだと判断した。盾と言うのは意外と重いしかさばる。回避重視の戦法を主とする私にとって機動力の低下は無視できない問題だ。なので今は軽くて小さい
どちらにせよ身を守る道具は一つか二つは用意しておくべきだと思い、私は目的の品物が入っている箱をゴソゴソと漁る。
そうする事大体十分――――中々良さそうなプロテクターを発見した。
一言で言えば、ソレは純白の籠手。かなり軽い金属を使っているのか、見た目に反して凄く軽い。更に少し小ぶりの短剣くらいなら収容できそうなスペースまで用意されている。これを作った人は機能美と言う物を理解しているのかもしれない。
値段は八九〇〇ヴァリス。十分購入可能な金額だ。
「これください!」
「まいど」
カウンターに持っていって支払いを済ませ、早速装着してみる。
少し大きいが、まあこの程度なら大丈夫だろう。それに私くらいの年齢のヒューマンは成長期とか何とかで直ぐに大きくなる、筈。いずれ身体に合うようになるだろう。
問題は身体に合う時までにこのプロテクターが原型を留めているかわからないと言う点だが。
(……ちゃんと大切に扱おう)
少なくとも無茶はあまりさせまいと、私は現在炎で炙られて金床で金槌に打たれているだろう愛剣へと誓う。本音を言ってしまえば何度も壊していたら出費が無視できないレベルになるという部分もあるが、それは言わぬが花だ。
護身用のナイフをプロテクターの中に格納しながら、私は昇降機を使ってバベル一階まで降りる。
三人と別れてからまだ五、六時間。この程度なら、まだダンジョンの中かもしれない。一瞬だけダンジョンの中で合流しようかと思ったが、思いとどまる。
彼らは全員成人済みで、精神的にも成熟しているのだ。私の様な子供と違って引き際くらい見極められるだろう。むしろ年の離れた私が要らぬ心配で駆けつけたせいで気を悪くするかもしれない。が、だからと言って何かやることがあるわけでもない。とても、暇だ。
ダンジョンに潜ろうにも、現在手持ちの武器は護身用兼剥ぎ取り用のナイフだけである。一応モンスターを解体するために作られた物なのでそれなりの攻撃力は持っているが、流石の私もコレ一つでダンジョンに潜りたいと思うほど馬鹿では無い。
まあ、1階層から4階層程度ならばこれ一本でも余裕で踏破できる自信はあるが――――。
「あら、此処に居たのね」
「随分探したぞ」
「!」
そんなことを考えながらバベル一階をうろついていると、唐突に背後から声をかけられた。最初は警戒心を引き上げて振り返ったが、後ろにいた二人が顔見知り――――否、恩人であることから直ぐにその心は鎮火する。
アルバートさんと、アリアさん。私服らしきもので身を包んだ二人がそこには居た。
「アルバートさん、アリアさん。えっと、四日ぶりです。その節は本当にお世話になりました!」
「ふふっ、いいのよ別に。私たちが勝手にお節介を焼いただけだもの」
「ま、そういう事だ。それよりも、
「は、はいっ!」
突然の再会に混乱しながらも私は褒められたことは理解できたので深く頭を下げた。
彼ら二人のおかげで、私は今こうして無事で居られている。二人の協力がなければ、私は今頃無残な死体となっていただろうと思うと今でも怖気が全身を駆け巡る思いだ。
「さて、勝利の祝いに君に”コレ”を贈りたいんだが……受け取ってもらえるか?」
「え?」
そう言いながらアルバートさんは手に持っていた何かを包んでいた布を取り除き、それを露わにした。
布の奥から現れたのは鞘に入った刃渡り七〇Cくらいの剣だった。差し出されたそれを受け取り、試しに少しだけ引き抜いてみると――――明らかに鉄では無い、銀色の輝きが目に映る。
この輝きは何度か見たことがある。これは【ヘファイストス・ファミリア】の店舗の中で、硝子の箱の奥に飾られていた第二等級以上の武具に使われる素材の、
(
反射的に悲鳴を上げそうになった。
軽量の上等級金属。武器としての素材ならば数ある金属の中で順位を付けても上から数えた方が早い代物。魔力の伝導率が非常に高く、
そんな物で武器を作れば一体どれほどの金額が必要だろうか。少なくともゼロが六、七個は並ぶと思う。
「こっ、ここここんなもの貰うわけにはっ!?」
「いや、いいんだ。俺が昔使っていた剣を蔵から引っ張り出しただけの物だしな。何時までも部屋の中で埃を被るくらいなら、お前に使われるのが本望だろうさ」
「でっ、でも!」
冒険者の装備は本人の実力に見合う物を装備するのが普通である。そうでなければ装備に頼るような戦い方へと歪んでしまい、本人の能力が碌に成長しないからだ。
ぶっちゃけ《アグノス・ソード》が私の実力に見合っていたかと言うと少し怪しい所だが、ミスリルの剣など完全にアウトである。これはLv.4かLv.5になって初めて扱うことを許されるような代物。どう考えても今の私には相応しくない……!
「別に売り払ってくれても構わないし、使わずに保管しても構わない。もうお前の所有物だからな。どう扱ってもお前の自由だ」
「ッ……!? ッ……………!?!?」
「もう、アルバート。だから言ったじゃない、どうせ贈るなら一目で価値がわからない物の方が気が楽だって」
「その分お前の贈り物の方がヤバいと思うんだがな」
「さあ、どうかしら? あ、アイリスちゃん。私からはこの首飾りを送るわね?」
とんでもない物を手に入れたせいで完全に茫然としている私の首に何かが掛かる。
見れば、緑色の結晶を蕾の様に銀細工で包んだペンダントがある。これもまた高級そうな物ではあったが、ミスリルの剣よりかは大分ハードルが下がったので、私は深い安心感に包まれた。
「精霊の魔力結晶を
「うふふっ」
「?」
呆れかえった表情を浮かべるアルバートさんと、悪戯に成功した子供の様に笑うアリアさん。
二人がそんな表情をする理由が分からず顔を傾けるが、アリアさんは相変わらず微笑みながら私の頭を優しく撫でるだけだ。一体何がどうしたというのだろうか……?
「それじゃあ私たちはそろそろ行くわね。次の『遠征』が近いから、早めに身支度しないと」
「そうだな。んじゃ、無くさない様に気を付けろよ? 特にペンダント」
「は、はい!」
それを最後に、私は二人と別れた。
……不味いな。本来なら贈り物をする側だった筈なのに、逆に贈られるなんて。しかしLv.2になったばかりの私が彼らの満足のいく様な贈り物ができるかと言えば、まあ無理としか言えない。
ならいつか、彼らが本当に困っているときに助けになろう。今は弱い力しか持っていないけれど、いつかあの二人の隣に立てたら、その時こそ――――。
「……………」
剣を鞘に戻し背に回しながら、私はバベルのダンジョンの入り口に繋がる巨大な下り階段を見つめる。
(……余計なお世話、かもしれないけど)
剣の試し振りついでに、様子見くらいはいいかも知れない。
何もなければ先に帰り、もし何かがあったのならば、助けに入る。うん、これが一番良い。やはり何もしないで待つなんて恰好が悪い。
「……よし!」
両頬をパチンと軽く叩きながら、私は一歩目を踏み出した。
◆◇◆◇◆
モンスターは魔石を摂取することで能力を変動させる。しかしながら質の悪い魔石を一つや二つ食した程度では大して変わることは無い。故に、冒険者やギルドが『強化種』と呼ぶ個体はある程度の”
当然だが、強化種の出現はとても稀なことだ。モンスターは基本的に同士討ちを行わない(飢餓によって共食いを行い場合はある)。故に強化種が出現する主な要因は外的なモノ――――冒険者が回収を忘れた魔石を食すのが主だ。
だからこそギルドは冒険者に対し魔石の回収し忘れがないように徹底的に警告をしている。オラリオが魔石製品の製造が盛んであることも理由の一つであるが、何よりも強化種の出現は非常に危険な事態を招くのだから。
たとえゴブリンやコボルドであっても、強化種と判断される程に強くなった個体は駆け出しのLv.1の冒険者には対応が困難故に――――。
「――――くっ!」
第3階層のルームの中で小柄な金髪碧眼の少年。否、
なぜならば、今自分たちはゴブリンやコボルドの大軍に囲まれてしまっているのだから。
「クソッ、全く数が減ってねぇぞ! どういうことだ!?」
「……恐らく、あの赤いゴブリンが他の場所からモンスターを呼び寄せる能力を持っている、としか思えないね」
「強化種という奴か……!」
見れば、ガラクタの兜を身に付けた体色の赤いゴブリンがこちらをバカにするように喚き叫んでいる。その度に別の通路からゴブリンやコボルドが湧き出ており、階層に居る全てのモンスターが集まっているのではないかと群れと対峙する三人は錯覚した。
息を飲みながらフィン、ガレス、リヴェリアは互いに背中合わせになるように集まり、自分たちを囲んでいるモンスターの集団と対峙する。数は大まかに数えても四十以上。明らかに駆け出し冒険者の三人パーティ程度でどうにか出来る規模では無かった。
が、彼らも別に好きでこういう事態に陥っているわけでは無い。今回の件は完全に不運としか言えなかった。
(まさかモンスターに
思えば親指の疼き――――自身が生来持つ”癖”のような、第六感とも呼ぶべき
何せその時には別のルートを経由したモンスターによって
それにフィンとて何処かで慢心していた。何の苦労も無く3階層までたどり着けたことに、心のどこかで浮ついていたのだ。己の夢へと着実に進めているような気がして――――こんな様に陥ってしまった。
「ああ、全く……油断大敵という言葉が身に染みる思いだ……!」
「おい堅物エルフ! さっさと魔法の詠唱を始めろ!」
「私に命令するな! ――――【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に
「っ、待てリヴェリア! 今はまだ――――」
包囲されている状態で、精密な制御を要求されるが故に無防備にならざるを得ない魔法を使うなんて自殺行為だ。
もしリヴェリアが高速での移動を行いながら詠唱を行う高等技術、並行詠唱を行えるのならば話は違うだろうが、残念ながら今の彼女はそこまでの技量は持ち合わせていなかった。
その隙を見逃さず、様子見に徹していたモンスターの軍団が彼女へと襲い掛かる。突然の光景に動揺してしまったリヴェリアの詠唱が途切れ、当たり前のように魔法の発動は失敗してしまった。
「しまっ――――」
「何をしてんだお前は! 魔法を唱える以外能が無いくせにこんな時に失敗なんてするんじゃねぇ!」
「なっ、何だと貴様っ!」
「こんな時に喧嘩をするな! やるなら生き延びてからにしろ!!」
ガレスが襲い掛かってくるモンスターをその腕力で弾き飛ばしながらリヴェリアを罵倒し、それに激昂したリヴェリアが声を荒げてこんな時にまで口喧嘩を始めようとする様子に辟易としたフィンは反射的に怒号を飛ばした。
もし隣にいるのが普通の性格の者であれば勇気を出させる発破の一つや二つ口にしていただけだろうが、如何せんこのエルフとドワーフは未だ指揮経験の少ないフィンにとって癖が強すぎた。頑固すぎるとも言う。
(せめてモンスターの来る方向を限定されられれば……!)
魔法による起死回生を狙うためにはリヴェリアをモンスターの襲撃から守り切れることが大前提となる。だが二人で四方八方から来るモンスターから彼女をカバーしきれるかと言われれば無理だと断言する。だからこそ襲い掛かってくる個所を限定する必要がある。
そう判断した瞬間、フィンの中では作戦が組み立てられていった。
「二人とも聞け! 今から向こうの通路へと一点突破を仕掛ける! その後通路に入ろうとしてくるモンスターからの攻撃を僕とガレスが凌ぐから、リヴェリアは魔法で敵陣を吹き飛ばせ!」
「くっ……それしかないか!」
「むむぅ……了解だ!」
二人は
フィンは露払いとして先鋒を駆ける。そして左手を前に構え、詠唱を始めた。
「【魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て】……!」
疾走を続けながら超短文詠唱を行ったフィンの左手に、鮮血色の魔力光が集う。フィンはそれをおもむろに自分の額に押し当て、身体に魔力光を”注入”した。
「【ヘル・フィネガス】! ――――ッ、おぉぉぉぉおおおおおおおおおおおっ!!!」
瞬間、フィンの碧眼が血の様な赤色に染まった。そして普段の冷静さを何処かへと放り捨てたように、狂戦士の如き雄たけびを上げるフィンはモンスターの群れへと突っ込み、蹂躙を開始する。
フィンが槍を一振りすればモンスターの肉が抉れ飛び、頭が弾け、体内の魔石が粉砕される。その凄まじい力に感心しながらも、後続のガレスもその手に持った巨大なバトルアックスを力の限り腕を振り絞り、薙いだ。
「ぬぉぉぉおおりゃぁああああああ!!」
この一撃で複数のモンスターの胴体がちぎれ飛ぶ。ドワーフとして元来有している剛力に、最初から発現済みのスキル【
(っ……魔法さえ唱えられれば……!)
全ての魔法はそれぞれ固定された呪文を術者の口が紡ぎ出すことによって効果を発揮する。詠唱が長ければ長いほど強力な効果を発揮し、短ければ規模は縮小するが直ぐに発動できるという利点を持つ。
そして、リヴェリアは
超短文から短文、短文から長文に、長文から超長文の詠唱に。それぞれに定まった詠唱を”繋げる”ことで出力を高め、魔法の効果を変容させることができる。
故に、今の彼女は一つの魔法から三つの魔法を扱うことができる。理論上は最大九種の魔法を扱うことができるという唯一無二の強みを持つ彼女は、晩成さえしてしまえばこと魔法においては他の追随を許さない程の魔導士になるだろう。
――――が、現在のリヴェリアは冒険者としては未熟と言う他なく、また習得している魔法のいずれも長い詠唱を必要とするモノばかり。無論、唱えてしまえば戦況を覆せる強力な魔法なのだが、発動ができなければ意味は無い。
誰かに守ってもらわねば碌に動けないことに歯噛みしながら、リヴェリアは二人が大暴れしていることで作られた道を駆ける。そして通路の中に飛び込み、杖を構えて詠唱を始めた。
「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に
『グゴァアア!!』
「行かせるかァ!!」
リヴェリアの魔力に反応してモンスターは彼女へと襲い掛かろうとするが、すかさずフィンがその間に割り込みモンスターの体を吹き飛ばす。ガレスの方も間もなく駆けつけ、大波の様に押し寄せてくるモンスターをその剛力で押し留める。
「ぐぅぅぅぅっ……! 早くしろォっ!」
「【閉ざされる光、凍てつく大地】」
「そうだ、この調子で――――うぐっ……!?」
ビシリ、と。フィンの頭から電流の様な痛みが走り、血の様な赤目が元の碧眼へと変わる。魔法を維持するための
フィンがこの魔法を使うのは初めてだった。故に、維持できる時間を見誤った。
それでもどうにか昏倒する事だけは気合で防ぎ、今にも倒れそうな身体に鞭打ち、力を振り絞って自身へと向かってくるモンスターを槍で迎撃する。だが、その勢いは既に風前の灯火としか思えないほど弱っていた。
「何をチンタラやってんだ
「わかっ、ている……!!」
「【吹雪け、三度の厳冬――我が名はアールヴ】!!」
今にも崩れそうな防衛線だったが、どうにかリヴェリアの詠唱は完成する。――――直後、モンスターの死骸を踏み越えて二人の防衛線を飛び越える影が。
「なっ――――」
「しまっ――――!?」
「え」
二人の頭上を飛び越えたゴブリンはその醜い顔に笑みを浮かばせながら、そのまま目の前にいる麗しいエルフへと己の牙を突き立てるために口を開ける。
反射的にリヴェリアは魔法を唱えようとして、しかしまだ前にいる二人の退避が済んでいないせいで躊躇し、その間にも涎だらけの汚い牙が目の前まで迫り――――
「――――させない」
頭上から振った銀の煌めきに脳天を貫かれ、一瞬で絶命した。
「【
「ぬぅお!?」
「な!?」
突然現れたその影は超短文詠唱を唱えて地面を手で叩く。瞬間、地面が盛り上がって手の様に変形し、前にいた二人を捕縛。そしてすぐさまリヴェリアの後方まで引っ張り退避させる。
これで誤射の心配はなくなった。
いきなりの状況変化に頭が付いていけておらず茫然とするリヴェリアだったが、すぐさま乱入者――――アイリスの呼びかけによって気を取り戻す。
「リヴェリアさん! 早く魔法を!」
「ッ! 【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」
極寒の吹雪が巻き起こる。
大気をも凍てつかせる純白の細氷が通路に飛び込もうとしたモンスターを一番後ろにいた強化種も含めて一匹残らず凍結させ、数秒後には数十ものモンスターたちは巨大な氷の監獄に閉じ込められた。
先程と打って変わっての不気味な静寂が広がる中、アイリスは無言で拳を引き絞り――――氷の巨塊に叩き込む。
拳が突き刺さると同時に夥しい亀裂が氷の表面を走る。直後、粉砕。轟音を立てながら中に居るモンスターの群れごと氷は粉々に砕けて、やがて一部の個体を灰へと変えながら消えていった。
数秒間の余韻を挟み、氷の複雑な光の反射を後光にして銀色の少女は三人へと振り向く。
「――――さて、色々と話を聞きたいんですが……皆さんお疲れでしょうし、まずは家に帰りましょうか」
少女の微笑みに、三人は安堵の息しか返せなかったそうな。
◆◇◆◇◆
ダンジョン探索初回にして初の強化種との邂逅はフィン、リヴェリア、ガレスにとって忘れられない体験となった。全員が全ての体力を使い切っているのかヘトヘトであり、入る前と比べて随分と様変わりしている。
ギルド本部で獲得した魔石を換金し宿へと足を進ませる中、歩きながら事の一部始終を聞いたアイリスは少しだけ困った表情を浮かべる。
「あー、つまり、なんです? 探索が好調だったから全員ちょっと欲張って深入りした挙句、あんな状態になったと?」
「恥ずかしながら……その通りとしか言えないかな」
誤解されやすいが、
そして彼ら三人は――リヴェリアは『学区』に在学していた際に得ていたので魔力に関してはLv.1の中でもトップクラスではあるのだが、その他アビリティはほぼ常人と変わらない――
にもかかわらず、無自覚とはいえ調子に乗って3階層まで潜ったらしい。
「いえ、まぁ、私も初日はちょっと様子見だけだったとはいえ3階層まで潜りましたから何も言えませんけど……むしろ初日で強化種と遭遇した方が私にとっては驚きですよ」
「僕も同感だね。……何はともあれ、感謝するよアイリス。君が居なかったらどうなっていたことやら」
「そうだな。どこぞのドワーフが『戦いがオレを求めている』なんて抜かしながら奥深くに突っ込んでいかなければ、お前の手を煩わせる事は無かったのだがな」
「ああ全くだ。どこぞのエルフが『私の魔法で全てを吹き飛ばしてやろう』とか言いながら無駄にモンスターを挑発しなければな」
「何だと貴様っ!」
「やんのかゴルァ!」
「二人とも! 喧嘩はやめてくださいってば!」
アイリスは今にも互いに掴みかかりそうなリヴェリアとガレスの間に割って入った。激昂していても流石に子供に乱暴をするほど頭に血は上っていなかったのか、二人は「フン!」と鼻を鳴らしながらそっぽを向く。
「……フィンさん、今更ですけど、どうやってこの二人と知り合ったんですか?」
「ん? ああ、別にそう難しい経緯でもないさ。僕とガレスの場合は船旅で同じ個室で寝泊まりしただけで、リヴェリアとは同じキャラバンでオラリオに来たってだけでね。そこそこ付き合いは長いけど、実はそう深い仲でもないんだ。……こうして同じファミリアに入ることになっては、何か作為的なモノすら感じる出会いだったけどね」
「そうなんですか」
確かに、偶然出会った面々が別々の目的にも関わらず同じ場所に来て同じ組織に属すると、作為的――――いや、運命的とも言える関係かもしれないとアイリスは思ってしまう。
が、口に出すと
「ええと……とりあえず、暫くは全員でダンジョンに潜りましょうか。やはりいざという時の保険は必要でしょうし」
「それはありがたいけど、アイリス、君の武器は今修理中だと思うんだけど? ……いや、その背負っている剣は、もしかして予備の武器かい?」
「あ……すいません、この剣はちょっと強すぎるので、暫くお蔵入りにするつもりで……。それと私は皆さんがLv.2になるまで基本的に後ろでサポートに徹するつもりですし、いざとなったら魔法があるので大丈夫です!」
そう言いながら小さくガッツポーズするアイリス。それを見たフィンは、どうにも目の前の少女が自分よりも遥かに強いLv.2とは思えなくてクスッと小さく笑った。
「え? わ、私、何かおかしい事言いました……?」
「ああ、いや。君は欲が無いんだな、と思ってさ」
「欲、ですか?」
人間、誰しも誰かの上に立ちたがるものである。そしてこの四人組においてアイリスは唯一の
こんな純粋な子が、どうしてそんな野心を抱けようか。
肩をすくめてフィンはアイリスから視線を外す。――――すると、こちらへと全力疾走で駆け寄る影が彼の目に映った。そして、
「おっかえりぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい――――!!」
朱色の髪をブンブンと揺らしながら
主神の突然の奇行を見た三人は呆れつつ、同時に笑みを浮かべる。
――――この
オラリオの夕日は、変わらず赤く輝いていた。
※現在の【ロキ・ファミリア】構成員の【ステイタス】
アイリス・アルギュロス
Lv.2
力:I0→I7
耐久:I0
器用:I0→I6
敏捷:I0→I10
魔力:I0→I14
《魔法》
【■■■■■】
・現在使用不可
【フィシ・ストイケイオン】
・
・速攻魔法
・地、水、火、風属性から選択可能
・多重展開可能
・詠唱式【
【】
《スキル》
【
・生きている限り試練が訪れ続ける
・窮地時に全能力の超高域強化
・獲得
・諦観しない限り効果持続
・自分と周囲が希望を抱くほど効果向上
【■■■■】
・解読不能
【■■■■】
・スキル保持者に
・魔力消費による肉体の高速修復が可能
・常時全能力に小補正
・発展アビリティの発現確率に大幅補正
・精神系状態異常の無効化
【
・火属性の攻撃に耐性獲得
・氷・水属性の攻撃に耐性獲得
・火属性の魔法行使時にのみ魔力に高域強化
・火属性の魔法行使時に消費する
・窮地時精神強度を微補正
フィン・ディムナ
Lv.1
力:I0→I12
耐久:I0→I10
器用:I0→I28
敏捷:I0→I20
魔力:I0→I13
《魔法》
【ヘル・フィネガス】
・高揚魔法
・全能力の超高強化
・好戦欲激昇に伴う判断力の低下
・詠唱式【魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て】
【】
《スキル》
【
・逆境時における魔法及びスキル効力の
【
・精神汚染に対する
リヴェリア・リヨス・アールヴ
Lv.1
力:I7→I8
耐久:I5→I7
器用:I26→I29
敏捷:I20→I23
魔力:B712→B717
《魔法》
【ヴァース・ウィンドヘイム】
・攻撃魔法・連結詠唱
・第一階位【ウィン・フィンブルヴェトル】
・第二階位【レア・ラーヴァテイン】
・第三階位【ヴァース・ウィンドヘイム】
【】
【】
《スキル》
【
・魔法効果増幅
・射程拡大
・詠唱量が増えるほど強化補正増大
ガレス・ランドロック
Lv.1
力:I0→I30
耐久:I0→I21
器用:I0→I10
敏捷:I0→I7
魔力:I0
《魔法》
【】
《スキル》
【
・『力』の高補正
改めて比較するとホントおかしいなこの幼女……