5月6日
☆シストレア・ブルーダー
町が、壊されている。
シストレア・ブルーダーという魔法少女が動くにはそれだけで十分だった。
守るべきものが存在するこの町が、何者かによって破壊され、何もかも奪っていく……そう感じる程に、この町に非常事態が起きていた。
「……守らなきゃ。絶対、絶対守らなきゃ」
そのために魔法少女になったのだ、と決意を固めて町へ飛び出す。すると、目の前にあったのは大きな鬼のような化け物の背中。小さな男の子に向けて大きな拳を振りかぶっていた。
「……ッッ!! 」
恐怖を塗り潰す。想いを重ねる。絶対に助けるのだ、と心に決める。シストレア・ブルーダーの魔法は想いの丈によって自分を強くするものだ。好きな人への想いの大きさがそのまま強さへと繋がるのである。
鬼は拳を振り下ろす直前に、左へと吹っ飛んでいった。右脇腹を全力で蹴ったシストレア・ブルーダーは男の子に近づいて手を差し伸べた。
「大丈夫? 立てる?」
「う、うん……ありがと……」
無事だったことに一安心したのもつかの間、今度は右の方から悲鳴が聞こえてくる。男の子に別れを告げ、悲鳴の主を探す。
逃げ遅れた少女や少年、老人や中高生を無我夢中で助けていると、目の前に大きな入り口があった。それは突然現れた巨大な建造物の入り口で、シストレア・ブルーダーには町を破壊する化け物達の元凶だという確信があった。
「……大元を断たないと、あの子を守れない」
大切な人を守るため、シストレア・ブルーダーは広大なる迷宮へと足を進めるのであった。
☆エーリャ・ビスク・ハーミット
「……大惨事じゃねーですの!」
魔法の国から連絡をもらい、隣町であるT市に応援として行きなさい。そう言われてT市へとやってきたエーリャ・ビスク・ハーミットだが、何が起きているのか全く分からないままに来てしまったため、壊された町並みを見てつい叫んでしまう。
「いや、本当になんなんですの! まるで化け物がたくさん現れて暴れ回ったみたいじゃねーですの! 事態収拾に手を貸せぇ? まだワタクシ魔法少女になって1年も経ってないんですのよ!? 何をやれっつーんですの! まぁ恐らくぅ? 目の前にある今まで見たことないすげーデカい建物、まぁ十中八九これが原因ですの! でも中は絶対修羅場ですの! ……でもでも魔法の国には逆らえないですの……逆らったら魔法少女になれなくなるんですの……」
記憶消去と魔法少女になる資格を剥奪されて放逐される。それが魔法の国に反逆した魔法少女の末路である。優等生として生きてきたために目をつけられることすら恐ろしく、命令には逆らわず悪い事はしないと誓って魔法少女をやっているのだ。だから命の危険があるとしても使命を捨てて逃げ出すという思考は、エーリャ・ビスク・ハーミットにとって元からあり得ないものなのである。
「はぁ……もう諦めたんですの……やるしかねーから頑張るしかねーんですの……」
そんなことを言いながら巨大な建造物を壁沿いに歩いていると、入り口とその目の前に立っている人影を見つけた。よくよく目を凝らして見ると奇抜な衣装の少女——まぁ魔法少女だろう——であると気づく。
「おぉ! やっと入り口を見つけましたの! いやーやっぱりワタクシは天才ですのね! おーいそこのお方ー! 貴女もここの調査に来たんですのー?」
フレンドリーに話しかける。相手が敵かもしれない、と考える事ができるほどエーリャ・ビスク・ハーミットには経験が足りない。入り口の目の前に辿り着くと、ゴーグルをかけた作業服風の魔法少女は口を開いた。
「ここでオリチャー発動! ダンジョン手前でエンカした魔法少女を仲間に加え入れとうございます」
「……いや、何言ってるんですの」
☆半田アーク
リアルタイムアタック。通称RTAと呼ばれるそれは、ゲームクリアまでのタイムを競う競技である。半田アークはそれにどハマりしてしまった。自分でもいくつか試しにやってみて、それを動画投稿サイトにアップするくらいにまでハマってしまったのだ。世界1位ではないがそれなりの記録も持っている。
魔法少女になったのはRTAにどっぷり浸かっていた頃で、人助けをしろと言われそんな暇あるかと辞退しようと考えていた。が、半田アークは気づいてしまったのだ。魔法少女になると反射神経や集中力が向上する。これでより早い記録を叩き出せる、と。
タイムは全てに優先される、と考えている半田アークは魔法少女として生きていくことを決意した。魔法の国からの依頼も全てきちんとこなし、少々危ない任務でも完璧にやり遂げてみせた。魔法少女を続けるため、能力を高めてRTAでのミスを減らすために。休日はRTAに時間を費やす。魔法少女姿で画面をじーっと見ながらコントローラーを握る、側から見たらただの頭がおかしい人と思われるような格好で、である。
そんなことをしているうちに、戦う魔法少女として他の魔法少女達からも認識され始める。アイツは腕がいい、守秘義務もしっかり守ってくれる、報酬も少なくていい、と噂が広まり、気がつけば便利屋のような扱いになっていた。RTAは段々タイムが縮まり、遂には世界記録も取れるようになっていた。
今回も同じである。斥候、偵察、出来れば原因の解明をしろという任務でこのT市にやって来た。この仕事が終われば当分休みにして反復練習しよう、と心に決めてこの巨大建造物の目の前に立っているのである。
(1F技をもう一つ使ってみるか……? でもあれ決めても大したタイム短縮にならないような……)
そんなことを考えていた矢先、いきなり声を掛けられたためRTA界隈での流行りに染まりきった返答をしてしまう。声の主が完全に変なものを見るような目でこちらを見ているのが分かる。
「あぁ、いや、すいません……ちょっと考え事をしていてそれにつられてしまって」
「どんな考え事してたらあんな返答になるんですの!? ……ゴホン、まぁ、それはどうでもいいですの。貴方もここの調査に?」
「ということは貴方も? いやー、正直1人じゃ手に負えそうにないなーと思ってたところなんですよ。一緒に行きません?」
「んー……まずは自己紹介して欲しいんですの。素性が分からない人とは協力できないですの」
「あっ、これはすみません。そりゃあそうですよね……私は半田アーク。職業は……いわゆるフリーランスの魔法少女、といったところでしょうか?」
魔法少女には担当地域で活動をする者、魔法の国で働く者、そしてフリーランスでお金を稼ぐ者がいる。もちろん例外もあるのだが、大抵の魔法少女はこの3つのどれかに入っている。半田アークはその中でも1番危険と言われるフリーランスの魔法少女である。主に魔法の国が管理する組織に雇われて働くことが多く、中には戦闘が発生する依頼が多数存在する。そのためフリーランスの魔法少女のほとんどが戦闘技術に長けているのである。
(まぁ私は親の遺産があるから他の魔法少女程熱心に働いてはないんだけどね)
心の中でそう呟く。もちろん相手に聞こえることはなく、目の前の、頭につけた黒い大きなリボンがよく似合う魔法少女は自己紹介を始める。
「ワタクシはエーリャ・ビスク・ハーミットと申しますですの。隣町の担当をしていますですの。 魔法の国からの命令で、T市を調査しに来ましたですの」
(なんで敬語でもですのって言ってるんだろう……癖かな?)
「あぁ、ではやはり目的は同じのようですね……よろしければ、私に同行していただけないでしょうか?」
「ええ、ワタクシも提案しようと思っていたところですの。今から貴方はワタクシの仲間ですの!」
「はい、よろしくお願いしますね、エーリャさん」
「よろしくお願いしますですの!」
(やっぱり癖だろうなぁ……)
侵入前に戦力を増やすことが出来たのは大きい。これで突破率は少し安定するだろうか。最悪の場合は盾になってもらうことも考えて親密度は高く保っておこう。他の人に頭を覗かれたらドン引きされるようなRTA的思考を続けながら、どうやって攻略したものか、と思案する。
(あれがああなって……これはこうで……うん、これ割と無理ゲーじゃな?)
先行きが不安になってきたものの、やらなければ帰れない。半田アークは心の中でため息を吐いた。
☆アトラ
「クソ姉貴! さっさと行くぞ!」
「あぁん、待ってよ鳴ちゃーん」
姉貴が魔法少女だった。しかも3年前から。
まぁそれに気づかなかったのは仕方ない。魔法少女が活動するのは基本的に深夜だからである。姉である橘真宵とは寝ている部屋も違えば寝る時間も違う。それで気づくことが出来るわけがない。
(それはいい、それは別に構わないんだ……)
妖精ピクスに魔法少女にされたその日、夕方になって家に帰ってくると突然ピクスが「魔法少女反応アリ! 敵襲か!」と叫んだ。ピクスの案内の元、走って二階へ上がると姉の部屋から反応があると言う。その部屋を開けてみるとそこには青白いドレスを身にまとう美しい少女がいたのである。茶色の髪をフワリと浮かせて振り返ったその少女は、
「あぁ、バレちゃった?」
悪びれることもなくそう言った。
話を聞くと色々と悪用して有利に生活を送っていた、ということを知ってしまう。しかも他の魔法少女も割とそうやってずる賢く生活してるということも。それを聞いて魔法少女アトラこと橘鳴は、魔法少女っつーのはそういうのじゃないだろ! と憤慨した。
(こう、もっと人助けするとか! 強大な敵に立ち向かうとか!)
つまるところ魔法少女という幻想をぶち壊されたことに今も落胆しているのである。それも実の姉ということでダメージはより大きなものとなっていた。
「ハァ……まぁいいや、何を嘆いても現実は変わらないんだから……」
「鳴ちゃん、ため息ついてたら幸せ逃げちゃうよー?」
「誰の! せいだと! 思ってるんだ!」
「アハハハハッ!」
「笑うな!」
チッと舌打ちを1つ、聞こえるように打ってみるが効果はなし。姉である橘真宵こと魔法少女トルテはニコニコしながらこっちをみるばかりである。
「それで、何をするんだっけ?」
「うむ、もう忘れられていたかと思っておったぞ?」
「……いや、ホント申し訳ない。大体姉貴のせいだから私の管理不足だね……」
「そーだよもっとちゃんとやってよー」
「……」
「ゴホン! 姉妹喧嘩は置いといて、今回のミッションの説明をもう一度行う!」
「はーい!」
「うぃー」
「こらアトラ! もっと魔法少女らしくするのじゃ! 魔法少女は普段の心構えが大事だとあれほど言っただろうに!」
「いや無理だわ身内に身バレしてるのに魔法少女らしくなんてできないわ」
「私は魔法少女らしいでしょー?」
「姉貴は普段からそんな感じでしょ……」
「ほーらー! さっさと話に入るのじゃ!」
とりあえず姉貴はほっといて話を聞こう、とアトラはベンチの上に立つピクスの方に向き直った。それを見て、トルテも渋々同じ方向を向いて話を聞く態勢に入る。
「これから、ワシらはこの大きな建物を探索する! これは魔法の国からの要請で、近辺にいる魔法少女と協力して何が起きているのかを把握することが第一である! いわゆる偵察任務じゃな!」
「解決まではしなくてもいい、と?」
アトラは疑問を投げかける。ここまでの道のりで、民間人や住宅などの被害を目の当たりにしてきたアトラは、できることならば問題全てを解消して町を救いたい、そう考えている。だから、その意思がないピクスに対して怒ったように言葉を放った。
「もちろん、それができれば最前じゃ。しかし、戦力があまりにも足らん故難しいじゃろう、という見解じゃ。新人のお主に命を落としてほしくはないしの……」
「……」
「はいはーい! 協力って誰とー?」
「うむ、実はこの辺りを集合場所にしておってな、もうすぐ来るはずじゃ。おっ、あれかの?」
ピクスが目線を向けた方向を見ると、遠くに2人の魔法少女が全速力でこちらへ走ってくるのが見える。魔法少女の身体能力は変身前とは比べものにならないほど高い。当然足も速くなっているので、2人の魔法少女は数十秒後には目の前にたどり着いていた。
「ハァ、ハァ、フゥー……流石に魔法少女でもこんだけ動くとキツイねぇ」
「ナインちゃん……私結構スピード落としてたんだけど……?」
とはいえ魔法少女によって身体能力には個人差があり、目の前の猫耳の魔法少女はそれほど速くは走れないようだ。
「ナインさんにヒナさんじゃないですか! 昨日ぶりですね!」
「おおーアトラちゃんじゃないかー随分とらしくなっちゃってー」
この猫耳でレザージャケットを着ているのはナインライブスという先輩魔法少女である。青い髪と青銀のシャツで全体的に青い印象なこの少女は、アトラに魔法少女同士の戦い方を伝授するためにピクスが昨日呼び出した魔法少女である。
魔法少女同士の戦い、と聞いてまた魔法少女の理想が崩れていくような気分になったが、ライバルの魔法少女と戦うことだってあるだろう、と自分を納得させていた。実際、今こんな状況に巻き込まれた身からすると、あぁ、あれは必要なことだったんだ、と感謝の念すら覚える。昨日だけの特訓という完全な付け焼き刃だが、それすらなかったらここまでたどり着くことすらできなかっただろう。
「ちょっとー、私の紹介もせずに楽しく談笑しないでよー鳴ちゃ……じゃなくてアトラちゃーん」
「ちゃんと隠せや! はぁ……このはた迷惑なバカはトルテっていいます。それなりに使えるのでどうぞこき使ってやってください」
「バカにされてる気がする!」
「気のせいじゃないぞ」
「もー!!」
「……フフッ」
ナインライブスの隣の魔法少女が笑う。ボサついた栗色の髪が腰まで伸びているその少女は、朽木川ヒナという魔法少女である。彼女は自分のバディである、とナインライブスが昨日紹介していた。身体能力はそれなりに高く、先程もナインライブスが息を整えていた時に平然と横に立っていた。しかし、まだ経験が浅く戦闘ではナインに勝てないくらいの実力だから支援を担当している、と言っていた。
(まぁナインさん身体能力の割にはめっちゃ強いんだけどね……)
アトラ自身、ナインライブスと模擬戦を何度か行ったが、まぁボロッボロに負けていた。「魔法少女同士の戦いは読みが大事だよー」なんてことを言いながらアトラの繰り出す技を全て避け切る。
(パンチは受け流されるわキックは蹴り出しに足を合わせて止めてくるわ……おまけに魔法で固めようとしたら完全に避けられてカウンターまで……)
「ともかくナインさんとヒナさんがいるなら心強いです! 私も微力ながら手伝います!」
「いやー……魔法少女相手の肉弾戦でしか役に立たないからそんなに期待しないでくれないかなー? それよりヒナの方が……」
「ナイン……そんな面倒ごとは私がやるだろうみたいな目で見ないでよ。こっちはまだ修行中の身なんだから……」
「それを言うなら私だってまだ発展途上だよ? ……あぁいけない、話が逸れちゃった。今から私たち4人チームでこの……建物? ダンジョン? を調査するってミッションを遂行するよ。移動は常に4人で。万が一、分からなければならない状況になった時は2人ペアが原則。単独行動は死に直結するから絶対にやらないこと。わかったかい? 何か質問とか……」
「ハイハーイ! チーム名は何ですかー?」
「必要ないだろバカ……」
「うーん……そうだなー……マジカルフォース、ってのはどう?」
「いいと思いまーす!」
「小学生か!」
「まんまじゃないの……」
かくして結成された「マジカルフォース」は意気揚々と迷宮へはいっていくのだった。
☆シストレア・ブルーダー
「ハァ、ハァ、ここが入り口……?」
化け物を倒しながらたどり着いた巨大な建物の入り口らしきものを見て、シストレア・ブルーダーは呟く。深呼吸をして息を整え、建物の中を入り口から覗いてみた。魔法少女になると身体能力、例えば視力や聴力も強化されるため、少し覗くだけでもよく見えるのである。しかし、それは他の魔法少女も同じというわけで。
「誰さ!」
奥から女の声が響いた。シストレア・ブルーダーはいきなり声に一瞬ビクッとなって驚くが、敵の本拠地だ、魔法少女くらいいるだろうと認識を改める。声の主は入り口へ向かって歩いてくる。シストレア・ブルーダーはそれを戦闘の態勢を取って待ち構える。
「……魔法少女か」
明らかに標準語でないアクセントの声だ。入り口から出てきたのは、いわゆるマイクロビキニと言われる水着を身につけ、下は着物か袴か、そんな感じの衣装を纏った女だった。
魔法少女だ、とシストレア・ブルーダーは思った。一般人はこんな格好で外を出歩かない、ということではなく自分を魔法少女と一目見て告げたことからそう考えた。しかも、こいつは敵だ、とも。
「あなたがこの町をこんなにした犯人?」
「いやぁ? 私はただの雇われさね」
やはり敵だ。そう認識した途端に、シストレア・ブルーダーは身体が熱くなってくる感覚を覚えた。シストレア・ブルーダーの魔法は想いの強さで強くなるというもの。敵を目の前にすることで、魔法の効果がより強力になったのだろう、と解釈した。
「しっかしけっこいべべ着てんなぁ。おらなんてマイクロビキニに茶摘み服……替えてくれねぇかねぇ?」
シストレア・ブルーダーの衣装は、白無垢を動きやすく改造した、という形容が似合う服である。自分でもかなり気に入ってる。が、今はそんなことはどうでもいい。
「とりあえず、あなたは敵なのよね」
「おぅ、まぁそういうこった」
その言葉だけで十分、と言わんばかりにシストレア・ブルーダーは駆け出す。拳を握りしめ、振りかぶって目の前の魔法少女に殴りかかる。ブンッ、とパンチは空を切るが、それは想定内。思ったよりも相手の動きがいいのは気がかりだが、魔法で強化された自分なら———
「フゥッ!」
踏み込んでハイキック。そのままの勢いで裏拳。もう一歩踏み込んで回し蹴り。フェイントからのローキック。砂を蹴り上げて目潰し。
「くっ……何故当たらん……ッ!」
全て、全て避けられた。フェイントをかけた本命の攻撃まで。まるで全て読まれているかのように。嘲笑うように。
「そんだけかぁ? んだらこっちからいくさね!」
首めがけての蹴り。腕をクロスしてガードし、後ろに吹っ飛ばされることで距離を取る。腕を解くと敵はすぐ目の前にいた。顔狙いの拳を間一髪首を捻って避ける。足に衝撃がくる。体が宙を舞い、そのまま仰向けに地面に倒れる。首へのストンプを転がって回避、ブレイクダンスのように回転して攻撃と同時に復帰する。しかし、ストンプのため近くにいたはずの魔法少女はひとっ飛びに後退。また避けられたと憤慨する間も無く攻撃がくる。
(こいつの魔法かッ!? これじゃあ勝機は万に一つもない!)
防戦一方のシストレア・ブルーダー。何か使えるものはないか、と周りを見渡そうとすると、隙ありと言わんばかりに猛攻を仕掛けてくる。これでは本当に負けてしまう———
(……腹をくくるか。それでも勝率は2割程度だが……ッ!)
覚悟を決めてカウンターの構えをとる。肉を切らせて骨を断つ、必殺の一撃。
しかしそれは放たれることはなかった。
「邪魔するよっ!」
「えいっ!」
青いコートと黒い鎧の魔法少女が介入してきたのだ。コートの魔法少女は大鎌で薙ぎ払い、それを避けたところに鎧の魔法少女が鎖のようなものを投擲する。それもまた避けられるが、形勢不利と見たのか、敵の魔法少女は建物へと戻っていった。
「あ、貴女達は?」
「フゥ……あっ、自己紹介しなきゃね……私はリィシェイド。こっちは……」
「クロイはレリーズ・ド・チェインと言います。よろしくです」