異世界転生は妖精と共に 作:リーン様の椅子になり隊
「初めまして望月冬夜殿!ハイロゼッタと申すものでありまス!」
と、ガキに敬礼するロゼッタ。
「早速小生のパンツの色を現マスターより早く正解するであります!」
「何で!?」
本当に何言ってんのこのロボット。これ造った奴、絶対馬鹿だろ。間違いない。天才だろうがなんだろうが馬鹿だ馬鹿。
そんでガキはロゼッタの透明パンツに鼻血を出してから正解した。俺より遅く。
「と、トーマさんもあれ見たんですか?」
「初な童貞じゃあるめーし、見たところでどうともねーよ」
「ふぅん………」
「───!?」
鼻を押さえながらガキが言外に恥ずかしくなかったのか聞いてきたので素直に応えてやると、後ろから殺気を感じた。振り向くとリーンがジト目で睨んできた。
「童貞じゃない、ねぇ………いえ、良いのよ。500年もはぐらかしてたんだもの、文句を言う筋合いは無いわ」
「あ、ちょ……まっ───」
「トーマは、顔立ちもと整っているし強さもある。それは、女だって放っておかないでしょう。トーマを繋ぎ止めたい国が女を寄越すかもしれないし、最悪あなたの血を引く子だけでも欲するでしょう」
「いや、子供はいないと思う……最後にしたのは152年前だし………あれ、でも俺今は上代一族の血を引いてないし、平気か?」
「良く解らないけど、別に怒ってないわ。いい気分がしないだけ、ごめんなさいね」
「……いや」
リーンの言葉に申し訳なさが入っているのに気がつき、俺はそれ以上何かを言うのを止めた。何とも言えぬ空気になってしまい慌てるガキ。何とか話を逸らそうとする。
「あ、そ、そうだ!「工房」って物を量産できるんでしょ?読書喫茶とかつくってみない?」
「読書喫茶?」
「色んなところから本を集めて、料金払って読み放題にしてさ。あと自転車の量産とかも……きっと儲かるよ。あ、もちろん自転車はともかく読書喫茶のお金は全部トーマさんが──」
「いや断る。そんなことのために「工房」使うかよ」
「…………え?」
せっかく儲かるのに何で?と首を傾げるガキに俺は呆れたように肩をすくめる。いや、実際呆れているが……。
「過度な発展は衰退を生む。例えば自転車だが、見せてもらったがありゃモデリングを使ったな?俺も一応持ってるが……つまりあれを実質作れるのは俺とお前……後、工房の管理者であるロゼッタだけか。で、ロゼッタは俺の許可なく工房を使わない」
「その通りでありまス」
「えっと、それが何?」
「これを作れるのは俺等だけ。何かがあって俺等が死んだら終わり。そんな商品売れるかよ」
「死んだらって、そんな大袈裟な」
ははは、と笑うガキ。大袈裟、ねぇ。魔獣蔓延るこの世界で、何でそんなに楽観視できんのか理解不能だ。チート持ちだろうとそれを越える存在がいるのは体に教えてやったはずだろうが。学んでねーの?本当に気味が悪い奴だ。
「まあ販売するとしたら金貨12枚ってとこか」
「え?流石にそれは高いんじゃ………」
「こっちの住人が自転車を再現すると人件費含めてかかる金額がそれだ。それより少し少なくしたんだよ。良いか、売って良い商品はその世界で再現できるレベルにしろ。んで、それより少しだけ安く売る。それが量産の条件だ………読書喫茶に関しては入場料はこれぐらいだな」
「ええ!?た、高すぎない?ぼったくりは良くないよ……」
「本屋を飢え死にさせないためにゃこれぐらいがちょうど良いんだよ。完結物をあえて数巻抜いて本屋に買いに行かせるとしてもこれぐらいだな。さらに安くしたいなら本屋の在庫と話し合ってラインナップを選ぶなら共営して一部の儲けを渡して──」
「ちょ、何で……?」
「そうですよ!せっかく冬夜さんが考えてくれた案なのにケチ付けるんですか!?」
「つけるけど?」
何当たり前のこと聞いてんだ此奴。
「だって狡いだろ?」
「ず、狡い……?」
「例えば自転車……これをこっちの世界で作るとまず鉄をパイプにして、さらに左右対称に曲げる……これがそもそも大変なことだな。材料費込みで人件費金貨1枚ってとこだな。本体は3枚……タイヤは鉄の部分が二つで2枚、ゴムの部分も二つで2枚。歯車とチェーンとか細かいパーツは4枚程。後はペダルとかその辺……まあお前の自転車より雑に、あるいは脆くつくりゃ金貨10枚に押さえられるだろうが………普通はこの文明レベルだとこれぐらい。職人達が頑張って価値に見合う仕事をした結果だ………ボタン一つで大量生産なんて、それこそ頑張って作る奴らに失礼だ」
まあ生産量が多けりゃそもそも他も造らんとは思うがそれこそ狡だろう。他人が頑張って稼ぐ金をボタン一つで得ることには変わりないのだから。
もちろん必要なら量産するさ。例えばガキの持つスマホとか、もし量産できるなら各国の王やギルドマスター達になら売るのは止めない。一般化は止めるがな。絶対制作者が死ねば造れなくなる類だし。
「衰退するって言うのは?」
「文明ってのは少しずつ発展していくもんだ。他も真似しようとすれば出来るから、それより上を目指してな……だが突出しすぎた技術は追い付けないからと己の研磨を止めたり無理に追いつこうと粗悪品を造ったり、あるいは悪用したりもする奴が現れる。ロゼッタに会わせる前に話したと思うが、フレームギアとか良い例だな……俺はこれを出来る限り使う気はねーよ?盗まれて利用されたら困るからな」
「え?そうなの?勿体なくない?」
「まあフレイズが大量に現れりゃ、どうしても使用しなくちゃならねぇだろうがフレイズが全滅した暁には全て排除させるな俺なら。勿体ない?ロマンで平和が買えてたまるか。お前はもう少し考える頭をもて……」
「そういえば、冬夜がお金稼ぎに使っているショーギ、昔あなたに教わったわね。貴方は売らなかったけど……あれはあの時代の技術からでも再現できたと思うけど?」
城の部屋地戻り、ベッドに腰掛けていたリーンがふと昔のことを思い出したのか聞いてくる。
「まあ、俺とリーンの間だけの秘密にしたかったのもあるが……単純に前世の知識で著作権だのなんだので金稼ぎたくなかっただけだ。ま、これもさっきの奴も俺の価値観だけどな。少なくとも工房は俺のなんだから俺の価値観を押し通したって問題ないはずだ」
「そういうと思ったわ」
と、リーンが微笑み肩を竦める。と、笑みの形で細められた目が俺を見抜き思わず鼓動が高鳴る。
「にしても、貴方って既に経験済みだったのね」
「いや、だからそれは……!」
「言ったでしょう?怒ってないって。私に怒る資格なんて、無いもの………それでもまあ、気に入らないのよね。だから怒る資格をもらうわ」
「………リーン?」
ゾクリと、ここ数百年感じた覚えのない捕食者に睨まれたような悪寒が走る。
「私と恋仲になりたい。そう言ったわね?500年前と、変わらず……私が欲しい?」
「─────!」
言葉が出てこない。ただ、首を必死に縦に動かす。
「良いわ。私だって、貴方を子供として見れないし………嫌いではない。いいえ、好きだもの。付き合いましょう……」
「……良いのか?」
「良いわよ。500年、貴方が欲しかったものは
両手を広げるリーンに、俺は無意識の内に近づき、ベッドに押し倒す。小さな体。力を込めれば、砕けてしまいそうな………いや、俺がやろうと思えばあっさり壊せてしまうだろう。
慌てて離れようとすると、鼻孔を擽る甘い香りに気づけば顔を寄せていた。その頬を、リーンの手が撫でる。
「まるで獣ね。そんなに私が欲しいの?」
「………ああ」
「素直で可愛い子。良いわ、全部上げる……代わりに、私が貴方から
そう言って微笑むリーンの顔は、何処までも自信に満ちていた。俺が差し出さないなどあり得ないというような自信たっぷりで、美しく、俺がずっと手にしたかった笑み。
「もちろんバビロンなんて得てしまった貴方が、今後貴族王族共に目を付けられないはずがない。
そして当然、俺が彼女の言葉に逆らうはずがない………
この後めちゃくちゃ(略