異世界転生は妖精と共に   作:リーン様の椅子になり隊

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妖精とペット

「海か………」

 

 潮の香り、日差し、波の音。間違いなく海だ。

 

「直接会うのは久し振りねトーマ」

「そうか?2、3年なんて俺等からすりゃ大した時間じゃないだろ」

 

 ニコリと微笑み手を振ってくるのは俺の数少ない年上にして友人のリーン。妖精族という種族で、本来なら十代後半から二十代前半で成長が止まるはずが十代前半で止まってしまった少女体型……永遠にな。

 

「相変わらず失礼なことをまず考えるのね貴方は………まあ良いわ。ちょっと海を潜ってきて欲しいの」

 

 海の底?

 何でまた……。まあ別に良いか。

 

「あれ、リーン。その人は?」

「あん?平たい顔だと?」

 

 と、海に向かおうとしたらリーンに声をかける者が居た。振り向いてみれば黒髪黒目の平たい顔の少年がいた。イーシェンのガキか?にしてはやけに日本人によりすぎている……つか此奴、妙な気配だな。くそ不味そうだし……何というか、農薬使いまくった野菜で造った料理みたいな匂いがする。

 それに比べ後ろの女どもはそこそこうまそうだな。おっさんたちは……肉の質は良さそうだ。良いもん食ってそう。貴族か?

 

「紹介するわね。此奴はトーマ、私のペットよ……とってこいが出来る賢い子なのよ」

「どうも、リーンのペットのトーマ・カミヨだ」

「え、ペ……ペット?」

 

 俺とリーンの発言にひきつった表情になるガキ。何か変なことでも言ったろうか?

 

「まあ良い。此処、何処だ?」

「イーシェンよ」

「イーシェン?まあ確かにイーシェン生まれっぽいのも居るが、何でまた」

「この海に沈む遺跡に興味があるのよ。行ってくれるわよね」

「別に良いが本当か?海の底なんて見えるもんじゃねーだろ。つか何で今更また探す気になったんだ?」

「ベルファストで中々おもしろいモノを持ってる子を見かけたのよ。そこの子ね……その子に頼んで探してみたのよ」

「ベルファストって……あの無能王の国か?信用できんのかそれ」

 

 と、俺の言葉にガキとガキの後ろの連中が反応する。リーンは面白そうにクスクス笑う。

 

「あら無能?どうして?」

「確かに噂を聞く限り有能だったんだろうが最近一人娘の我が儘のために何処の馬の骨とも知れぬガキを婚約者にしたそうじゃねーか。ミスミドとの交易のために貴族共に目を付けられてるのにそれだ。しかも暗殺されかかった直後だと聞く。馬っ鹿じゃねーの?そんなに死にたいのかって感じ」

「あら、でもその馬の骨は王の命を救って暗殺事件の黒幕も見つけたそうよ?」

「だから?王に必要なのは政治力だ。魔法だのなんだので一人を救うんじゃなくて政治で千を救える知能だ。だというのに王女と結婚させるって………まあ直ぐにでも結婚させるわけでもないらしいし幼い間に我が儘を聞かせて後で別れさせるだけなのかもしれねー───」

「私は冬夜さんと別れたりしません!」

「…………?」

 

 急にガキの後ろにいた女のガキが叫んだ。オッドアイに金髪の女。はて、この容姿何かで聞いたような……。

 

「ああ、例の我が儘姫。お前だったのか自分の恋愛のために国民のことを考えない姫は」

 

 思い出した。確かベルファストの第一王女の容姿がこんなんだった。そして今の発言からして間違いなく此奴だ。と、漸くにらまれていることに気付く。今更?とは言うな。蟻に凄まれたところで気づけるはず無いだろう。

 

「冬夜さんの事を何も知らないくせに侮辱して……取り消してください!」

「取り消せだと?断じて取り消すつもりはない!」

 

 このガキは自分が、王の一人娘という立場がどういうものか解っているのか?ベルファスト国王の年齢に対して結婚した若さを考えて子供が一人だけ。どう考えても次の子は望み薄だ。まあ王のくせに子供一人で満足する阿呆なら話は別だが。

 

「いかに個人が強かろうと国とは人という種族の群。それも他の動物ではあり得ないほど大量な。だというのに群を纏めたこともないガキに王位継承権を与える?いっそ貴族どもに反乱起こさせた方がまだ国のためになるだろうよ」

「そこまで。あんまり若い子を虐めるものじゃないわ」

 

 と、リーンが手をパンと叩き俺の言葉を止める。まあベルファストがこのまま滅びに向かおうと俺の知った事じゃないからどうでも良いのだが、しかし俺が言ってること何一つ理解できずにキョトンとしているガキがリーンの気になった相手、ねぇ。もう少し言ってやるべきか?

 

「ほらほら嫉妬しないの。確かに冬夜は興味深い存在ではあるけど、異性はもちろんペットとしてみるのも論外よ。バカな子ほど可愛いとは言うけど王位継承権を持ちかけている相手で遊べるほど暇ではないもの」

 

 俺が何か言う前にリーンがクスクス笑いながら頭を撫でてくる。

 リーンに此処まで言わせてまだ文句を言うほど子供でもない。リーンが俺の方が上だと言ってくれたし取りあえずこのガキに何かを言うのはやめる。

 

「ごめんなさいね?でも、この子が言っているのは何一つ間違っていない正論だと私も思うわ。子供が欲しくなったら言ってね?媚薬と排卵促進剤をあげるから」

 

 言外にさっさと新しい王位継承権持ち作れと持ちかけるリーン。俺はチラリと知り合いの女をみる。

 

「シャルロット、本来こういう忠告はてめぇがすべき事柄だろうが。何のための宮廷魔術師だ。王に忠言しろよ」

「ふぇ!?だ、だって……全部の属性使えて無属性魔法全て使える珍しい人が居たから、つい忘れて」

「無属性魔法全てだと?これがか?」

 

 と、冬夜とかいうらしいガキを指すとむっとした顔をしてくる。

 

「あの、すいません」

「あん?」

「僕が馬の骨とか、ガキなのは否定しません。でも、ユミナや国王陛下の我が儘姫や無能王という言葉を取り消してください」

「やだね。リーンも言ってたろ?正論だって……正しさを捻じ曲げたきゃ力を示しな。勝てばどんな奴でも正しさを振りかざせる」

「冬夜!こんな奴やっちゃいなさい!」

「ユミナさん達がかわいそうです!」

「冬夜殿がやらぬなら拙者が切るでござる」

「なんなら全員でも良いぜ?俺が勝つから」

 

 と、その言葉にこちらを憎々しげに睨んでくるガキども。大人たちは、何もいってこないな。俺の言うことに心当たりがあるのだろう。

 

「もうトーマったら。勝てるわけ無いじゃない………感心しないわよ?」

「つー訳で審判頼むなリーン」

「仕方ないわね。じゃ、場所を移しましょう」

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