異世界転生は妖精と共に 作:リーン様の椅子になり隊
ガキの屋敷の庭で向き合うガキと俺。
しかし広い屋敷だな。何でも公爵家の子女を救い妻の目を治し毒殺されかかった王を癒やして犯人を捕まえて貰ったらしい。
「辺境の領地ならともかく、仮にも貴族に殺されかかった後に与えるレベルかね?しかも我が儘姫まで住ませて………そんなに殺されたいのか?何か理由があんのかね………例えば──」
「炙り出したい、とか?そのための囮………にしても第一王女、しかも唯一の子の許嫁にするのはやりすぎだし、ユミナの顔が本気なのよねぇ………ちなみに毒殺方法はグラスに毒が塗ってあった、だそうよ。ミスミドに罪を着せようとした割に偽装工作はいっさいなしだったとか……」
「は?検査官買収してワインに毒入れもしなかったのか?いや、それ最終的に誰でも解ったことだろ?」
屋敷をみながらこの国の王族の迂闊さに、いっそ政治的な何らかの企みを疑うな。まあ、前回気まずげに顔を逸らした当たり、ないんだろうな?シャルロッテに言って、王家に政治の勉強させなおさせるか?
シャルロッテの言葉ならむげに出来んだろ。なんなら俺の権限で宮廷魔導師やめさせりゃ、仮にこの国が戦火にまみれても平気だろうし………。
「あの、もう始めて良いですか?」
「ん?ああ、すまん。ちょっと考え事をな……」
『あらぁ、余裕のつもりかしら』
『その余裕もここまでだ』
『その喉笛、今日こそ喰い千切ってくれる!』
ガキの言葉に正気に戻ると使い魔達がやる気だ。あれ、一応は神獣なんだよなぁ………向こうも何か殺す気らしいし、良いんだよな?好きにして──
「じゃあ、始めなさい」
リーンの言葉と同時に、虎が飛びかかってくる。その喉を突かんで、指に力を込める。
『ぐぅ!?』
「とりあえずお前からだ」
『ぐあぁぁぁ!?』
「琥珀!?」
爪を振るい逃れようとする虎の喉に噛みつく。毛皮は大して美味くないのでさっさと噛み千切るに限るな。そのまま剥き出しになった喉の肉を喰い千切って飲み込む。
「ふぅ、流石は神獣などと言われるだけあるな。もはや大した力は入らないが、味だけは極上だ………さて、虎より亀の方が食料に向いているが」
『調子乗ってんじゃねぇぞ!』
『喰らえ!』
「はっ!その程度、水遊びとかわんねぇよ!」
亀と蛇が放った水を同じく水で打ち払う。神獣とはいえ、俺がこの五百年どれだけ喰ったと思っている。
多少の苦労と狡が加われば、俺に敵は居ない。
『嘘ぉ!』
『馬鹿な!』
「実力差を見て解るようになれ……大方神獣などと崇められ王の座に胡座をかいていたんだろ?だから弱いままなんだよお前は………闇よ来たれ、我が望むは毒の吐息を持つ竜亀」
『ガハハハ!ひっさしぶりの出番だぁ!おおっとぉ?早速殺したい奴はっけーーん!』
「落ち着け」
『げぶら!?あ、兄貴何するんすか!殺して良いんすよね!?喰って良いんですよねぇ!?』
出て来るなり毒の吐息を吐いて亀に突っ込もうとする家の馬鹿亀の頭を蹴りつける。かかと落としだ。上半身が地面に沈み下半身が宙に浮いたタラスクはじたばた暴れて、次第に地面がぬかるみゆっくりと倒れ始める。ズボ、と頭が飛び出て六本の足を何とか地面に着けた。あ、地面が毒沼になってる。後で直しとかねーと。
「俺がまだ喰ってねーんだよ。使うのは灼熱の方だ」
『ええ~、兄貴毒喰っても死なねぇじゃないっすか』
「自分から毒喰うとリーンが怒るんだよ。つーわけでオラ行け、スリップ」
『ヒャッホー!』
タラスクの腹ににスリップをかけ蹴りつける。楽しそうに滑り出したタラスクはスリップのかかっていない六本足を器用に使い亀に迫る。さらにグルリと半回転して水を吐き加速する。
『は、速い!?』
『ぐぁ!』
ドゴォ!とダンプカーが正面衝突したような音を立てて亀が吹っ飛ぶ。その甲羅には罅が入り、しかしタラスクは無事だ。さすがリヴァイアサンの子………。親も親で硬かったからなぁ……。
「ま、あっちは亀どうし、こっちは人間同士楽しもうぜ」
「あ、アクセル!ブースト!クイック!」
「それは通じなかったろうが」
『うんめぇぇぇ!この亀、うめぇぇよぉぉぉ!』
『ぐああぁ!この、若造が───!あ、主よ、安心てください……我が障壁は、健在──うぐぅ!?』
『物理攻撃なら、ドラゴンにだって破れないわぁ………あぐぅ!』
「………黒曜、珊瑚……ありが──」
俺が殴りつけると障壁が砕け拳が腹にめり込む。ガキはそのまま吹っ飛び塀にぶち当たり瓦礫に埋もれる。
「冬夜!」
「冬夜どの!」
「「冬夜さん!」」
ドラゴン程度の攻撃に耐えられるから何だってんだ。こちとら200年ほど前に聖域から抜け出て好き勝手やろうとしていたドラゴンの群を余さず喰ってるんだ。さすがに
「タラスク、俺も喰う。代われ」
『兄貴、どうぞ』
蛇と亀もなかなか美味かった。
流石に殺すのは面倒なことになるだろうから回復魔法をかけておいた。
「まあ、分かりきった結果ね。玄帝だがコクヨーだか知らないけど、トーマにあっさりやられた虎と同格なだけですもの」
つまらないというように肩をすくめるリーンをメスガキ共とメイド達が睨みつける。リーンはふん、と鼻を鳴らした。
「1日2日で追い付ける強さじゃないのよ。トーマは最強になるために、どれだけ死にかけたと思っているの?本当……貴方どれだけ死にかけたか覚えてるのかしら?」
「………リーンと一緒に住んでた間は………100回?」
「15242よ、私が把握している100年だけでね」
ギロリと睨まれる。そんなに死にかけてたのか、まああの頃弱かったしなぁ……。
「で、でも!だからって、偉そうにするのは違います!500年も生きていれば誰だってスッゴく強くなれます!冬夜さんだって、500年も若いまま生きていたら………」
「長生きすれば強くなれるなら、妖精族がとっくに世界をものにしてるわ。500年鍛える?それを続けられるものがどれだけいるのかしらね?」
「まあそれに、俺は狡だからな。500年生きて、鍛えても俺と同じような強さにゃなれねぇよ」
「そうね。普通、死にかけて、殺させかけて、負けて、逃げ延びて、それでもまた強い奴や圧倒的な数の群に挑める奴なんて、いないもの………少なくとも私には冬夜にそれが出来るとは思えないわ。だって、彼は弱い奴としか戦ってないじゃない」
「そ、そんな事───!」
「それに、良く解らないけど冬夜も何か狡をしているんでしょう?急激に強くなる何かを………トーマだって急激にでこそ無くても人の限界を超えられる能力がある」
これがなけりゃ俺はとっくに死んでるものな。
「でもトーマは、それをズルいと思って、最強を目指したわ………自分と同じぐらい強い奴が、自分と同じように狡をしていると思われるのはあんまりだ、そういって、狡をしているんだから仕方ない、そう思わせる程強くなるって………本当、バカよね」
「ば、ばか……」
いやだって俺に迫るほど強かったり同じぐらい強かったり俺より強かったりして、俺みたいに狡をしているからだなんて言われたらそいつの努力が報われねーじゃん。だったら俺は、誰にも勝てないレベルになって、狡をしたら彼処まで強くなるって思わせねーと。
「冬夜のそれも、狡でしょう?だったら同じぐらいの強さを持つ奴が現れて、そいつまで狡してるって言われないように鍛えなさいな………まぁ、無理でしょうけど。冬夜ってその時その時で生きて1日先のことすら見てなさそうだし。それに冬夜にトーマみたいな命懸けの修行しろって言ったところで適当な理由付けて逃げるに決まってるわ……」
リーンはそういって歩き出す。俺も慌ててその後を追った。