「ん?」
刑務所の運動場で座り込んでいた金城は、周囲が異様なことに気付いた。
「何だよ……これ?」
『ずいぶん貧乏臭い空気だな、お前』
「⁈」
いつの間にか、自分がもう1人隣に立っていた。
「誰だお前?」
『元銀行経営者のお前だよ』
「銀行……?うっ⁉︎」
—————卑怯な事しか出来ない、可哀想な人よね
「…………」
『まあ、金なら今も多少は持ってるがな』
そう言ってシャドウ金城は、金城の前に札束を差し出す。
思わず金城は札束を手に取るが………
「ニセモンじゃねェか………」
子供BANK 1億円札、そしてシャドウ金城が描かれたニセ札だ。
『お前にとっての金なんて、そんなもんだろうが』
「…………」
『お前が金を欲しがっていたのは、金で居場所が買えるからだ。いくら手元にあっても、それじゃあ意味がねェ。お前の銀行にあった金は
本物でも偽物でも、たいして変わらない』
「……確かに、常に使い続けないといけない。実際手元には何も残っていないも同然かもな………」
『金を払えねェとすぐ全部消える。何が刈り取る番だ、結局は金を貢ぐ側じゃねェか』
「その通りかもな………」
『必死に金を貢いで、それで手に入れた居場所はどうだった?』
「………」
『分かってんだろ?あの居場所は紛い物だ。いい気分には浸れるが、安心して腰を下ろすことはできねェ。実際よく揺れるから、いつ墜落するかヒヤヒヤしてたぜ』
「自分で自分を騙して、しかもそのために必死で金を騙し取って……卑怯で可哀想な奴……その通りだな………」
《絶対……絶対に………》
「?」
《……世界を奪い取る!》
「怪盗団………」
『アイツら、お前よりよっぽど欲張りだな』
「…………」
『妥協する気なんか一切ねェ。紛い物で誤魔化されずに、欲しい物を必ず手に入れようとする。手段にまでこだわってだ』
「ああ、俺よりずっと欲張りで……正直で……堂々とした連中だ」
『この牢屋つう居場所の居心地はどうだ?』
「悪くはねェ。ここにいる全員が同じ犯罪者ってレッテル持ちだから、見栄を張る必要はねェし、惨めな思いもしなく済む。」
『…………』
「けど……やっぱり、ここには無いものを欲しいって思っちまう」
『やっぱり欲しい物は欲しいか?』
「ああ、疲れるだけってわかってんのに……納得できてねェんだ」
『お前の欲深さなら当然じゃねェか』
「そうだな。やっぱ、ちゃんと手に入れてみてェよ。自分の欲しいものをよ」
『ちゃんと手に入れる……アイツらみたいに正直に、堂々と……できんのか?貧乏でブサイクでバカ……そのうえ、犯罪者まで追加されたお前に?』
「貧乏でブサイクでバカ……昔からよくそう言っていたな。そう言って、レッテルを言い訳にして怠けてきた………」
『そうだ。その怠けがお前の欲望を歪ませた』
カッ!
そしてシャドウ金城の姿が変わる。
スーツを着ているのは同じだが、以前の成金じみたものではなく、汗水流して働くサラリーマンのようだ。
「相手が神様だからって妥協すんな!欲しい物なら、絶対手に入れろ!」
金城だけに限らず、怪盗団のターゲット達が言っていることも一理あるんですよね。
けど、実際は正しいことを言って自分の悪事から話を逸らそうとしてるだけ。
ペルソナ4真犯人もそうですけど、自分は特別だから何をしても許される、そんな考えが強すぎただけなんでだと思います。
正しい面もあったのに、残念だと思います。