機動戦士ガンダムSEED CONSEQUENCE   作:鞘華

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初めまして。鞘華と名乗っております。
こちらのサイトに投稿させていただくのは初めてになります。
宜しくお願いします。


BEFORE PHASE
BEFORE PHASE 1 ~英雄の罪~


 ――C.E.(コズミック・イラ)74年。

 月宙域での最後の戦闘の停止により、≪ブレイク・ザ・ワールド≫に端を発した戦乱は終わりを告げ、オーブとプラントは終戦への協議に入った。

 しかしながら、世界システムの骨子を形成していた秘密結社ロゴスは壊滅、曲りなりにも新世界の道を示した≪デスティニープラン≫も頓挫し、再建の道を歩み始めたものの、世界は未だ混迷の闇の中にあった。

 

 

 

 プラントでは、最高評議会の要請を受けたラクス・クラインが帰国。この彼女の決断には、ギルバート・デュランダル前最高評議会議長にその影響力を利用されたことに対する反省が、少なからず影響していた。

 またこの際、オーブ軍准将であったキラ・ヤマトも新たにZAFT(ザフト)の白服をまとい、共にプラントへ渡った。

 

 

 

 

 

   ◆ 機動戦士ガンダムSEED CONSEQUENCE ◆

     BEFORE PHASE 1 ~英雄の罪~

 

 

 

 

 

 鏡に映る自分と向かい合った時の違和感を、まだ完全には拭えていない真新しい軍服。

 艦のブリッジ全体を見渡せる位置にあるシートの座り心地にも、未だに慣れたとは言い難い。

 その辺りの個人的な問題については時間が解消してくれるのを気長に待つとして、それよりも、そろそろなんとかしてもらいたいのが……

 

「えっと……カルネアデス、発進して下さい」

 

 ……ガクッ。

 という力が抜ける音を立てて、俺達の乗るナスカ級高速戦闘艦カルネアデスが傾いた――なんつーのは、もちろん錯覚。ただし、少なくともブリッジ内にイイ感じに満ちていた程良い緊張感がゴッソリ削がれたことは、多分事実。

 だから、「えっと……」は余計だっての。ついでに、「発進して下さい」なんて言い方で決まんのは、お前の嫁の歌姫様ぐらいだろうぜ……。

 

「(……おいおい、隊長さんよぉ)」

「ぇ? ぁ、そうか……ごめん、ディアッカ」

「……いや、もういいわ」

 

 律儀に返されたその謝罪の言葉は、隊を率いる長らしからぬ腰の低さと相俟って、他の連中には聞こえないよう珍しく気を利かせて小声で指摘した俺の配慮ってやつを、思いっ切り無にしてくれやがった。

 軍の規律云々については、俺も偉そうに他人にあれやこれやと言える側じゃねぇけど、我等が新しい隊長さんときたら、方向こそ違うが多分、俺よりヒデぇ。

 

 ――キラ・ヤマト。

 MS(モビルスーツ)に乗せとく分には、コイツに敵う奴なんざどこを探したって見付かりゃしないだろう。ってか、もしかしたらMSの操縦なんて範囲を限定する必要すら無いんじゃねぇか? って気さえする。

 けど、このお人好し過ぎるぐらいの性格だけは、残念ながら他人の上に立つ立場に向いてるとは思えない。だから本来なら、最高評議会に加わったラクス・クライン専属の護衛なんかが適任なんだろうが……そりゃ流石に“露骨過ぎる”ってことか。

 確かに、同じコーディネイターといってもキラは他国の出身で、その上一時期は地球軍のMSパイロットとして、俺達ZAFTと正面から敵対していたこともある奴だ。そもそも、キラが白服を着てヤマト隊なんてモンができたことだって、面白く思ってない奴等はいるだろう。

 ……ま、そういう諸々の事情が考慮された結果として、俺が今ここにいるんだろうけどな。

 

 ――通達が届いたのは二週間前だった。

 修復されたミネルバが新しい旗艦に、併せてミネルバに乗ってた生き残り連中がジュール隊に配属されることになって、一部を除いた古参メンバーには心太式に異動が命じられた。

 この異動。最初に聞いた時はミネルバを搭載機やら搭乗員ごとジュール隊に組み込むのが目的なんだろうと思ったが、こうしていざ新しい隊で副長をやってみると、或いは追い出された俺達をヤマト隊に配属する方が本命なんじゃねぇかって気がしてくる。

 俺としては、ようやくイザーク・ジュール隊長様の補佐役から解放されたと思ったら、今度は別の意味で面倒な役を押し付けられてウンザリ、ってのが正直なところだった。

 

 

 

………

……

…。

 

 

 

「はぁ~……ったく、いい加減どうにかなんねぇのかよ?」

 

 定期巡回を終えてプラント本国に帰投後。

 新しく配備された機体を確認する為にMSデッキへ向かう途中、俺はワザと隣のキラに聞こえるように溜息を吐いてやった。

 

「気を付けようとは思ってるんだけど……やっぱり、まだこっちに来たばかりの僕が偉そうに言うと、あんまりいい気がしない人もいるんじゃないかとか、気になっちゃって……」

「いやだから、何度も言わせんなっての。ここはヤマト隊なんだぜ? 隊長のお前が、いつまでもそんな低姿勢じゃ――」

 

 言ってるこっちの耳にタコができそうな程繰り返してきたことを、もう一度改めて注意してやろうとした――

 

「――失礼します」

 

 ――が、その先の俺の言葉は、いきなり後ろから割り込んできた声に遮られた。

 

「僭越ながら、エルスマン副長。隊内での立場に相応しい言動や振る舞いということであれば、副長ご自身にも、いくつか改めていただくべき点がおありかと」

「ちっ……」

 

 いつの間にか俺達の後ろに、やや色素が薄めで癖のある金髪を肩にかかるくらいまで伸ばした、赤服の女が立っていた。

 

「今し方のお言葉も、副長というお立場を鑑みた上で、それでも隊長を前にして口にするには不適切な物言いが含まれていたと、少なくとも私にはそう聞こえました」

 

 ――エリ・ク・セシル。

 ヤマト隊には少数ながら、ジュール隊から異動して来た面子以外のメンバーもいて、この女はその一人だ。俺やキラとは違って規律だの何だのにやたらうるさいタイプで、見てるこっちの肩が凝っちまう。

 

「……はいはい、仰る通り。以後気を付けますよ」

 

 ったく、なんでこう極端な奴等ばっかなんだ……。

 

「お願いします。――それと、ヤマト隊長」

「ぇ……」

 

 一度訝しげな視線で俺を見た後、エリは今度はその矛先を、援軍が現れた気にでもなって油断してたらしいキラに向けた。

 

「先程のエルスマン副長のご指摘、内容に限って言えば私も同意見です。ZAFTの兵士に階級の差はありませんが、それは指揮系統が不要であるという意味ではないはずです。ヤマト隊長には平時より、この隊の指揮権を有しているという自覚を持ち、同時にそれを我々隊員に示していただきたいのです」

「は、はい……ぁ、いや、うん。わかった、気を付けるよ」

「ご理解いただけたのでしたら、申し上げた甲斐がありました。では、私はこれで失礼致します」

 

 一方的に俺達を頷かせたエリは、その場でクルリと180°反転して、俺達が向かうのとは逆方向に通路を進んで行った。

 

「アイツ、わざわざ今の小言を言う為に追い駆けて来たのかよ……」

「……」

 

 思わず声に出してぼやいちまったが、キラからは何も反応は返って来なかった。

 不思議に思って隣を見ると、もうエリの姿も消えた通路の先を、キラがジッと見つめていた。

 

「……ディアッカ」

「あん?」

 

 二股かけて修羅場、なんてのは勘弁してもらいたいもんだが……そんないらん心配をしていると、キラが通路の先から視線を外さないまま俺を呼んだ。

 

「彼女……エリさんって、ずっとプラントにいたのかな?」

「は? んなこと俺が知るかよ……見覚えでもあんのか?」

「よく、解らないんだけど……でもなんだか、この隊で最初に見かけた時から、前にもどこかで会ったことがある様な気がしてて……」

「ふ~ん……」

 

 この時俺は、そのキラの言葉を、何かの勘違い程度にしか考えていなかった。

 

「お前、そうやって女口説くのかよ?」

「へ? い、いや!そんなんじゃ、なくて……」

 

 そして結局この先もずっと、その本当の意味を知ることはなかった。

 だから――

 

 

 

“もしもあの時、俺がキラの言葉の本当の意味に気付いていたら……!”

 

 

 

 ――そんな、後悔の念に駆られることすらなかった。

 

 

 

………

……

…。

 

 

 

 ZGMF-XX008 ディジェキャプチャー。

 カルネアデスのMSデッキに搬入された機体は、キラの新しい搭乗機だった。

 なんでも“MSの戦闘支援用AI開発の為にキラの操縦データを収集する”とかいう目的で配備されたらしいが、そもそものところは“NJC(ニュートロンジャマーキャンセラー)を搭載したフリーダム”の代わりの機体ってことだろう。

 

「お前がこっち系の機体に乗るってのは、ちょっと違和感あるけどな」

「うん……」

 

 それは単純に見た目の話。

 今までキラが乗ってたストライクとフリーダムの外見はどっちも連合のG兵器系統だったのに対して、今回キラの機体として用意されたディジェは、全体的にジンやザクなんかのZAFTの量産機に近いデザインだってことだ。

 

「けどま、ZAFTの白服の機体って意味じゃ、それらしいのかもな」

「うん……」

「……?」

 

 二度続けての気の無い相槌が気になってキラの視線を追ってみると、その先にはディジェではない別の機体があった。

 

「ザクの方が良かったのか?」

「ぇ? ぁ、いや、そうじゃなくて……あの肩」

「肩?」

「うん。どうしてあそこのパーツだけ、色が違うのかな、って……」

 

 そう言われて改めて見ると、その機体はほぼ全体が通常の緑系統のカラーリングだったが、右肩のアーマーだけが橙色に塗装された、いわゆる≪オレンジショルダー≫のザクウォーリアだった。

 

「ああ、アレは……」

 

 そこで俺は、一つ厄介なことを思い出した。

 

「ディアッカ……?」

 

 近くに誰かいないか軽く周囲を確認してから、キラに小声で続きを伝える。

 

「(……アレはハイネって奴の機体に使われてた、パーソナルカラーだ。で、そいつはミネルバに配属されて、ダーダネルス海峡で戦死したらしい)」

「(っ……!?)」

 

 流石に今度はこっちの意図に気付いてくれたらしく、キラは驚きを表情に出しこそしたが、声の方は堪えてくれた。

 

「(なんか、心当たりあるか?)」

 

 

>お陰で戦場は混乱し……お前のせいで、要らぬ犠牲も出た<

 

 

「(……うん)」

「(ちっ、マジかよ……)」

 

 ダーダネルス海峡でミネルバが地球軍とオーブ軍の共同艦隊と交戦した戦闘には、アークエンジェルも介入していた。つまり、キラもフリーダムに乗ってその戦場にいたことになる。

 面倒なことにならなきゃいいが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……けど、この時既にプラントの中で広がり始めていた闇は、“キラを知ってる俺”なんかが考えるより、ずっと深いもんになってやがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(キラ・ヤマト。当代敵無しとも音に聞こえる、あのフリーダムのパイロット……)

 

 

>ハイネが、戦死……!?<

>はい……ダーダネルス海峡で、フリーダムとアークエンジェルが乱入して来たそうで……<

 

 

(アイツのせいで、ハイネは……!)

 

 

 

 

 

to be continued …




『投稿』ボタンをかなりビビりながら押した初投稿でした。

今回は『BEFORE PHASE』ということで、本編に入る前のお試し的な話になります。
もしご興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたら、今後投稿させていただく予定の本編の方も覗いていただけたら嬉しいです。
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