星を渡れば   作:きど

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終わりの始まり

もう少しだ…あと少しで、敵の追撃を撒き最後の星まで辿り着く。

 

私のトリオンも舟のトリオンももうないが、辿り着きさえすれば問題ない。

いや…辿り着くだけでは彼らの面倒を見て貰えないかもしれないが、話に聞く限りではこの最後の星はよい国のようだ。

もし私が間に合わなくとも期待するほかない。

 

追っ手がレーダーから消えた。上手く撒けたようだ…

フォルッツの改良したこの舟は魔法が如く敵の眼を眩まし神出鬼没に星々を翔び廻る。トリオンの消費量が多いところがたまに傷だが、ここまで来れたのも彼の技術があってこそだ。

 

「ありがとう、フォルッツ。最後の星に着いたら君には勲章でも贈ろう。いや…新しい機材や研究所の方が君は嬉しいだろうな」

 

人付き合いの苦手な彼だが、うつむいて頭をかき不承不承ながらも了承している姿が振り返らずとも目に浮かぶ。

全員で希望を持ってここまで来た。

満身創痍だが、目的地までならまだ走れる。

 

「最後の星まではあと4時間ほどだ。敵はまだいるかもしれんし気は抜けん。トリオンもギリギリだし、このまま最短で向かう。その間に下船の支度を整えこの長い旅路に別れを告げよう」

 

 

 

 

 

 

 

トリオン消費を抑えるため、灯りがモニターから発せられる光のみの薄暗い部屋で#1#はひとりで立っていた。

モニターはあと8分を表示したところだ。

 

船員全員を名簿と照らし合わせ確認し、もしもの時のために全てを詳細に記録したデータも先程全て入力し終えた。

トリオン体ではあるが一応身支度を整え異星の者と会う準備も整えた。

ただ真っ直ぐに最後の星を見つめるその姿は、凛としており王族のような気品すら感じられた。

 

長かった…あまりにも長すぎたこの旅もやっと終わりを迎えられる。この旅団の団長としての責務もやっと終わる。

#1#はまさしく肩の荷が降りた気分だった。

トリオン体ではあるが、本当に肩が軽くなったような気もする。

達成感と喜びと、そしてこの仲間との本当の旅の終わりに悲哀さえ感じていたが…今はそれを分かち合う相手も居なかった。

 

感慨にふけっているうちにモニターには残り3分の表示が。

気を引き締め直し、最後の任務を遂行すべく全員が集まっている場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

先程確認した時と変わらず、全員きっちり整列していた。

こんな時に限って気の利いた言葉も出てこないのが悩ましい。

 

「皆、今までありがとう。ここまで来られたのはこの舟にいた全員のお陰だ。不甲斐ない団長だったが、それだけは誇れる。この気持ちを余すことなく伝えたいが、それ以前に全員が同じ気持ちであると私は信じている」

 

目を閉じて今までの旅と仲間の顔を思い浮かべながら、大切に言葉を紡ぐ。

 

「この旅の終わりを嬉しくも寂しくも思う。………みんな、本当に…ッ!?」

 

最後の言葉を発しようとした瞬間警報が鳴った。

 

『トリオンが供給されていません。衝突まであと5秒』

 

慌ててモニターを確認する。

よかった…ゲートは開けたようだ。

そのゲートを通り抜けた先でトリオンがなくなったと…少し格好が付かないが、ギリギリのタイミングで助かった。

 

この星の者には申し訳ないが、数十メートルの落下程度この舟には問題なかろう。

轟音と共にものすごい衝撃が来るが船内は無事だった。

トリオン体であるし怪我する者もいない。

 

不時着後も警報音が聞こえるが、どうやら船外からの音のようだ。

連絡手段がなかったとはいえ敵襲だと思われているかもしれないな…

まあ、こんなボロボロの舟を見ればそうでないと思ってくれると祈ろう。

 

 

深呼吸をして傾いた船内を歩き出口へと向かう。

杖を携えて扉を開けるスイッチを押そうと手を伸ばせば、自分のトリオン体のヒビが視界に入った。

 

構うものか。

 

 

 

 

 

 

 

久々に陽の光を浴びた気がする。

外へ出ると武器を持った人間が何人か取り囲んでいるが、今にも斬りかかろうという者はいない。

正面から薄い空色の色眼鏡をかけた青年が近付いて来る。

 

私も彼の方へ歩み寄り、一定距離を保ったまま立ち止まり足元にゆっくりと杖を置いた。

杖を持つ手にも亀裂が走る。

 

「私は貴殿らと敵対する者ではない。まずは話を聞いて頂けぬだろうか」

 

周囲の者たちの空気が変わる。

正面の青年が少し眼を細め確信を得たような口調で周囲に向かってか話す。

 

「だから言ったでしょ。戦闘は70%ないって。残りの30%もこの舟を追って来た奴らとか、俺らがなんかしちゃった場合だって。もう安心だ。今確定した…戦闘はない」

 

そのまま私の方へ歩み寄り私の目を見てこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

「俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

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