星を渡れば   作:きど

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王国編1

物心ついた時には、暗くてジメジメした場所で暮らしていた。

最もそれは後になって知ったことで、その時の自分にはそれが暗い場所だともジメジメした場合だとも感じる知識はなかった。

 

初めて明るい場所に出た時、目がチカチカして頭が痛くなった。

俯いて歩いていたので頭上に広がる青い空も見えてはいなかった。

 

初めて喉が引き攣るほど空気の乾燥した場所に行った時など、毒でも回って呼吸が苦しくなったのだと思った。

 

とにかくその暗くジメジメした場所で私は世を偲び生きていた。いや…生かされていた。

 

 

 

私の世話をしてくれるフェリネースという女は、家事の腕前は立派だったが病で目があまり見えないらしかった。

追い出されるようにしてここへ来たらしい。

本人はそれでよかったと言っていたが、あの事件がなければ今も王宮で宮仕えができていただろう。

 

フェリネースが王宮を出るきっかけとなったその事件…国王の暗殺事件について私がはじめて聞いたのは、私が5歳になった日の夜だった。

 

「ユージーン様…このクルレオ、王国に仕える騎士長の一員として今こそ偽りなき真実をお伝えいたします。殿下が5歳になった暁にはこれをお伝えする役目を王より仰せつかっておりました」

 

稀にここを訪ねて来る不惑ほどの男が、仰々しい仕草で傅いてそう言った。

その男が話した話は本棚の上から3段目、右から14番目にある歴史書の内容に似ていた。

 

自分はこの国の王の子で、国王は王位簒奪のため殺されたという。

父はたいそう立派な国王だったそうだ。

臣下や国民には優しく自分には厳しい絵にかいたようなよい国王。

その上、戦さ場に立てば百戦錬磨の天下無双という鬼神っぷり。

その国王には幼少のころから互いを支え合って来た宰相が居たらしい。

 

宰相は父が国王に即位してからも忠誠を尽くし、その頭脳を以てして様々な戦場で武勲を挙げた。

彼らは多くの勝利を収め、その信頼は永遠のように思われていた…

 

しかし、いつから企てていたのか宰相は敵国と内通し謀反を起こした。

無論そんなことをすれば国民も黙ってはいない。

彼はその結託していた敵国の相手も裏切り、国王を討ち取った内通者ごと敵を殲滅した。

宰相はその狡猾さを以てして、側から見れば国王の仇討ちをした国の英雄となった。

 

母は自分を産んですぐに死に、新たに国王に即位した国王の弟…つまりは私の叔父もただただ優しいような御仁で、戦や政治の実権は宰相が握ることとなった。

そんな叔父は王として国民からたいそう不況を買ったそうで、宴の席で国民の前に姿を見せた隙に暗殺されたそうだ。

騎士長はその暗殺も宰相の指示であったと考えていたようだが、やはりその暗殺を企てた者たちも宰相の手によって速やかに処刑され真実は闇の中へ。

 

宰相はたったひとり残された王族の私も排除したかったのだろうが、立て続けに王家の者が死んでは悪目立ちする。

病気療養のためとして国の僻地へと追いやり、かくして宰相は国王の名さえ冠してはいないものの、この国の実権を握ることとなったのであった。

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