僅かな光も反射し輝くような彼の毛髪から滴る水滴を目で追えば、膝や腕をすりむいていることに気がつく。
彼は戦場から来たのだから怪我をしていてもおかしくはないのに…なぜ気付かなかったのか。
手当するから座るよう促すと、大人しく1番近くの椅子に座った。
まだ警戒しているようだが手当ぐらいはさせてくれるらしい。
エメラルドの瞳がじっと私の一挙手一投足を見つめていた。
手当を終え楽にしているよう言うと、1番大きな腰掛けに横になり背もたれの方を向いてしまった。
寝ているのか考え事をしているのかは分からないが、しばらくは様子見をすると決めたのでそのままにしておこう。
夕餉の用意に戻り仕込みを続ける。
私も侍女も無口な人間なのでいつも特に会話はない。
比較する対象が居ないので私には無口だと分からなかったが、さきほどザールを連れて来たアルバーノに昔ふたりとも無口だと言われたのだ。
騎士団の人間は私に気を使っていつもたくさん喋ってくれているのだと思っていたが違ったらしい。
煮込んでいた料理もいい具合になった。
夕餉の準備が終わったので一応ザールが起きていても寝ていてもいいよう、少し離れた距離から声をかける。
すぐに起き上がったのでやはり眠ってはいなかったらしい。
料理を運びいつも通り祈りを捧げてから食べるが、ザールは他国の人間なので何やら別の動作をしてから黙って食べ始めた。
我々の祈りはこの星の神に対する祈りだ。
彼は彼の星の神に祈って食事をするのだろうか…いつか聞いてみたい。
食事が終わり湯浴みも済ませ、ザールの簡易的な寝床を作ったので寝るように勧める。
もしまだ眠くないようであればここには本くらいしかないが、家の中のものを好きに使うよう言って自分はまた1番上に積まれた本を手に取った。
この国の資源のひとつであるトリオンについての論文のようだ。
特にトリオン量の多い人間がその全てを注ぎ込み作り出すブラックトリガーについての研究だ。
大体は他の文献で既に読んだようなことだったが、ひとつ興味深い記述があった。
ブラックトリガーが身体機能に与える影響についての部分だ。
身体機能に密接に関わるようなブラックトリガーを使用した場合、使用者には身体的に変調を起こすような異常が見て取れるというものだった。
毛髪の色、瞳の色、爪の色、言動の変化から、本来人間にはない身体的部位の造形まであるという。
私は自分の真っ白な髪を一房摘み上げて、また読書に戻った。
日照時間が短いので活動時間が短いです。
故にお昼ご飯はなし。
江戸時代かよ。