どうしてウツロイドと合体しないんだ……? 作:GT(EW版)
ウツロイドとの合体――それはポケモンバトル界隈に吹き込んだ新たなる風だった。
まるでリーリエと共に旅をしていた頃のような優しい心地に包み込まれながら、ウツロイドと合体したムーンはクリアになった思考で目の前のバトルに集中する。
どんな相手であろうと負ける気がしない。負ける筈がないのだ。
ポケモンたちの魂が集っている、この姿なら!
「いくぞクワガノン! ラプラスに攻撃!」
「だがせんせいのツメを凌ぐ素早さはない! ラプラスの絶対零度を受けろ!」
せんせいのツメが煌いたレッドのラプラスが一瞬にして次の動作に移り、絶対零度を発動する。
しかし、いかにレッドが鍛え上げたポケモンと言えど、目の前でなんかとんでもないことをやらかしたムーンの姿はラプラスの目には相当ショッキングに映っていたに違いない。
即座に気を取り直したのは流石であったが、その動作は最初に放った絶対零度よりも僅かに乱れていた。
そしてその乱れが、クワガノンに一抹の勝機を与える。
これまで必中の精度を誇っていた絶対零度の狙いが、ほんの僅かにズレたのである。
「なに!?」
「これが俺たちの絆パワーだ! オーラエナジーMAX!」
ラプラスの絶対零度は初めて目標から外れることになり、その瞬間、クワガノンの身体を得体の知れないオーラが包んだ。
それはウツロイドと合体したルザミーネのポケモンも放っていた、ウルトラビーストが発する特殊なエネルギーの表出だった。
「雷ッ!!」
そして、迸る電気タイプ最大級の一撃がラプラスを襲う。
ウルトラオーラの力によってパワーアップしたクワガノンの攻撃は、通常時よりもやや高まっているように見えた。
効果抜群でその攻撃を身に受けたラプラスは、相手の力を讃えるような美しい鳴き声を上げた後、笑みを浮かべながらその場に倒れ伏した。
「ラ、ラプラス、戦闘不能!」
「ラプラス、悪いな……だがお前の犠牲は無駄にしないぜ!」
審判がラプラスの瀕死を告げると、レッドが帽子のつばを締め直しながら頬を緩める。
それは想像以上の進化を遂げた後輩の成長に対して、喜んでいる様子であった。
しかしその表情は、すぐに戦いに赴く戦士のものとなる。
「大した奴だぜムーン……ならコイツはどうする? 出でよ! リザードン!」
「ドォン!!」
続く二体目のポケモンは、二戦目の時と同じリザードンだった。
前回は彼が持つひかりのこなに翻弄され、ムーンのポケモンは一撃もダメージを与えられずに全滅することになった。
しかし、二度も同じ手に掛かるつもりはない。
「クワガノン、続けていくぞ!」
「ジジジ……ッ」
クワガノンの素早さは低く、リザードンから先手を奪うことはできない。
そして虫タイプのクワガノンに対して、リザードンは炎タイプだ。おそらくは一撃でその体力を奪いに掛かるだろう。
しかし、ムーンはあえてポケモンの交代は行わず、クワガノンをそのまま続投させた。
何故ならばクワガノンは虫タイプであっても、飛行タイプであるリザードンの弱点を突ける電気タイプでもあるからだ。
一撃を与えれば勝つことができるのは、こちらも同じ。そしてその一撃を与える為の手段が、今のクワガノンには備わっていた。
――それがクワガノンに持たせている道具、「きあいのタスキ」である。
体力が全快の時、持たせたポケモンの体力を一度だけ瀕死寸前で持ち堪えさせるこの道具の効果によって、先手を奪ったリザードンの炎技を耐え抜く。
その後で、リザードンに対して電気技で反撃するのだ。
ひかりのこなへの対策には、必中技「電撃波」を覚えさせている。クワガノンの火力ならば、10万ボルトや雷ほどの威力は無いにせよその一撃でリザードンを倒す可能性は十分にあった。
しかし、そこでムーンは見通しを誤った。
それはリザードンの持ち物が「ひかりのこな」であることが前提の上での対策だったのだが、今のリザードンが持っていた道具は全く別のものだったのだ。
「いくぜリザードン! 蒼き炎が、龍の鼓動を呼び起こす! 未来への希望を照らし明日を切り拓け!」
「何ッ!?」
レッドが右腕を掲げると、その腕に巻いていたシルバーが眩い光を放つ。
あれは……メガバングル!? それに気づいたムーンはその時、リザードンの腕にもまたシルバーが巻かれていることに気づいた。
それはメガストーン――リザードナイトXだった。
「メガシンカ! 現れろ、メガリザードンX!!」
無駄に仰々しい詠唱を経て、黒き龍へと姿を変えたリザードンが姿を現す。
メガリザードンX――飛行タイプを捨てて、ドラゴンタイプとなったリザードンの究極形態だった。
「メガシンカ……!」
「ムーン! お前がツメラプラス、こなリザードンを突破してくることは読んでいた! だから俺は、俺たちも今度は本気でお前のポケモンを迎え撃つぜ!」
「……それは、光栄です……!」
今回のリザードンはひかりのこなを持たせておらず、メガストーンを持たせていたのだ。
せっかくの対策を無駄にされたことでムーンの計算は破綻することとなったが、それでも一筋の汗を垂らすムーンの顔には闘気の笑みが浮かんでいた。
とんでもない強敵を前にして、トレーナーとしての本能が喜びの声を上げているのだ。それが身体中のアドレナリンをかき乱し、血液を沸騰させる!
その昂ぶりは、到底抑えられそうになかった。
「いくぜメガリザードン! フレアドライブッ!」
「っ、クワガノン! 電磁波だ!」
メガリザードンXが先手を奪い、炎の物理攻撃最強の一撃がクワガノンの体力を一気に削っていく。
しかし持ち物「きあいのタスキ」の効果によって瀕死寸前で持ち堪えることができたクワガノンは、返す電磁波の一撃でリザードンを麻痺させることに成功した。
ドラゴンタイプとなったメガリザードンXに電気タイプの技は今一つ。炎タイプでもある以上、元から虫タイプの技はほとんど通用しない。
故にムーンは、後に続くポケモンたちの為に状態異常を与えることを選んだのだ。
「とどめだ! ドラゴンクロ―!」
「クワガノン……!」
麻痺状態となり素早さが半減したメガリザードンXだが、それでも素のクワガノンよりも素早さは僅かに上回っている。
瀕死寸前状態だったクワガノンはとどめの一撃を受けるとあえなく戦闘不能となり、ウツロイドと合体したムーンもまた一体目のポケモンを失うこととなった。
「よくやったクワガノン! お前の打った布石、無駄にはしない! いけ、ルガルガン! お前に決めた!」
「クゥーン!」
ラプラスを倒した上、続くリザードンを麻痺状態にさせたのだ。
先鋒の役目は十二分に果たしたと言えるクワガノンに労いの言葉を掛けてボールに戻すと、ウツロイドと合体したムーンは二体目のポケモン「ルガルガン(まひるのすがた)」を繰り出す。
性別は雌。彼女もまたムーンと共に島巡りをした初期メンバーの一体だった。
「いくぞレッドさん! これが俺たちの力だ!」
「来い! 全力で受け止めてやる!」
クワガノンが電磁波を喰らわせてくれたおかげで、ルガルガンは余裕を持ってリザードンから先手を奪うことができた。
そしてその一撃に、ウツロイドと合体したムーンは全ての力を注ぎ込んだ。
「Zパワー発動! 見よ! これがアローラ、王者の舞だ!」
「なにッ!? 王者の舞だと!?」
王者の鼓動が今ここに烈を成す!
ウツロイドと合体したムーンはその身体でマッスルポーズを取り、ルガルガンに持たせたZクリスタルにソウルエナジーを注ぎ込む。
メガリザードンXは多彩な技範囲と高火力良耐性を併せ持つ、メガシンカポケモンの中でも特に強力な力を持つポケモンだ。
場に残しては危険。故に、一撃で仕留める必要があった。
このアローラに古くから伝わる力、Zクリスタルが生み出すZ技ならばそれが可能である。
故にウツロイドと合体したムーンは虎の子の一撃を、この場で放つことに迷いはなかった。
「ワールズエンドフォォォールッッ!!」
ルガルガンが渾身の力を解放し、隕石のような巨岩が落下してくる。
岩タイプのZ技、ワールズエンドフォール。どれもこれも命中率の低い技ばかりの岩タイプの技の中で、最も安定かつ強力な威力を誇る魂の一撃。
その力はメガシンカの力を得たメガリザードンXさえも押し潰し、効果抜群のダメージでその体力を全て奪い尽くしていった。
「……すげぇよ、ムーン」
メガシンカの状態が解かれ、戦闘不能になったリザードンをボールに戻すレッド。
彼が真っ先に紡ぎ出したのは、本気を出したリザードンさえ見事に突破してみせたムーンへの賞賛だった。
これで二対一。残すレッドのポケモンは一体のみとなり、ウツロイドと合体したムーンは遂にバトルレジェンドを追い詰めたのである。
しかしウツロイドと合体したムーンの表情に油断はなく、追い詰められたレッドの顔にも焦りはなかった。
ただ静かに、ムーンは最後のポケモンの登場を待ち構える。
「俺はお前と出会えたことを感謝するぜ! このアローラに来て本当に良かったと!」
「……俺も、あんたみたいなトレーナーと戦えて嬉しいです。こんなに楽しくて、滅茶苦茶なバトルを、ずっと待っていたのかもしれない」
「ああ! 本当にポケモンバトルは最高だな!」
お互いの技量を称え合い、ウツロイドと合体したムーンとレッドはこの出会いに感謝する。
知略と精神を張り巡らせたギリギリのバトルの中で、二人は分かり合えたのだ。
これが純粋な心でポケモンバトルをするということ。
今この瞬間、ウツロイドと合体したムーンはポケモンバトルが楽しくて仕方が無かった。
そんなムーンの前で、レッドは三つ目のモンスターボールを解き放った。
「だが、この勝負は俺が貰う! 出でよ、ピカチュウ!」
ボールの中から現れたのは、赤いほっぺと愛くるしい円らな瞳、黄色い体毛が特徴的なネズミポケモン「ピカチュウ」だった。
おそらくこの世界で最も人気なポケモンであるその登場に、この試合の審判を務める女性役員から黄色い声援が上がった。
「きゃあああ! ピカ様キター!」
「ピ~カピ~カ、チュウー!」
恐るべきはその女性人気である。
この白熱したバトルに登場した可愛らしいポケモンの姿に喜ぶ彼女に、ファンサービス精神旺盛なレッドのピカチュウはピカピカと右手を振る。
しかし次の瞬間にはキッとルガルガンの姿を見据え、身体中から黄金色の光と青白いスパークをバチバチと撒き散らしていった。
ピカチュウとしては考えられない、ただならぬ威圧感。超戦士ピカチュウとも言える威容である。
その可愛らしくも恐ろしい姿に、ウツロイドと合体したムーンは改めて口元を引き締め直した。
「これが俺の切り札にして最強のポケモン! ピカチュウ!」
「ピッピカチュウ!」
セキエイリーグ殿堂入りトレーナー・レッドの切り札、それがこのピカチュウである。
ピカチュウの額にはハチマキが巻かれており、その時点でウツロイドと合体したムーンはこの敵もまた自分の常識が通じない相手であることを察した。
「あれが……レッドさんのエースポケモン……!」
最強の手持ちはメガリザードンXではなかったのだろう。
そんな彼の最後の敵を前に、ウツロイドと合体したムーンは即座に総力を挙げて挑み掛かる戦術を選んだ。
「ルガルガン、岩石封じだ!」
この敵とは、間違いなく長期戦になる――!
ピカチュウが頭に巻いているハチマキはおそらく「きあいのハチマキ」。瀕死になるダメージを受けた時10%の確率で発動し、体力をギリギリで持ち堪える道具だ。
きあいのタスキと異なる点は発動の回数こそ不確定だが何度でも発動することができ、反動や混乱状態による自傷ダメージさえも持ち堪える点だろう。
発動確率は10%と低いが、その数字がレッドの前では何の意味もなさないことを既にウツロイドと合体したムーンは見抜いていた。
故に、一発で仕留めきれないことは承知している。
だからこその岩石封じによる素早さの低下を狙ったのだ。
「手堅く素早さを下げたか……だがそれだけじゃ俺のピカチュウは倒せないぜ!」
「ピカピカ!」
ルガルガンの岩石封じをまともに受けたピカチュウは、一撃でボロボロになりながらも当然のように立ち上がり、反撃に打って出る。
この時、やはり当然のように「きあいのハチマキ」の効果が発動していた。
「放て! ボルテッカァァァァ!!」
「チュアアアアアアッ!!」
ピカチュウ一族のみが覚える電気タイプ最強の物理技、ボルテッカーが炸裂する。
本来であれば反動のダメージでピカチュウは倒れていたことだろう。
しかしこれもまたレッドのピカチュウは当然のように瀕死寸前で持ち堪え、ダメージは攻撃を受けたルガルガンにのみ与えられた。
「ル、ルガルガン!?」
そしてその一撃によって、ルガルガンは倒れた。
真昼のルガルガンの防御力は決して高くないが、ピカチュウの攻撃力もまた高くはない。
技の威力は高くとも一撃だけならば持ち堪えられると思っていたが……そのダメージはウツロイドと合体したムーンの計算を上回り、一撃でルガルガンを戦闘不能に追い込むこととなった。
「電気玉でもないのにこの威力……急所に入ったのかっ!」
恐るべし、ピッピカチュウ!
ウツロイドと合体したムーンはこの小さなアイドルポケモンがレッドパーティの切り札たる所以を垣間見ることとなった。
得意げに、レッドが語り掛ける。
「どうだ? これで勝負はわからなくなっただろ?」
「……ええ、でも、俺にはコイツがいる!」
これでウツロイドと合体したムーンも残り一体へと追い込まれ、勝負は一対一のイーブンとなった。
相手は瀕死寸前。しかしきあいのハチマキを持っている。
正真正銘最後の戦いとなるこの一戦に唸りを上げながら、ウツロイドと合体したムーンは最後のポケモンを繰り出した。
「いけ! ガオガエン!!」
「ガアアアッ!」
大将に選んだポケモンはプロレスラーのような姿をした炎ポケモン、「ガオガエン」。
ムーンにとっては手持ちのポケモンの中で最も付き合いが長く、最初期から島巡りを共にしたパートナーポケモンだった。
「あんたにとってのパートナーポケモンがピカチュウなら、俺にとってのパートナーはこのガオガエンだ! 俺たちの絆を合わせた力が今、新たな未来を拓く!」
ここまで来たら後は意地と意地のぶつかり合いだ。
ウツロイドと合体したムーンは、このガオガエンと共にこの戦いを制することを熱く誓った。
そんな彼ら姿から絆の深さを感じたのか、レッドが満足そうに頷き、特に意味も無くキメ顔で電気のZポーズを取る。
「ふっ……いくぜ相棒!」
「ピカピー!」
最後の戦いは、パートナー同士の攻防となった。
ルガルガンの岩石封じによってピカチュウの素早さを下げていたことによって、先手はガオガエンが奪うことができた。
そこでウツロイドと合体したムーンが下した命令は、「大文字」のみ。ピカチュウの特性が相手を麻痺状態にする「せいでんき」であると仮定した場合、物理攻撃で挑むのは危険だと判断したからだ。
今ガオガエンに覚えさせている特殊攻撃はこの大文字のみ。命中率は85%とやや不安定であるが、ウツロイドと合体したムーンはこの攻撃が命中することを一切疑っていなかった。
同じように、レッドもまたピカチュウのきあいのハチマキが発動することを一切疑っていない。
そしてそんな彼らの思惑通り、ガオガエンの大文字はピカチュウに命中し、ピカチュウはそれをきあいのハチマキで持ち堪え続けることとなった。
その後、反撃に転じたピカチュウがボルテッカーでガオガエンの体力を削ると、反動のダメージを再びきあいのハチマキで持ち堪える。ハチマキに命があれば、とっくに過労死していた展開である。
そんな二匹はお互いに一進一退の攻防を繰り広げ、白熱した死闘を繰り広げた。
「ガオガエン! 未来を切り拓け!」
「甘いぜ! 再びきあいのハチマキの効果を発動ッ! ピカチュウの体力は1で持ち堪える! 反撃のボルテッカーを受けろ!」
「耐えろガオガエン! 俺達の戦いのロードは終わっていない!」
「ガオガァァァァ!!」
「チュアアアアッ!!」
ピカチュウ対ガオガエン。
ボルテッカー対大文字。
今この状況においては駆け引きなど必要無い。小細工抜きの純粋な力のぶつかり合いがそこにあった。
それはまるで、子供の喧嘩のような頭の悪い戦い方にも見えるかもしれない。しかしそれが、それこそがこの新次元のバトルで行き着いた彼らの答えだった。
――そして膠着した両者の戦いは、ガオガエンの放つ三発目の大文字をピカチュウが耐えたことで動き出す。
「ピッ!?」
「なに!? 火傷状態だと……!? まさかお前は、これを狙って!」
「ああ、その通りだ! 最後の最後で確率論が俺に働いた……いや、俺たちの絆があんたたちの上を行った!」
「ふっ……それはどうかな!」
「なんだと!?」
大文字には10%の確率で相手を「火傷」状態にする特殊効果がある。それが今、ピカチュウの身を襲ったのである。
いかにきあいのハチマキと言えど、火傷のダメージから逃れることはできない。
つまりピカチュウが次に繰り出すであろう三発目のボルテッカーを耐えることさえできれば、ピカチュウは火傷のダメージで倒れ、自動的にガオガエンの勝利となるのだ。
その上ガオガエンには、次の一撃を確実に耐え抜く算段があった。
「馬鹿なことを……! 火傷状態はあんたのピカチュウの攻撃力を半分にする! 俺のガオガエンなら、次のボルテッカーを耐える! 耐え抜いてみせる!」
「フハハハン! 俺のピカチュウの攻撃技は、ボルテッカーだけじゃないんだぜ? 特殊攻撃最強の攻撃、「雷」も当然覚えさせている!」
「なん、だと……!?」
ガオガエンの体力はおそらく半分を超えて、残るは三分の一と言ったところだ。
次にピカチュウが放つ一撃がボルテッカーであればほぼ確実に耐えられる筈であったが、火傷による攻撃力低下の影響を受けない「雷」となれば耐えられる確率は五分五分になる。
「いくぜピカチュウ! これが俺たちの、最後の攻撃だ!」
「ピ~カァ! チュウゥゥゥゥゥー!!」
急所に当たれば、間違いなく落とされる……!
そしてレッドなら、間違いなく当ててくる筈だとウツロイドと合体したムーンは読んでいた。
だがそれでも、ムーンは諦めない。
ただ一心、この勝負に負けたくない思いで、彼は最後の一撃の行方を見届けた。
「っ、ガオガエン! 耐えろ、耐えてくれぇ……!」
その祈りの中で、閃光が広がっていく。
ピカチュウの放った最後の一撃が、ガオガエンの身に突き刺さった。
《お願い、倒れないでガオガエン……! 君がここで倒れたら、リーリエやほしぐもちゃんとの約束はどうなっちゃうロト! ここを耐えれば、レッドに勝てるんだから!》
試合の行方を共に見守っていたロトム図鑑もまた、ウツロイドと合体したムーンと共に祈りを捧げた。
永遠に続くかと思われた雷の閃光の中で、チャンピオンたちはその戦いの結末を見届けていく。
そして――
♪(例の次回予告のテーマ)
次のエピローグで本作は完結です。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
なお、私はゲームのポケモンにあまり詳しくないので実際の電気玉無しピカチュウがガオガエンにどれだけのダメージを与えられるのかわかっていませんのでご承知ください(´・ω・`)
……ウツロイドと合体した意味? そこはほら、気持ちの問題です。