「提督、夕張です。島風も同行させています。よろしいですか? 」
夕張の声を聞くなり、加賀と長門は大慌てて離れると、自分たちの席にバタバタと戻っていく。そして、腰掛けると何事も無かったよう澄ました顔をしている。真面目そうな表情で執務に戻っている二人を見て、どうやらそれが彼女達の普段の顔であることを理解する。
先程のように、仲よさそうにじゃれ合うような事は、他の艦娘の前では見せないらしい。……確かにそうだな。加賀と長門といえば、日本国最強最精鋭の横須賀鎮守府で、主力艦として戦ってきた艦娘だ。横須賀だけじゃなく、他の鎮守府の艦娘から見ても憧れの存在だといえる。そんな二人が、子供みたいにふざけ合うなんて誰も想像もできないだろう。威厳が保てないといったところか。普段は自分の素を隠して、演技しているというわけなのだろうか。
なんだか微笑ましいな。
そして、そんな二人を見て、冷泉は吹き出しそうになるのを必死になって堪え、それを見た二人が怒ったように睨んでくる。主に加賀なんだけれど……。
「……ごほん、入っていいぞ」
何とか気分を落ち着かせる。
「失礼します」
冷泉の返事に合わせるように扉が開き、部屋に入って来る二人。夕張に隠れるようにして、島風も入室して来る。
「忙しいところ、わざわざ来て貰ってすまないな」
と形式的な挨拶をする。
「いえ、提督がお呼びなんですから、当然、すぐやって来ますよ」
「立ち話もなんだし、そこの会議机に座ってくれ」
そういうと、冷泉は車椅子を動かし、会議スペースへと移動する。もともとは豪華な応接セットが置いてあったのだけれど、利便性が悪いので撤去して、会議机を置いたのだ。簡単な打合せなら、執務室でできるようにした……というわけだ。本来であれば、鎮守府司令官ともなれば、様々なお偉方や軍関係者が訪問してくるはずだ。そういった来客とかが来た時には、必須ということで置いてあったんだろうけど、冷泉はそもそも日本海軍に知り合いがいない。いきなり鎮守府司令官にさせられたわけだから、政府筋にもまるでコネが無い。経済界にも同様だ。そして、軍関係者には、態度が悪いということで割と嫌われている。そういった連中がそんな話を余所でもするから、政界や経済界の人間からも敬遠される。異世界から来た人間である冷泉にとっては……図らずしてわりと都合のいい状況が作られているというわけだ。
とまあ、そういうわけで舞鶴鎮守府司令官を訪ねてくる人はいないということで、応接セットも不要なのだ。
倉庫に余っていた物を運ばせただけなので、質素な作りの品だ。とはいえ、拭き掃除をしたからわりと綺麗だし、充分使用に耐える。椅子の布地がだいぶよれているけれど、それでもまだまだ使える。最大6人まででミーティングができる。だから、ちょっとした打ち合わせなら、ここで済ませてしまう。
冷泉が真ん中に座り、向かい合う形で夕張が座り、仕方なさそうに島風も座る。冷泉の隣には、二人で何やら押し合いをしていたようだが最終的に長門が腰掛けた。椅子を目一杯近づけて、体をすり寄せて来るものだから、露出した彼女の肌が冷泉の右腕に当たってしまう。意図的な何かを感じるが、嫌な気分じゃないので、照れくさいものの何も言わず、なすがまま。加賀はそれを見て何かを言おうとしたが、勝ち誇ったような笑みを浮かべた長門と目が合い、引きつったような笑みを浮かべただけで、腰掛けた。
「さて、提督。夕張達をわざわざ呼んで、何のお話なんでしょうか? 」
バン、と手帳を乱暴に叩きつけるように置くと、いきなり加賀が仕切り始める。
「私は何も聞かされていないので、秘書艦の立場上、とっても困ってしまうのですけれど」
すべての事を秘書艦に伝えないといけないなんて、そりゃ無理だろ? それにすべてを伝えるとその業務について秘書艦に手伝わせることとなり、大変じゃないか……といいそうになる。けれど、やめた。どんな無理を言っても、加賀なら全部やってしまいそうだからだ。
「え、えっとだなあ」
妙に厳しい視線を感じて動揺してしまうが、意識を逸らそうとがんばる。
「今日、お前達に来て貰ったのはだな……」
そう言いながら、二人の艦娘の顔を順番に見る。目が合うと夕張はニッコリと微笑み、島風は怯えたように目を逸らす。
ん? 島風の態度が気になる。後で問い詰める必要があるな。たぶん、ふざけて何かやらかしたんだろうな。
「実は、ずっと考えていたことがあるんだ」
「またエッチな事ですか? え……違う? ふ……。エッチな事以外に何か考えてたりする事もあるんですね」
真顔で問いかけてくる秘書艦に、少し動揺してしまう。
加賀を横目で見ながら、夕張は必死に笑いを堪えている。
「ゴホンゴホン。えっとだな、実は鎮守府に広報部を設置しようと思ってるんだ……」
「えっと、でも広報なら今でも鎮守府にあるわよね」
と、夕張。
「おお! 鎮守府を囲んだ塀のところに、ガラス張りの掲示板が置いてあるな。あそこに確かポスターとか張ってたぞ。それから、職員が定期的にイベントをやったりしてるヤツだな。あれをやってるのが広報担当じゃないのか」
すぐ側で長門が反応する。ちょっと距離が近すぎるんじゃないのか? と感じるものの、なんだか彼女から良い香りが漂ってくるなあ、とぼんやりしてしまう。
「そうですねえ。形だけの広報をやっている感じがするわね。実際、広報業務を専任でやってる職員はいなかったんじゃないかしら? 上から言われる事を形式的にって感じかなあ。……あ、それと、長門さん、ちょっと提督に近づきすぎ。提督もにやけすぎ」
さりげなく……ではないけれど、指摘をする夕張。
「うむ」
彼女の指摘をきっかけに、冷泉は長門との距離を取る。
仕方なさそうな顔をするものの、長門もそれ以上はすり寄ってこなかった。
「本題に戻るけど。俺はずっと気になっていた事があるんだ。それは、毎日毎日飽きもせずに政治的宣伝の看板を掲げて、戦争反対、憲法違反の軍隊は解体せよ、悪魔の子「艦娘」は日本から出て行け、深海棲艦との平和的外交を! 平和憲法を護れ、なんていろいろと勝手な事を鎮守府の外から大声を上げて騒いでいる連中の事なんだ」
少し腹立たしげな口調になってしまう。
「確かに、彼らの行動は、少し度を超えたものに感じる時があるな。ある意味、狂気すら感じることがあるのは事実だ。横須賀でもたまに見かけたが、舞鶴のそれは、もっと過激で規模も大きく、内容も少し酷いな」
長門の表情が曇る。
デモ隊の質が悪いのは、地域性もあるのだろう。おまけに近畿エリアは、軍による大厄災が発生した土地という要因もある。
「私は鎮守府にいることが多いから、良く目にしてて、気になってたわ。艦娘は舞鶴から出て行けとか、人殺しの為の兵器とか好き勝手なこと言っていて、見かけるだけで凄い気分が悪くなった。人間は、みんながあんな事を考えてるんじゃないかって、疑心暗鬼になることもあるわ」
と、夕張。
「まあ、あんな極端な事を言う連中は。ほんの一握りだと思うから、そこまで気にしなくていい。あんなヘイトをまき散らすような馬鹿は、さすがに稀なはずだからな」
すかさず補足を入れる冷泉。
「はい、もちろん分かってます。鎮守府の人はみんな私達に優しくしてくれるし、日本のほとんどの人が、艦娘を頼りにしてくれていることもね」
そう言って笑顔を見せる夕張。
「けれど、ただただ、騒いでいるだけとはいえ、それが一定数の集団となって、汚い悪意をばらまく姿は大変見苦しいし、今の人類の状況を鑑みて、あんな行動をするような思考になることが理解できなかったし、正直なところ、俺は腹立たしかった」
ああいった連中は、冷泉の世界にも存在した。
平和憲法を守れ、戦争反対。安全性の何ら担保の無い原発稼働反対。自然エネルギーを導入せよ。弱者救済。ヘイトスピーチを止めろ。戦争責任を忘れるな。アジアの人々の苦痛を永遠に忘れるな。謝罪が全く足りない。……総論では正しい事なんだろうけど、各論になると賛成しかねる意見ばかり。そして、誰のためにそれを言っているのかがとても疑わしい。そもそも彼らは何者なのだ? 働きもせず、どうやって収入を得ているのだろう? いろいろな団体がいるみたいだが、メンバーがダブっていたりする。とにかく疑問だらけだった。
ただ、向こうの世界では、彼らと冷泉はまるで関わりがなかった。テレビの画面の向こうで胡散臭い事を言って騒いでるだけの人々にしか見えず、まるで無関係な世界の住人でしかなかったのだ。だから、深く考えることも無かった。
「けれど、このまま何もせずに放置しておくのも何だなって思ったんだよ。基本的に艦娘は鎮守府の敷地から出ることは無いし、出たとしても軍艦の中だ。一般の人からすれば、お前達がどんな姿をして、何を考えているかなんて想像もできない。そんな中、あの阿呆どもの批判しか触れる機会の無い人からすれば、それが真実では無いかって誤解するかもしれない。昔と違ってネット環境も制限されている状況だ。口コミかマスコミを経由しての情報しか得られない一般人からすれば、危険な状況にあると言っても過言ではない……。そんな事、極論だと言うかもしれないけれど、舞鶴鎮守府の置かれた状況は、そんなに楽観できるもんじゃない。かつて、大阪京都神戸の三都市を壊滅させた攻撃……。それは日本軍による反乱分子の制圧であったのだけれど、市民の中には艦娘が行った蛮行だと吹聴する連中もいる。そして、それがそれなりの支持を得てたりするんだ。もともと、反体制派の強い土地柄でもあったから、仕方ない部分もあるのかもしれないけれどね。でも、そんな連中の声だけが大きくなる現状は認められない。だから、俺は考えたんだよ」
艦娘達の様子を見ながら、冷泉は言葉を続ける。
「もちろん、彼等は彼等なりの利益追求の為、活動しているのだろう。それは、破壊活動を行わない限りは、言論の自由であり取り締まる事はできるものじゃない。かつて、暴走した民衆を押さえ込む為に核兵器らしきもの、もっとも核兵器である証拠は無いんだけれど、……を使用した軍隊としては、より一層、行動には慎重になってしまうんだろうけど。あの時は、深海棲艦との戦いで疲弊し、危機的状況にあったから、誰も場冷静な思考ができなかったという反省もある。だから、国会議員や行政側からのブレーキが大きいんだ。……おかしい話だよな。実際に攻撃指示指示をしたのは軍隊では無い。当時の政府の判断であったにもかかわらずにだ。まるで、彼等はそんなことを忘れたかのように振る舞っている。確かに、その判断をした中枢にいた連中は、もう引退したり、政党替えをしたりして、政権与党には存在しない。だから、現政府は他人事のように振る舞えるのだろうけれど」
政治の問題点は、一度決定した事は覆すことが絶望的に大変であること。そして、仮に失敗があったとしても、その責任の所在が意志決定の間に曖昧にされ、結局、だれも責任を取ることがないということだ。
無論、誰か一人が責任を取るという事になると、それを恐れ何も決定できなくなるというジレンマに陥る可能性も大なのだけれど。
「それはともかく、基地の近所で反戦活動なら、まだ構わない。やりたい奴は、何処の世界にもいるからな。主義主張を述べる場がないのは、それはそれで問題だからね。けれど、艦娘の排斥運動なんてやられると、他に……一般市民、市民団体が言う市民ではなくて、ごくごく普通に暮らしている人々ことなんだけれど、彼らに影響があるかもしれないという事が心配だったんだ。例え嘘であろうとも、多くの人が大声で何百回も言い続ければ、それで上手くいかなくても何千回と繰り返せば、やがてそれが真実になると思う連中がいるんだよ。そして、たとえ嘘であっても、それを真に受けて真実と勘違いする者も出てきてしまうんだ。……馬鹿馬鹿しいけれど、それが現実なんだよな。そして、俺は猛烈に腹を立ててしまうんだ。日本人の為に、命がけで戦ってくれているのは、お前達艦娘だというのに。しかし、その活動をほとんどの人は、実際のところ、よく知らないのも事実なんだ。戦闘が領域内で行われるため、誰も目撃することもなく、映像を広報として配信しようとしても、法的な問題、艦娘側との協定等の関係から難しいんだ」
実際のところ、艦娘とは、世間でどのように思われているのだろうか? それは冷泉ですらはっきりとは分かっていない。深海棲艦と同じく、恐ろしい存在……得体の知れないものと思っている可能性が高いと思う。
広報の重要性は軍も認識していて、昔からやっているものの、上手く周知できていない気がする。大手広告代理店の人間を受け入れてやっているはずだけれども、所詮は民間企業の人間でしかない。利潤重視で指示をしなければ、必要最低限の事しかやらないし、提案なんて当然しない。このレベルで契約内容は充分履行できると判断するのだ。国家の為なんていう崇高な目的意識を期待するなんていうのも無茶な話なんだろう。結局、こんな広報活動なんて税金の無駄だと言っても言い過ぎにはならないだろう。
ど素人の軍人と金儲けしか考えていない民間人のコンビでやった事など、形式だけを整えただけの物にしかならない。その結果、お膝元の舞鶴ですら艦娘については得体の知れない存在。恐怖の象徴のままだ。
「いきなり力を入れて広報をやったところで、上手くいくとは思っていない。結局のところ、小さな事の積み重ねしかないんだよ。そこで、俺なりに考えた事があるんだよ」
長々と自説を展開した冷泉は、結論の前に彼女達を見る。
「広報の必要性は昔から言われていて、自衛隊のころからいろいろとやっていた。けれど上手くいっていなかった。最大の原因は、ほとんどの人間が艦娘を見ることが無いんだよな……。つまり、艦娘と触れあう機会がないからだと感じているんだ。うちでとりあえず始めたいのは、市民のみんなと艦娘が触れあう機会を作るってことなんだ。実際に艦娘と会って話してみて、軍艦を見てみて……本当の姿を知って貰いたいんだ。お前達と会話をすれば、なんら人間と変わりない事が分かって貰えるだろう。そこに存在する生きた存在だというのを理解できるんだと思う。そうすれば、艦娘に対する漠然とした恐怖といったものが解消されると思うんだ。会話を積み重ねれば、誤解も解けるんじゃないか」
冷泉は、艦を含めて艦娘と話をしたりできる場を設けようと考えたのだ。
「しかし……」
と、加賀が口を挟む。
「提督の仰るように、私達と市民とが直接会うことができるのであれば、それは確かにお互いの理解度を高めることができるかもしれませんが。……けれど、ごくごく限定的な事でしかありえず、その効果は期待するほどのものにはならないと思うのですが」
「もちろん、理解しているよ。これは地道な活動であり、効果がすぐに現れるものではないだろう。だけど、何もしないよりは、何かをしたほうがいいに決まっている。一生懸命がんばっているお前達の姿を、少しでもいいから、人々に知って貰いたいんだ。お前達が得体の知れない怖い存在なんかじゃなく、ごくごく普通の女の子であり、……一部個性の強い奴もいるけど、人間となんら変わらない、話せばお互い理解しあえる存在だって知って貰いたいんだ。もちろん、最初は。小さな変化しか起こせないかもしれない。けれど、伝えようとする事がまずは大事なんだと思うんだ」
真剣な目で、冷泉は彼女達を見る。
この場にいる艦娘達に、異論は無いようだった。
「そして、……その担当として俺が適任だと判断したのが、夕張なんだよ」
「えー! 私ですか? 何でですか」
「いきなりで驚いたかもしれないけど、ちゃんと理由があってのことだ。一番大きな理由は、性格的に向いていると思った事。対外的な物だから、社交性が求められる。夕張については、適正がある。そして、二番目の理由として、お前が戦闘に出ることができないからだ。鎮守府防衛を任せているとはいえ、そうそう攻めてくることは無い。兵装の使用確認作業とかもやってもらっているけど、基本、それほど忙しいわけじゃない。最初の頃は気合いを入れてやってみたいだけど、最近のお前は何か張り合いがないみたいに見えていたんだ。実際、そうじゃないか? 」
「うわ、ばれてました? そうなんですよね。兵器開発や装備試験といったって、そんなに種類がある訳じゃないし、深海棲艦はあれ以降、全く鎮守府に近づいても来ないし。正直言うと、暇でした……ね」
悪びれずに夕張が告白する。
「ちょっと正直すぎだけどな」
呆れたように冷泉は言う。
続けて冷泉は説明をする。もちろん、広報担当は一人では難しいだろう。そこで、夕張を補佐できる艦娘はいないか……と考えると、療養中だった島風を思いついた。軍医に確認したところ、まだしばらくは任務に就くことはできないらしいので、ある程度軌道に乗るまでは彼女にも手伝って貰うことにした。その後は、ローテーションから外れて休息中の艦娘を補佐に充てることにしている。
説明をしている間、夕張は頷いたり考え込んだりと反応していたけれど、島風はずっと、何故だか冷泉と目を合わさないようにしていたことが気になった。本来なら、出撃したいのかもしれない。だけど療養には時間がかかるんだから仕方がないんだ。確かに、何か思うところがあるのかもしれないけれど。
「二人とも、早速、任務に就いて貰って構わないかな? 広報の手段については、別途俺から事務方に伝えておくから、連絡があると思う。どの場所で行うとか、艦をどうするかとかの調整もあるだろうから、準備期間も必要だ。今すぐにってわけには、いかないだろうけど」
「私は了解です。ちょっと不安だけど、まあ何でも最初は不安なものですから。なんとかなるでしょう」
わりとあっさりと夕張は承諾する。この辺り、楽天的な性格も適正がある。
「島風は、どうだ? 」
冷泉に問いかけられ、少し驚いたような顔をした彼女であったが、
「う、うん。いいよ」
と小さな声で答える。
「よし、じゃあ決まりだな。ということで、加賀、手続きを頼んで良いかな」
「……わかりました。早速、段取りを考えます。でも、いろいろと調整が必要なんですから、急に言われると困るんですけど」
と、なにやら不満があるようだ。
「すまん。何とか頼むよ。お前ならすぐにやってくれると思ったから、言いそびれてたんだ。ごめんなさい」
「まったく。……わかりました。早急に手配します」
大きくため息をつきながらも、承諾する。
「あ、それから、夕張と島風に大事な指示があるぞ」
思い出したように、冷泉が言う。
「何です? 」
「お前達の服装の事だ。広報担当となったからには、ヘソだし、ミニスカートは禁止だからな。それから、スカートは膝丈の長さとするぞ」
「えー! 」
流石にこの時ばかりは島風も不満げな声を上げた。
「どうしてなの? なんでファッションにまで口出しされちゃうんですか? 」
代表してなのか、夕張が訴えてくる。
「答えは、簡単だぞ。鎮守府の顔、艦娘の代表なんだぞ、お前達は。それがそんな痴女みたいな露出の多い格好で出てきたら、普通の人はビックリするだろう? 艦娘は、人間と何ら変わらない存在ということを知って貰おうとしているのに、とんだ露出狂だったなんて広められたらどうするんだよ」
強い口調で冷泉が答える。
「この服装は、私達が好きでしている格好なんです。それを否定されるなんて心外だわ。露出狂だなんて、提督も酷いわ! 」
その服装に、余程のこだわりがあるのだろうか? 普段は素直に言うことを聞いてくれる夕張なのに、粘る。島風も小声でそうだそうだと訴えている。
「えっと」
冷泉は狼狽する。思った以上に抵抗が強いのに驚いてしまった。
「二人とも落ち着きなさい」
黙って様子を見ていた加賀が、会話に割って入る。
「秘書艦だから提督の味方をするんでしょうけど、この件だけは譲りませんよ。曲げられません」
「あのね、提督が露出の多い服装を禁止するのは、ちゃんと理由があるんですよ」
「それは、どういうことかしら? 」
「簡単な事。……提督は、露出の多いあなた達を他の男たちに見られたくないのよ。提督があなた達を見るようないやらしい視線で、他の男に舐め回すように見られるのが耐えられないのよ。そんな場所にあなた達を起きたくないの。それを見るのは提督だけの特権。誰にも見せたくない。そんな提督の、スケベな気持ちを解って上げて」
と、諭すように加賀が言う。
それ、全然説明になってないし。
「えー」
夕張が頬を赤らめている。
「提督は、私を他の男性が嫌らしい目で見るのが耐えられないの? この姿を、他の男には見せたくないて思ってくれているんですか」
「……う、うん。その通りだ。外に出したら、そんな露出の多い格好だとスケベなやつらに、いやらしい視線に晒されるし、盗撮されるかもしれない。お前達を変態連中の爛れた欲望のはけ口にされるなんて、正直、嫌だもんね」
仕方なく、正直に答える。
「そ、そうなの。そんな風に思ってくれているんだ……。うふふ、提督ったら……エッチ」
何かモジモジしながらも夕張は嬉しそうだ。
「わかりました。提督の言うとおりにするわ。島風もいいわね」
「う、うん」
照れたような顔をしているのは島風も同様だ。けれど、前ほど元気が無いんだよな。どうしたんだろう。
「……よし、ではこの問題は解決だな。初めての事だから、最初はいろいろとトラブルも多いかも知れない。その時は、どんな小さな事でも相談して欲しい。そして、一緒に解決していこう」
なんとか動揺を抑え、冷泉が話をまとめた。
ここに新たな部署が誕生したわけである。