まいづる肉じゃが(仮題)   作:まいちん

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第199話 記憶の齟齬

いつも通り、目覚ましが鳴る前、朝7時きっかりに起床し、手早く身支度を調える。

 

自分の部屋として与えられた五階建て建物の最上階の部屋から、二階にある食堂へとエレベータで降りて行く。そして、いつもの席に腰掛けると、まるで待っていたかのように、叢雲より少し年下に見える少年が現れて、朝食を配膳してくれる。

第二帝都東京に来て、神通さんの出立を見送り、長波と喧嘩別れをし、一人になってからずっと彼が食事の世話をしてくれている。目のくりくりした、少し女の子っぽい可愛い男の子だ。

 

「おはよう」と声をかけても、まるで小動物のようんい怯えた表情で会釈すると逃げるように奥の部屋へと消えていくのだ。叢雲に興味はあるけれど、一定の距離以上は近づかない……近づけない? のだろうか。艦娘に対してどういう印象を持っているか聞いてみたいけれど、それすら叶わない状況だ。気軽に言葉を交わせる誰かを欲しているだけなのれど、どうやら、それすら叶わないらしい。

 

毎朝繰り返す、まるで野良猫を餌付けするような行動。

 

少年との距離は、一ミリも縮めることができていない。ただ、艦娘という存在に対する好奇心を隠しきれないらしく、盗み見している気配は常に感じている、そちらを見ると慌てて目を逸らす。その繰り返しだ。興味があれば話しかけてくればいいし、こちらから話しかけた時に少しは反応すればいいのに、と思ってしまう。

 

恐らくは、叢雲との必要以上の接触をとても厳しく禁じられているのだろう。いろんな誤った情報を吹き込まれているのかもしれない。

何かきっかけがあれば、一気に縮められる可能性はあるんじゃないかな……と思う。これでも艦娘の一人。加賀や金剛には負けるかもしれないけれど、客観的に見たら美少女であることは、うぬぼれでは無く単純な事実として認識している。鎮守府にいた頃は、人目に付く場所にどうしても出なければならないときが度々あった。そんなときに艦娘に対する人間の殿方の好意的な眼差しを常に感じていたし、話す機会があれば、興味津々で近寄って来てくれた。お世辞ではなく、本気で口説こうとする男性もかなりいた。

 

叢雲がその気になって、ちょっと誘えば、だいたいの男の子なら心を惹かれてしまうはずなのだから……。

 

そういった事を願う気持ちは皆無だけれど、同じ年頃の者同士で日常的でくだらない会話をすることができれば、どれほどこの退屈で、ある意味荒んだ生活を潤してくれるだろうか。そんな事を望んでいる自分に少し驚きはする。

 

ただ、今は急いてはいけないと自分を自重する。

余計な行動は、自らの立場を悪くする危険がある。目立たず、平穏無事に過ごすのが一番だ。自分が本当に為さねばならないことの為に、三笠達に警戒心を起こさせてはならないのだから。彼女達にとっては、無害な存在であることを印象づけておかないといけないのだから。

 

「はあ……」

大きくため息をつくと、目の前のテーブルに置かれた朝食を食べ始める。

 

メニューは毎日変わるし、種類も和洋中とバラエティも豊富だ。

毎日食卓に並べられる食事は、舞鶴よりもあきらかに質も量も豪勢になっている。舞鶴鎮守府の食事は、はっきり言って質素だ。時々、開かれる宴会なんかでは豪華な料理が出る時もあったけれど、基本的には簡素な料理であることが多かった。

それは、舞鶴鎮守府が経済的にも逼迫していたせいもあるのだけれど、様々なものを輸入に頼っていた日本という国家がある日突然、課以外との交易を遮断されたわけであるから、当然、様々な不足する物が出ているわけだ。いろいろと工夫を凝らし、自給自足できるように変えていっているものの、限界はある。料だって国民全員に行き渡るわけではないのだ。まだ軍隊には優先して資材が配給されていると聞くから、一般国民はもっと寂しい食卓を囲んでいるのだ。そう思うと、簡素な食事にも文句を言う気にはならなかったのだけれど。

なんて無駄に贅沢なんだろう……。提督に食べさせてあげたいな。突然、そんな気持ちが湧き出し、そんな気持ちを振り払おうと頭を何度も振る。

 

しかし―――。

 

冷静にみて、ここは食事だけでなく、あらゆるものが整っている。贅沢すぎると批判を浴びそうなくらいだ。けれど、それだけでしかない。嬉しくもなんともないし、空しいだけだ。

 

だって、ここの食堂で食事をする人間は、誰もいない。

叢雲が食事の時間だけは誰も立ち入らないようにしているのではないかと思っていたが、時間を変えたり、食事じゃない時間にふいに訪れても、やはり誰もいないし、いた気配もなかった。つまり、この建物自体が叢雲の為だけに存在しているのだ。恐らくは調理する人や掃除をする人もいるのだろうけれど、見ることは無い。もしかすると、コソコソ隠れたりしているあの少年だけでこの建物のメンテナンスをしているのかもしれないけれど。

 

しかし……一人きりで食べる食事なんて、どんなに豪勢でもおいしく感じるわけがない。そして、舞鶴のことを懐かしむ。豪華な食事が無くたって本音で語り合える仲間、信頼できる上司がいたことがどれほど素晴らしい事だったかを思い知らされる。

 

そんな素敵な場所を捨てた自分の愚かさもだけれど……。今更悔やんでも、空しいだけ。

押し込むように無味に感じられてしまう豪華な朝食を押し込むと、席を立ち上がり食堂を後にする。叢雲が部屋を出るのを待っていたかのように少年が片付けを始めているのが感じられる。

いきなり戻っていったら、どうするかしら? ふと悪戯心が沸き上がるけれど、何とかその衝動を抑え込む。そんなことをしたら、彼が怯えてしまうだろう。そして、より警戒をするようになってしまう。そうなったら、今の状態に戻すことさえ困難だ。急ぐことはないのだ。どうせ何もすることないし、じっくりと時間をかけて行動すればいいんだから。

 

食事を終えたあとは、この第二帝都東京の主である戦艦三笠のいる建物へ行くことが日課になっている。否、それ以外することがないのだけれど……。

 

彼女に会って定型的な会話を行い、昨日はどうだったかとか体調は問題無いかといったそれほど意味のない会話をした後で、ごくごく軽作業的な指示を受けるだけなのだ。

 

船体とのリンクを切断していることで、それまで当たり前のように船体の動力部から得ていたエネルギー供給が途絶えているため、慣れない内は虚脱感や喪失感、慢性的な疲労を感じるようになるとのことだ。艦とのリンクが確立されていた時は、疲れることなんてまずなかった。あふれ出すようなエネルギーの奔流により、常に活動的にいられた。何日でも徹夜で活動できたし、身体能力が人間とは次元が違うレベルにまで大幅に高められていた。治癒力だって圧倒的だった。擦り傷切り傷程度なら、瞬時に治癒したし、風邪なんて引くことなんてありえなかった。

 

今、それらがすべて無くなっている。あるべきものが無いという不安感も日に日に大きくなっているのは事実だ。

 

しかし、「それも慣れれば気にならなくなる。」……三笠の言だ。

艦娘だって人間となんら変わらない。食物を摂取することでそれをエネルギー変換する機能は備えている。リンクが切られる前のようには行動できないけれど、戦闘に参加する必要がなくなった艦娘にとっては、かつてのように膨大なエネルギーを得たところで、使う必要もないし、それどころか持て余したエネルギーを発散する場所さえないのだから、これはこれで適しているということか。大怪我をしたところですぐに再生する能力も、完全に外界から隔絶され、いかなる戦闘も発生しないこの第二帝都東京においては無用の能力なのだし。

 

三笠からは、いろいろと言われた。とにかく省エネルギー生活に慣れなければ駄目だ……と。

 

今日も三笠から子供の使い程度の課題を与えられて、部屋を出る。ガラス張りのエレベータから見える景色をぼんやりと眺めながら思いに耽る。、

平和で穏やかな生活。……常に死が側にあることが日常だった叢雲にとって、対局にある……それは望んだ世界ではあったはずなのに、そうなってみると、どういう訳か苦痛だけを伴うものだった。

 

「最初はその変化になれるのが大変だけれども、やがてそれが当たり前になるのです。そうなって初めて、新たな課題を与えられるようになります。今は、人間で言うところのリハビリ期間という奴です。焦らずにゆっくりと、少しずつでも構わないので慣れていくようにしなさい。焦ることはありません」

三笠は優しく言ってくれる。ただ、彼女が本気で言っているのかは疑わしいのだけれど。必ず裏がありそうで、どうにも彼女のことは信用できないでいる。艦とのリンクが外れた以外の変化は、それまで課せられていた人間への絶対服従心の解除……そして、人に危害を加える事への禁忌が外されたということだった。一体そんな必要性があるのか? と三笠に問えば、軍艦とリンクしていた時は圧倒的な力を持たされていた艦娘であるがゆえ、対人間との関係性からどうしても艦娘は危険な存在では無い事を証明しなければならない。そのために人に対する禁忌を課していたけれど、もうあなたはただの人間なみに弱くなっている。だから、もうそんな枷は必要がないからよ。あっさりと答えられた。別に、人を殺せるようにしなくても、そのままでも問題無いのに、どうしてだろうと疑問を感じてしまう。まるで、状況によっては人間を殺せるようにした……と勘ぐってしまう。

 

どうなのだろう……。考えるだけ無駄か。

 

しかし、時間だけは有り余るほどある訳で、鎮守府にいた頃には不要だった考える事が増えたように思う。自分を見つめ直すきっかけにでもなれば、それは良いことなんだろうけれど、思い至るのは反省と後悔ばかりだ。……そして、わずかな寂しさ、かな。

 

そんな思考がいきなり破られる。

 

「Hey、叢雲! 浮かない顔して、どうかしたネ? 」

突然、聞き慣れた間抜けで馴れ馴れしい声に顔を上げると、そこには巫女服を着た少女が笑顔で立っていた。いつでもどこでも誰構わず馴れ馴れしい態度だ。

 

「金剛、アンタ……」

と、思わず驚きの声を上げてしまう。

金剛は現在、改二改装の為に入渠中であったはずだ。

 

改二への作業は、どういったことをするのかは知らないけれど、前に神通に対して行われた際には到着後、ほとんど休む間もなく改二処置が始まり、彼女はずっと施設に隔離されていた。

検査だけでさえ、ドックから出られるまで数日ではきかない時間が掛かっていたのだ。改装作業については、神通の時は緊急を要する事態が迫っていたということでここの科学スタッフ総動員で昼夜を問わずに作業が行われても、数週間の時間がかかっての完成だったのだ

 

金剛がここに来てから、まだ一週間も経っていないはずだ。

 

「叢雲、どうかしたのデスか? 」

 

「……アンタ、入渠したんじゃなかったの? 改装はもう終わったの? 」

 

「入渠? ああ、改二の事ネ。それは、これからって話ダヨ」

 

「じゃあ、ここに来てからずっと何もしないでいたってわけ? 」

前に会った時の話では、改二改装の為にやって来たと言っていた。すぐにでもドック入りするように言っていた。そして、改二完了すれば、すぐにでも横須賀に着任すると言っていたのに。

当然、ここに来るからには、すでに受け入れ準備は整っていたはずだ。少しくらい準備時間はあるにしても、すぐに作業に入っているはず。それなのに、一週間近くも何もせずにいるなんてありえない。そして、さらに時間を要するなどという事など考えられない……と思う。

 

そもそも、今は、戦争中なのだ。金剛のような戦艦クラスともなれば、遊ばしている余裕など無いはずだ。たとえ、横須賀であっても、それは同じはず。

 

そして、金剛自身が我慢できないだろう。

舞鶴鎮守府を、冷泉提督の下を去り、新しい場所を求めたのだ。そこにどういった想いがあったかは叢雲も想像しきれない。前に話した時は珍しく負の感情を露わにしてしまったくらいだ。きっと、強い思いがあるに違い無い。そんな彼女の事だ、何もせずに無為に過ごすことに耐えられるはずがない。

何かを失ったら、新たな何かを求めないと生きていけないはずなのだから。……枯れてしまっていない限りは。

 

「そんなにのんびりしてていいの? 前は横須賀に早く行きたいみたいな言い方していたのに」

 

「そうだったっけ? まあ、横須賀は艦娘の質量共に充実しているからネ。ワタシが急いで行かなくたってヘーキヘーキ。完全なコンディションで着任すればいいんだし。焦っても仕方無いネ」

この前とはうって変わって、のんびりした調子で返してくる。どうやら、あの時は冷泉提督と別れてそんなに時間が経っていなかった事もあって、気が立っていたのだろうか。本当に余裕のない思い詰めた表情を一瞬でも見せてしまった彼女とはまるで別人のように……本来の脳天気な金剛に戻っているように思える。

 

時間が解決してくれたってわけか。自分の中で提督の事は整理できたんだな……。かつての同僚の立ち直りを見て、少し叢雲は嬉しくなった。

「そっか……。提督の事は吹っ切れたってわけね」

少し声が羨ましい気に聞こえてしまったかな。実際に羨ましい。提督の事を心の中で整理できれば、自分もどれほど楽になるだろうか。

 

「え? 提督? それ……誰のことネ」

とぼけたような口調で金剛が答えた。

 

「え? ちょ、ちょっと何言ってるの、アンタ」

唐突な返事に、叢雲は言葉を失う。

それでも金剛は不思議そうな顔で見返すだけだ。

 

「ふざけてるの? 」

 

「えーと、別にふざけてなんてないネ。叢雲こそ、唐突に何訳分からないこと言うネー」

彼女の表情を見る限り、冗談で言っているようには見えない。本当に叢雲の言っていることが分からないようだ。

 

「……提督って言えば、冷泉提督の事じゃ無いの」

 

「れいぜい? ……提督デスか」

何かを思い出そうとしているように、金剛は腕を組みながら首を傾げる。

 

「ちょっと、金剛。冗談はやめて頂戴。そんなくだらない事に付き合ってる場合じゃ無いのよ。アタシだって忙しいんだから」

 

「ふふふ……分かっていますヨ。ちょっとからかっただけデス。……もちろん知っていますよ、れいぜい提督、冷泉提督ダヨネ。。冷泉朝陽少将。舞鶴鎮守府指令官デスよね。五つの鎮守府の司令官では最年少で……えーっと、あとは何だっけな」

一瞬、金剛の表情が消える。恐らく、ネットワークに接続しているのだろう。そして、すぐに元の表情に戻る。

「舞鶴鎮守府艦隊における艦娘離脱事件、それと連動した鎮守府内への武装勢力の侵攻の件について司令官としての責任を問われ、一時的に鎮守府指令官の任を解かれているんダヨネ。ふえー、軍法会議にかけられるだなんて……何これ? 指揮下の艦娘に逃げられた? 元舞鶴鎮守府の士官の裏切り行為で、艦娘を盗られたですって? おまけに取り返しに行ったのに失敗して、艦娘を轟沈させたあ? 何これ、こんな酷い司令官がいるんだ、うわっ酷いネー」

その口調はまるで他人事にしか聞こえない。かつて一緒に戦った上司に対する物言いでは無い。それはまるで余所事のようだ。

 

「アンタ、本気で言ってるの? 」

怒りがこみ上げ、口調も厳しくなる。

 

「Hey、叢雲。何を怒ってるの? そんなにカッカしてたら、駄目だよ。もっともっとクールにならいないとね」

逆に心配そうに諭され、叢雲は更に怒りが増してしまう。

 

「冗談はいい加減にして! アタシをからかってるんでしょうけど、そんな物言いは許せない。ほんの少し前まで、同じ鎮守府でいた……死線を共にくぐり抜けてくれた司令官をなんでそんな言い方できるの? 」

 

「ヘイヘイ、どうしたの叢雲? 何だかよく分からないけど、熱くなりすぎいー。……ん? もしかして、その、冷泉提督って人のこと、好きだったりするのカナ? うふふふ」

 

「そ、そんなんじゃ無いわ。いえ、……好きだけど今言いたいのはそういう事じゃないの! 」

自分でもよく分からない回答をしてしまう。

「それに、……アンタだって同じ気持ちだったでしょう? 」

 

「はえ? 」

金剛は叢雲の言葉の意味が分からずに、間の抜けた表情をするだけだ。

「なんでワタシが、その冷泉提督って人のことを好きになったりしないといけないの? そもそも会った事も無いような人なのに」

 

「ちょ……」

叢雲は言葉を失う。

「アンタは、前はアタシと一緒に舞鶴鎮守府にいたじゃないの! そして、そこでの司令官が冷泉提督だった。彼とは共にいくつもの戦いに出て、死線をかいくぐって来たじゃないの。一緒に笑って、そして泣いたじゃないの。……いい加減にふざけるのはやめなさいよ。提督と離れてしまったのは辛いかもしれないけれど、過去を消し去るなんてできるわけないじゃない! 」

声を荒げて叫んでしまう。呼吸が乱れてしまう。目頭も熱くなる。

それは金剛に言っているようで、自分に対しての叫びでもあった。

 

「はあ……そうなんだ」

呆れたような表情で金剛が言葉を返す。

「なんだかよく分からないケド、ワタシには何のことだかよくワカリマセンね」

 

「うそ……」

淡々とした口調の金剛に次の言葉が出てこない。まるで不知火との会話を繰り返しているようだ。一体何がどうなっているのか。叢雲は分からなくなってきていた。

 

「叢雲……。あなたにとってはとても素敵な人みたいネ、冷泉提督って。でも、あなたはその人と一緒にいられなくなってここに来たんダヨネ? 何だかとても素晴らしい人みたいな言い方をしてるケド、本当に素晴らしい人なのカナ? 」

 

「あ、当たり前じゃない。いろいろ人間としては問題がある奴だけど、とても優しくて頼れる人。そ、尊敬できる人よ」

大好きな人だとは言えない。

 

「へえ、そうなんだ。素晴らしい人なんだあ。叢雲がそんなに想ってくれているのに、鎮守府を追い出すんだ。素晴らしく優しい人ダネ」

皮肉交じりに嘲るように金剛が言う。

「ゴメンね、知らないみたいな言い方して。少し叢雲をからかってしまったネ。ワタシ、冷泉提督の事を知ってるよ」

 

「なんだ、冗談だったの。……全く」

 

「うん。提督を大好きらしい叢雲の前ではあまり言いたくなかったんですケド、ワタシの記録の中では、冷泉提督という人は、指揮官として不適格な人物だとなっているネ。どういうツテを辿って今の地位に上り詰めたかは知らないけど、軍の中では随分と評価が低いみたいデスね。……ううん、それどころか嫌っている人がとても多い。おまけに、影でいろいろと良くない画策をしている情報もあるようだし。艦娘の離脱だって、彼の為そうとした事について行けなくなった艦娘達が、永末というかつての鎮守府士官にそそのかされて離脱したとも聞いているケド」

 

「バカじゃない! そんなの全部嘘に決まってるでしょう。提督は、みんなのためだけを想って行動してくれた。そのために余計な敵を作ったりして自分の地位を危うくもしてるわ。もっと上手く立ち回ればいろいろとやれる人なのに、私達の為に無理を重ねてくれている。誰一人、提督を嫌ったりするような艦娘はいない」

 

「ふーん。もっと冷泉提督がしっかりしていたら、艦娘みんなに目を配っていたら、あんな事にはならなかったハズ。扶桑は裏切り者の汚名を着せられて沈んでしまった。多くの艦娘が敵に攫われてしまった。今彼女達がどうなっているのかさえ分からない。一体、どんな勢力に取り込まれたかもわからないネ。彼女達がどんな仕打ちに遭っているかさえも。その全ての原因が、冷泉提督という一人の人間なのだから」

射るような瞳で金剛が叢雲を見た。

「ワタシは扶桑を見捨てたあの男を許せないネ」

その言葉を聞いて、叢雲は背筋が寒くなるような思いがした。

 

 

 

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