まいづる肉じゃが(仮題)   作:まいちん

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第50話

「ぐぬぬ」

唸るような声と歯ぎしりが聞こえた。

続いて大きく深呼吸をする音。

小野寺大佐のモニターに【通話中】の文字が点灯している。

 

「ゴホン。私のような……大佐ごときが鎮守府司令官たる冷泉少将に意見とはおこがましいのですが、本査問委員会の委員に選ばれた故、階級を考慮せずに言わせて頂きますよ。失礼なことを言ってしまうかもしれませんが、ご容赦下さい」

 

「無論だ。君の意見を聞かせて欲しい」

意図的に余裕たっぷりの態度で冷泉は答える。

 

生意気な奴だと感じたのだろうか。再び小野寺は咳き込む。

「軍を指揮する者として、まず第一に伺いたい。何故に艦隊を危険にさらすような無理をしてまで、軽巡洋艦【神通】を救おうとしたのですか」

 

「それは、まず舞鶴鎮守府として切実な問題を抱えていることが原因の一つだ」

 

「それは何でしょうか? 」

会話に割って入るように、司会担当の真袋少佐が喋る。

冷泉と小野寺の間にかなり険悪な雰囲気が発生しているのを察知してのことのようだ。

 

「説明を続けるよ。基本的な事として押さえて欲しい事が、まず、一点あるんだ。それは舞鶴鎮守府の現状の戦力についてだ。……鎮守府の現在の艦娘の数は、たった16人しかないのだ。これを運用にあわせて編成しようとする。すると、領域解放用艦隊に最大6人、遠征等用艦隊として最大6人として編成する必要があり、それだけで12人も必要となる。しかし、当然ながら、基地防御に残す必要のある艦娘も必要だ。わが鎮守府ではそれに当たらせる艦娘が最大でたった4人しかいことになってしまう。4人で鎮守府を守れるかどうかは不明なんだが……。私になってからは深海棲艦が鎮守府に攻撃をかけてきたことがないのでなんとも言えないが、もし、深海棲艦隊に襲撃されたとしたならば、鎮守府を護るのはかなり厳しい戦いになるのではないかと考えているんだよ。

すでに、舞鶴鎮守府艦隊はカツカツの状態だといっていい。

つまり、出撃や遠征で損傷を負った艦娘が一人でも出てしまうと、その艦娘はドッグ入りとなり、誰かをその穴埋めに出さざるを得ず、他の編成に支障を来すことになってしまうんだ。そして、さらにその艦娘が2人3人と増える事になれば、もはや、まともに運用するのは相当に厳しい。……いや、不可能と言っていい。必ず領域攻略、遠征、基地防衛のどこかに歪みが生じざるをえない。そして、その歪みは新たな負荷を生みさらに戦力を落としていくことになる。

舞鶴鎮守府の現状は、現在でもそんな状態なのだ」

 

「大変なのはどこの鎮守府も同じでは無いでしょうか? そもそも艦娘が足りないなら、増員要求などをすればいいのではないか? ……と」

すぐさま、質問が返ってくる。

 

冷泉も、その質問は想定していた。

「当たり前だが、何の手も打たずに、この状況を放置するような人間はいないだろう。前任の提督も無策のままいたわけではなかったようだ。過去の決裁資料を見てみたんだが、確かに艦娘の増員要求は出していたようなのだが、どういうわけか、それに対するそれ以後の書類はどこにも無かった。倉庫とかも調べたんだけど、見つからなかった。つまり、その後の経緯は不明だが、どうやらその要求は承認されなかったらしいと判断せざるを得ない。

私が着任してからも、当然ながら艦娘不足は深刻だったわけだけれど、どうしたらよいか解らなかったんだ。そのあたりの引き継ぎは無かったからね。そこで、できるかどうかは分からないけど、とりあえず聞かなければ何も始まらない。私は今の段階で増員要求が可能なのかを問い合わせてみたんだ。すると舞鶴鎮守府においては現在、定員を下回った状態であり、要求をすれば、当然ながら他に優先して承認されるであろうとのことだったよ。不思議な話だ」

 

「なんだかとても大きな謎のように提督は仰るが、結局のところ、増員要求は出したが冷泉提督の前任の提督が増員を却下した、もしくは要求したものの撤回したのではないですか 」

との委員の一人からの指摘。

 

―――それは、小野寺大佐だった。

 

お前、舞鶴鎮守府で少し前まで副官でいただろう? そんなのお前が一番知ってるんじゃないのか? と冷泉は聞き返しそうになる。

一瞬ではあるが動揺した精神状態を落ち着かせるため、冷泉は軽く深呼吸をする。

 

「……いや、私も決裁文書を参考資料もあわせて何度も確認したんだが、提督まで決裁が回っているようだし、実際に文書も発出したような形態をとっていたから、大佐の言うように提督の一存で増員要求をしなかったわけではないようだよ。それに、もし、仮に提督が増員要求をしなかったとしても、現状の艦娘数では領域解放戦に支障が出るのは明らかだ。とてもじゃないが、納得できる成果を得られないと判断できるはず。……当然ながら、その時いたはずの副官が提督の判断を認める訳がない。何らかの進言を行っているだろうし、それを記録に残しているはず。鎮守府での戦果は即、提督だけでなく副官の成果……そして、間違いについて放置していたら、副官の責任になる可能性もあるからね。無策で放置するわけがないんだ。それに、だ。軍務は提督、人事のほうは副官が主としてやっているのが通常の形態のようだしな」

最後の部分は、当時副官だった小野寺大佐への皮肉を込めている。

他の委員がこのことを知っているかどうかは不明なので、あえて明確に批判するような言い方はしなかったけれど。

 

「ぐ、ぐぬぬぬ……」

と、再び、小野寺のモニタが【通話中】となり、うめき声が聞こえた。

 

「ゴホンゴホン。……失礼しました。まあ、その辺のところはどうやら不明なようですから、想像でしか語ることができませんな。……しかし、仮に艦娘数が少なかろうと、与えられた現有戦力の中で、最大限の成果を目指し、達成するのが選ばれし鎮守府司令官の責務ではないでしょうか」

なかなかこの男もへこたれない。冷泉は小野寺の図太さに関心した。少し笑いそうになるのを押さえるのが大変だったが。

 

「まあ確かにそれについては、大佐の意見に同意ぜざるをえないな。しかし、だからこそ、私はあの状況で艦娘を、1人たりとも失う訳にはいかなかったのだ」

 

「しかしですね、それは、たまたま、本当にたまたま、すべての幸運の女神が冷泉提督に味方し、これ以上ないほど運が良かったから成功しただけではないのですか。確かに戦の神といってもいい冷泉提督だからできたことなのかもしれませんが、……本来ならば全滅してもおかしくない状況。冷静に分析すれば、私情に流されて対局を見誤った事実は変わらないと思われますが」

小野寺は冷泉を貶しそして褒めて反論してくる。要はお前の指揮は完全に私情に流されただけで、運が良かったからなんとかなっただけということだな。別に腹は立たない。

 

「運が良かったのもあるかもしれないが、一応反論させて貰う。あの時、我々は撤退しか選択肢が無い状況であり、すでに勝敗は決していたんだ。だから、私は勝たなければならない状況ではなく、負けなければいい……つまりは、艦娘を失わなければ良かったんだ。領域における撤退戦とは、海流の流れに逆らいながら進まなければならず、本来は撤退する側に不利なものだ。しかし、撤退するに障害となる海流の流れを利用すればこちらの魚雷の射程は大幅に伸びるし、設置するだけの機雷ですら攻撃的な武器となるという利点があった。また、敵の心理状態に至っては、すでに勝利は確定している状態で、より大きな戦果を求め前のめりでの追撃状態となっているのが明らかに見て取れた。本来なら行うべき警戒すること無く、追撃してきていた。おそらくはこれまでこちらの艦隊が損害の大きい艦船を置いて、撤退を最優先という戦術をしていたから、今回もそうなるであろうと向こう側は思っていたのかもしれない。ゆえに進撃速度を上げて、本隊を狙ってきたのだろう。今回は敵の心理を逆に利用し、味方を失うことなく、逆に損害を与えることができた。……これを成果でないとは言い切れるのか」

 

「しかし、提督。それは、あくまで結果論ではないですか? そもそも、何故、大破した軽巡洋艦を救うために他の艦の危険を冒してまで救助する必要があったのでしょうか。……極論と言われるかもしれないがあえて言います。所詮、艦娘など武器に過ぎないものでしょう。ただの消耗品だ。さらに、神通はたかだか軽巡洋艦にすぎない。戦艦や正規空母ならともかく、失ったところで鎮守府にとってはたいした損害では無いでしょう? 失ったとしても、また補充すれば良いだけではないすか。……ただ、それだけのことです。一隻足りと失いたくない気持ちはわからんではない。しかし、冷泉提督の考え方は、ふふん、どうも艦娘って奴に肩入れすぎているように判断せざるを得ない。可哀相だとかそんな一時の感情に流されて、戦艦である金剛や扶桑を失ったらどう責任を取るつもりだったのでしょうな。とてもじゃないですが提督一人の首では償い切れませんよ」

吐き捨てるように小野寺が言う。

 

ぶちん。

 

冷泉の中で、極力抑えようとしてた感情の箍(たが)が外れそうになるのを感じた。

「消耗品、……だと? 」

口を出たその言葉は、冷泉の先ほどまでの声色とは違い、明らかに怒りを含んだものだった。

 

「何か気に障るような事を言いましたかな? 」

感情をぶれさせることに成功したためか、小野寺の声は心なしか軽やかだ。冷泉提督の痛い部分を突くことができ、主導権を奪い返したと実感したようだ。

 

「ふざけるな! 彼女たちは、消耗品なんかじゃない。俺にとっては、一人一人が、かけがえのない大切な存在だ。彼女たちは、人間と同じく感情があり、嬉しければ笑うし悲しければ泣く。俺たち人間となんら変わらない。そんな彼女たちが俺たち人間のなんかのために、命を賭して戦っているんだぞ。いや、戦ってくれているんだ。代償など何も求めずに!! そんな彼女たちがただの消耗品だと? 換えの利く存在だと?

ふざけるな、糞野郎が!

砲弾の飛んで来る事のない無い安全な場所に隠れて、戦闘の恐怖というものを何も知らずに、のうのうと暮らしてるだけの外野が知ったように偉そうに抜かすな。感情に流されるな、だと? ……俺は感情に流されるような人間では無いつもりだ。もし、俺がお前が言うような人間だったら、お前はこの世に存在していないはずだ。なぜなら、俺がその存在を絶対に許さないからだ! 」

 

「な! 」

冷泉の予想外の剣幕にみんながたじろぐ。

沈黙がしばらく続いた。

 

「ま、まあまあ。冷泉提督、落ち着いて下さい」

なんとか司会役が言葉を発して、場を何とか納めようとする。

そもそもこの委員会は形式的な物なのに、どうしてこんなことにと慌てているのが明らかだ。

 

「少し感情的になってしまったようだ。すまない」

提督も落ち着いたのか、その言葉に先ほどまでのトゲは消えている。

 

「ふはははは。冷泉提督は、艦娘にやたらと肩入れしますな」

冷泉の剣幕に怯えてしばらく黙っていた小野寺だったが、冷泉が落ち着きを取り戻した事を確認したためか、再び挑発的な言葉を発した。

 

「小野寺大佐、これ以上の発言は控えて貰いたいのですが」

再び揉め事は止めてくれとばかりに、司会が割り込もうとする。

しかし、小野寺は喋るのを止めない。

「確かに、艦娘の外見は普通の少女と変わりありません。むしろ、一般の女より美しいものが多いと聞きます。……ふふふ。艦娘ですか、冷泉提督の言い方だと、彼女たちですかな。あなたは彼女たちを軍艦ではなく、また部下でもなく、ただの女として見ておられるのではないのですかな。機械である、そして兵器である、人でないモノを人のように、いや女と同じように見ているとは、提督もなかなかマニアックですなあ。がっはっははははは!! あっはっははははは」

 

「なるほど。確かにそうかもしれないな。……彼女たちを私は、人として見ている。一緒にいれば分かるだろう。彼女たちは、人と同じように笑い喜び悲しむ。普段の彼女たちは人となんら変わるところがない。ごく普通の少女たちだよ。だから、それぞれの艦娘が私にとっては大切な存在であることを否定はしない」

 

「認めましたな! それを認めるのであれば、個人的な感情から前回の戦闘において、神通を助けようとしたと思われても仕方ないのではありませんか。好きな女? まあここでは女性としましょうか……が、命の危機にある。救わなければならない。多少の犠牲はやむを得ないなどと考えなかったと言えますか? 恋は盲目ともいいますからなぁ」

ここぞとばかりに攻め込んでくる。

 

「そうかもしれないな。私は彼女を護りたいとは思った。だが、私は神通ではなく、他の艦娘であったとしても同様の事をしただろう」

 

「つまり、自らの間違いを認めるわけですね」

 

「私は過ちなどは犯していない。過ちというならばどこが誤りだというのだ」

 

「私情に流されて艦隊を危険にさらしたからですよ」

高笑いする小野寺大佐。

 

「結果を見れば過ちでなかったことは明らかだろう? こちらは一隻も失うことなく、逆に敵に損害を与えることに成功した」

 

「さっきから言ってるでしょ? それは、たまたまだと。ちっ、あんた、……しつこいなあ」

 

挑発する小野寺の声にも冷泉は感情を乱すことなく、淡々と答える。

「最初から勝算はあった戦いだったのだ。こちらには無傷に近い戦艦が1人、重巡洋艦が1人、軽空母が1人いたのだからな。相手の戦力からしても、この三人で充分に勝機はあった。そして、あの状況での勝利条件は一人も失うことなく領域から撤退でさえすきれば良かったのだ。……普通に考えればこれは勝てる状況だろう? しかし、君の言う定石通りでいけば、救えるはずの軽巡洋艦を失うことになっていたのだ。何もせずに貴重な艦娘を1人を失うより、勝てる戦いに勝って、全員無事で帰ることが最善の選択肢であったことは疑いようがないだろう? どうだろうか」

 

「確かに」

 

「提督の仰る通りですね」

そろそろ会議の潮時と見た他の委員たちが冷泉の意見に同意する。これ以上の不毛なやり取りに付き合いきれないというのが本音だろうが。

実際、彼らの声は疲れ切っており、早々にこの会を打ち切りたい気持ちが声のも表れている。

 

「ぐぬぬぬぬ。全く、今回の提督は口だけは達者なようですな」

どうやら、小野寺大佐もこれ以上言っても、委員の誰も賛同してくれないと気づいたようだ。はき出すように批判的な言葉を発するしかなかったようだ。

 

「では、これ以上の質問は無駄だろう? これで終わりでいいのか? 」

と冷泉。

 

「そうですね。今回の提督の行動については、定石と異なるものの、その作戦については問題が無いと思えます。皆さんはどうでしょうか? 」

司会が多数決を取る。

 

結果、委員の賛成2反対1で可決された。

反対票は小野寺大佐が入れたとしか思えないが。

 

「では、委員会は適性に執り行われ、冷泉提督の今回の戦いにおいての行動に問題は無かったと結論づけさせて頂きます。なお報告書は作成次第決裁に回しますので、皆さん決済をよろしくお願いします」

司会の挨拶を合図に査問委員会は散会となる。

モニタが次々と暗転していく。

 

しかし、一つのモニタだけが残っている。

それが小野寺大佐のモニタであることがすぐに分かる。

 

「小野寺大佐、何かまだ私に用があるのかな? 」

面倒くさそうに冷泉が声をかける。

 

「今回はうまく乗り切ったようですが、次はどうなるのでしょうな」

それが精一杯の嫌味のようだ。

 

「ははは、まるで私が失脚するのを待ち構えているような言い方だな。……君の会議での発言を見ると、何か私に対して含むところがあるのかな」

 

「……いえ、とんでもないです。あなたに対して含むものなどまるでありませんよ。ただ、軍隊経験の全くない、知識とコネだけの人間が鎮守府の仕事をやっていけるのかを不安視しているだけです。まあ、今後も冷泉提督が上手く回していってくれるならいいのですがねぇ」

 

ずいぶんと嫌味をしつこく言う奴だな……それ以外に冷泉は感想を持たなかった。過去の経緯を知っているから、彼が冷泉に対して嫉妬のような感情を持っているのは何となく理解できるが、あまりに大人げない態度だ。それに、艦娘をモノ扱いするような奴に、鎮守府を任せる事なんてできるわけがない。

「心配してくれてありがとうって言えばいいのかな。まあなんとかやってみるさ。幸い、現在は提督の足を引っ張るような奴はいないし、艦娘にちょっかいだすような奴もいないようだからね。現在の舞鶴鎮守府は、至って平和だよ」

すべてかつての副官だった人間への皮肉である。お前の過去を俺はみんな知っているということをしっかりと小野寺に分からせておかなければならない。

 

「ぐぬぬ、ぬ、ぬ、ぬ、ぬ。ムキー!! 」

奇声のような大声を出し、モニタの向こうで何かが壊れるような音が聞こえる。仮にも上官との会話とは思えない態度だ。

あまりに激しい怒りのために我を忘れ、呼吸困難にすらなっているようにさえ想像できる。

上官に対する態度をすでに忘れてしまっているのか。

「き、きすま、なんでしってぬ! 」

 

「みんなの前で言わなかっただけありがたいと思ってもらいたいな」

どうやら何故貴様知っていると言ったようなので、普通に回答してやる。

 

「ぬうううう」

まだまともな言葉を発せないようだ。それほど、舞鶴鎮守府での副官時代の事を知られているということは彼にとって不味いことなのだろうか。一体どれほどの屈辱的な事があったのだろう。……特にどうでもいいことだが。

 

「少なくとも俺は上手くやっていくから心配は無用だよ。残念だろうがな」

 

「ぐぬうううう。……ハアハア。本当なら、私がお前の立場にいたはずなんだ。屈辱だ。恥辱だ。クソクソ、本当に忌まわしいあの男め。ぬぬぬうぬう、悔しい悔しい悔しい。だが絶対に、いつか必ずその地位をこの手に取り戻す。過ちは必ず正されるのだ。この雪辱は晴らしてみせる」

なんとか言葉を発せられるようになったようだ。

恨み節だけしか喋っていないが。それと雪辱を晴らしてたら、受けた恥を認めることになるんだけど……。それを言うとさらに面倒なので黙っていた。

 

ぷちん。

 

お別れの挨拶すらなく、いきなり回線が切断された。

 

真っ暗になった部屋で、冷泉は大きくため息をついてしまう。

また少し、言い過ぎたかもしれない。

 

かつて、向こう世界にいた自分からは想像ができないくらい、どういう訳か攻撃的になってしまっている。

かつての自分なら、反論などすることなく自分の感情を押し殺し、へらへらと愛想笑いで相手の意見を受け入れ、その場をやり過ごしていたはずなのだけれど。

自分がとりあえず我慢すれば周りが旨く行くのなら、躊躇無くそちらを選択していた。それはそれで一人になった時に、後悔を繰り返していたけれど、それが冷泉朝陽という男の生き方だった。

争いを嫌い、平穏を愛する男だったのだ。

 

それが次第に変化している気がする。

作らなくてもいい敵を作っているのではないか、と不安になってしまう。

 

これがこの世界にいる事が原因なのか、それとも鎮守府司令官という立場になり、艦娘たちを護らなければならない立場にいるためなのか、どちらが原因なのかはわからない。いや、他に原因があるのかもしれない。

そしてすべてが原因なのかもしれないし、すべてが原因でないのかもしれない。

 

どちらにしても、冷泉は生きていかなければならないし、それ以上に舞鶴鎮守府というものを、自分の部下の艦娘たちを護らなければならないのだ。

 

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