病院の待合室に入ると、一斉にみんながこちらを振り返ります。
そして、加賀さんの存在に気づくと、一瞬だけ批判的な視線を向けますけれど、すぐに何事も無かったかのように目をそらします。
この一連の動きは、すごく不自然です。
加賀さんは足の怪我が痛むのか、少しだけ足を引きづりながら歩いて行きます。そして、金剛さんのところへ行くと、
「……提督の様子はどうなのですか? 」
といきなり問いかけます。
ちょっとどきりとする場面です。よりにもよって金剛さんのところに行くなんて……。
提督がこんな事になった原因については、誰も表だっては問い詰めないけれど、誰が原因だなんて、みんなわかりきっていることなのです。それを口にしないのは、金剛さんが止めているからなのですけれど。
誰よりも元気そうに振る舞っているけれど、本当は金剛さんが一番参っているはずなのです。普段は天然過ぎの脳天気な態度でみんなを困らせることがありますが、誰よりも責任感が強いことをみんな知っています。だからこそ、みんなが彼女の言うことを聞くのです。故に、金剛さんが提督を止めることができなかった事について、自分を責めているのは間違いありません。あの時、自分が提督を止めていれば……それが出来る立場にあったのにできなかったということを彼女は悔やんでいるのでしょう。けれどそれを表に出すと、動揺が他の子達にも伝染してしまいます。それを懸念して、無理をしているのはよく分かります。
そんな精神状態である彼女に対して、よりにもよってその原因者である加賀さんが提督の状況を聞くなんて……。
金剛さんでなくても一言、言ってしまいそうな状況です。一波乱ありそうで身構えてしまいます。
「ずっと、ずっと手術中ネ……。それ以外は何も分からないよ」
元気の無い声で金剛さんが答えます。表情は、ぼんやりしていて、誰に聞かれたかもよく分かっていないのかもしれません。こんなことは珍しいです。
「何もわからないの。そう……」
加賀さんは特に感情を表さずにつぶやきます。そして、そのまま黙り込みます。それで終わりなのです。
空いている席を見つけると、そこに座ってしまいました。
ああ……。
私は思わずうめいてしまいました。
ここはみんなに謝罪をすべき時だと思うのですが、彼女はそんな気配さえ見せません。
そりゃあ確かに、こんな時に謝られたってみんな困惑するだけでしょうけど、それぞれがいろんな想いを抱いたまま、誰も口も聞かずに黙り込んでいるなんてすごく嫌な感じだし、自分の事ではないけれど居心地が悪いです。
どんな結果になろうとも、まずは自分が原因で起こってしまった事について、謝るべきだと私は思うのです。もちろん、批判は当然受けるでしょうけど、それは仕方が無いことです。けれどそれから全てを始めることができるんじゃないかと考えるのです。なのに加賀さんは、何も言いません。もちろん、そこまで気が回らないほどに動転しているのかもしれませんが。
他の子達は加賀さんに対していろいろ言いたいことがあるはずなのに、場の空気を読んでかどうかわからないけれど、それを口に出さずに、いえ、出せないでいます。
金剛さんに言われたせいもあるでしょうか。それとも、相手が正規空母なので、戦艦クラスが口を開くべきだと考え、戦艦である金剛さんや扶桑さんが言うべきだと考えて黙っているのでしょうか? しかし、残念ながら金剛さんはあんな状態ですし、扶桑さんは気絶してドックに運ばれたままです。こんなもやもやした状態がいつまで続くのでしょうか。こんな時、秘書艦である私が動くべきなのでしょうか。けれど、そんな勇気が私にはありません。
重苦しい沈黙だけがこの場を覆っています。どんよりとした空気が支配していて、すごく息苦しいです……。
私も、他の子も何も言葉を発することができず、黙り込んだまま、時間だけが過ぎていきます。
それから、どれくらいの時間が経過したのでしょうか? 誰も言葉を発さない環境では時間の経過すらよく分からないです。
唐突に、手術中のランプが消え、手術室の扉が開かれました。
待合室はガラス部分が多い部屋ですから、部屋の外の様子はすぐに分かるのです。
みんながすぐに反応し、立ち上がります。さっきの沈黙が嘘のようにざわめき立ちます。
部屋の奥から医師らしき人影がこちらに歩み寄って来るのが見えました。
気づいた金剛さんが慌てて待合室から飛び出し、医師の元に駆け寄って行きます。それに他の艦娘達も続きます。……もちろん、私も。
別の室からも海軍の人達が動きに気づいたのか、何人もの人が出てきました。
艦娘や兵士たちに囲まれた医師は、長時間にわたる手術直後だけにさすがに疲れたような表情を見せています。
「ねえ先生、提督はどうなの? どうなったの? もちろん、手術は成功だよね! 提督は、大丈夫だよね」
金剛さんが医師に掴みからんばかりに近づき、責め立てるように問いかけます。他の艦娘も彼女の後ろで口々に質問しています。
医師は驚いてたじろいでいます。彼は何かを話そうとしていますが、艦娘たちの矢継ぎ早の質問攻めに何もできないでいます。完全に圧倒されています。
「ちょっと、みなさん。落ち着いて! 気持ちは分かりますが、落ち着いてください。先生が話せませんよ」
輪の外から見ていた、先ほどお話をした人間の女性士官が叫びます。彼女の声に合わせて、彼女と部下らしき数名が艦娘と医師の間に強引に割り込み、医師と艦娘を引き離します。
「みなさん、そんなに口々に騒いだら、先生がお話しできません。落ち着いて、とにかく静かにしてください」
その声に艦娘達も渋々といった感じで従います。
本来なら秘書艦である私がやるべきことなのに、呆然として何も出来ませんでした。それどころか、私も彼女たちと一緒になって提督はどうなったのかと質問攻めにしていました。……少しショックを受けてしまいます。
それでも人間達のおかげで、なんとか艦娘達も静かになり、やっと医師が口を開くことができます。
「……すみません、みなさん落ち着いて聞いてください。今回の冷泉提督の執刀を担当しました佐野です。冷泉提督の手術の結果等について、これからお話しします。……落ち着いてお聞きください」
そう言って、彼は話し始めます。
私もそうですが、他の艦娘も、人間たちも彼の次の言葉を待って沈黙します。思わず息をのんでしまいます。
「さて、……冷泉提督の負傷についてですが、鋭利な突起物による刺創が全身に15カ所ありました。その一部は内臓にまで達し、臓器に深刻な損傷を与えていました。また突起物は体内で一部が砕け、その断片が無数に体内で散らばっており、それらの影響で更に傷が拡大して出血を増大させていました。時間はかかりましたが、すべての破片を取り除き、傷の縫合については完了しました。しかし、その出血量が多すぎたことと臓器への深刻な損傷箇所が多すぎました……」
「そんな細かい説明なんてどうでもいいネ。先生の言うようにいろいろあったけど、結局、提督は無事なんだよネ? すぐに元気になるんでショウ? ねえ、センセイ? 」
金剛さんが医師の質問を遮るように問いかけます。
彼女の態度からは、どちらかというと、それ以上の説明を拒否しているかのようにさえ思えました。
先生の説明からは、どう考えても快方に向かうとは思えないのですが、その説明をすべて無視するような事を彼女は言っています。それは、私から見ても、ほとんど彼女の願望でしかないように思えます。
佐野医師は、驚いたような顔で何も言えずに彼女を見ているだけです。
「無事なんだから、……だったら、早く提督に会わせてほしいんだよネ。今すぐに! 」
彼女のその瞳からは、なぜだか涙がこぼれ落ちて止まりません。
「あれ? なんで涙出てるんだろ。提督が無事だったから嬉しいからかな? ……おかしいな。ねえ、先生、どうして黙ってるネ? 提督は大丈夫だって、……早く、早く言ってよ」
声は悲鳴にも似た叫びとなります。
医師は、すがるような目で彼を見る金剛さんと目を合わせないようにします。
続けて、すまなそうな顔で艦娘達を見ます。彼女たちも祈るような瞳で彼を見ます。けれども、彼は首を左右に振りました。
「あまりに……出血がひどすぎました。そして、傷の具合もひどすぎた……すべてが深刻すぎたんです。我々は全力を尽くしたつもりです。やれることはすべてやりました。やったつもりです。けれど、……すみません。これが私の、我々の限界です。申し訳ない……もう、それしか言えません」
そう言うと頭を深々と下げる。
「あははは! ……先生、何を謝ってるネ? さっきも言ったでしょう? ……手術は成功したんでしょう」
金剛さんの声が廊下に空しく響きます。
「提督は、一体どうなっているっていうの」
「先生の説明は説明になっていないわ」
「無事なんでしょう? 助かるんでしょう? 先生は冗談を言って私たちを困らせようとしてるんでしょう」
艦娘達も口々に質問します。中には苛立ちを隠さない声すらあります。
「……もはや、ここから先の事は、神に祈るほかありません。……私達では、人間の医学ではこれ以上、手の施しようがないのです」
「どういうことネ? 先生、何を馬鹿なことを言ってるの。ふふふふふ、さすがに、こんな時にそんな冗談は許さないネー」
冗談めかして金剛さんが言い、一人で笑います。けれども、何故かその瞳は虚ろです。医師はまるで反応しません。むしろ哀れみの表情で金剛さんを見つめます。
「私ができることは、皆さんにお願いするだけです。はっきりと言いますよ。冷泉提督は、今、必死に戦っているはずです……けれども、それもここ数日がヤマでしょう。おそらく、もってあと数日が限界だと彼の体力の限界だと思っています。本当にすみません。私が言えることは、それだけです。みなさん、悔いを残すようなことのないように、悔いを残すような事の無いよう行動して頂きたい。あなた方と冷泉提督との時間は、もう残り少ないのです。ですから、時間を無駄にしないでください。それだけです。……すみません、失礼します」
耐えきれなくなった医師は深々と頭を下げると、そのまま背を向け、逃げるように歩き去った。
「そ、そんな……嘘だよね、嘘。ねえねえ」
崩れ落ちるように金剛さんが膝をつく。
「提督が、提督がだよ。……そんなことありえないネ。前だってあんな怪我をしたのに、頭ドカーン! ってなったのに、すぐ元気になったよね。みんなも覚えてるよね。今度もきっとそうダヨ。だから絶対、ぜっ、絶対に。ありえないありえない、ありえないよね。ねえ、ねえ、みんなそうでしょう? ね、みんな何とか言ってよ。言って! どうしたの」
誰と無く金剛さんは問いかけます。けれども、みんな同意することが出来ず、かといって彼女にかける言葉さえ見つからず沈黙するしかありません。
「みんな、どうして黙り込んでるの? なんでそんな辛そうな顔してるネ? 何とか言って欲しいよ。提督が、提督が……そんなの嫌だよ、嫌、嫌嫌嫌。……うわあああああん! 」
そのまま泣き崩れてしまいます。誰にはばかることもなく大声で、金剛さんは子供のように泣き出しました。
他の艦娘達にも動揺が走ります。
それは明らかな絶望……それがみんなの心を浸食していきます。
提督が、死ぬ……?
そんな私たちの理解をこえる現象が、今、目の前に起ころうとしています。
この世界において、艦娘が轟沈することはあっても、提督の死に艦娘が立ち会うことなんてありませんでした。それが今、起ころうとは。それも自分たちの前で起ころうとしているなんて。
誰もそれを理解できないし、したくもありません。そんなこと、受け入れることなんてできるわけないのです。
金剛さんが泣き出したことで、それがみんなに伝染していきます。それは、とても、良くないことです。みんなの混乱を押さえるべき人が取り乱してしまったら、もう収集がつきません。
「みんな、あなたのせいなのよ! あなたが悪いのよ」
突然、悲鳴にも似た叫びが響き渡ります。
「あなたが来たのが全部いけないのよ! 」
激しい口調で責める声です。
声のしたほうをみると、呆然とした顔で立ちつくしている加賀と、彼女と向かい合うように立っている軽空母祥鳳がいました。
普段は大人しくて、自分の意見をそんなに主張することのない彼女が珍しく感情を露わにして加賀さんを非難しています。確かに、彼女は提督の事を慕っていましたから、当然の反応といえば反応なのですが……。けれど、この状況はまずいです。提督が大変な時に、艦娘同士でいがみ合うなんてとんでもないことです。こんなことで時間を無駄にするなんてありえないです。
加賀さんは少しだけ彼女を見、そしてまた俯いてしまいます。
「加賀さん、なんとか言って下さい! 黙ってなんていないで!! 」
祥鳳が再び声を荒げます。
それはあまりに理不尽なのでは? と思うような事を言います。加賀さんが何て答えればいいのでしょう。謝ったところでどうにもならないというのに。けれど、それは祥鳳だって分かっていることのはず。誰かを責めたところで提督が助かるわけではありまえん。せんもないことなど分かっているのです。けれど、言わなければ、心が耐えられないのでしょう。
「あなた、私が謝ればそれで気が済むのかしら……」
感情のこもらない、少し低い声で突然、加賀さんが答えます。上目遣いで祥鳳を見つめます。それは、ほとんどにらんでいるようにさえ見えます。
「そんなことで許されるはずありません。でも、あなたはみんなに謝らないといけないでしょう! それだけの事をしたんですから。とにかく、謝ってください。謝りなさいよ」
祥鳳も負けてはいません。正規空母の迫力にもたじろがずに反論します。たとえ理不尽であろうとも、言わずにはいられないのでしょう。
「はい、すみませんでした。……これでいいかしら? 」
やけくそな感じで加賀さんが言います。彼女もどうかしています。こんな言いようでは、まさに火に油を注ぐような態度です。
「なにそれ? どういうつもりですか! 私を馬鹿にしているんですか。こんな時にふざけないで下さい」
当然ながら、祥鳳も声を荒げます。怒りのために、少し目がつり上がり気味になるほどです。
「私を馬鹿にするのは構いません。けれど、提督がこんな状態の時にそんなことを言うなんて、絶対、許せないです」
「なら、どうするのかしら? 」
加賀さんの発言は、どう考えても投げやりな気持ちになっているとしか思えない感じです。挑戦的な瞳で祥鳳をそれどころかこの場にいる艦娘みんなを睨みます。
「ちょっといい加減にしなさいよ! アンタ何考えてるの? 」
珍しく黙っていた叢雲がついに我慢できなくなったのか、口を挟んできます。空母相手でもまるで遠慮がありません。
「アンタのせいであいつがどうなったかってのを分かってるの? それなのに何なのその態度! 」
そして他の艦娘達も呼応するように、加賀さんに対する批判的な言葉を口にしだします。
提督の命が残り少ないと宣告された状態で、何故争うようなことになるのでしょうか。なんとかしないと、取り返しのつかない事になりそうです。秘書艦としてこの場をなんとかしないと。私がなんとかしないと。気だけ焦りますが、どうしていいかわかりません。
「フン。なんとでも言えばいいわ。……私を批判して、あなたたちの気が済むのならどうにでもしてちょうだい。もう、私にとっては、何もかもどうでもいいことだわ。私を責めたければ好きなだけ責めればいいじゃない。どうでもいい。勝手にすればいいわ。どんなに願ったところで結局、何も変わらないし、何も変えられないのだから……。所詮、提督も私を救えなかったのだから……。あんなに偉そうなことを言っておきながら、このざまなのだから。放っておいてくれたら何事もなかったのに、しゃしゃり出てきて……ほんと馬鹿みたい。馬鹿な人」
私は右手の手袋を外すと、つかつか歩きと加賀さんの前に立ちます。そして、彼女の目を見つめます。
「何かしら? あなたも私に文句があるのかしら……」
突然やって来た私に彼女は不思議そうな顔をします。
加賀さんはわざとみんなを刺激するような言葉をいい、挑戦的な態度をとっています。すべてをあきらめ、投げやりになっているとしか思えません。それで彼女は満足なのかもしれませんが、それではダメなのです。
明らかにこの場の雰囲気は、スケープゴートを求めているのです。提督の死というあり得ない現実を突きつけられて混乱した艦娘にとっては、何でもいい、逃げ道がほしいのです。
原因者っである加賀さんを責めることで、この混乱から目をそらしたい艦娘。彼女への批判はみんなに伝染します。提督の死が至近になったことで押さえていた感情が爆発しそうになっています。
けれども、みんなが負の感情を持っていがみ合うなんて、させてはいけないのです。そんなこと、提督が望むわけありません。提督がこの場にいたらどうするか、考えるまでもありません。
私は覚悟を決め右腕を後ろにそらすと、渾身の力を込めて彼女の頬を平手打ちします。
パン!
乾いた音が室内に響き渡ります。スナップのきいた平手打ちが彼女の左頬を捉えました。
「何をしれっとしてるの、あなた! 今、提督がどういう状況か分からないわけじゃないでしょう」
普段以上に声を張り、叫びました。
そのおかげか分かりませんが、場は一気に静まりかえります。
いきなりの私の行動が、加賀さんに対する批判を向けようとする艦娘達の機先を制することに成功したようです。驚いた顔で私を見ている子たちが視界に入ります。
祥鳳も叢雲も言葉を失い、私を呆然と見ています。
「な……」
加賀さんも予想外の出来事で、戸惑ったような顔で私を見るだけです。
「加賀さん……自分がしでかしてしまったことをもっと認識しなさいよ。あなたのせいでどれくらいみんながとまどい、苦しんでいるのか分からないの? なんで他人事のような口をきいているのよ。……提督がこんなことになったは、すべてあなたのせいなんですよ! せめてみんなに謝るくらいのことをしてもいいのではないの? それなのに自分だけが辛い、自分だけが不幸だとわめいてばかりいないで、少しは他の子の事も考えたらどうなの? 辛いのはあなただけじゃないことくらい分からないの? 」
普段の自分からはありえないくらいの口調で叫んでしまいました。少し恥ずかしくなる自分を必死に悟られないようにします。
「私が謝ったところで……」
加賀さんが反論しようとしますが、私に睨まれ黙り込んでしまいます。
そう。彼女が謝ったところで、提督の状況が良くなる訳ではないことなんて分かっています。そして、加賀さんだって自分の責任について認識していることくらい分かっています。けれど、このまま黙っていたら、みんなが加賀さんを責めてしまうでしょう。誰かにすべての責任を負わせないと、耐えられないのです。そして、決定的な決別となるはずです。
そして、加賀さんもかたくなに心を閉ざしてしまうでしょう。
私なりに、このままではまずいと思ったのです。秘書艦でなかったなら、こんなこと絶対にやらない事だと思いますし、やりたくありません。こんな目立つことも嫌いですし、誰かに嫌われる役をやろうなんて考えもしなかったでしょう。けれど、誰かがやらなければ、取り返しのないことになるかもしれないって思ったのです。私が加賀さんをののしり張り倒し、一人悪者になればこの場を納められると思ったのです。本当は仲間に暴力をふるい、厳しい言葉で罵るなんてしたくなんてありません。……辛いです。けれども、艦娘達がいがみ合うことは提督の望むことではありません。私一人がみんなを代弁して加賀さんにみんなが引いてしまうくらいきつく言えば、他の子達が加賀さんを責めることも無いでしょうし、加賀さんも私のことだけを嫌いになるだけで済みます。犠牲は最小限に押さえられるはずです。
提督が戻られた時に、みんないがみ合っているところなんて見られたくなんてありませんから……。加賀さんがみんなに馴染めないでいるところを悲しそうに見ている提督の姿は、とても切なかったです。なんとかしてやりたいのにどうにもできない無力感に取り憑かれた提督の背中は凄く寂しそうでした。
加賀さんは、私の意図を悟ったのでしょうか、少し悲しそうな瞳で私を見ると、それ以上何も言いませんでした。