隣のほうから来ました   作:にせラビア

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LEVEL:49 追体験

「この辺かい、姫さん?」

「もう少し奥に……ええ、その辺がいいわ……」

 

チルノの遺体を抱きかかえるポップに指示を出し、レオナは少女の亡骸をできるだけ戦場から離れ、下が柔らかい場所へと下ろさせた。

上手い具合に草が生い茂っているおかげで、見た目にも寝心地は良さそうに思える。少なくとも地面にそのまま寝かせておくよりもずっとマシだろう。それにバラン達から距離が離れたおかげで、戦いの余波に巻き込まれる心配もずっと少なくなったはずだ。

 

レオナは改めてチルノを見つめる。

バランを相手に足止めを続け、挙げ句にはレオナにも向けられたギガデインの呪文を庇ったのだ。外傷はある。だがそれを差し引いても、死んでいるとは到底見えない死に顔だった。満足と、ほんの少しだけ後悔が混じり合ったような表情だと、レオナには思えた。

 

「みなさん!!」

 

不意に聞こえた声に、レオナだけでなくポップも顔を上げる。

 

「メルル!? どうしてここに?」

「もうしわけありません、実は……」

 

そこには、テランの地下でダイのことを頼んだはずのメルルの姿があった。まあ、ダイがこの場にいる時点で何があったのかはなんとなく察する事ができるのだが。

レオナの言葉にメルルは、地下で何があったのかを語り始めた。記憶を失っていたはずのダイが、何かに導かれるように紋章の力を発動させたこと。そして、その力で吹き飛ばされてしまい、今まで気絶していたこと。目が覚めたときには、鉄格子が折り曲げられていたことなどである。

 

「私も、この子たちがいなければ、まだ気絶していたかと思います」

「「ピィ!」」

 

メルルの言葉に、ゴメちゃんとスラリンが得意げな表情を見せた。スライム族特有の水滴のような形状でなければ、きっと大きく胸を張っていたに違いないだろう。

 

「あの、それで……チルノさんは……?」

「それが……」

 

今度はレオナが答える番だ。彼女は言いにくそうにしながらも、この戦いの最中に何があったのかをメルル達へ簡潔に説明する。

 

「そ、そんな……そんなことが……!?」

「ピィ!? ピイイィィッ!!」

 

その内容を聞き、三人は絶句する。特にスラリンの狼狽振りは一番大きいものだった。一番接してきた時間が長かった、と言うこともあるだろう。彼女の遺体にすがりつき、目を覚まさせんと必死で飛び跳ね、揺り動かしている。

 

「私の予知も、まだまだですね……」

「え……どういうこと……?」

「気絶している時に、夢を見ました。チルノさんとダイさんが、共に戦う不思議な夢……もしや予知かと思って来てみたのですが……」

「共に、戦う……!!」

 

その言葉にレオナは気がつかされた。

先ほどダイは「チルノが教えてくれる」と口にしていた。それはつまり、彼女の力と意識がダイの中に入り込んでいるからではないだろうか。

ならば、チルノを蘇生させることが出来れば、その力は元の場所に戻るのではないか。

 

とても都合の良い考えだが、今はその都合の良い奇跡が起こることを願うしかない。

 

「チルノが命を懸けてでもダイ君を元に戻してくれたんだもの……あたしだって」

「姫さん、何をする気だ!?」

 

魔法力を集中させるレオナの様子に、ポップがいち早く反応した。ポップの言葉に、彼女は内心の不安をかき消すように笑って見せた。

 

「チルノはダイ君の記憶を取り戻して見せた。ダイ君は、男の意地で元に戻って見せた。だったら、あたしも奇跡の一つくらいは起こしてみせなきゃね……」

 

これから行使する呪文は、この世界でも一握りの僧侶や賢者しか使えない呪文だ。

その呪文の名はザオラル。死者の体内エネルギーを聖なる力で活性化させ、蘇生させる呪文である。だが使えたとしても成功率は良くて半々という大呪文である。未熟な賢者でしかない自分が満足に操れるとは思えない。

 

「おねんねの時間にはまだ早いわよ……ここで貴方が死んだままじゃあ、バランの時と同じになっちゃう!! 首に縄をかけてでも、あの世から引っ張って見せるからね!!」

 

だが、成功させなければ、もっと酷い結末になるであろうことはわかりきっていた。チルノの意識を無理矢理にでも覚醒させるために、未熟と知りながらレオナは呪文を使う。チルノへ向けた言葉は、全て自分で自分に活を入れるための言葉でもある。

 

「神よ! ご加護を!!」

 

精一杯の魔法力と意識を込めながら、レオナは呪文を発動させた。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

剣を握り、自分を睨みつけるダイのことを見ながら、バランは現状を再確認していた。紋章の力を拳という一点に集中させた今のダイは、通常時のバランを上回る。だが、竜魔人と化した今のバランならば負けるはずがないだろう。

 

――なによりも。

 

右手に持った剣、あれこそがダイの弱点だとバランは見抜く。なぜならば――

 

「オリハルコンで出来た"真魔剛竜剣"でなければ、竜闘気(ドラゴニックオーラ)に耐えられる武器は存在しない……か?」

「!?」

 

考えていることをそのものズバリ言い当てられ、さしもの竜魔人と化したバランですら瞬間的にドキリとさせられた。

 

「だったら、試してみるか? 本当に耐えられないのかどうかを?」

「調子に乗るな! もはやこの姿になった以上、息子と言えども慈悲はないのだ!!」

「だからどうした!!」

 

バランの言葉に怒りを露わにし、ダイは突進して剣で斬りかかる。バランはその攻撃を手にした真魔剛竜剣で迎え撃つ。そして、二振りの剣は互いに攻撃を受け止めた。(・・・・・)

 

「バカな!?」

 

あり得ない結果に、バランの動きが一瞬鈍る。

ダイの言葉通り、(ドラゴン)の騎士が竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全開にして戦えば、そのパワーについて行ける武具は皆無と言って良い。ましてやダイの持つ剣は、多少強化してあるとはいえ地上で作られた唯の"鋼鉄の剣"でしかないのだ。そんな物を全力で振り回せば、攻撃を受け止める前に燃え尽きるはず。

それがバランの――(ドラゴン)の騎士の常識なのだ。

 

「あんたはおれの大事なものを、たくさん奪った……」

「グッ……!」

 

動きの鈍くなったバラン目掛けて、ダイは疾風のごとき素早さで剣を振るう。その攻撃は竜魔人となったバランの肉体を切り裂き、浅いが確実にダメージを積み重ねていく。

その事実が、またしてもバランを焦らせる。

竜闘気(ドラゴニックオーラ)に覆われた自身の肉体を傷つけられるのは、同じ竜闘気(ドラゴニックオーラ)を込めた攻撃か、それ以上の破壊力を持った攻撃でなければならない。そのどちらもが、ダイの持つ剣では一撃たりとて耐えられないはず。ダメージを与えるどころか、まともに振るっただけで消滅しているはずなのだ。

 

だがダイは耐えられることを知っていた――いや、耐えられると信じていた。と言う方がより正確だろう。ダイの中に存在するチルノは、無意識にダイの求める情報を与え、ダイの望む行動を行っていた。

武具の強度について言い当てられたのも、バランの視線から推測した答えに過ぎない。ダイの持つ剣が耐えられるのは、彼女が技能を駆使して必死で修繕を続けているからに他ならない。チルノがそうしていると本能的に理解しているからこそ、ダイは臆することなく戦えていた。

 

「なによりも姉ちゃんの命を……!! ただで済むと思うな!!」

 

今のダイならば、望めばチルノの操る魔法や技術を使う事も可能だろう。だがダイは微塵もそんなことは思わない。自分の持つ技術だけでバランを圧倒して倒すことが、チルノが信じてくれた事に対する何よりの恩返しになるのだと、そう思っていた。

これは、唯の感傷。言ってしまえば、ただの意地でしかない。だが、最愛の姉を失った悲しみと怒りが、ダイにこれまでにないほどの殺気を纏わせる。

 

「このガキイイイイイィィッ!!」

 

その恐ろしさは、今のバランですら僅かにたじろぐほどだ。だがバランはその恐れを誤魔化すように吠えると、再び剣を振るう。大上段に構え、勢いよく振り下ろされた剣は、威力はあるものの速度が殺されている。

 

「遅い!」

 

極限の戦いの中で、その行動は致命的だった。ダイはバランの一撃を最小の動作で素早く避けると、すれ違いざまに反撃を叩き込む。

 

「アバン流刀殺法! 大地斬!!」

「ガアアァッ!!!」

 

まるで攻撃とはこうするものだと言っているような見事な一撃だった。大振りな攻撃の隙を狙われたためまともに避ける事も出来ず、それでもバランは必死で身体を捻って直撃だけは防いでみせた。

しかし、その代償のように、バランの片翼が半ばから切断されてしまう。元々人間の姿をしていたバランのため、翼に向ける意識は少なかったようだ。それでなくと、自身よりも遙か

に広い横幅を持っている。こんなギリギリの回避では防ぎきれなくて当然だろう。

――いや、もっと言えば、竜魔人と化したバランの肉体を傷つけられる者が今までいなかったことも要因の一つだ。下手に回避せずとも、竜闘気(ドラゴニックオーラ)と肉体そのものの頑健さが殆どの攻撃を弾いてしまうのだから。

 

「浅かったか!? けど、翼がなければ空は飛べないだろう!!」

「グググ……おのれ……」

 

縦一文字に切断された翼はその強力な剣圧によって吹き飛び、残ったのは全体の三割程度でしかない。片方の翼は無傷だというのに、もう片方は千切れている。そのアンバランスさは見た目に異常に深刻だった。

それまで均衡を保っていたはずの左右のバランスが、大幅に崩れたのだ。それはこの戦いにおいては大きなハンデとしてバランに襲い掛かる。

 

「次は何だ!? 竜闘気砲呪文(ドルオーラ)か? それともギガブレイクか!?」

 

殺意の込められた目をダイに向けるが、ダイは平然としたまま挑発するように言う。バランが隠し持った大技を、当然の様に言い当てながら。

 

竜闘気砲呪文(ドルオーラ)のことはダイは知らないはずだが、それを知っているということは……先ほどまで口にしていたチルノが教えているということだろう。

事ここに到って、もはやバランですらダイのそれを妄想の類いとは片付けられなかった。真魔剛竜剣の素材にしてもそうだ。もはや自分の情報の多くはダイに漏れていると言って良いだろう。

ならば――

 

「その安い挑発……高く付くぞ!」

 

真魔剛竜剣を地面に突き刺すと、バランは両手を突き出し掌底を併せて指を組む。そこだけ切り取れば、まるで神に祈りを捧げる直前のような仕草だ。

それを見たダイは、トベルーラの呪文を使ってバランよりも高所へと飛び上がる。それは、万が一にも地上に被害を及ばせないための配慮だった。

 

「撃ってみろ!!」

 

両手の中で竜闘気(ドラゴニックオーラ)が圧縮されていく様子を見ながら、ダイは更にバランの注意を引きつけるべく口にする。

 

「おれは、お前の全てを打ち破って勝つ!!」

「図に乗るなガキがあああぁ!! 竜闘気砲呪文(ドルオーラ)!!!」

 

バランの両手が開いた。

手の甲に竜の顔のような意匠を持つ竜魔人がこの構えを取ったことで、両手が竜の口のように見える。それが開いたことで、まさに竜がブレスを吐くかのようだ。いや、実際にそれを意識しているのだろう。

両手から放たれたのは、魔法力によって圧縮された竜闘気(ドラゴニックオーラ)である。その一撃は、呪文の性質を持ちながら呪文ではない。すなわち、マホカンタのような耐呪文用の手段では防げないということだ。

耐えるか避ける以外に生き残る方法は存在しない特殊な攻撃方法だった。

 

「うおおおおおっ!! 竜闘気(ドラゴニックオーラ)!!」

 

それを見ながらダイは、自身の竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全開にして受け止める。竜闘気(ドラゴニックオーラ)同士がぶつかり合い、凄まじい大爆発が発生する――はずだった。

 

「何が起きた!?」

 

バランの放った竜闘気砲呪文(ドルオーラ)は、ダイを素通りしていた。まるでそこに何もなかったかのように、放たれた一撃は何物にも邪魔されることなく天を目掛けてどこまでも進んでいくだけだった。

 

竜闘気砲呪文(ドルオーラ)を……貴様、一体何をした!?」

「あんただって(ドラゴン)の騎士だろ!? だったら自分で考えてみろよ!!」

 

国一つを消し飛ばすほどの威力と範囲を兼ね備えた一撃を完全に無力化されることなど、(ドラゴン)の騎士の歴史の中でも一度としてありえないことだ。竜闘気砲呪文(ドルオーラ)を放ったことで勝利を確信していたはずのバランの表情はみるみる焦燥感に苛まれていく。

 

――ありがとう、姉ちゃん。

 

反対にダイは、己の中にいる姉に感謝の言葉を贈っていた。

ダイが行ったのは、竜闘気砲呪文(ドルオーラ)をすり抜けたのだ。同じ竜闘気(ドラゴニックオーラ)を持つ存在であるダイだからこそ、自身の竜闘気(ドラゴニックオーラ)の波長を併せて、反発させることなく受け流して見せた。

それは本来の歴史で、ダイが大魔王との戦いで見せた方法の一つと同じ方法である。チルノは無意識にそれを教え、ダイはその教えを受け入れた。口にするのは容易だが、それを行うのは微かなミスも許されないほどの精妙な調整が必要だった。

だがダイはそれをやってのけた。姉が教えてくれたのだからという、ただそれだけの理由でだ。

 

「さあ、どうするバラン! 竜闘気砲呪文(ドルオーラ)は何発撃てる!? 二発か!? 三発か!? おれが失敗するまで根比べをするか!?」

「う、ああぁ……」

 

ダイの言葉よりも少なく、バランが竜闘気砲呪文(ドルオーラ)を放てるだけの余裕は一回だけだった。その一回で、ダイが今の躱し方を失敗するのを期待できるほど楽観できるはずもない。

 

「こないのなら、こっちから行くぞ!!」

 

再び剣を握りしめ、上空からダイが襲い掛かる。一方、翼を切り飛ばされたバランは、慣れぬ重心に苦戦しながらも真魔剛竜剣を手にして、ダイと切り結ぶ。

だがダイの攻撃は重く鋭い。バランがかつて戦った時とは比べものにならないほどだ。それに加えて、今のバランは重心が狂っているのだ。それまでの感覚で身体操作を行おうとすれば、容易にバランスを崩してしまう。

 

「くらえええっ!!

「グッ……!

 

それでも百戦錬磨のバランは、慣れぬ身体でダイの猛攻を凌いでいた。バランがダイに勝るのは、積み上げ続けてきた経験だ。その経験を存分に使い、バランは今の状況を覆そうとする。

ベホマのような回復呪文を使おうとも、欠損した一部を復活させることは容易ではない。時間が掛かるのだ。ダイがその間を大人しく待っていてくれるはずがない。

だがこのままではジリ貧で負けることは目に見えている。そこまで思考したバランの行動は早かった。

 

「ウオオオオオッ!!」

「何ッ!?」

 

ダイを蹴り飛ばし、僅かでも距離を離した途端、バランは雄叫びを上げながら残った自身の翼を自ら切断してみせる。

 

「ハァ……ハァ……なまじ邪魔ならば、ない方がマシだ……」

「なんて執念だ……」

 

自傷の衝撃は、バランが思っている以上に大きかった。それは竜魔人となった精神状態であってもカバーしきれる物ではなかったらしく、目に見えて疲弊が大きくなっている。いくらかはダイの攻撃で追い詰められていたことも影響しているのだろうが、それでもだ。

 

「ギガデイン!!」

 

続けてバランは、剣を掲げて雷を落とす。その構えは彼らが今までの戦いで幾度となく目にしてきた必殺剣の動作。

竜闘気砲呪文(ドルオーラ)は既に避けられただけでなく、範囲も広い。その威力が分散してしまうのだろう。ならば、何をやったのかは知らないが、同じ避け方が出来ないように直接斬り殺すことをバランは選択していた。

 

「だが思ったよりも消耗が激しいようだ……ならば一気に打ち砕くのみ!」

「ギガブレイク……姉ちゃんは策と技術で無力化していた。でもおれは、真っ向から打ち破ってみせる!!」

 

そう言うとダイはライデインの呪文を唱えた。バランと比べればランクの低い呪文だというのに、それは強大な雷のエネルギーを剣に纏わせる。

 

「先生が教えてくれた技、おれの技術、そして姉ちゃんの剣! 負けるはずがない!!」

「ほざけ!! この形態(フォーム)でギガブレイクを使った時の破壊力は私自身にも想像がつかん!!」

 

ダイがライデインストラッシュを使おうとしているのは明白だった。だがバランはそれを見ながら無駄な足掻きと断じて鼻で笑う。

 

「この一撃には、残る全ての魔法力と闘気を込めた。もはやこれを耐えられる者など、この世に存在せん!!」

「やってみろ! おれだって(ドラゴン)の騎士だ!! 今のおれは、あんたよりも強い!!」

「貴様……!!」

 

互いの全エネルギーが剣へと伝わっていくのを目にしながら、バランはダイの言葉に苛立つ。なによりも、自分よりも強いという事実を心の中で少しずつ認め始めていることに苛立ちを抑えきれずにいた。

 

「覚悟しろ!! もはや貴様が死のうともなんの感慨も湧かぬ!!」

「それはこっちの台詞だっ!!」

 

もはや小細工など必要ない。使い手の命すら削り取るほどの一撃同士が、互いに正面からぶつかり合う。

 

「ギガブレイク!!」

「ライデインストラッシュ!!」

 

全力で振り抜いた剣同士がぶつかり合い、エネルギー同士が反発することで凄まじい爆発が生じた。だがその大爆発すらも、二人の必殺剣の前ではそよ風のようなものだ。激突する二つのエネルギーは互いが互いを飲み込んでいく。拮抗したかに見えたのは、瞬きするほどの僅かな時間でしかなかった。

やはりバランの消耗の影響が大きかったようだ。

ダイの攻撃はバランの一撃を上回り、その衝撃によって真魔剛竜剣を折る。鋭い太刀筋はそれだけに留まらず、バランの肉体を切り裂いた。だがバランの一撃も唯では済まない。衝撃がダイへと襲い掛かるが、彼の持つ剣はまるで意思を持ったかのようにその大半を受け止める。

 

「ギガブレイクを、正面から打ち破った!!」

「剣も、呪文も、そして魔法剣をも上回る、か……」

「バラン様……」

 

戦いを見守っていたヒュンケルたち三人が、それぞれ言葉を漏らす。いずれも類い希なる戦士である三人は、この戦いの結末を見届けていた。ダイとバラン、二人とも衝撃に吹き飛ばされているが、その勝負の結果は明白だった。

 

「ハァ……ハァ……」

 

強い衝撃に吹き飛ばされながらも、ダイはギリギリのところで余裕を持って姿勢を制御して、どうにか着地して見せる。対するバランは、衝撃に吹き飛ばされるまま動くことなく、森へと突っ込んでいく。

 

「おれの、勝ちだ!」

 

バランの姿を目にしながら、ダイは力を振り絞って叫ぶ。やがて、彼が握りしめていた剣は、まるでその役目を終えたことを悟ったかのように一瞬にして燃え尽きた。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

「ダイ、無事か!?」

「うん……でも、剣がッ!!」

 

クロコダインの言葉に、ダイは砕け散った剣を見ながら悲壮な叫びを上げる。バランとの戦いの中で、この剣がなければいつ負けていてもおかしくはなかっただろう。

 

「チルノが、守っていたのだな……バランとの戦いの中でも……」

 

その言葉にダイは力なく頷いた。何が起きたのかは、ダイがこの場の誰よりもよく知っている。文字通り、命を捨ててでも守り続けたのだ。

 

「姉ちゃん……」

 

ダイは満身創痍の身体を引きずって、チルノの元へ向かう。

 

「ダイ、くん……」

「ダイッ! 姫さんを責めないでやってくれ!!」

「え……何が、あったの……?」

 

ダイが見たのは、チルノの傍で力なく沈んだ表情をしているレオナたちの姿だった。突然の謝罪の言葉を聞いて、ダイは何のことかと首を傾げる。

 

「ダイさん、それは私から説明します」

「メルル!?」

 

朧気な記憶の中、ダイは(ドラゴン)の紋章に導かれるままに力を使い、メルルたちを吹き飛ばして気絶させていたのだ。それを思い出して少々バツの悪そうな表情を見せる。もっともメルルは気にもとめていないようだが。

 

「レオナさんは、チルノさんにザオラルの呪文を使いました」

「ザオラル……それって確か……!!」

「ええ、死者を蘇らせると言われる大呪文です」

 

記憶の片隅にあった呪文の名を聞いて、ダイは驚いた。だが同時に、何故レオナ達が暗く沈んでいたのか、その理由も理解してしまう。

 

「ごめんなさい……あたしの、力が足りなくて……!!」

「そっか……レオナはそれで、謝ってたんだ……」

 

もしも成功していれば、ダイのことは彼の姉が真っ先に出迎えてくれたことだろう。それが叶わなかった時点で、成否がどうだったか尋ねることすら野暮だろう。

レオナの謝罪の言葉を受け止めながら、ダイはチルノの手をそっと握りしめる。

 

「目を開けてよ……おれ、バランを倒したんだ……バランの技を全部、正面から打ち破れるくらい、強くなったんだ……ほら、預かってた銀の髪飾りだって返すから……」

 

それは、戦いに赴く直前にチルノから手渡された物だ。ダイの剣を借りていくからその代わりにと渡されて、今までポケットに入れたままだった。その銀の髪飾りをチルノの手へ握らせて、ダイは更に力なく訴え続ける。

意地のようにバランの全てを正面から叩き潰して見せたのも、ダイなりの願いだった。自分が一人でも大丈夫だと証明すれば、きっと姉は元に戻るのではないかと願い、ダイはバランと戦っていた。

 

「もう……こんな力なんて要らない……姉ちゃんに返す! 返すから……足りなかったら、おれの(ドラゴン)の騎士の力も持っていって良いから……だから……!!」

 

そう言い続けるダイの姿を、全員が静かに見守っていた。ラーハルトですら、少し離れた場所からその様子を見守る事しかできない。先ほどまで、天地をひっくり返すほどの激戦を繰り広げていた一人とは思えないほどに、その様子は弱々しい。

 

「お願いだよ、姉ちゃん……目を、目を覚ましてよぉぉっ!!」

 

どうしていいのか分からず、ダイはチルノの亡骸にすがりついて泣き叫ぶ。その涙がチルノへとこぼれ落ちるが、だが彼女が目を覚ますことはなかった。

 

 

 

――そう、か……そうだったのか……

 

ダイが泣き叫ぶ様子を遠目から見ながら、バランは静かに理解していた。受けたダメージは重く、竜魔人の姿を維持できないほどだ。身体を少し動かすだけでも全身に激痛が走り、意識を保っていられるのが奇跡に近い。

それほどの大怪我を負いながら、バランの心はそれ以上の痛みを彼に与えていた。

 

ダイが今感じているのは、最愛の者を失うという最も耐えがたい痛みだ。その痛みは、バランもよく知っている。そして、その痛みを感じた者が何を願うのかも。

 

かつて、バランも体験した苦い記憶。最愛の妻ソアラの命を懸けた行動に救われ、だがその行動は、よりにもよってソアラの実の父親が愚かな行動だと断じた。その言葉と最愛の者を失った喪失感に耐えきれず、バランは怒りに狂った。

その傷みと苦しみを、バランは息子に与えていたのだ。それも、自らがダイを苦しめる立場として。最初にそれに気付いたのは、部下であるガルダンディーの言葉だった。だがそれを不要なことと断じて、無視し続け、ようやく気付いた時は全てが遅すぎた。

これほどの皮肉があるだろうか。

 

バランはふと、先の戦いを思い返す。

ソアラを失った悲しみと怒りにまかせ、バランが王国一つを地図上から消し去ったのと同じように。ダイもまたチルノを失った負の感情で、途轍もないほどの殺気を生み出していたのだ。それは戦いの魔獣となった竜魔人ですら竦み、まともな思考と行動を封殺するほどに強烈なものだった。

そうでなければ、ポップたちがチルノの遺体を運ぶ時や、ラーハルト達が下がった時であっても、バランは無慈悲に攻撃を加えていただろう。

 

――私は、ディーノに殺されて当然だ……なぜなら、私自身が証人だからな……

 

そこまでを理解して、バランは森から姿を現す。そのやり場のない怒りを受け止め、最後の決着を付けるために。

 

「バラン様!? 生きて、おられたのですね……」

 

ダイたちの輪から離れていたため、ラーハルトが真っ先に反応を見せた。死を覚悟していたバランが生きていたことに対する喜びの言葉だったが、バランはそれを一瞥しただけでそれ以上の反応を見せることはなかった。

荒い呼吸を繰り返しながら、ダイの元へゆっくりと歩みを進めていく。

 

「な、なんだ……まだやろうってのか?」

 

鬼気迫る様子に及び腰になりながらも、ポップがバランを睨む。だがそんなポップをダイは手で制すると、ゆっくりと顔を上げる。

 

「生きて、いたのか……」

「ああ、そうだ……」

 

息子の言葉に、バランは力なく首肯した。本来ならば感動の再会のように思えるそれも、今の状況では最悪の再会に近いだろう。

 

「どうした? 私はまだ生きているぞ」

 

バランは挑発するように笑い、ダイに戦いを続けるように誘導する。既にバランは戦える状態ではないが、ダイはまだ多少なりとも余力がある。

 

「だったら!!」

 

再び怒りの声を上げながら、チルノの懐からダイは自身のナイフ――これもパプニカのナイフと交換でチルノが装備していた物だ――を抜き放ち、立ち上がる。パプニカのナイフを模して作られたチルノ謹製のこの武器は、キラーマシンの装甲を加工して作った名品だ。これで攻撃すれば間違いなくバランの命は尽きるだろう。

尤も、今のバランを相手にするのならば"ひのきのぼう"であっても倒すのに十分過ぎるほどだろうが。

 

「ダイ!」

「バラン様!!」

 

ナイフを手にしたダイの姿に、それぞれの仲間が名前を呼ぶ。だがそれ以上動く事はなかった。バランが何をしようとしているのか、ダイがどんな気持ちでいるのか。それぞれが痛いほどによく分かるからだ。

 

「バラン!!」

 

憎々しげに睨みつけながら、ダイはナイフを構える。

 

「うわあああああっ!!」

 

そして、やりきれない怒りと共に手にしたナイフを地面に叩きつけた。手にした武器を捨てる行為に、その場の誰もが、ダイですら驚いた表情を見せる。

 

「何故だ……どうして私を殺さない……!?」

「姉ちゃんが……おれの中の姉ちゃんが言うんだ……バランを殺すなって……だから……」

 

全身に力を込めて下を向き、唇を破りそうなくらいに強く噛みながら、ダイは武器を捨てた理由をゆっくりと語り出した。

姉が望んでいた。だから手を止めた。

言葉にすればとても簡単なこと。だがそれを実行することの何と難しく、勇気の要ることだろうか。

 

「なんでだよ……姉ちゃん……」

 

再び大粒の涙を目端に浮かべながら、ダイはぽつりと漏らす。

 

「最期の言葉が、なんで『おとうさんと仲良くね』なんだよ!! なんでなんだよおおおぉぉぉ!!」

 

チルノが命を捨てる直前、ダイの耳にだけ届くように囁いた言葉。その内容を一言一句そのまま口にしながら、ダイは力の限り叫んでいた。

――父親と仲良くして欲しい。

だがそれは、ダイとバランの親子にとってはもはや世紀の難題と呼べるだろう。最愛の者が最期に託した願いは、仇と呼べる相手を恨むなということだ。その言葉は、まるで呪いのようにダイの行動を縛りつける。

ほんの少し傷を付けるだけでも、仇を討てる。だが当の本人がそれをするなと願う。その板挟みに、幼いダイの心は荒海のように揺れる。

 

「おれには無理だよ……だってバランは、あいつのせいで姉ちゃんは……違う、おれのせいだ……おれが弱かったら、姉ちゃんが……」

 

頭を抱えて、自問自答を繰り返し続けるダイの様子を見ながら、バランはゆっくりと目を閉じた。

人間をうらまないで……みんな臆病なだけなのよ。

バランはソアラ王女の最期の言葉を反芻する。

 

――完敗、だ……ディーノは私と同じ体験をしながらも、その怒りと憎しみを飲み込んでみせた。それの何と難しいことよ……同じことをソアラに告げられながらも、私は……私は……!! 人間の心……最も不要だと思っていた物に……

 

お願い……ディーノを探して……二人で、幸せに……

自らの命の火が消えていくのを自覚しながらも、残された者の幸せを願い続けたソアラの言葉が、バランの心を強く苛む。

 

――実の親子が憎み合い、殺し合う……ソアラ。お前もきっと、こんな愚かな光景を見たくなかったから、ああ言ったのだろうか……

 

バランは閉じていた瞳をゆっくりと開く。

そこには、相反する感情に突き動かされ、今にも壊れそうなダイの姿があった。

 

――私は……私は間違っていたのか……だが、せめて……ディーノにだけは……私の見た地獄をこれ以上見ることのないように……

 

バランが過ちを認め、そう決意したときだ。

 

「あっ! い、いやだ!!」

「ダイ!?」

 

急にダイが虚空を見渡しながら、自分の身体を拘束するように強く押さえ込んだ。

 

「姉ちゃんが……姉ちゃんが消えちゃう!!」

 

不意にダイを襲ってきた喪失感を、彼は姉の力が消えるのだと直感的に理解していた。自分の中で感じていた暖かな気持ちが急激に冷めていくのだから、そう判断しても無理もないだろう。

そしてダイの推測は当たっていた。

ゆうごうの魔法には、そんな効果はない。元々無理と奇跡を積み重ねて、今の状態になっていたような物なのだ。効果が発揮するのは一時的な物でしかなかったとしても、無理もないことだった。

 

――もはや一刻の猶予もない!!

 

「バラン! 何をする気だ!!」

「騒ぐな!!」

 

バランは慌ててチルノへと駆け寄ろうとする。だが当然ヒュンケルたちが止めようと動くが、その行動をバランは一喝して止めてみせた。

 

「ほんの数秒でいい、黙っていろ。これが終われば、私のことを殺しても構わん!!」

 

それは先の戦いの時の迫力に勝るとも劣らないものだった。だが決定的に違うのは、殺意がなかった。チルノのことを本気で案じているという感情が端々から伝わってくるようだ。

その気配に負けたように、彼らはバランに道を譲る。ダイですら、飛び掛かろうとしていた手を引っ込めたほどだ。

 

「…………」

 

全員の見守るなか、バランはチルノの上で手を強く握りしめる。その手の中から光り輝く液体が漏れ出し、その一滴がチルノの口へ吸い込まれていった。

何の意味があるのか、問いただそうとしたときだ。

 

「……うっ! ゴホッ!!」

「姉ちゃん!!」

 

チルノが唐突に咳き込んだ。それに最も早く反応したのはダイだった。それまでの悩みを忘れ去ったような速度で、チルノの元まで近寄ると、彼女の手を握る。

そこには命の温もりがやんわりと感じられた。

 

「嘘!? そんな……」

 

レオナが慌ててチルノの胸へ自分の耳を当てる。そこには心臓の鼓動が確かに響いている。

 

「生き返った!!」

「何っ!!」

「ま、まさか……!?」

「う……みん、な……?」

 

蘇生したという事実に全員が驚きの声を上げる。その声に突き上げられるように、チルノはゆっくりと目を開けた。続いて全身へ襲い掛かってくる気怠さと鉛のような重さに驚かされる。それも当然だろう、何しろ先ほどまで死んでいたのだから。このまま再び眠ってしまいたいという強い誘惑に駆られる。

だが本来の歴史を知るチルノは、何が起きたのかを朧気に理解する。自身がバランの手によって蘇ったのだということを。

自分が倒れていた間、何があったのかはわからない。だがそれでも、バランに言うことがある。ならばこのまま倒れているわけにはいかない。

 

「バラン!」

 

無理に身体を操り、チルノは上体を起こすと呆然としているバランに呼びかけた。

 

「あなたのおかげよね……? まずはお礼を言わせて貰うわ」

「あ、ああ……」

 

チルノの余りに早い覚醒に、バランは度肝を抜かれていた。

バランが与えたのは、自身の血である。古来より伝説の竜の血を飲んだ人間は不死身の力を得るという。その言い伝えに違わず、バランの血には死者を蘇らせる効果があった。

だがどんな者でも蘇らせるわけではない。死の淵から生還できるのは、強靱な精神力を持った者のみである。加えて、蘇生までの時間も個人によってまちまちである。

そしてバランが知る限り、これほどまで早く効果が現れたことはなかったはずだ。

 

「私には、何があったのかはわからない。でも、これだけは言わせて……」

 

そんなバランの心境など知らず、チルノは必死で頭を働かせ、言葉を紡ぐ。ここで下手をすれば、ダイとバランは永遠にすれ違ったままになるはずだと、それだけは本能的に悟っていた。

 

「母親は、子供のためなら何だって出来る。反対に父親は、子供に自分の一番カッコイイ姿を見せたがるって言うわ」

「それが、どうしたというのだ……?」

 

突然の言葉にバランはチルノの言葉の真意を測りかねる。

 

「あなたはまだ、ダイにそんな姿を一度だって見せてないでしょう?」

 

それは言外に、ダイと共に戦えとバランに訴えていた。戦いしか知らぬ(ドラゴン)の騎士だからこそ、戦場で最も素晴らしい姿を見せてやれ。父親らしいところを少しは見せてやれと言っていた。

 

「そんな姿を見せる資格が、私にあると思っているのか?」

「わからない……でも、ダイも貴方も生きているんだもの。可能性はゼロじゃない。それにダイは良い子だから、今は無理でもいつか分かってくれるはずよ……」

 

そう言うとチルノは、自分にすがりついたまま嬉し泣きの表情をしている弟を見る。ダイはその視線の意味がわからずとぼけた顔をするものの、すぐに何を言いたいのかを理解して不機嫌な表情に変わる。

 

「……義理の家族だから半分。親代わり見習いだからもう半分」

「……? 何が言いたい?」

「併せて四分の一だとしても、ダイとは十年以上付き合っているのよ。一年しか付き合っていない貴方よりは、ダイのことをよく知っているわ」

 

不機嫌さを隠そうともしないダイの頭を優しく撫でながら、チルノはそう笑顔で訴えた。未熟な分を差し引いてもなお、バランよりもチルノの方がダイとの付き合いは長いのだ。だから大丈夫だと言っていた。それでも、今すぐには無理だろうが。

 

「……フン、くだらんな……」

 

チルノの言葉を一笑するような態度を取りながら、バランは彼らに背を向ける。

 

「だが、ディーノのことを真に案じている者の言葉だと思えば、不思議と受け入れられるようだ……」

「バラン……!」

 

その言葉は、バランの方から歩み寄った小さな一歩。だが記念すべき一歩である。親子の多難な前途を無想しながら、チルノはゆっくりと瞳を閉じた。

 

「姉ちゃん!?」

「大丈夫よ、気を失っているだけだから……」

 

再び意識を失ったチルノにダイは慌てるが、すぐにレオナが取りなすことで平静さを取り戻す。そんな大騒ぎをしている一行へ背を向けたまま、バランはゆっくりと歩き出した。

 

「バラン! どうするつもりだ?」

「チルノが差し伸べた手を、お前は受け取ったのではなかったのか!?」

「……今はまず、やることがある。それに、少しでいい……時間をくれ……」

 

去ろうとするバランへヒュンケル達が問いただす。だがバランはそう短く告げると、振り返ることなく歩みを続ける。

 

「……ラーハルトか」

「お供いたします、バラン様」

 

その先で待っていたのはラーハルトであった。彼はバランの前で、臣下の礼を見せるように跪いていた。そんな彼を、バランは複雑な眼差しで見つめる。

 

「まずは、ガルダンディーたちの弔いでしょうか? それとも、傷の手当てが先でしょうか?」

 

ラーハルトにとって、あくまで(ドラゴン)の騎士であるバランこそが仕えるべき相手である。チルノの行動に心を動かされこそすれど、バランと共に歩む事が彼の望み。バランが命じれば、喜んで死地に赴くだろう。

 

「いや、そのどちらでもない」

「では……」

 

続く言葉を言おうとしたラーハルトを、バランは遮る。

 

「はっきり言おう。ラーハルトよ、お前はもう私に付いてこなくてよい」

「…………!!」

「忘れたのか? 私はお前のことを見限ったのだ。もはやお前は竜騎衆でもない。私に従う必要もない」

 

そこまで告げ終えると、バランは努めて優しい口ぶりへと変える。

 

「もう、お前は自由だ。好きに生きるがいい」

「な……ッ!?」

「もしもお前が人間に負い目を感じているというのならば、それはお前を竜騎衆に選んだ私の責任だ。お前の責任ではない」

 

それはラーハルトの罪もバラン自身が被るという決意の表れだった。だが続くバランの言葉は、彼を更に驚かせる。

 

「私に構う暇があるのなら、お前が先の戦いでディーノたちに感じた直感に身を委ねれば良い。その方が遙かに有意義なものとなるだろう。お前にとっても、あいつらにとっても……」

 

人間の心が未熟な(ドラゴン)の騎士である自分よりも、人の心をよく知るダイたちと行動を共にして心を学んでほしい。そして自分の見ていない間、ダイが危険な目に遭うことの無いように、守ってやって欲しいのだ。バランがそう訴えているのだ。

少なくともラーハルトにはそう聞こえた。

 

「あ、ありがとうございます!! そして、了解いたしました。このラーハルト、一命を賭してでも!!」

「何のことだ? 私はお前を殺そうとしたのだぞ。恨まれこそすれ、感謝される覚えなどない」

「いえ、そんなことはありません! オレにとって、バラン様こそが――」

「言うな!!!」

 

ラーハルトの感謝の言葉を、バランは強い口調で遮る。

 

「その先の言葉を受ける資格は、今の私には無い……」

 

そう言うとバランは、ボラホーンとガルダンディーの亡骸を抱えてこの場から去って行く。だがバランは『今の私』と口にした。ならばいつの日か、再びそう呼べるだけの資格を手にして返ってくるのだろう。

 

「父上……」

 

遠くなるバランの背中に向けて、ラーハルトは小さく呟いた。

 

 




死んだままの方がよかったかなぁ……???
(当初はここで融合しっぱなしで、一気に終わりまで持って行く予定でした)

ダイ君、バラン相手に無双状態です。まあ、お姉ちゃんと二人で戦ってますから。
これが、スクウェア・エニックスの力……(違)
会社二つの暴力には竜の騎士も勝てなかったよ……
(でも映画でコケると負ける)

戦いの最中、中の人はアドバイスしながら、壊れそうになる剣を修復し続けていた模様。一瞬でも気を抜いたらきっと剣は蒸発していました。

原作でもそうですが。この時点で親子が完全和解は無理ですよね。
(というか原作よりも根が深いですよねこれ。どうしよう……)
バランが強くて、こじらせ過ぎているのが悪いんだ……

そしてラハやん……扱えるのか私!?
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