隣のほうから来ました   作:にせラビア

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LEVEL:94 大魔王からの言葉

二人の部下を伴い、大魔王バーンは遂にダイたちの前に姿を現した。

ミストバーンは衣を纏ったまま普段と変わらぬ様子を見せており、ザボエラはといえばこちらは圧倒的な強者がすぐ傍にいるという安心感からだろう。ハドラーたちを含め、ダイたち全員を見下したような余裕綽々という表情だった。しかしそれでも内なる性根を隠しきれなかったかのように、やや後ろに位置している。

当然バーンらはそれに気付いているが、既に諦められているのだろう。あえて異を口に出す者はいなかった。

 

「控えよ者ども、大魔王様の御前なるぞ」

 

最初に口を開いたのはミストバーンだった。身を挺してバーンを守るかのように僅かに一歩前に出ると、ダイたちの射線を遮るように姿を晒す。だがそう宣言されたところで、ダイたちもハドラーたちも態度を改めるはずがない。むしろ逆に、いつでも飛びかかれるよう視線に殺意を乗せる。

 

そして、肝心のバーンはと言えば――

 

「こうして直接顔を合わせるのは初めてか………」

 

見知った顔であるはずのダイたちの姿。初めて実際に目にしたことに、驚きと感銘を受けているような、そんな反応を僅かに覗かせるが、だがそれも一瞬のこと。

 

「余が大魔王バーンだ」

 

枯れ木のような老人でありながらも恐ろしいほどに深く、鋭い視線にてダイたち全員を射貫く。そこには数千年――いや下手をすれば万単位の年月だろうか。それほどの長き時間を生きたことによる大魔王としての威厳がそこにはあった。

最大最強の敵が現れたことにダイたちはさらに警戒を強める。

 

「……さすがは勇者たち、といったところか」

 

そのダイたちの反応を見ながら、バーンは微かに満足したような言葉を吐き出した。だがその言葉に驚かされたのはむしろダイたちの方だ。突然の称賛の言葉に話の流れが読めず、警戒色を更に濃くするものの、バーンは特に気にした様子もない。

 

「余を見た者は皆、多かれ少なかれ驚く。ハドラーとて、余の顔を初めて見たときはもう少し可愛げのある表情をしていたというのに……」

「……ッ!!」

 

瞬間、ダイたち全員が僅かに顔を(しか)めた。

バーンと出会った者は皆、老いた容姿と伝わり来る恐ろしさの落差に衝撃を受けていた。例外は皆無と言って良いだろう。

だがダイたちは違う。チルノから事前情報として聞いていたために心の準備が出来ており、驚きこそしたものの衝撃はそれほどでもなかった。むしろより一層警戒を強めたほどだ。

 

反応を見せたダイたち本人すら気付かぬようなそれを、敵である大魔王自ら指摘されたことで彼らは自身の失態を悟り、微かに動揺する。

 

「どうやら人間たちの生活というのは随分と刺激的なようだな。何しろこのような枯れた老人を前にして些かも隙を見せぬとは……のう? クロコダイン、ヒュンケル。そしてバランよ。どのような経験をすればそうなれるのか、余にも教えてはくれぬか?」

 

だがその表情の変化すら愉しむようにして、バーンは低く笑う。特に興味を持ったのは、かつて召し抱えていた三名についてだった。

元魔王軍の三名は、バーンと間接的に接していただけでも圧倒的な威圧感を感じていた。それが老人からそのまま感じられるというのは、果たしてどれほどの衝撃と恐ろしさを受けるのだろうか。

本来ならば見せていたはずの反応を見せなかったことで、不要な猜疑心の種を植え付けてしまったかと彼らは内心舌打ちする。

 

「ふふふ……よいぞ、その表情。ますます興味が湧いてきた。それに引き換え……」

 

そのような内面の機微すらも全て悟っているのだろうかと思わせるような態度を見せ、バーンは満足そうに頷くと、続けてハドラーへと視線を向ける。

 

「ハドラーよ。超魔生物となり、(ドラゴン)の騎士の力を得ても、勝利を得ることは叶わなかったようだな……余は失望した」

 

バーンにしては珍しくというべきか、本当につまらない者を見るような目をしていた。なまじダイたちに対する好奇の目が強くなった分だけ、天秤が大きく傾いたということだろう。

だが、その評価を受けた当の本人が黙っていられるはずもない。

 

「なにが……何が失望か!! バーンよ! 貴様が、オレの身体にしたこと!! 忘れたとは言わせんぞ!!」

 

親衛騎団に身体を支えられながらハドラーは叫ぶ。そこにはかつてバーンのことを盟主と仰いでいた姿はどこにもない。ただ、利用されたことに対する怒りだけが発露するのみだ。

その激情を耳にしてなお、バーンはハドラーに対する態度を崩すことはなかった。

 

「無論、忘れてなどいない。そもそも黒の核晶(コア)を埋め込んだのも、万が一のことを考えてのこと」

「万が一……だと……!!」

 

万が一に備えて。

そう言えば聞こえは良いだろう。だがその実情は、本人のあずかり知らぬ所で体内に爆弾を仕込まれるのだ。それも、史上最悪との呼び声高い爆弾を。それがハドラーの身を案じたための行為では決してないことなど、子供にも分かる理屈だった。

 

「ならば貴様は、オレのことなど捨て駒……今までのことは全て、ただの余興としか見ていなかったということか……!!」

「そう、万が一だ。そして、どうやら余の判断は間違いではなかったようだ」

「いやはやまったくもって、バーン様の仰る通り。こんなことなら黒の核晶(コア)を取り外すべきではなかったかもしれませんなぁ!!」

 

それでも敢えて口に出したハドラーの言葉を、バーンはあっさりと肯定してみせた。それは言外に「お前を失っても惜しくはない」と言っている様なものだ。

大魔王の意見に追従するようにして、ザボエラが調子の良い言葉で相づちをうつ。その言葉を耳にした途端、ハドラーは今まで一番巨大な声で叫んでいた。

 

「ザボエラアアァァッ!!」

 

なまじ情けと信頼を掛けただけに、それを裏切られたことでハドラーの怒りは凄まじいものを生んでいた。バーンへのそれを凌駕し最大級といっても差し支えないほどだ。

 

「おおっとぉ!!」

 

だがザボエラが何の保険もなくそのような行動を取るはずもなかった。ハドラーが動こうとすると同時にザボエラは手から光の綱のような者を生み出すと、それは瞬く間にハドラーの肉体へと絡みつき拘束していた。

 

「ぐっ! これは……動けん……があああぁっ!」

「キィ~ッヒッヒッヒッ!! 愚か者め、貴様の改造をしたのが誰かもう忘れおったか? この程度の備えはしていて当然! これも、万が一というものじゃよ!!」

 

それは超魔生物への改造を行った際、秘密裏に仕込んでおいた制御装置のようなものだ。動けなくなったハドラーを更に煽るように、ことさら「万が一」と言う言葉を強調する。

 

「よいぞザボエラ、そのまま抑えておけ。煩くてかなわぬ」

「キヒヒヒ、畏まりました」

 

バーンはどこか「やはりか」というような思いを抱きながら、ハドラーへ向けていた視線を切る。それは大魔王が見せた僅かな隙のように思えるが、それを放置するほど甘くはない。

 

「おやおや、ザボエラ君は怖いねぇ。これなら、非力なボクでもハドラー君の首を簡単に落とせそうだ。けど、忠実な部下がいるから難しいかな?」

「くっ……」

 

大魔王に変わるように、キルバーンがハドラーと親衛騎団たちに睨みを利かせる。特にその言葉は、親衛騎団へ向けた脅しのようなものだ。彼らは動きを封じられているわけではないが、それは動けぬ主を無視した場合だ。

そんな行動を取れば、すぐさまにでも命を奪えると告げることで、行動を封じている。

 

親衛騎団が忌々しげに吐き捨てたことで立場を理解したのだと確認すると、死神はバーンへと注意を向けた。

 

「しかし驚きました。わざわざご足労いただけるとは、思ってもみませんでしたよ」

「その竜のせいで悪魔の目玉を失ったのでな。こうして直接赴かねば、状況すらわからん。実に不便なものだ。それに――」

 

剣呑な雰囲気を見せる者達を意に介さず、キルバーンはわざとらしく(おど)けた様子を見せると、大魔王はやれやれと言ったように呟いた。状況が分からなくなったという理由、それがとってつけたような理由でしかないのは、キルバーンはおろかダイたちにすら容易に気付けた。

そもそも失ったのであれば、変わりの悪魔の目玉を派遣すればいいだけのことだ。

 

「――それにあの竜……あのような姿の竜は、余も見たことがない。ならば、一度直接この目で見てみたかった」

 

ようやくバーンはその瞳を黒竜へと向ける。

 

「少なくともこの地上で起こる出来事ならば、余の知らぬことなど存在せぬと。如何様なことが起ころうと、仮説や推測を立てることが可能と思っておった。だが、あれは知らぬ。皆目、見当すらつかん。余が今まで見聞きし、屠ってきた竜たちとも全く別の存在よ」

 

魔界の神とまで呼ばれるバーンの知識を持ってしても、黒竜の正体は謎でしかなかった。

そう口にすると彼はチラリとキルバーンへと視線を走らせる。冥竜王ヴェルザーの配下たるキルバーンならば、あるいはその正体に検討がついているのではないか。はたまたあれは、ヴェルザーの息の掛かった竜なのではないかと疑い、探りを入れるためだ。

 

だが予想は外れていたらしく、キルバーンは反応を見せることはなかった。

 

――ふむ、ならばアレは全く別の陣営と見るべきか……

 

無反応もまた回答の一つだ。

少なくとも可能性の一つは潰えたと結論づけると、黒竜をどうするべきか思案する。

 

「はてさてあの竜の正体について、じっくりと吟味したいところだが……ここは一つ、余が自ら竜狩りを行うのも一興か……」

「バーン様、そのようなお戯れはほどほどに……」

「ふはははっ! そう固いことを言うなミストバーン。偶には新たな刺激を味わわねば、この身もますます老いるだけよ」

 

黒竜の正体も戦闘能力も不明となれば、バーンの身を案じるのは当然のことだった。不覚や遅れを取るはずがないと頭では理解していても、感情はまた別の話である。

今にも一人、供をつけることなく戦い始めそうな(あるじ)に対し釘を刺すようミストバーンが告げると、大魔王はカラカラと愉しそうに笑った。

 

「それに、何よりまず歓迎せねばならぬ相手がおる。予定外の客の相手にかまけ、主賓を待たせるなど無礼であろう?」

 

予定外の客とは、黒竜のこと。そして主賓とは――

 

「のう? 勇者ダイよ」

 

――当然、ダイたちのことだ。

 

「我が大魔王軍の侵攻をことごとくはね除け、超魔生物となったハドラーを下してみせた。隠匿していたはずのこの大魔宮(バーンパレス)へと通じる門を見つけ、余の足下まで迫って見せたのだ。それもバランたち我が配下を味方に加えてな。その功績、まさに奇跡の勇者と呼ぶより他はあるまい」

 

一見すればダイたちを称えているように聞こえる言葉であったが、逆の立場から見ればそっくりそのまま邪魔され続けているということでもある。本来ならば口に出すことすら忌々しいはずの事柄を並べ立てながら、態度は至って平静そのものだ。

 

「そこで余は考えた。お前達の働きに報いるにはどうすれば良いか……お前たちが一番欲するもの、それはおそらく……余の生命(いのち)であろうな……?」

 

顎に指を掛けながら大魔王は不敵に笑う。

 

 

 

 

 

「ぐ、ぐぐ……あああぁぁっ!!」

「ハドラー様!!」

 

アルビナスから悲痛な声が上がる。

ザボエラの制御装置によって自由を奪われたハドラーであったが、それでもなお反抗の意志は消えることはなかった。本来ならば動くはずもない肉体をそれでも酷使し続けたおかげで限界などとっくに超えている。今この瞬間に崩壊し生命活動が停止しても不思議ではない。

 

それでもハドラーを動かそうとしているのは意地と誇りだ。主たる彼の姿を見ていた親衛騎団の面々は、自然と口を開いていた。

 

「ハドラー様、オレたちが戦う相手は大魔王でよいでしょうか? それとも最初の予定通り、死神から始末しますか?」

「なに!?」

「いやまずはあのザボエラの爺さんからだ。あやつは己の欲望の為にハドラー様を利用している、なにより現在では最も厄介だ」

 

遊戯盤上の駒の一つとして、使い捨ての道具としてしか見られていなかったという気持ちは、親衛騎団こそが最もよく理解できる。なにしろ彼らは元々、文字通り盤上の駒だった存在。道具として使われることも、主の為にその身を捨てることも彼らの役割として当然のことだった。

 

「我ら親衛騎団が力を合わせれば、その程度のことは造作もありません」

「ブローム」

 

ヒム、フェンブレン、シグマ、ブロックが次々に声を上げる。彼らは彼らなりにハドラーの心を汲み、その命が尽きるよりも前に、誇りを汚した連中に制裁を加えてみせると豪語してみせていた。

それがどれだけ無茶なことかは、言っている本人も良く理解している。叶わぬ夢であるのもだ。それでも、だ。

 

「ぐ……ぐうぅ……す、すまんな、お前たち……」

「ハドラー……様……?」

 

最後の最後まで共に歩まんとする姿を見せる部下たちに、ハドラーは思わず涙を流す。だがそのやりとりは決して、彼らだけが聞いていた物ではない。

 

「バカめ! 貴様らのマヌケな主の命はワシが握っているともう忘れたのか!? もう少し力を込めれば、その肉体は粉微塵に砕け散るのよ!!」

 

ザボエラが得意げな顔を見せる。どれだけ威勢の良いことを言ったところで、こう言えば押し黙ると思っていた。人質の命をチラつかせればどんな抵抗も失敗に終わると断じているからこそだ。

たとえどれだけ素早く動けたとしても、魔力を込めるだけの自分の方がよほど早い。ハドラーの命を盾とすれば親衛騎団は動くことが出来ない間抜けな連中と思い込んでいた。

 

「わかったか!? わかったなら、無駄な抵抗はせんことじゃ!!」

 

その思い込みは裏切られることとなる。

 

「!!」

 

突如ブロックが目から光を放った。

いや、目からというよりも彼の内部が発光したと表現するのがより正確だろう。溢れ出んばかりの膨大な光が放たれ、続いて彼の身体が縦一文字に割れた。

その光景に他の親衛騎団たちはブロックを見るが、心配することはなかった。左右に割れた身体の中から、一回り小柄な体躯のオリハルコン兵が出てきたからだ。

よく見れば二つに分かれたブロックの身体には内側に空洞があった。そこに潜んでいたのだろう。

 

「なんと!」

「おまえは!?」

「ブ、ブロック!?」

 

さながら全身鎧を身に纏った戦士が、自らの力で内部からそれを引き裂き出てきたようなものか。瞬時に姿を見せた新たなオリハルコン兵に親衛騎団たちは驚かされたものの、それがブロックであると直感で理解する。

 

だが驚くのはまだこれからだ。

 

真っ二つに分かれたブロックの外側――今や巨大な鎧のようになったそれは自分の意識を持ったかのように無数の細かな破片へと姿を変え、ハドラーを包み込んだ。まるで光の結界のように変じたそれは、ザボエラの光の綱を一瞬にして切断する。

 

「な、なんじゃと!!」

「ミンナ、タタカオウ! ハドラーサマノタメニ!!」

 

文字通り頼みの綱を失ったザボエラは困惑し、ブロックは不慣れな言葉で仲間たちに共闘の意志を叫ぶと、大魔王たち目掛けて飛びかかる。

 

「ブロック……貴方という人は……」

「あとでじっくり、話を聞かせてもらうぞ」

「アルビナス! あんたは死神を頼んだ!!」

「ひ、ひいいいぃぃっっ!!」

 

何が起きたのか、完全に理解することはできない。だが、ハドラーが解放されたということだけで彼らは充分だった。残る三名の親衛騎団はブロックに負けじとそれに続く。

そしてザボエラは、無様な悲鳴を上げて我先にと逃げ出していった。

 

「まだ勇者たちと話をしている途中だというのに、不粋な……」

 

ハドラーたちの動きはバーンも察知していた。だが大した抵抗も出来ぬと放っておいたが、どうやらその予想は裏切られたようだ。予定外の乱入者の存在に大魔王は嘆息する。

 

「おのれっ! 人形風情が!! ザボエラ、貴様もだ!!」

 

そしてミストバーンは憤慨していた。

親衛騎団の無遠慮な行動もそうだが、本来ならば命を捨ててバーンを守るはずが真っ先に逃げ出したザボエラのこともまた彼の怒りに一役買っていた。迫り来るオリハルコン兵士たちを全て破壊しようと目論む。

 

「いや、よいミストバーンよ。余が相手をしよう」

 

だが彼が動こうとするのを、大魔王は片手を上げて制した。

 

「し、しかし……」

「これから先、余は(ドラゴン)の騎士どもを歓迎せねばならんのだ。多少なりとも錆を落としておかねばな。それに、いくらかは手の内を見せてやらねば、勇者たちとの戦いはあまりにも不公平であろう?」

「……承知いたしました」

 

なおも食い下がろうとするミストバーンであったが、バーンは気にすることもない。彼からすれば、ハドラーたちとの戦いもダイたちとの戦いも全てが余興のようなもの。決して負けることのない格下との戦いに過ぎない。

余裕とも油断とも取れる言葉だが、そう言われては返す言葉もなくミストバーンは頷いた。

 

「ミストバーンよ、お前はダイたちの相手を適当にしてやれ」

「はっ」

「やりすぎぬよう気を付けるのだぞ。余の分も残しておけ」

 

バーンとミストバーンが動き出す。

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

「おやおや、まさかバーン様がお相手なさるとはね」

 

少し離れた位置で見物をしていたキルバーンは、その行動を意外そうに見つめる。

 

「お人形遊びは嫌いじゃないんだけど、さすがに手を出すと怒られちゃうか」

 

一応彼は親衛騎団のアルビナスが相手を任されているのだが、律儀につきあってやるほどキルバーンは義理堅い性格でもなければ、興味があるわけでもない。ましてやバーンの言葉と比べれば、考えるまでもない。任せておけば、そのうちに終わってしまう。

 

――加えて。

ギロリと殺気を込めた視線で女王を睨めば、彼女は反応するものの襲いかかってくることはなかった。ただハドラーの身を守るように、その場を離れることがない。

 

「お人形さんがご主人様に情愛でも抱いちゃったかな? これじゃあつまらないね。ミストは勇者様御一行の相手だし……どうしたものか……?」

「キルバーン! キルバーン!」

 

戦場を見渡し途方に暮れるキルバーンであったが、その肩をピロロがペチペチと叩く。

 

「どうしたんだいピロロ?」

「あれあれ♪」

 

愉しげに一点を指さす。その方向には、未だ我関せずとばかりに欠伸をする黒竜の姿があった。つまらなそうな瞳を目にして、彼の中の悪戯心が目を覚ます。

 

「なるほどね。せっかくだし、やってみよう。はたしてどうなるかな?」

 

そういうとキルバーンはイオナズンの呪文を生み出し、黒竜を目掛けて投げつける。その光球はドラゴンの頭部へ狙い違わずに着弾して、大爆発を起こした。

 

「グオオオオオオッッッ!!」

 

痛みが原因か、それとも明確な敵対行動を取ったことが原因なのか。

黒竜はそれまでの大人しい様子から打って変わって凄まじい咆吼を上げる。激怒したような荒々しい声は、聞く者全てを恐慌状態へと陥らせそうなほどだ。

何より目が違う。

凶暴性しか見えなくなった瞳は、最も手近な生命を獲物として暴れたそうに見える。

 

「さてこれは、どうなるかな?」

 

 




本当はこの話には、チルノさんがどうやって変身したのかという(詐欺みたいな)理由までを書く予定だったんですが……

次回冒頭に回してしまう私。
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