ジョルノ・ジョバーナ。本名、汐華初流乃。日本人とイタリア人のハーフで、純粋なイタリア育ち、それが私である。母と再婚した義父と私の三人家族だ。
母は子供の私から見てもとても綺麗な人だ。少女のような可憐さを持ち合わせているし、日本人特有の艶のある黒髪も。高飛車なところが玉に瑕だったが。
母は一度、私の左の首の根元辺りにある星の痣を見て、
「あの人と一緒ね」と嬉しそうに笑っていた。久しぶりに母の笑顔を見て、私はとても嬉しかった。母が私を見てくれたと思ったから。実父のことはあまり覚えてはいないが、唯一と言えるのは一枚の男の写真が形見に残っていた。
母は男を見る目はなかった。夜な夜な子供の私を家に放置し、卑猥に彩られた繁華街で様々な男を引っ掛けては家に連れ込む母の背を見ていた。
再婚した義父はその中の1人だった。好きにもなれなかった。当時の私は母の言いなりで。義父が連れ子の私をじっとりと品定めするような視線にただ恐怖を抱いた。中々馴染めない私。それに苛立つように義父は私に暴力を振るった。母にバレたくなかったのか顔だけは決して傷つけなかった。その時から私は義父との接触を避けに避ける日々を送った。母には何も言わなかった。
小学生の頃には、よくいじめられるようになっていた。足を引っかけられたり、髪を引っ張られたり。私の髪が原因だったことや根暗なせいもあったのだろう。ハーフとは言え、私の見た目は日本人に近い容姿をしていた。実父の遺伝子を受け継がなかったらしい。言い返す勇気もなかった。それでも、私は母とお揃いの黒髪が好きだった。
散々な日々を送る私に出会いがあった。学校帰り、深い怪我をおっている男を見つけた。息が荒く、苦しんでいた。マフィアだと一目で分かった。乱雑な数人の足音と騒ぐ声が聞こえ、いかにも、な男たちが視線を世話しなく動かし、こちらに足を進めるのが分かった。そのなかの一人の男に声を掛けられ、私は「あっちに言ったよ」と。適当に道の角を指差した。不思議と恐怖はなかった。ちらり、と男が隠れるように倒れている場所に目を向けた。もし、助けた理由と聞かれれば、私と似たような存在だったからと答えただろう。居場所がなくて、帰るべき場所がない。そんな寂しい存在。
数日ぐらい経ったある雨の日にもう一度、あのマフィアの男に会った。会ったというか待ち伏せられていたというか。傘で顔は見えなかったが、男は礼を言い、去って行った。
それから私の日常に大きな変化があった。義父の私に対する態度の変化に同級生からはいじめがなくなり、何故かやさしくなった。お店でジェラートを買えば、もう一つサービスしてくれた。それらの背景にはいつも男がいて、彼は私と対等な関係を築いてくれた。人を信じることを教えてくれた。危険なマフィアだとしても、私がそんな男をヒーローのように憧れるのは普通のことだった。男はそれを分かって巻き込まないようにしていたし、女ということもあるのだろう。ただ、幸せになってほしいと、男は思っているのだろうが私には関係ない。
私は決めたのだ。女だろうか関係ない。ギャングスターになる。例え、あの人が望んでいないとしても。だって、あの人は間違いなく私のヒーローなのだから。