ドクン、ドクンと波打つ音はまるで心臓のようだ。掌よりも小さく球体。何かの液体に守られ、中には核とも言える部分が存在していた。
うあっ!?と叫ぶ康一。目に写ったのはだんだんとカエルに変化していく何か。緊張と得体の知れない存在に冷や汗が額から頬を伝う。徐々にくりくりとした大きな目を開け、卵から雛が生まれるようにそれは液体の殻を破った。
同時刻。ジョルノは空港付近の開けた場所にいた。ベンチに座り、空に飛ぶ飛行機を眺め、数十分前のやり取りを思い出していた。
突然の車のエンスト。上手くいかない日もあるものだ、と独り言つ。
ふと、背後から近付いてくる気配に気が付き振り返った、そこには一人の男がいた。片手に持つスコップが一際目を引く、花柄のコートを着た、丸刈りの成人男性。目の下辺りに傷痕が残っている。
「ジョルノ・ジョバァーナ…………かい?」
座ったままは失礼かと思い、立ち上がって肯定するように会釈する。直立した姿にじろじろと舐めるように見る目がジョルノの気を害していていった。
「お前とは…初めてだよな?ジョルノ。おれのこと…知ってるか?」
「………涙目のルカさん、ですよね。何でもケンカの時、ナイフを顔面に深々と突き立てられても闘うことをやめなかったとか…」
当たり障りのない話だ。ルカは言葉を返す訳でもなく、先程ジョルノが座っていたベンチの隣に腰を下ろした。座れ、と言われたが座るつもりはなかったし、話をするつもりもなかったのだが相手にとってそれが気に入らなかったようだ。
「いいから、座れ!見上げて話すの首疲れっからよ」
渋々座る。相変わらず、ルカは品定めするような視線と異性に対する厭らしい目がジョルノに向いていた。脚を組み、わざと視線を合わせないように努めた。
「へぇ。話には聞いていたが、お前みたいなイイ女がこんなバイトしてるんだな。もっと稼げるところ教えてやろうか?」
一瞬僅かに目付きを鋭くするジョルノ。それに気付かず、黙ったままのジョルノに怒ったのかと勘違いしたルカが冗談だ、と肩をすくめる。
どうやら話はまだ続くらしい。ずいっ、と顔を近づけてくるルカにジョルノは表情を変えなかった。
「いい友情関係ってのには3つの『U』が必要なんだなぁ…」
ーー3つのU,。
ーー1つ目、うそをつかない。
ーー2つ目、うらまない。
ーー3つ目、相手を敬う。
話の意図が見えない会話に趣旨をさっさと言え、という思いで、何の用ですか?と会話を遮った。
「話しを今してるのはこのおれだっ!誰が質問していいと言ったっ!?このアマっ!」
ルカは持っていたスコップの持ち手を力強くジョルノの顎に固定させ、強制的にルカとジョルノの視線が交わる。
「最近、おまえ空港でバイトしてるそうだな。ン?この「涙目のルカ」はおまえから「敬い」の献上品を受け取ってないぜ………それじゃあよォ~~~友情は続かないよなぁ~~~」
財布見せろよ!おい!ルカは制服のポケットをまさぐった。ジョルノは思わず、財布を盗ろうとする手を掴もうと腕を伸ばしたが少し考え腕を下ろした。出来るなら穏便に。と考えたからだ。
「ルカさん。シャバ代ならすでに払いました」
淡々と、カネはない。ジョルノは事実を述べたが、ルカの手には制服のポケットから強引に奪い盗られたジョルノの財布が。
「警備員にかああ~~。ンなこたぁオレにゃあ関係ねぇんだよオオォ~~」
何だこりゃぁ~?ルカは財布の中身を確認するが、中にあるのは一枚の写真だけ。カードもなく、札入れは空。
「家族の写真入れか?写真しか入ってねぇ。財布はどこに隠してある?ホラ!カネだよっ!財布出せよ!」
「ルカさん…二度同じことを言わせないでください」
ジョルノは何よりも無駄なことが嫌いだ。要らないことに時間をかけたり、労力をかけたり。ルカに対してもそうだ。何度も繰り返すことははっきり言って無駄だ。丁寧な言葉使いとは裏腹に確かな苛立ちが言葉にこもる。
「払ってしまってないっていってるんです。三度目は言わせないでください。」
ーーーーー無駄がジョルノの琴線に触れる。