ストックはここまで。暫く不定期更新になるかと思います。
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影浦隊の防衛任務が終わった。未だ慣れぬ報告書作りに悪戦苦闘しながらも、完成した報告書を上に提出した影浦は、特に寄り道などせずに自分の隊室に戻って来た。
「おぅ、帰ったぜー・・・・・・って、んだよ?・・・・・・この状況は」
「おかえりカゲさん」
「おぅ。で? 鋼・・・・・・何してんだテメェ」
帰って来た影浦が先ず目にしたのは、隊室の隅っこで蹲り涙を流す村上と、彼の近くで優しく励ましている北添と仁礼、そしてその様子を何時も通りクールに眺める絵馬の姿だ。
「鋼さんがランク戦に行って来るって言って出て行ったのに直ぐに帰って来て・・・・・・それからずっとこの調子なんだ」
影浦の問いに村上ではなく絵馬が答えた。
「ランク戦で何かあったのか?」
「うん。どうやら荒船君がアタッカーを辞めてスナイパーに転職しちゃったみたいで・・・・・・それで周りが鋼君のせい何じゃないかって言ったみたいなんだよね・・・」
全く、根も葉もない噂だよね~と苦笑いを浮かべる北添。
「鋼さんとの才能の差を感じさせられちゃったのかもね」
「・・・・・・・・・・・・」
絵馬が何気なく言った言葉にズーンと見てるこっちからも分かりやすく落ち込む村上。
「こらっ!ユズル! そういう事は心の中だけにしまっとけよな!」
「それフォローになってないよヒカリちゃん・・・」
「・・・あ、ち、違うぞ鋼! あたしは只━━」
「いっつもこうなんだ」
弁解しようとオロオロと慌てる仁礼を遮り、漸く口を開いた村上だが言葉には嗚咽が含まれている。
「俺が楽しくなるとあっという間に追い抜いて周りに人が居なくなるんだ。今回だって俺は只、荒船からアタッカーの理論を教わっただけでやるべき努力を何にもしてない。俺はサイドエフェクトで皆の努力を盗んでズルしてるだけなんだ」
俺は卑怯者なんだ・・・と、村上が心中をまるで懺悔するかのように語った。
村上の心中を聞いた後、何と言えばいいのか分からず、サイドエフェクトの苦しみが理解出来ない北添と仁礼、絵馬はもう1人のサイドエフェクト持ちで村上の苦労や痛みが、辛さが分かる我らが隊長に助けてくれと目で訴える。
影浦はそれらの視線を
「ケッ、下らねぇ」
クソみたいな話だと、一蹴した。
トリオン能力がちょっと優秀ってだけでどうしてオレ達が苦しまなくちゃならない・・・・・・それを望んだ訳でもないのに、と。
「おいカゲッ!」
仁礼が影浦の軽率な発言を非難するが、影浦は何食わぬ顔で立ち上がると。
「荒船はそんなタマじゃねぇよ。何か理由の1つや2つあんだろ」
ちょっと待ってろ。そう言って影浦は隊室を出て行った。
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━━荒船隊室前
「どうしたんだカゲ。お前がウチの隊室に来るとは珍しいな・・・」
「よォ荒船ぇ。てめーのせいでウチの鋼が泣き面晒して馬鹿共がうるせーから、色々聞きに来てやっただけだ」
「・・・・・・どういう事だ?」
思わぬ友人の訪問と、告げられた内容に困惑する荒船を前に影浦は頭を掻きながら事の顛末を話した。
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「ハァ・・・・・・なるほどな。結論から言わせてもらえば、それは鋼の奴の勘違いだ」
影浦から事の顛末を聞いた荒船の反応は若干の呆れを含んだものだった。
「ケッ! だと思ったぜ」
「あぁ。しかし、まさかそんな事になってたとは・・・・・・誰にも言う積もりは無かったが、そうも言ってられなそうだな・・・」
「あァ? やっぱ何か理由があんのかよ?」
「当然だ・・・・・・まぁ、確かにポイントごっそり取られた事はショックだったが、元々8000ポイント取ったら辞める積もりだったんだ。言い訳臭いから周りには言ってねーけど」
「・・・ほーん」
影浦にとって荒船は、よく村上と一緒に個人ランク戦で切磋琢磨し合った数少ない気の知れた友人だ。そんな荒船が誰にも言わずにスナイパーに転職したその理由には、興味があった。
「今は
「そりゃあ大層な目標じゃねぇか」
「だろ・・・? オレの理論でマスタークラスになれる事は鋼のお蔭で証明されたしな。次は、
腕を組みうんうんと頷き、ニヤりと笑ういつも通りの荒船を見て影浦も白くギザギザな歯を見せた。
「そりゃあいいな。なら、鋼にも直接言ってやれよ」
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「オラッ!連れて来てやったぞ」
ドカッ
影浦は、もうオレの役目は終わりだと言わんばかりな態度でソファーに座った。
「「「荒船ぇ(君)(さん)!?」」」
荒船は突然の訪問に驚いてる北添や仁礼、絵馬に解釈だけすると鋼の方へと向かった。
「っ!? 荒船・・・・・・あ、わ、悪い。俺のせいで━━」
余りにも突然な荒船の訪問に戸惑いながらも、何とか謝罪の言葉を捻り出そうとする村上。しかし荒船は村上の謝罪を遮りビシッ! と突然の事にビックリしている村上に向けて指差した。
「オイ鋼。強い自分に酔ってるらしいな? え? 俺1人に勝ったくらいで何様だコラ・・・・・・他人の努力を盗んでるだぁ? バーカ、俺の教え方が上手いんだよ自惚れんな。そう言うことは太刀川さんや風間さん。そんで、お前のとこの隊長に勝ち越してから言うんだなっ!」
口を挟む余裕も無く語られた内容に影浦以外の全員がポカンッと呆けているが、その中でいち早く正気に戻ったのは村上だった。
「え? じゃ、じゃあ。オレに負けてアタッカー辞めたって言うのは・・・」
「なんか言い方が癪に障るが・・・・・・そんなのデマだデマ。元々アタッカーで8000取ったら辞める積もりだったんだよ。言い訳臭ぇけど・・・」
頬を掻く荒船。次いでにと影浦が補足する。
「パーフェクトオールラウンダー目指してんだとよ」
「っ!・・・・・・パーフェクトオールラウンダーを・・・」
「へぇー!それは凄いね」
「だからスナイパーに転職したのかー!」
「なるほどね」
目を見開く村上にそれを聞いて納得する影浦隊のメンバー達。
それを見て荒船は頷くと
「そう言うこと・・・・・・俺は木崎さん以来のパーフェクトオールラウンダーになって、その
そう言って屈託のない笑顔を見せた。
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「すまん皆。迷惑をかけた」
荒船が帰った後、何処か吹っ切れた様子の村上が影浦隊メンバーに向き合い頭を下げた。
「何言ってんの。何時でもドンと来いだよ」
荒船を見送っていた北添は、安堵の表情を浮かべながら振り向くと、村上と影浦を交互に見た後に言葉を紡いだ。
「僕は2人と違って、サイドエフェクトを持ってないから辛い事とか全部を理解してあげられないけど、悩みを聞く事位は出来るよ」
仁礼も同じ気持ちのようで、見てるこっちまで元気になるような飛びっ切りの笑顔を見せた。
「そーそー。んで、その後はストレス発散にどっか遊びにでも行こうぜ?最後まで付き合ってやるしなっ!」
絵馬はいつも通り素っ気ない態度で頬を掻きながらボソリと呟いた。
「ま、同じチームの人が泣いているのは見ていて気持ちの良いものでもないしね」
「「ツンデレだね~(なー)」」
「う、うるさいっ」
恥ずかしそうにソッポを向く絵馬を温かい目で見る北添と仁礼。
「ほらっカゲからも何か言ってあげてよ」
「あァ?・・・・・・ハァ、何でオレが」
悪友に言われ、影浦は頭を掻きながら何か村上に掛ける言葉を探すが、柄じゃないと
「・・・まぁ、荒船が言ってやがった通りだ。風間さんや太刀川の野郎・・・・・・んでオレに勝ち越して、誰にも負けねぇくらい強くなってからウジウジ悩んでろ」
でもなァ? と影浦は続けて
「そう簡単に負けてやる積もりはねぇ・・・・・・てめーが他人から盗んだっつうー努力だけじゃあ越えられねぇ壁ってもんをオレが見せてやるよ」
影浦は嘲笑うかのようにケタケタと笑った。
それもチームメイトである村上のサイドエフェクトを馬鹿にしたようにして。
しかし、それが本当は何を意味するのか、それを影浦隊のメンバーの中で理解出来たのは果たして・・・
その言葉の意味を理解するのは影浦を良く知る者でないと難しいが、暗に影浦は村上に向けてこう言っているのだ。
━━オレが
と。
未だにケタケタと笑う影浦の姿は影浦を知らない者が見ればゾッとする程に恐ろしい。
「うへー 嫌な隊長だなー・・・・・・それ悪役の台詞だぞー」
「まぁ、似合ってはいるけどね。それに・・・・・・カゲさん、分かりにくいよ」
「うっせーっ! 良いんだろこれで!」
「まぁまぁ、確かに分かりにくいけど、これがカゲだからね・・・・・・それに、近住民と戦う時は皆味方なんだから、皆鋼君が味方で良かったって思う筈だよ」
ギャーギャー騒いでる影浦、仁礼、絵馬を宥めながら最後に北添がそう言って締め括る。
その言葉に心温かいものを感じた村上は、何時も通りに騒がしい4人を何か尊い物を見るように目を細め、ゆっくりと眺めた後に1度瞼を閉じた。そして再び瞼を開くと
「・・・ああ。そうだといいな」
優しく、静かに微笑んだ。
聖人来馬先輩の台詞を奪う(作者の勝手で)北添。作者的には余り違和感が無い。