前回のあらすじ
なかなか恥ずかしい事書いてあった。
『…………!』
声が聞こえた。なんと言ったかは目覚めたばかりの蓮太郎にはうまく聞き取ることができなかった。
『……郎君!』
今度は先程よりもはっきりと聞こえた。この声には聞き覚えがあった。ついさっき意識がなくなる寸前まで聞いていた大切な人の声。そこで蓮太郎は違和感を感じる。俺は死んだはずだ…と。何故———
『起きて!蓮太郎君!』
疑問を感じる間もなく蓮太郎の意識は浮上して行った。
———
蓮太郎が目を覚ますと目の前には泣きながら自分を覗き込む木更の姿があった。
「…木更さん?」
「…」
木更は何も言わずに蓮太郎に抱きつく。そして、
「蓮太郎君どれだけ呼びかけても目覚めないから…一緒にいるなんて言っておいて私一人だけ残していくつもり?」
蓮太郎にも今の木更の気持ちはよく分かった。もし蓮太郎自身が木更の立場であったらと考えるともしかしたら今の木更の数倍は取り乱していただろうことは想像に難くなかった。
「ごめん…木更さん。本当に心配かけた。」
「本当よ。蓮太郎君のバカ。…本当にバカ。」
———
「ありがとう蓮太郎君。もう大丈夫。」
あれから少しの間木更さんは俺から離れなかった。落ち着いた事で今自分がしていることに気が付いたのか顔を少し赤らめながら離れていく木更さんは、こんな状況ながらとても可愛かった。そんな木更さんをもう少し眺めていたかったが、今は俺達の置かれている状況を確認しなければならない。
「なぁ、木更さん。どうして俺たちはまだ生きてるんだ?」
今いる場所を見渡せば俺たちがいる場所はただの部屋だ。今座っているベッドと少し離れたところにテーブルと椅子があるだけの簡素な部屋だ。だが、もしあの状態で生きていたのならばこんな綺麗な部屋ではなく今頃は牢獄の中だったはずである。国家元首である『聖天子』様の補佐官であった天童菊之丞を暗殺したのだから最悪処刑されてもおかしくはないはずだ。
「私もさっき目覚めたばかりだから分からないの。何故生きているのかそれすらも。」
俺は何かを探そうと起き上がり部屋を散策する。そして、先ほど見えたテーブルの上に一枚の手紙のようなものを見つける。俺たちの名前が書いてあるが、誰からのものなのかは書いていなかった。
「木更さん。なんか手紙を見つけたんだが。…読むべきだと思うか?」
「…えぇ、読みましょう。私達には情報が必要だわ。罠かもしれなくても読むしかない。」
ゆっくりと手紙を開く。そして読み始めるとすぐにそれが罠ではないことが分かった。それはかつて俺を2度も救ってくれた人からの手紙だった。今は行方不明になっているはずの人からの手紙に驚きながらも読み進めていく。
『とりあえずお疲れと言わせてくれ。それと急に君たちの前から姿をくらませてしまってすまなかった。最後まで君たち二人の行く末を見れなかったことは残念だった。なんて湿っぽいことを言っているが別に私は死んだわけではないよ。それどころかピンピンしている。では何故君たちの前から消えてしまったのか。それは今の君たちの状況が関係してくる。おそらく蓮太郎君も木更も一度死んだはずだ。そしてそれは私も同じだ。そして気づけばここにいた。ここは私達のいた世界とは全く異なる世界なんだよ二人とも。この世界にはガストレアが存在しない。だが代わりに悪魔や堕天使なんていう神話の中の生物達が存在しているそんな世界だ。向こうと比べればかなり平和な世界だよここはだから今度は君たち二人も静かに平和に過ごせばいいさ。その家は私からのプレゼントというやつだ。今日一日はゆっくりと過ごしたまえ。明日になったら私も君たちに会いにいく。そこでまた話そうじゃないか。【室戸菫】』
かなり衝撃的なことが書かれているが俺はまず室戸先生が生きていたことの嬉しさが込み上げてきた。そして次にガストレアが存在しない異世界に来たということ。どれだけ平和であればいいと望んだことか。常に危険と隣り合わせの世界で生きてきた。だからこそガストレアのいない平和な世界だということを頭が理解すると、目から涙が溢れてきた。やっと終わったのだと。どうやら木更さんも同じようで、隣で静かに涙を流していた。そんな木更さんをそっと抱きしめ二人で泣き続けた。
ちょっと短めですがとりあえず生きていることを知らせるためにも投稿しておきます。