Fate/Day light   作:ラビット晴晞

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どうも、アベンジャーズ/エンド・ゲームにオーズの真骨頂と好きなものが同時に来て嬉しいラビット晴晞です。特にオーズは一番好きなライダーですから、もうとてつもなく嬉しいです。
前回投稿ペースが落ちるかもと言いつつも、結構早めに投稿できました。
それで、今回は一場面を長くニ場面でお送りします。相も変わらず内容は0、話が進んでいるようで進んでいない。そんな駄文な感じですが読んでいただけると幸いです。
良ければお気に入り、評価、感想なんでも送ってくれると助かります。出来れば『批判』はやめて欲しいけど……


Day2-2 科学の街/歪な日常

 あれからニ時間とちょっとが経ち、俺はなんとか学園都市に着いた。

 なんとかというのは、学園都市に入る途中で、複雑で面倒な手続きがしなくてはならかったのだ。その手続きを済ませてゲストIDとやらを貰うまででも一時間くらい使わされたと思う。独立国家という意見はどうやら本当らしい。

 何故こんな面倒な手続きを毎回行っているのかといえば、やはり情報漏洩を防ぐためなのだろう。学園都市の科学技術は外とは数十年の差がある。その情報がどこかから漏れてしまえば、学園都市の信頼は当然の如く地に落ちるし、下手をすれば戦争の引き金になりかねない。

 だからこそ、ここまで徹底した情報の秘匿が要求されているのだろう。

 

 

 

 学園都市は、きっとそういう場所なんだろう。

 

 

 

 と、長々学園都市の仕組みを憶測していたことはひとまず置いておくとして……

 話を本筋に戻そう。

 繰り返して説明するが、学園都市の面倒な手続きを乗り越えて、なんとか俺は学園都市に着いた。

 だが、そのことでおちおち安心していられる場合ではない。

 俺は早速、護衛対象の上条当麻という少年を探さなくてはならない。学園都市をくまなく捜索するなんて、時間がかかりすぎるし、第一、土地勘のない俺がいきなりそんなことをすれば迷子になるに決まっている。

 ここは探す範囲を絞り込んで、そこを順番に探していくべきだろう。

 当たり前の考え方を長々語って申し訳ないが、実際それが最善手であり定石的な手である。

 だがその前に、学園都市に着いたことをまず遠坂に報告してなくては……

 携帯電話を取りだし、電話帳から自宅に電話を掛ける。

 

 

 プルルルルル。プルルルルル。プルルルルル。

 

 

 ガチャッ

 

 

 携帯電話のコール音が三回に渡って響いたところで、あちら側の受話器が取られたらしい。

 

『はい、衛宮です』

 

「遠坂、俺だ。学園都市に着いたから、一応連絡しておこうと思って」

 

『ふーん。で、これからどうするの?』

 

「いや、まだ時間があるし、上条当麻を探そうと思うんだけど」

 

『具体的には?』

 

「それは、学園都市のパンフレットを見ながら人が集まるところとか、小学生に関係しているところを回っていこうと思ってる」

 

『そう。でも、6時までには必ずホテルにチェックインしてね』

 

「了解。なにか進展があったらもう一度連絡するよ。じゃあな」

 

『うん、じゃあね』

 

 電話を切る。

 進展があったら連絡するといっても、1日やそこらで進展があるほど、俺は優秀ではない。

 少なくとも、進展で連絡を入れるのは明日になると思う。

 さて、報告もすんだところで行動開始だ。

 学園都市のパンフレットに載っている地図を開く。まずはこの学園都市随一の繁華街と紹介されている第15学区に行こう。そこである程度探しながら回って、そのあとに、小学校や幼稚園とそれに付随する機関が集中している第13学区を探すという経路で行こう。

 あまり時間もないし、あそこの駅で電車に乗っていくとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それで、探す前にショッピングモールのベンチで休憩していた。

 休んでいる理由は、これから説明しよう。一言でいうならなんかもう……色々とくたびれたということだ。

 荷物はコインロッカーに入れておいた。

 学園都市のコインロッカーは電子ロックと呼ばれる技術らしく、パスワードを設定して閉めれば自動的に鍵がかかり、パスワードを入力しなきゃ開かないという。たった百円でまさしく鉄壁の城塞となる。

 これは、確かにわざわざ鍵をかけて持ち運ぶより防犯性も持ち運びも楽にすむ。外から来た俺には革新的な技術に見える。

 この他にも、俺の常識を覆す学園都市の技術はいくつもあった。

 一つ目はリニアモーターカー。驚異的な速さと安全性。ものの数分で元居た場所から十数kmも離れていたこの第15学区に着いてしまった。揺れも殆んど無く、乗り心地も抜群。しかも、それを自動で人が乗らずとも勝手に動くというのだから尚驚きである。

 二つ目は自動掃除ロボット。地面にあるゴミを埃からポイ捨てされた紙や缶まで一つ一つ適切な清掃方法で毎日24時間休まず街をくまなく綺麗にしているらしい。

 1日で、そのうち30分だけでこんなものなので、学園都市には俺には想像できないものがまだまだあるはずだ。そして、それだけで俺の気力のほとんどが使われる衝撃的だったので、俺はいまその衝撃をよって削られた気力を回復させるために休憩しているという訳なのだ。

 でも、俺もここに来るまではチューブのなかをタイヤのない車が走っているみたいな、そんなありきたりな未来都市を想像していたので、意外と検討外れだったところもあるが……

 

「っても、ずっとこうしている訳にもなぁ……」

 

 誰に向けているわけでもない。ポツン、と佇む俺の独り言が人混みのなかに溶けていく。

 ふぅ。

 ため息を一つ挟んで整理をつける。こちとら1日で上条当麻という少年が見つかるなんて希望的観測は最初からしていない。だからといって、捜索に手を抜くつもりはない。ただ、ペース配分なんかを間違えるわけにもいかないことも事実だ。

 ここは、まだ回復しきっていない気力を取り戻すための気分転換として、このショッピングモールでお土産探しでもしながら探そう。

 

「……なんだこれ。疑似五次元万華鏡」

 

 そこから、ショッピングモールの露店を巡りながら散歩のついでのような感じに探していた。

 あまり“探す”方に比重は偏っておらず、あくまで“気分転換のためにお土産選び”という意味合いが強い。

 そうして、俺はいま疑似五次元万華鏡なる訳の分からないものを見ていた。『理論上における五次元空間の、あくまで見た目だけのビジョンを光学屈折技術で再現しました』というキャッチフレーズがまた怪しさを強調させている。

 

「……百聞は一見にしまず。固定観念を捨てていこう」

 

 ここに来てから、固定観念なんて正面からぶち壊されてばかりだ。どうせ壊れてしまうような固定観念ならば、最初から捨ててしまおう。

 そのままお試し用に用意された一本を除き込む。

 

 そこに広がった景色は────────

 

「うへぇ、なにこれ……」

 

 言葉は形容できない。正確には形容したくないような、不思議空間だった。

 まぁ、確かに綺麗ではある。が、それと同時に混沌としていて、なんというかこう─────哲学的なことを考えたくなる。

 これは……お土産選びからは除外でいいな。誰も喜ばなさそう。あ、桜なんかは喜ぶかも。う~ん、一応保留にしとこう。

 

「えっと、他には……」

 

 そのまま、疑似五次元万華鏡が売ってある雑貨店に入った。せっかく学園都市に来ているのだ。ただのマグカップとか食器とかの実用品ではなく、学園都市ならではのお土産を買いたい。そういう意味では疑似五次元万華鏡のほうが選びたいジャンル的には近いと思う。でもだからといって、疑似五次元万華鏡が選ばれることは多分ないだろうが……

 そのまま、学園都市名物と銘打たれているものをいくつか見ていた。まぁ、そのどれもこれもが、学園都市名物と言う割には全然外でも、というか冬木でも手に入るようなものばかりで、学園都市の技術力が使われるものなんて3つくらいしかなかった。

 そりゃ、さっき情報漏洩を防ぐためにあれほど面倒な手続きを済ませたのだし、露店なんかで学園都市の技術を見れるわけもないのだが、やっぱり少し落胆するところはある。

 

「よし、大分気分も落ち着いてきたし、いよいよ本格的に探し始め──────」

 

 ドンッ。

 

 膝下辺りに衝撃が走った。

 すぐに衝撃があった方向を向いていると、幼稚園児が尻餅を着いていた。

 どうやらその衝撃は俺ではなく、ぶつかった側にほとんどが帰って来てしまったらしく、そのまま尻餅をついて倒れてしまったらしい。

 

「ごめん、下まで注意が回らなかった。大丈夫か?」

 

「えぇ、大丈夫なのですよ。こちらこそ周りを見れていなかったのです」

 

 その幼稚園児は桃色のショートヘアをしていて、随分と礼儀正しかった。

 ただ見たところ、凄く焦っている様子だった。周りが見えないほど焦っている幼稚園児といえば、俺の考え付く限り、理由は一つしかない。

 

「……もしかして迷子になったのか?なら、俺で良ければ手伝うぞ」

 

「そうですか、助かります─────って、私は子供じゃないのですよー!!」

 

「え、保護者とはぐれたんじゃないのか?」

 

「確かにこの身長では幼稚園児に間違われても仕方ありませんが、私はれっきとした大学生なのですよ!!」

 

 ピシッ、空気が凍りつく音がした。

 空気だけではない。認識も、時間も、思考も、俺を構成するすべてが凍結した気がした。

 

「あれ、どうしたんですか?」

 

 そして、そんな俺を見て、見た目幼稚園児の自称大学生はキョトン、と首を傾げていた。

 その仕草が俺の中から、彼女が大学生だという印象を更に下げていく。

 

「あ、この身長では信じられませんよね。ちょっと待っててください。いま学生証を見せますから」

 

 そういった通りに、少女は俺にポケットから取り出した学生証を俺に見せる。

 しかし、俺は少女の名前を知らないため、証拠能力なんて皆無なのだが、ここまで胸を張りながら俺に学生証を見せてくるので、信じざるを得ないだろう。

 

「えっと、一応聞いておくけど、君の名前は月詠小萌でいいんだよな?」

 

「はい、そうですけど……なんで分かったのですか?」

 

「いや、学生証に書いてあるから……」

 

 やばいな。見た目に引っ張られて、つい年上なのに敬語を使えない。

 見た目が幼稚園児とはいえ、初対面で年上の人間には敬意を払って接するべきだ。

 

「えっと、俺の名前は衛宮士郎……です」

 

「タメ口でいいのです。敬語とか使われると、逆にむず痒くなります」

 

 ……なんだろう。この少女の行動や言動に一つ一つに俺の加護欲が倍増されていく気がする。

 でも、本当になんか困ってるみたいだし、事情だけでも聞いてみるか。

 

「それで、小萌さん。なにか困ってるなら、事情を話してもらえないか。力になれるかもしれない」

 

「いえいえ。関係のない人を巻き込むわけにはいきません」

 

「いいよ。どうせ用事があるまでは暇なんだ、俺の暇潰しに付き合うと思ってくれて構わないから」

 

「う~ん、でも……」

 

「ここでぶつかったのも、なにかの縁かもしれないし……な」

 

「……分かったのです。そこまで言うなら手伝って貰います」

 

 よし。心のなかでガッツポーズを掲げながら呟く。

 ただ、あまり暇ではないことを忘れていた。といっても、暇ではないが、時間がないわけではない。むしろ、焦っている様子から、小萌さんのほうが時間がないと言える。遠坂だって、俺がそういう人間だということはわかってくれると思うし、この場合はしょうがないということにしておこう。

 

「それで、なんで困ってるんだ?」

 

「さっき士郎ちゃんが言った迷子というのが近いかもしれません」

 

「それって、小萌さんがか?」

 

「……士郎ちゃん、ちょっと失礼ですよ」

 

「ごめんなさい、悪ふざけが過ぎました」

 

 頭を掻きながら謝罪する。

 そして、そんな俺の態度にプンスカ怒り顔を見せる小萌さんの姿が、余計に俺の中にある加護欲を刺激してしまう。

 

「私はいま教育実習の最中で、今日は実習させてもらっている学校の課外授業なのです。それで、生徒の一人がはぐれてしまったんです」

 

「土日でもやるものなのか?」

 

「見学をお願いしていた場所がその日しか空いてなくて仕方ないのです。ちゃんと振替休日はありますよ」

 

「そうか。なら、俺は上から探すから、小萌さんは下から頼む」

 

「わ、わかりました」

 

 人探しに必要なのは、人手と連絡能力だ。

 多分、担任の教師はクラス、又は学年を監督しなくてはならないので、探しにいけない。だから実習生の小萌さんに白刃の矢がたったのか、それとも小萌さんが自ら名乗りを上げたのか、あるいはその両方か。

 いずれにせよ、いま動けるのは実習生の小萌さんと、まったくの部外者の俺だけということになる。

 

「あぁ、その前に連絡先を交換しておこう。仮に俺が先に見つけたとしても小萌さんに知らせられなきゃ意味がないからな」

 

「はい、じゃあそうしておきましょう」

 

「あと、念には念を入れて落ち合う場所も決めよう。じゃあ、5階の広場にしておこう」

「ず、随分と馴れているのですね。人探しに……」

 

「まぁ、これ以外にも色んなことに勝手に首を突っ込んでるからな。じゃあ、俺は屋上から探してくるから……」

 

 それから宣言した通り連絡先を交換したあとに急いで屋上に行った。そこで、早速電話を掛けることになった。

 

『士郎ちゃん、もう見つかったんですか?』

 

「いや、そういえば……その子の特徴をまだ聞いてなかったなって」

 

 ふぅ、連絡先を交換しておいて本当に良かった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「──────はぁ」

 

 さて、ここで少し時間を戻り、学園都市に着いたとの報告を士郎から受けたあと、遠坂凛は衛宮の魔導書を読みながら、『衛宮士郎』という人間について考えていた。

 恐らく、『衛宮士郎』という人間を一言で表すということは誰にも出来ないだろう。

 彼の人間性は複雑であり、単純である。機械的であり、偽善に満ちている。強くて弱い。硬くて脆い。器用で不器用。おおよそ対極にあるすべての要素をその身に内包してきた。

 その矛盾が、彼の才能にも影響を与えていた。恐らく本来の『天才』の意味と擦り合わせると、彼のほうが自分よりよっぽど『天才』であると、凛は感じている。

 凛は自分がスペシャリストだとは思っていない。確かに魔術という広義的な点から見れば遠坂凛は間違いなくスペシャリストだろう。周りの人間だってそういう風に見ている。ただ、魔術のなかでさらに狭義的に区別すると、そのなかで遠坂凛はこれを極めていると、胸を張って言えるものをあまり持ち合わせていない。

 無論、得意と呼べるものも幾つかある。まずは遠坂の魔術である転換に、その他にも基礎の強化等といった多くの魔術を行使できる。

 凛の特性は、要するに『なんでもできる』ということだ。ただ、それはあくまでジェネラリストと呼ばれる部類に入る。なんでもできるが、なにもできない。そうなる危険性を常に孕んでいる。それでも一流の成果をだせるのが遠坂凛の才能といえるのだろう。

 ただ、それはどこまでいっても『秀才』としか呼べないのだ。秀才とは、どこまでいっても凡人の延長線上にしかない。であるのなら、一点に特化された、研ぎ澄まされた一本の才能を持つ者にこそ、『天才』の称号がふさわしいと凛は感じている。

 まぁ、彼女は人前で、特に気を許した人間の前では素直になれないので、いつも『へっぽこ』や『半人前』なんて呼んでしまうし、実際まだその通りなのだが……そこら辺の話はまた今度にしておこう。

 さて、そんな衛宮士郎だが、そのことで遠坂凛が考える内容は一つだけだった。

 最近、士郎がモテまくりだということだ。

 あぁ、学園都市行きのことなら凛はあまり心配していない。繰り返して語るが、遠坂凛は衛宮士郎を信頼している。少なくとも、こと戦闘に於いてなら、そこら辺の魔術師なんて手も足も出ないだろうとも思っている。

 しかし、そんなことなど些末な問題だ。

 先程も言った通り、最近士郎にはモテ期が到来している。具体的に挙げるなら、女子の人気を二分していた間桐慎二と柳洞一成との間に新たなダークホースとして本人の知らないところで名乗りを挙げたのだ。

 まぁ、元々二人なんて目じゃないくらいのイイ男だと凛は思っているので、最初はむしろ喜んでいた。自慢の士郎が注目されるのは嬉しかった。

 しかしそれは、新たな恋敵の……それもその他大勢が一気に出現となれば、凛が危惧するのも無理はない。

 一応訂正というか、補足を足しておくと凛は士郎の浮気するなんて思ってはいない。ただ、その恋敵どものせいで、士郎との時間がなくなることを危惧しているのだ。

 

「──────ふぅ」

 

 もう一度ため息を吐いて、気分を落ち着かせる。

 そして、先程までの思考にブレーキを掛けて、紅茶を啜りながら途中だった魔導書の続きを読み始める。

 衛宮の魔術は固有結界を応用した自身の体内と小因果の時間操作に長けている。これだけ限定的な魔術を、四代で封印指定を受けるほどに昇華させた彼の祖父(血は繋がっていない)の才能が凄まじかったことが分かる。

 

「でも、なんで亡くなったんだろう。そんな才能溢れる魔術師が……」

 

 ここに来て、次の疑問が浮かび上がる。

 執行者に殺されたわけでもないのに、どこで、そしてなんで死んでしまったんだろう。

 解答を得ようと、急いで資料をめくってそれについての記述を探す。

 

「やっぱり直接的な記述はなし……か」

 

 エルメロイに渡された資料のなかには彼の祖父である衛宮矩賢の研究成果を纏めた日記のようなものもあった。

 そこには、殺されることを示す記述はなにもなかった。意図的に削られているのかもしれない。しかし、そこに繋がるかもしれない記述が残されていた。内容は、それについて吸血衝動を克服した死徒化という研究について。それについて矩賢の日記にはこう綴られている。

 

『衛宮の固有結界を用いて、時間を無限に加速させ、宇宙の終末を観測することで根源に到達できるはずだ。

 だが、人間の身体では寿命の問題からそれに耐えられない。でも死徒の強靭な身体ならそれを可能にできる。

 吸血衝動を克服した死徒化を可能に出来れば、死徒化に伴うデメリットはすべてクリアされる。

 だから私は、吸血衝動を克服した死徒化に関する研究を始めた。』

 

 確かに理には叶っている。

 成功すれば、六人目の魔法使いになれるかもしれない。そして、矩賢の才能を以てすれば不可能ではないとも思える。

 その数年後の矩賢の亡くなった一日前の日記にはこう書かれていた。

 

『私が身を寄せていたアリマゴ島の住人は魔術協会、聖堂教会に皆殺されてしまった。

 しかし、切嗣が生きていてくれたことがなによりの僥倖だ。

 シャーレイのことは残念だったが、図らずも早く研究成果を出してくれた。

 次の研究場所はもう決まっている。この日記と切嗣さえいてくれれば、研究は続けられるし、研究成果も切嗣に継がせることができる。』

 

 その他にもいくつかの日記を読んでみたが、矩賢という人間がどんな魔術師だったかが分かった気がする。

 一言で言うなら、典型的な魔術師だということだ。世間一般の倫理観とは解離した価値観をもっていたということがわかる。

 しかし、それと同時に、息子である、つまり士郎の養父である切嗣には父親として無類で無限で無償の愛を注いでいたことも分かる。

 別に、故人に対して怒りを見せるほど凛は短気ではない。むしろ、そのような怒りを見せる人間が居るのであれば、それはもう一種のヒステリーと呼んでもいいだろう。

 だが、衛宮矩賢という魔術師を、人間を、凛は好きにはなれない。決して相容れない人間だと思う。

 

「まぁ、それほど興味がある内容ではないしね。士郎がなにか知ってるかもしれないから、帰って来たら聞いてみようかな」

 

 不意に時計を見る。

 時刻はもう四時に近付いていた。士郎が家を出ていってから、かれこれずっと資料を読み耽っていたので少し疲れた。軽く目眩がする。

 

「そろそろ桜も来る頃かな」

 

 そう言いながら玄関へと向かう。

 士郎には交代制と言ってあり、明日からはそうするつもりだが、それでは不平等なので初日は二人で一緒に夕飯を作ることになった。

 居間に入ろうとしたところで、ガラガラと玄関の扉が開いた。現れたのは夕飯の買い物を済ませた桜だった。

 

「失礼します」

 

「あぁ、桜。丁度来る頃だと思ってたわ」

 

「あの、姉さん。どうかしたんですか。少し疲れてるみたいですけど……」

 

「まぁ、あれから三時間くらい魔術の資料を読み耽ってたから」

 

「大丈夫ですか。やっぱり今日は私だけで作りましょうか?」

 

「ありがとう。でも、大丈夫よ。今から作る訳じゃないし、少し休めば大丈夫だから」

 

 桜はそうですか、と言ってから買ってきた食材をドサッ、と床に置く。

 袋に入っていた材料を見ながら、桜に質問してみた。

 

「今日の夕飯の献立は?」

 

「カレーです。作り置きしておいて明日も食べられるように多めに材料買ってきました!!」

 

 エッヘン、というような効果音が似合うような姿で胸を張る桜。それによって、凛は少しダメージを受けた。なにが理由かは、彼女の名誉のために省かせて貰おう。

 

「あと、三時間もすれば藤村先生も帰ってきますし、あと三十分もしたら作り始めましょう」

 

「わかったわ」

 

 優しい笑みを浮かべる桜に釣られて、凛も微笑みを浮かべる。

 さて、このあとに士郎を巡ってちょっとした戦争というか、紛争というか、いざこざが起きるのだが、それはもう少しあとのはなし……




ここでこの話のなかの時間を整理すると
15:00士郎が学園都市に到着。
15:30士郎が小萌先生と出会う。
15:00~16:00凛の場面ってな感じです。

凛の場面って文章量短いですし、分かりにくいけど、一応自分のなかでは一時間たっている設定です。
んで、次回からは16:30くらいから始まります。次回でやっと士郎と上条少年が出会いますのでご安心ください。

そして、心の叫びを一つ。

士郎はロリコンではないッ!!!!

もう一度言います。

士郎はロリコンではないッ!!!!
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