AFTER LORD   作:フリーマスタード

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最後の薔薇の夜明け①

「なっ!?なんだこの凄まじい風は……!?こんな馬鹿げた力業で金属の塊を浮かせていると言うのか!?」

 

 そう狼狽えているのはイビルアイ。彼女の動体視力でもヘリの高速で回転するローターを捕えきる事は出来ず、魔法を使わずに力業で風圧を発生させて浮いているその姿に驚愕していた。

 小さな体格故に風圧で飛ばされそうになりながらも、なんとか飛行(フライ)でヘリの後部座席に乗り込む。

 

「おい!……むぅ、音が煩くて声が届かないか」

 

 大声で叫んでは見るが機内に響く騒音に掻き消されて『不便な乗り物だな』と不貞腐れていると、クライムが何やら風変りな物を渡して来て頭に着ける様にジェスチャーする。

 

『お久しぶりです!イビルアイ様!声は聞こえていますか?』

 

 と、顔馴染みの知人との再会を喜ぶクライム。

 

『ああ、聞こえているぞ。久しぶりだなクライム。成る程、この「へり」とか呼ばれる乗り物に乗る時はこの魔法道具(マジックアイテム)を使って会話するのか。それにしても風変りな造形だな。それに使われている素材も初めて見る物だ』

 

 不思議そうにヘッドセットをまじまじと観察しているとクライムが答える。

 

『いえ、これは魔法では無く水車や粉ひき機と同じカラクリ仕掛けで動いている道具です。仕組みが複雑なので原理までは解りませんが』

 

 思いもよらぬ答えが返ってきて呆然とするイビルアイだが、それも致し方無いだろう。まだ、ヘリコプターなら翼が凄まじい速度で回転する時に発生する風の力で空を飛ぶと理解は出来ても、無線などの電子機器の類は中世水準の人間から見れば完全に魔法にしか見えない。

 幕末の侍が現代の日本にタイムスリップしてしまうドラマがあったが、3Dプリンターはカラクリ仕掛けで物を作っていると理解は出来ても、スピーカーが妖術にしか見えなかったのと同じである。

 

『まさか、この世界の道具は全てカラクリ仕掛けで動いているのか?あの巨大建造物の上で動いている幻影も?』

『そうですよ、イビルアイ。お久しぶりですわね。うふふ、魔法に見えるかも知れませんが「ホログラム」と呼ばれている技術で、空気中の塵に光を当てて描いているだけなんですよ?』

『ラナーか。久しぶりだな。一体前の席で何をやっているのだ?』

『何って、このヘリの操縦ですよ?私のヘリですからね。少し操縦してみますか?』

『良いのか?』

 

 少しワクワクしながら副操縦士の席に移動して座ってみるものの、足がぶらーんとなっておりラダーペダルに全く届かない。

 

『あら?いけませんね。あなたではラダーペダルに足が届かない事をうっかり忘れていましたわ』

『ぐぬぬ……ラナー、お前まで私をそんな風に扱うのか……別に好きで小さい体をしているわけじゃないんだぞ!?』

『うふふ。蒼の薔薇のお友達が居なくて寂しいだろうと思いましてね。元気が出ましたか?』

『だからってガガーランやティアやティナみたいな絡み方をしてくるな!』

 

 そうは言いつつも在りし日の仲間達との日々を思い出して少し気持ちがほっこりとするイビルアイ。本当にあの頃は楽しかったなと。彼女達にも不老不死になって欲しかったのだが、彼女達は人間としての限られた生を全うする事を選んだ為、意思を尊重して最後を見送ったのだ。

 

 もしも、今は再会を喜んでいるシモベ達だが、彼等の創造者が不老不死化を拒否してラキュース達と同じ限られた生を全うする道を選んだ時、彼等はどうなるのだろう?と考える。

 生身の人間である以上、歳を取りやがては必ず別れがやって来る。

 

 彼等にとっては不老不死化して永遠に傍にいてくれるのなら、それに越した事は無いのだが、当然もう一つの可能性はデミウルゴスも考慮している。

 魔導国がリアルに来た本当の目的……それはこの件と深く関わる物なのは間違いないのだが、デミウルゴスが主導で進めているので全容は謎に包まれている。

 

 当然、置いて行かないでと親を必死に止めようとする子供の如く、まだ独身の獣王メコン川さんや弐式炎雷さんならばプロポーズして結婚すれば、永遠に傍にいてくれるだろうとルプスレギナとナーベラルは血眼になって彼等の趣味やデートの方法を勉強して日本に来ていたりする。

 他にも源次郎さんを狙うエントマや、日本に行ってガーネットさんに会いたがっているシズなど。

 既にベルリバーさんという死者が一人出ている以上『もしも自分の創造者に何かあったら……』と気が気では無いシモベ達が大勢いるのだ。

 

『……ところでラナー。さっきから気になっていたのだが、その変な仮面の様な物は何だ?前はちゃんと見えているのか?』

 

 と、ラナーが装着しているVR・AR兼用ゴーグルについて尋ねるイビルアイ。

 

『あら、それを言ったらあなたこそ、その仮面でちゃんと前は見えているのですか?これは色んな情報や同時に複数の場所が見れる物で、生身の肉眼よりも遥かに優れているんですよ。今回は私も戦いに参加しますからね』

 

 思わぬ発言を聞いて『ちょって待て』となるイビルアイを他所に、髪を上げてうなじの部分のインプラントに刺さっているプラグを見せる。

 

『これは……ラナー、お前は自分の身体に何をやったんだ?』

『うふふ、インプラントを埋め込む手術を行っただけですよ?ですので、今回は私もドローンを遠隔操作して戦いに加わりますわ。イビルアイが警備を相手に無駄な魔力を浪費するのも何ですから、前衛をお願いできますかクライム?』

『はい!私はラナー様の剣。お任せください!』

 

 仕える主人の為ならば、地獄にでも行かんと言わんばかりのその覚悟と忠誠心は嘗てのガゼフ・ストロノーフの如く。

 

『……クライム、余り会わなかった私が悪いのだが、その……大丈夫か?』

『大丈夫ですわ。セバスやコキュートスからモモちゃんと一緒に稽古を受けていますので、武技〈四光連斬〉も使えますわ』

『……そうか。今やお前もアダマンタイト級ぐらいの実力は持っているのだな……しかしラナー、ドローンが何なのか知らないが本当に大丈夫なのか?』

 

 嘗て黄金の輝き亭でガガーラン達と交えて会話した時の事をよく覚えている。才能が無いのにも関わらず、不老不死になり手に入れた悠久の時を武器に努力を重ねてアダマンタイト級の実力を身に着ける、その不屈の心こそある意味では才能なのかもしれないな、と内心ごちる。

 

『時が来れば分かりますわ。この世界では「超金持ち」というのは立派な強さのステータスなんですよ?そうですね、六腕やギガントバジリスクぐらいなら私でも倒せますからね。トライセンデンス社の細菌兵器の流出事故に見せかけてリグリットが死霊術でゾンビを発生させますから、その混乱に乗じて私達は会社の警備を始末。死体はソリュシャンとエントマが処理するので殺し方は問いません。防犯カメラは私が管理システムをクラッキングして映像をループさせますから、30分以内に誘拐された人々の救出を完了させてください。その後、公安第一特務課が動いて証拠を確保し、万が一戦車や生物兵器が出てきた場合は第一席次と番外席次とサトルさんの3人で対処。その後、私が賄賂を渡しているロシアと中国がウイルス流出事故を起こしたトライセンデンス社及びアメリカ合衆国に「国際条約違反」で直訴する手筈になっていますわ』

『……余り私はヤルダバオトの様なマッチポンプは好きでは無いのだがな』

 

 ツアーやリグリットは全ての事実を知っても『時には劇薬が必要な時もある』と、後続でナザリックの後に現れたプレイヤーから世界を守った成果もあり受け入れてしまっているが、きっとラキュース達が真実を知ったならば、犠牲となった王国の民の件を許すことは無いだろう。

 

 そんな彼女達とは裏腹に、世界の指導者達はワールドイーターの件をきっかけに情報が開示されても魔導国へ従順な姿勢を崩さない。

 聖王国の『教皇ネイア・バラハ』に至っては神が人類に与えた試練だったと解釈する始末でスレイン法国の神官長達も彼女の意見に賛同している。帝国と王国のジルクニフ皇帝及びザナック陛下も『そんな事だろうと思った』と言わんばかりに悟ったような笑みを浮かべるだけで魔導国に従順だ。

 竜王国のドラウディロン女王もビーストマンとの経済的交流で王国や帝国に負けない程の大国となった件もあり、魔導国を全面的に支持している。

 評議国も現実問題として『世界の歪み』から世界を守れる国が魔導国しかない事を認識している件もあり、犬猿の仲だったスレイン法国と共同で対プレイヤーの防衛軍を編成している程、魔導国とは深い関係の国になってしまっている。

 エリュエンティウ鹵獲作戦では魔導国・法国・評議国の最強戦力で八欲王の従属神の残党と戦った事も有る故に。

 

 有史以来初めて千年以上平和が続いているという実績がある為に各国の指導者は今更とやかく言う気は毛頭無いのだ。特に各国上層部は全員不老不死になっている為に、魔導国を信じるしか道は無いと完全に悟ってしまっている。

 もしも、魔導国が突然消えたら再び各国同士でいがみ合い、そうした混乱の最中にプレイヤーが現れたら確実に世界は滅びると知っている故に。

 

 やはり、地球世界と全面的に戦争になる危険がある以上、デミウルゴスを全面的に表に出す必要が生じる為に『ヤルダバオト=デミウルゴス』という事実をカミングアウトせざるを得なかったのだ。

 最も各国上層部しか知らない極秘情報の扱いではあるが。

 

 結局のところ魔導国、アインズ・ウール・ゴウン魔導王は世界を一つに纏める楔でもあるのだ。

 

『綺麗ごとだけでは悪は倒せませんよ?悪を倒せるのは、より強い悪なのですからね?うふふ』

『イビルアイ様。お気持ちは理解できますが、ラナー様は理不尽な悪行で苦しんでいる人々を救う為に自ら泥を被っておられるのです。この世界は嘗ての王国など細事に思える程業が深いのです。私は、誰も救えない善人よりも、一人でも多くの民を救える悪人の方がずっと良いと思います!』

『……』

 

 やはり、色々と思うところがあり不貞腐れているイビルアイ。

 

『……しかし、しかしだな。これを容認すれば、()()()()()()と同じことをすれば私はラキュースに会わせる顔が無い……ガガーランやティアやティナにもな。何故なのだクライム?何故、あれ程真っすぐだったお前が平気でサトルと同じことが出来るのだ!ガゼフやブレインが知ったら悲しむのでは無いのか!?』

『イビルアイ様。先程も申しましたが、私はこの世界に来てから10年の間に色々と見て参りました……きっと、ラキュース様もこの世界を知れば私と同じ事を思うでしょう……』

『何が言いたいのだクライム!』

 

 流石にラキュースの事を出されて『お前に何がわかるのだ!』と怒りの余りに食って掛かる。

 

『人類の敵は人類自身なのですよイビルアイ。何故、彼らがこれ程にまで高度に発展したか分かりますか?平和を求める為では無く、より相手を圧倒できる兵器を開発する競争を繰り返した過程でここまで発達したのですよ?魔法も無く武技も存在しない彼等はより効率的に敵を倒せる兵器を開発し、中には()()()()()()など可愛く思える程の非常に残酷な兵器も存在します。火と共に発展し、火と共に滅びるのが彼等の文明です。時に人間は悪魔よりも冷酷な生物になるのですよ。だからこそ、嘗ての様な思い切った手段で管理する必要があるのです。あなたも王国貴族達を見ていますよね?』

『……すまないが、協力はするが同意はしない』

『それも仕方ありません。私も最初はイビルアイ様と同じでしたから。しかしながら、悪夢の様な()()が待っているので覚悟をしておいてください。怒りに我を忘れる事が無いようにお願いします』

『……ああ、わかってる』

 

 イビルアイがどうやらヤルダバオトの件を引きずっているみたいなので、モモンガさんの為に少しフォローしておくかと思うラナー。個人的に『モモン様ぁ~』なイビルアイの方が見ていて面白かったというトンデモない動機で親切心では無い。三角関係で苦しむモモンガさんを見てみたい等の碌でも無い理由だ。

 

 内部に不信感を抱いた人物がいる事により全体の歩調が乱れるのよりも、この方が自身も楽しめるし最も合理的な選択であると人工知能並の速さで決断を下す。

 そして、イビルアイの性格的にどういった言葉を選択すれば最も効果があるか脳内で数パターン程シミュレーションして、ラキュースの人格を真似るのが一番効果が高いだろうと結論を出す。

 

『ねえ、イビルアイ……いえ、キーノ。あなたが守りたいのは「建前」なの?それとも「人命」なのかしら?』

『……!それは……人命に決まっているだろう』

 

 不意にラキュースを思い出すような口調に変わったラナーに意表を突かれる。

 

『何が善で、何が悪か、それはあなたでは無く、あなたに助けられた人々が決める事じゃないかしら?困っている人を助けるのが蒼の薔薇でしょう?……とラキュースなら言うでしょうね』

 

 

 

 

「うりゃぁああっす!」

「ルプーってゲーム上手いね」

 

 獣王メコン川さんと『ユグドラシル2』で遊んでいるルプスレギナ。

 さり気なく、メコン川さんと一緒に遊ぶ為に体内ナノマシンやその他諸々を使っていたりする。

 ちなみにプレイヤーネームは『ルプー』で登録しており、ぷにっと萌えさんがリーダーを務める『ニューナザリック』という冒険者チームに入って彼等と一緒にレベリングを楽しんでいる最中である。

 元祖ユグドラシルの終了と共に消えたと思っていたNPCが異世界経由で生命と自我を持ち現実世界に帰ってきて、一緒にユグドラシル2で遊んでいる姿はなんとも奇妙そのものなのだが、誰も敢えてそこには触れようとしない。

 

「……獣王メコン川様」

「……はい、なんでしょう?」

「……このゲームのNPCみたいに飽きても私を捨てないでくださいっすね。私を作った責任を持ってくださいっす。これからは秘密無しっすよ?報連相っす」

「……はい」

 

 誰も敢えて触れないのはこれが原因である。ルプスレギナも『ユグドラシル2』がきっかけで流石に自分達の立場を理解してしまい、目の光が消えて少し怖いオーラが出ていたり。

 ゴゴゴという音が聞こえてきそうなルプスレギナを他所に『マジパネェっす』とドキドキして満更でも無い様子の少しドМなメコン川さん。空気が読めない駄目な人だったりする。

 

 現在では異世界に転移するかも知れないから、サービス終了時は最後まで残ってログインし続けようと変な野望を抱いたプレイヤーが続出しており、転移する事を前提として『作成者を愛している』というやたらと長い設定を書き込んだNPCを作成する者が溢れて混沌としている……主にアルベドの爆弾発言がネットに拡散されたのがきっかけで。

 新規登録を希望するプレイヤーが余りにも増え過ぎてしまった所為で、既に登録している1年以上遊んだプレイヤーからの招待が無ければ登録できない様になっている有様である……主に魔導国の所為で。

 

 旧運営会社からフランチャイズ権を購入したEGHのラナー会長により大幅リニューアルされており、バランスが狂っていたワールドアイテム等の要素は全て削除されている。

 ゲームシステムもかなり一新されており、新たに『武技』と呼ばれる戦士職が使える魔法の様なスキルが追加されてリ・エスティーゼ王国の王都やエ・ランテルで冒険者になるもよし、イジャニーヤに加入して暗殺者になるのも良し、ズーラーノーンや八本指に入るのも良しな幅広い自由度はそのまま。

 

 ナザリックが現れる前の向こうの世界を再現したゲームが『ユグドラシル2』である。

 

 ニューナザリックのメンバーは、ぷにっと萌え・弐式炎雷・獣王メコン川・ルプスレギナ・未来ちゃんの5名だけで小さかったりする。ウルベルトさんやペロロンチーノさんやヘロヘロさんはリアルが忙しい為、参加していない。

 

「ルプーさんって元はゲームのNPCだったのに、今こうやってプレイヤーとしてログインしているの、なんだか不思議ですよね。NPCだった時の記憶とかあるんですか?」

 

 と、ルプスレギナを気遣って誰も触れていなかった事に触れてしまう未来ちゃん。やはりこの年頃だと好奇心旺盛なので仕方が無い。

 

「みーちゃん酷いっすねー。その事で私も悩んでるっすよ?獣王メコン川様が責任を持って私と結婚してくれれば文句はないっす」

 

 色んな意味で肉食女子なルプスレギナは狙った獲物は逃がさんとばかりにメコン川さんの家に住み着いてせっせと家事を行ったりしている。ルプスレギナが部屋を掃除した際、男の聖書(バイブル)が紐で結ばれて纏めてゴミに出されているの見たメコン川さんが自爆したそうだ。

 彼女と同棲するとあるあるの洗礼を体験しているリア充なメコン川さん。

 

「ふふふ、春が来て良かったじゃん獣やん。ルプスレギナを大切にするんですよ。カップルでゲームとか羨ましい限りで。モモンガさんみたいに変態な事をしたら駄目だよ?」

 

 目を『へ』の字にしたアイコンをピコンと浮かべる弐式炎雷さん。

 今のギルドメンバー達にとって『変態』といえばモモンガさんであり、ペロロンチーノさんは追い抜かれてしまい非常に悔しがっていたとかなんとか。

 人様の娘の設定を書き換えて寝取り、あんな事やこんな事をしたり、シャルティアを椅子にしたり、ソリュシャンとお風呂に入ったり、日替わりで『アインズ様当番』をメイド達にさせているエロの深淵を極めたモモンガさんに『これこそ長年求めてきたエロの奥深き深淵……!』と膝を突いて歓喜したペロロンチーノさん。モモンガさんを『師』として教えを乞う事を決意したそうだ。

 ……言っておくが一応、既婚者である。

 

「……それにしても、獣やん来週から異世界に出張かぁ。何かお土産で美味しい物買って来てくださいね」

「え、そっちですか弐式さん」

「え、だって週末は帰って来るんでしょ?それにそのうち向こうともネット回線繋がりますって。そうえば、ブループラネットさんも大学教授を休職して、しばらく研究設備を満載したトレーラーハウスで向こうに行くから連絡できなくなるって言ってましたね。なんでも全財産、家まで売って最先端の研究設備につぎ込んだらしいですよ」

「うわぁ……」

 

 当たり前の様にこんな会話をしているが、早々一部の人達は今の状況に慣れて来てしまっている様子。流石に嘗てのプレアデスの一人が『プレイヤー』としてユグドラシル2を一緒に遊んでいる今の状況では受け入れざるを得ないわけであるからして。

 

「安心してくださいっす。弐式炎雷様。ナーちゃんも今日本に来ているっすから、愛の告白があるかも知れないっす」

「……え?そうなの?」

「ふふふ、覚悟してください弐式さん。俺も一日中ルプーが犬みたいにべったりと引っ付いて来て大変なんですから」

「犬じゃないっす、狼っす。後ナーちゃんを泣かせたら弐式炎雷様とは口を利かないっす」

「女の子を泣かせたら駄目ですよ!弐式炎雷さん!女の子から告白するのって凄く勇気がいるんですよ!」

「みーちゃんの言う通りっす!」

「……はい」

 

 姉妹のナーベラルの為に一言添えておくルプスレギナと援護射撃をする未来ちゃん。

 

「……それじゃあ、今日は獣やんとルプーのレベリングデートという事で、何処か適当なダンジョンに行きますか?」

「八本指の娼館を攻略しに行くのはどうでしょう?確かラスボスのサキュロントはウィキによればアダマンタイト級でも最弱なので、幻影魔法対策していけば楽に勝てる相手ですよ」

 

 と弐式さんの提案に乗るぷにっと萌さん。レベルのシステムが大幅に変更されており、プレイヤーのレベル上限は『難度100』でありアダマンタイト級がカンストレベルとして設定されている。ゲヘナの炎イベントに登場する『ヤルダバオト』と言うワールドエネミーは『難度300』であり、大人数でチームを組まなけれな攻略困難な敵である。

 

 昔の超位階魔法が飛び交うユグドラシルと違って随分とリアルなゲームバランスになっており、ポーションも時間と共に劣化するシステムになっている。元祖ユグドラシルから遊んでいる古参プレイヤーからは『完全に別ゲーじゃねぇか!』と賛否両論ではあるが、グラフィックや没入感が一新されており、現実的なバランスも相まって概ね新規プレイヤーからは高い評価を得ている。

 

 プレイヤーのレベル上限が33.3ぐらいに設定されているのは、万が一、転移が起きた時に向こう側が大変な事にならない様にとラナーが配慮した所が大きいのだが。

 ちなみに運営会社のトップであるラナー会長もクライムと一緒にお忍びでプレイして遊んでいたりする。リアルではヘリのライセンスまで持っており、ユグドラシル2では有り余る財力で重課金しまくって、気まぐれで社員に指示してイベントを開催したり、まるで某デュエリストの社長みたいだが気にしてはいけない。

 個人資産でアントノフや石油プラットフォームを購入できる様な人が本気で課金したらどうなるかはお察しである。そもそも、フランチャイズ権を旧運営会社から買い取ってユグドラシル2の開発に深く関わった創始者である。

 全年齢対象からR-15に変更されており、軽いスキンシップまでは自由である。主にラナーがユグドラシル2でクライムとイチャイチャしたかった故に。

 

 そう言った大人の事情でシステムが大きく変更されている事もあり、ログイン中もずっとメコン川さんの腕に絡んでべったりなルプー。まるで久しぶりに飼い主に会う事が出来た犬の如く。

 

「それじゃあ、殴り込みに行きましょうか。俺が先に忍び込んで偵察してくるから、獣やんはまだレベルが低いルプーの護衛で未来ちゃんは俺の支援を頼む」

「はい、わかりました!……射出!」

 

 未来ちゃんがそう叫ぶと背中に装備している浮遊する剣群(フローティング・ソーズ)が飛び出して臨戦態勢に入る。未来ちゃんのアタッカーとヒーラーを器用に熟すその姿はラキュースさながら。

 余談ではあるが『正義降臨』エフェクトを知ってか知らずか再現している辺り、流石はたっち・みーさんの娘である。

 

「正義降臨!喰らえ悪党め!超技!暗黒刃超弩級衝撃波(ダークブレード・メガ・インパクト)!」

 




244様、誤字報告大変有り難うございます。
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