AFTER LORD   作:フリーマスタード

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悠久の国の女王①

「ねえ……爺様。今お母様が御進めになられている、日本国総理大臣との対談やラナー率いる先発隊の漆黒聖典が進めている工作活動の進展はどうなっているのかしら?……お父様の故郷、リアルワールドが保有する核兵器は魔導国に取って大いなる脅威であり、広島や長崎の悲劇をこの魔導国内で繰り返さない為にも、貪欲な悪魔達から純朴なる民を守る為に、一亥も早く核による抑止力を持つ事が何を置いても優先されるべき課題です」

 

 ナザリック地下大墳墓の玉座に座ってワイングラスを片手に優雅に振舞うサキュバスと人間のハーフの神人。

 セクシーな母親のアルベドとは違ってスラっとしたスタイリッシュな体つきだが高級ブランドのモデルに成れそうな、黒髪ショートヘアと縦に割れた瞳孔が特徴的でアルベドに近い整った顔立ちである。

 男女を問わずに思わず見入ってしまいそうなクールな感じのパリコレビューティー的な、アルベドやシャルティアとは違うベクトルの美しさを持っている。

 

「ハッ!御嬢様!既ニ、ウルベルト様率イル先発隊ノ漆黒聖典ガ『北朝鮮』ト呼バレル国ヲ支配下ニ置イタトノ報告ヲ受ケテオリマス。オ母上様ニヨレバ、自衛隊ト呼バレル日本国ノ軍隊ガ『農耕都市カルネ』ノ復興作業ニ派遣サレル様デゴザイマス』

「……そう。お父様に悪いから言いたくは無いけど、膨大な軍事力を持った国家が複数存在する中で、日本国を()()で守らないといけないのは骨が折れるわね……こっちだって、農耕都市カルネの罪の無い民を何千人も死なせてしまって、魔導国の統治だけで精一杯だと言うのに……お父様と違って出来損ないの私には荷が重いわ……一体どうすればいいのかしら?」

 

 魔導国の次期支配者としての練習も兼ねて『お留守番』をしているモモちゃんだが、アルベドの様な頭脳は持ちつつも、メンタルは父親のモモンガさんと同じ小市民なのでキャパシティオーバーで半泣き状態になっている。偉大なる智謀を持った父親の『アインズ様』と比べたら、余りにも小市民的な発想しかできない自分を『出来損ない』だと卑下してしまっている節がある。

 恐るべき智謀で世界を統一して千年以上の平和を築いた父親が、如何に偉大な存在かモモちゃんは理解している。幼い頃はルプスレギナ(狼形態)やハムスケと一緒に遊んでくれた優しい父でもあり、その後もユリ・アルファから教わったリアルワールドの歴史に登場する偉人達と比較して、父親が如何に偉大なる支配者であるのかを理解したのだ。

 

「僭越ながら、その様な憂慮は必要ございませんので、どうぞご安心ください。モモ様」

 

 怪しい笑みを浮かべる悪魔――デミウルゴスが落ち込みつつあるモモちゃんを宥める。

 

「……そう。いつも悪いわねデミウルゴス。あなたが居なければ私には務まりそうにないもの。感謝しているわ……それで、今の段階の物で構わないので聞かせて貰えないかしら?」

「そんな御謙遜を。モモ様はお父上様と同じ素質があり、いずれ私等超えてしまう事でしょう。ワールドイーターと呼ばれる支配者勢力がどのような手段で世界を掌握しているのか既に判明しており、魔導国及び各属国にも導入する事を前提に深く調べてみたのですが、要点だけを申し上げれば各国に通貨を発行する『中央銀行』なる金融機関を完全に私物化する事で彼等は経済を牛耳り、世界を意のままに操っております。正に人間の業の集大成とも呼べるべき物で深く関心致しました」

 

 つまりこれ、通貨発行権を持つ中央銀行に借りに来る客は『国家』であり、その中央銀行は株式市場に上場している『ワールドイーターが経営する財閥』であるが故に、彼等が貴族だとすれば国家が領地と言ったような具合で王国みたいな構図になっているのだ。

 すなわち、国家がワールドイーターから借りた借金を返す為に国民が税金を払っているという事なのだ。この『借金的奴隷制度』で国民が夢どころか、先さえも見えない暗闇の中でひたすら今日を生きる為に働き続けるしか無い状況になっているのが、この22世紀の世界。その上、AIによる監視社会となっているのだから世も末である。

 

「……その様な関係でロシア大統領や中国国家主席は世界の覇権を握るワールドイーター達を敵対視しており、『敵の敵は味方』という言葉もございます様に、既にそちら方はラナーが手を回しております。後はお母上が日本国をこちら側に引き入れる事が出来れば計画を次の段階に進められる事でしょう」

 

 顎に手を当てて『ふむ』と考え込んでいるモモちゃん。アルベド並の頭脳は持っているのだが、流石にアルベドには劣るので後でじっくりと情報の整理をして纏める為にメモ帖にスラスラと報告内容を書いて行く。

 モモンガさんにとってナザリックのシモベ達が大切な子供達である様に、魔導国の民は大切な家族である。

 その家族を守る為の責任感から出来る限りの努力はしなくてはと、支配者としての振舞い方を優しい兄のパンドラズ・アクターから陰でこっそり教わりながら練習していたりする。

 同業者で友人でもあるジルクニフ皇帝も親切に悩みの相談に乗ってくれており、人望の厚い彼を参考にしながら試行錯誤しているのだ。

 

 ジルクニフも、モモちゃんが支配者としては自分達と然程変わらない弱みに付け込んで策を練る気など今さら毛頭も無く、あの魔導王の娘であるが為に周りから期待の目で見られて大変だろうと心中を察して『同じ被害者』として同情してくれていたりする。多少は人類の安泰を願ってモモちゃんに優しくしている部分もあったりはするが……

 

「歓迎の準備で忙しい中、時間を取らせてしまって申し訳ないわね」

「いえいえ、そんなとんでもございません。モモ様をサポートする事こそ私の役目でございます」

「結構。そのまま計画を進めて頂戴」

 

 

 

 

 ドサッと自室のベッドに飛び込んで、そのまま『うわー』と言いながら、黒い羽を撒き散らしてゴロゴロとベッドの上でローリング中のモモちゃん。

 

「……どうしよう、お父様が何を計画しているのかイマイチ全容が掴めないわ。デミウルゴスには一体何が見えているのかしら?」

 

 彼女が悩む理由も仕方が無く、モモンガさんを凡人だと知っているのはアルベド・ツアー・リグリット・イビルアイ・ラナー・クライム・第一席次・番外席次の8名だけである。

 母親であるアルベドが魔導国を維持する為に『深淵なる叡智を持った魔導王』のイメージを支えている事など知る由も無く。

 

「ふう。少し気分転換しなきゃ駄目みたいね」

 

 溜息をつくと、デフォルメされた『ハムスケのぬいぐるみ』の編み物を取り出して続きを始める。母親と同じく裁縫は得意であったり。

 

「……ハムちゃん、喜んでくれるかしら?」

 

 何故か昔から『魔獣』と言うよりは、つぶらな瞳の小動物が大きくなっただけの様に見えて、眺めているだけで癒される憎めない独特の愛着が沸いてくるのだ。

 

「騒がしい、静かにせよ……うーん、何か今一迫力が足りないかしら?面をあげなさい……うーん」

 

 編み物をやりながらブツブツと支配者らしいロールプレイの練習に励んでいるモモちゃん。

 ジルクニフから貸してもらった『バハルス帝国の帝王学』の本も読みつつ、今一父親みたいな威厳のある雰囲気を再現出来ずに悩んでいると『コンコン』と自室の扉をノックする音が聞こえ、頭を素早く切り替える。

 

「どうぞ」

 

 扉を開けて入ってきたのはシズ・デルタ。

 オーレオール以外の姉妹全員が日本国で活躍している中で、ナザリックにお留守番で少し拗ねていたのだが、突然のウルベルトさん達の来訪で嬉しそうだ。

 

「……モモ様。至高の御方々が御到着致しました。着陸の許可を求めています」

「もちろん許可するわ。お父様の御友人にくれぐれも失礼が無いように気を付けてね、シズ」

「……はい」

 

 

 

 

「ふう。お姉ちゃん、何とか間に合ったね。こんな感じで大丈夫かな?」

「お疲れ様マーレ!たぶん大丈夫だと思うよ。本に載ってる写真通りに造ったし」

 

 大人に成長したアウラとマーレの二人組が地上で何を造っているのかと言えば、それはラナー達が乗った飛行機を受け入れる為の『滑走路』である。

 今後、日本国と交流するにあたって必要になるだろうと造っていた物を急ピッチで完成させたのだ。

 滑走路には夜間でも視認出来るように魔法による照明が規則正しく並んでおり、本物の滑走路にも劣らぬ完成度だ。

 

 上空に軍隊を送り込む時の様な大きさの異界門(ゲート)が開くと、『ギュイィーン』という空気を引き裂く轟音と共に航空灯をチカチカと光らせるアントノフAn-225が現れる。

 300年ぶりに会う妹のラナーの為に王国軍を率いて工事に参加していたザナック国王陛下も巨大な鉄の塊が夜空を飛ぶ雄姿を見て『日本国は魔導国と同じくらい敵に回してはいけない』と直感し、過去の失態を繰り返さぬ為にも、新参の日本国に舐めた態度を取るであろう、1300年前の悲劇を知らぬ若い貴族達を暗殺してでも釘を刺さなければと密かに決意していた。

 

 これは、地球製のハイテク機器を大量にナザリックへのお土産で運ぶのと同時に、歴史を直接経験していない、不老不死では無い若い世代が人の身であるウルベルトさん達に舐めた態度を取らない様、格の違いを見せつける目的でラナーが気を利かせてアントノフAn-225でワザとド派手に王国上空を凱旋しているのだが。

 夜空を見たことが無いウルベルトさん・茶釜さん・ペロロンチーノさんへのサービスも含んでいる。

 

 当然、低空で遊覧飛行するアントノフのジェットエンジンの騒音で『何事か!?』と目を覚ました王国の住民や貴族達は、航空灯やストロボをチカチカと点滅させながら飛んでいるガルガンチュアよりもデカい超巨大な飛行機に戦慄していた。

 

『管制。こちらシャルティア航空東京発ナザリック行便。着陸の許可を求めるでありんす』

「うわー……随分派手な物で来たねシャルティア。流石は至高の御方々が住まわれている国」

『これは「くうきり()がく」で空を飛ぶ乗り物で原始人なお主と違って、わらわは文明人でありんすぇ。タブレットのアプリでペロロンチーノ様から「エロゲー」も教えてもらいんした』

「それは空気力学でしょ!それぐらいアタシだって巨大図書館(アッシュールバニパル)の死獣天朱雀様の本で勉強したから概要ぐらいは知ってるわよ偽乳!」

『ぐぬぬ……』

 

 大人に成長してもシャルティアとのやり取りは相変わらずである。アウラはボーイッシュ系のクールビューティーに成長しており、マーレは女性受けが良さそうな中性的な美男子に成長していた。もちろん、マーレは性別に合った服装をしている。

 昔ならアウラを『おチビ』と呼んだのだが、今は背の高さもスタイルでも負けており言い返せない。

 

 凄まじい轟音を響かせながらランディングギアを下したアントノフが滑走路にタッチダウンすると、王国兵達が滑走路上で松明を振りながら機体を誘導する。地球側では一番最大規模の航空機なので、今後普通の旅客機を受け入れる場合でも問題ないだろう。

 

 ……まあ、当然、ラナーに雇われているEGH専属のアントノフのパイロットにしろ、松明を振ってアントノフを誘導している王国兵にしろ、互いに『こんな事があるなんて……』と腰を抜かしているのだが。

 

 そして、完全に停止したアントノフからウルベルトさん達が降りて来ると、日本とは全然違う『自然の匂い』がする澄んだ空気と頭上に広がる満点の星空を見て童心に帰って興奮していた。ブループラネットさんなら間違いなく発狂するだろうと確信もしていたり。

 

「うわおう!こりゃあブループラネットさん、二度と日本に帰ってこねぇわ……」

「うわぁあ……凄い綺麗だね……おい、愚弟。シャルティアとイチャコラしてないで少しは上を見ろ!」

「なんだよ姉ちゃん。今シャルティアに()()()のやり方を教えてるのに……うわ、マジか」

 

 まるで猫の様に『ゴロゴロ』聞こえてきそうな感じでべったりとペロロンチーノさんにしがみ付いて、目を細めて頭をスリスリしている幸せそうなシャルティア。

 やまいこさんの妹のあけみちゃんと結婚している事もあるのだが、シャルティアに対して健容で良い奥様である。

 今のシャルティアが狙っているのは『ペロロンチーノ様のペット』のポジションであり、ハムスケ的に愛される立ち位置にならんと必死であったりする。

 もっとも、シャルティア的には妻よりもペットのポジションの方がペロロンチーノ様から一日中可愛がってもらえるのでは?と、まんざらでもなかったりするのだが……

 

 それはさておき、アントノフのハッチから続々と荷物が降ろされている脇では、ラナーとクライムがザナック国王陛下と水入らずで何やら話している様子であり、ザナック陛下は超巨大な飛行機におっかなびっくりしながら内部の見学をしていた。ラナーとクライムはこの後ナザリックには寄らずにリ・エスティーゼ王国の王都に行く事になっている。

 

「お元気そうで何よりです。私の時間軸では10年しか経っておりませんが、300年経った割には元気そうですねお兄様」

「何と言うのか、噂では聞いているが化け物のお前でも苦戦する相手とは私は関わりたくないな。お前が持ってきた異国の道具を見れば少なくとも碌な相手ではない事だけは想像できる……まあ、それとは別に今後の日本国との本格的な国交に備えて貴族達に関しては粛清してでも釘を刺すから心配する必要は無い」

「ウフフ、万が一にでも、人間の身である彼等に何か不祥事が起これば王国の歴史は幕を閉じるでしょうからね」

「……ああ、言われなくても分かっている。特級の扱いで迎え入れたいのだが、何時の時代も相変わらず馬鹿な事を考える奴等が存在していてな……」

「王国に限らず、それは何処の世界でも同じですので気に病む必要はありません。既にリアルワールドは至高の41人の一人を殺害する失態を犯していますからね」

 

 その言葉を聞いて『ご愁傷様』とリアル側の国家の指導者に哀悼の意を捧げるザナック国王陛下。完全に向こうの異世界は外交以前に詰んでますわと。改めて無知は罪であるという言葉をヒシヒシと感じていた。

 

「それはさておき、向こうは1300年前の王国よりも腐敗していて多かれ少なかれ慣れていますから、余程の事が無い限りは何も心配は要りません。護衛で漆黒聖典の神人2人とシャルティアとアウラとマーレもいるので返り討ちでしょう。特にヤルダバオトの創造主であるウルベルトさんはそう言ったトラブルを楽しめるタイプの人間ですから。私も10年暮らしましたが、空気も水も不味く、肉と野菜の質もこちらより遥かに劣る物でした。王国の料理でもてなせば点数を()()()稼げると思いますよ?」

 

 あの、ヤルダバオトを生み出したウルベルトという人物は絶対に敵に回してはいけない。魔導王と同等の待遇で迎えるべき国賓リストに加える。例え、人の身だからと足元を見て来るであろう王派閥の身内を公開処刑してでもと固く決意しつつ、引きつった笑顔で会話を続ける。

 

「おお!それは良い情報を聞いた!明日も直ぐには帰らずにしばらくは滞在するのだろう?早速、王宮の専属料理人に王国の威信を賭けて出し惜しみ無しの料理を作らせよう。これは王国の命運に関わるからな」

「そうそう、これはお兄様へのお土産です。必要な情報は全て入れてありますので、これで勉強すればお兄様も貴族達を出し抜けるでしょう。後これはソーラー充電器で……」

「……ん?この板みたいな道具は……待て、もしや、日本国の?」

「タブレットと呼ばれる向こうの世界の『持ち運べる図書館』ですわ」

 

 画面をスライドしながら感動に震えているザナック陛下。中に入っているのは『孫氏の兵法』やらビジネス書等のラナーが厳選した数千冊にも及ぶ膨大な電子書籍の数々。ザナック陛下も魔導国の公用語である日本語は仕事上必要な為に読み書き出来る。

 

「おお!これがあれば、書斎など要らぬではないか!我が国、せめて王宮だけにでも早く導入したいな……この様な道具を向こうは大量生産できるのだろう?改めて国力の次元が違う国だとわかった」

「あら、意外とイビルアイよりも理解が早いですね」

「今更だ。どうせお前が乗ってきた巨大な鉄の鳥も向こうでは馬車並に普及している一般的な乗り物である事は想像に容易い。そしてお前の事だから向こうの世界で上位に君臨しているだろう事も想像できる。これだけ長く生きていれば流石に慣れて来るからな」

 

 ルプーによる()()()を遂げたバルブロ第一王子と違って、1300年生きている事もあり流石に話の理解が早い。

 

「……でしたら、日本国は食料を輸入に依存している国家なので、王国の余剰食糧や家畜が交渉材料になるかもしれませんね。土地が豊かな王国はその点の貿易競争では他国よりも有利でしょう」

「あぁ、妹よ。感謝する」

 

 王国の数百年先の未来の展望を初めて思い描くことが出来てテンションが上がって来ているザナック陛下。例え、ラナーの手の平の上で踊らされていると分かっていても、いつもの事なので今更気にしない。

 

 

 

 

 場面は変わり、ナザリック地下大墳墓で豪華極まる熱烈な歓迎を受けて若干引き気味の茶釜さんとペロロンチーノさん。

 ウルベルトさんは『俺はこう言うのは性に合わねぇから、偶には弟と水入らずでゆっくりすると良いよ』と第一席次と番外ちゃんと一緒にショットバーに逃げて任務成功の打ち上げ中だ。

 

「おい……愚弟。さっきからシャルティアとお熱いのは良いけど、奥さんのあけみちゃんがいるんだから……一線は越えるなよ?」

「ちょっとシャルティア!あんたは何時までペロロンチーノ様にベッタリ甘えているのよ!」

 

 やはり本業が現役声優なだけあって、特に最後の一言は虎が唸る様なドスが利いている声で器用な物である。

 

「わ、わかってるって姉ちゃん。もう少しぐらい信用してくれよ……」

「ぐぬぬ……わかったでありんす」

 

 ともあれ、案の定、茶釜さんとアウラにそれぞれ怒られているペロロンチーノさんとシャルティア。

 そんなやり取りを見て『ウフフ』と上品に笑っているのはモモちゃん。

 

「失礼しました。お父様から聞いたお話通り大変が仲が宜しいのですね」

「あなたは……アルベド……じゃない。もしかして、娘さんかな?」

 

 一瞬、アルベドと見間違える茶釜さんだが、髪が短いし、以前テレビでアルベドが娘の誕生の経緯を事細かに話していたので直ぐに誰なのか思い当たる。モモンガさんがナザリックに帰って来たら、()()()()をしなければとも思っていたり。

 

「はい、その通りです。自己紹介が遅れましたね、改めまして私は魔導王と守護者統括の娘のモモと申します。今はお父様とお母様が不在の為に臨時で女王を務めております」

 

 幼い頃に父親のモモンガさんから聞いた『至高の41人の話』通りで、物語の登場人物に実際に会えた様な感じで嬉しくて腰の翼を少しバサバサさせているモモちゃん。

 

「ところで……ウルベルト様はどちらに?」

 

 見当たらないなと思いつつキョロキョロと探してみるが、歓迎の式典の会場には影も形も無い。

 

「ああ……ごめんね。旦那なら今ショットバーで飲んでると思うよ。彼は余りこう言った場には慣れてなくて」

「そうですか……実は子供の頃からファンだったのでお会い出来るのを楽しみにしていたのですが、残念です」

 

 ちょっとショボンと翼が垂れているのを見て『犬のしっぽみたいに感情表現に使ってるのかな?』と思いつつもフォローを入れる茶釜さん。

 

「そう言えば、モモちゃんはモモンガさんからユグドラシルの話を聞いて育ったのかな?」

「はい、お父様の御友人の方々と未知を求めて様々な冒険をしたり、色んなワールドエネミー達や悪しきプレイヤー達と戦ってきた冒険譚を聞いて育ちました」

「……(どうしよう、もしかしてゲームって事を知らない?)」

 

 モモちゃんの憧れになっているだろう物語を壊してしまうのもあれだし、どうした物かと悩んでいると、意外にも茶釜さんの心中を察して『ウフフ』と女神の様な包容力がある優しい笑みを送って来る。

 

「あ、そんなに困らなくても大丈夫ですよ。『DMMO-RPG』と呼ばれる仮想空間にダイブするゲームである事は存じておりますので。一応、魔導国の指導者として、お父様程ではありませんが日本国のテクノロジーや歴史と文化、経済や政治に国際問題はほぼ把握していますから」

 

 優しくて、包容力があり、頭が良い子なんだなと言う印象を受ける茶釜さん。こんな良い子に育つなんて、モモンガさんって実は凄い人なのでは?と同時に思うのであった。若干、女性関係に関しては欲望剥き出しで悪印象な所もあるのだが……

 

 しかしながら、どうしてこんなに知っているのだろうか?そして、自分達がゲームのNPCに過ぎなかった事を知っても何故平然としているのか?と疑問に思う。

 

 ……モモちゃんに関しては半分は人間の血が流れているが。

 

 これは茶釜さんには知る由も無いのだが、モモンガさんがNPC達を子供の様に大切にしてきた日頃の行いもあり、実はリアルの世界で作られたゲームのキャラクターに過ぎなかった事を知ったとしても忠誠心が揺らぐ事は無かった。

 むしろ、そんな『玩具』に過ぎない自分達を大切にしてくれたモモンガさんの深い愛を知り、深い感謝の念と共に感動の涙に打ち震えて忠誠心がさらに限界を突破したのである。

 アルベドが献身的にモモンガさんを支えているのも、こう言った裏事情があっての事なのだ。

 

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