AFTER LORD   作:フリーマスタード

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悠久の国の女王②

 さて、ショットバーに逃げたウルベルトさんはと言うと、何処からどう見ても幼女にしか見えない先客がオッサンの如く焼酎のビンを片手に思いっきり泥酔している、色んな意味で異世界過ぎる光景に大いに困惑していた。

 

「ぐえー。ひっく。やってられんわー。くそう、誰が合法ロリじゃっ!誰かセラブライトの奴に死に方を教えてやってくれ。あいつは後何百年生きるつもりなんだ!もう充分過ぎる程生きただろう!死地に送り出しても『愛の力です!』とか言って生還するし、私は何時になったらアイツのねっとりと舐める様な視線から解放されるのだ!?」

 

 竜王国の重要人物だとモモンガさんが勘違いし、セラブライトが永遠の命を手に入れてしまった事に対して、悲痛な心の叫びをあげて深酒している彼女は竜王国の女王ドラウディロン・オーリウクルスである。

 まあ、確かに1300年間もねっとりとした熱い視線を向けられていたら、それはそれでビーストマンの侵攻よりも大変かもしれない……少なくとも当事者にとっては。

 しかも、不幸な事に千年以上も『幼女形態』を取り続けたが為に、リハビリをしない事には本来の姿へ戻れなくなってしまっていたりと受難が続いているのだ。

 ウルベルトさんは直感的に関わるとヤバいと感じて、カウンターの席3つ分程距離を置くのだが……

 

「おい!こんなに愛らしい少女からなんで距離を置く!?……ええい、酒じゃ酒じゃあ!世知辛い現実を遠ざけて置くには飲むしか無いわ!」

「あ、いえ、お気になさらず」

 

 まさか、ナザリックでべろんべろんに酔い潰れたオッサンみたいな幼女に絡まれるとは夢にも思っていなかったウルベルトさんの困惑は更に深まって行く。

 そもそも『この人誰?なんで此処にいるの?……それ以前に幼女が酒瓶を何本も飲み干してるこの状況ってどういう事!?』と、リアルでは考えられない常識を覆す未知との遭遇に色々とツッコミたい気持ちがありつつも抑える。

 ウルベルトさんも酒は好きだが、彼女はロシアの酒飲み大会で勝てそうなぐらい飲んでおり、どう見ても飲み過ぎである。

 

「うぇ。ひっく。フンム……お主はセラブライトの変態と違ってロリコンでは無い様だな……なあ、可哀そうな私の悩みを聞いておくれ。宰相の奴からも『いっその事、結婚されてはどうでしょう?』なんて適当に受け流されて話せる相手がおらぬのだ。女王なのに扱われ方が酷いんじゃ!国民も兵士もロリコンばかりでウチの国はブラック過ぎる!どうしてこうなった!?このままでは冗談抜きで近い将来に変態の巣窟になってしまう!もう竜王国はお終いじゃあ!……ええい、もう、いっその事『竜王国』と名乗るのは止めて『ロリコン王国』に改名してやろうか!こうなればヤケ酒じゃ!」

 

 適当に聞き流しながら相槌を打ちつつ、カランッと音を立ててウイスキーのロックを飲んでいる渋い男なウルベルトさん。

 

「ま……まあ、ウチの国でも指導者という立場の人って大変だなーと思う時も偶にはありますけどね……俺の友人に丁度良い人がいますよ。紹介しましょうか?」

 

 会話のキャッチボールならぬ、会話の()()()()()()状態で面倒くさいのでペロロンチーノさんに投げる。

 

「おぉ!分かってくれるのか!誰なのか知らぬが、竜王国に来て是非私を支えてくれぬか?我が民はロリコンしかおらぬから駄目じゃ!役職は女王の権限で超高い待遇で迎え入れるぞ!努力次第では次期宰相の地位も考慮してな!もちろん、協力するぞ!アイツは優秀だが女王の扱いが酷過ぎるのだ。クビじゃ!クビ!ひっく……何処の国出身なのだ?私が直々に口添えするぞ?」

「えーっと、分かるのかな?日本なんですけど……」

「……」

 

 酔い潰れた『のじゃロリ』に生まれて初めて遭遇したなぁとも思いつつも、改めて異世界に来ている実感を感じるウルベルトさん。理由はよくわからないが、何故か急に顔が真っ青になって『こてんっ』と倒れたので『飲み過ぎで気分が悪くなったのかな?』と一人納得する。

 

 それはさておき、改めてゆっくりと感慨深げにバーを見渡す。とてもでは無いが1300年も経過したとは思えない真新しさだ。いくら手入れしても、それだけの年月が経過すれば名実ともに本物の墳墓の様に風化してもおかしくないのだが。

 とはいえ、魔法が存在する世界を現実世界の物差しで測るのもおかしな話かと思い『そういう物なのだろう』と考える事を止める。

 

「いやー、疲れてると酔いが回るの早いな。余計な事を考えちまう。次の一杯で最後にしようかな」

「それでしたら、是非ウルベルト様に飲んで頂きたいカクテルがございまして、10種類のリキュールを混ぜました『ナザリック』という数世紀掛けて完成させた自信作でございます」

「おー、有り難うピッキー。じゃあそれを頂こうかな」

「畏まりました」

 

 ショットバーのマスターをやっているキノコの様な頭の副料理長、ピッキーは表情こそ読み取れないが、何処と無く嬉しそうである。自身の最高傑作を至高の御方に飲んでもらえるからというは言うまでもなく。

 人間にとって毒になりかねない物は手早く代用品でアレンジしつつ、テキパキと作っている。

 

「……それにしても、少々面倒な事態になりましたね。香港マフィアの背後にいたN17という民間諜報組織……恐らくワールドイーター配下の組織だと思いますが」

 

 と、隊長さんこと第一席次。

 

「……ああ、そうだな。茶釜さん達には危険な情報だから内緒にしてるけど、たぶん、俺の勘だとベルリバーさんをやったのはこいつ等だ」

「うん?N17?……弱いのに興味無いから覚えてない」

 

 と、興味無さげに会話に参加している番外ちゃん。

 

「はあ……ほら、あの、あなたが横浜中華街跡で暴れた時に捕らえた香港マフィアの脳をニューロニストに吸わせたじゃないですか。あの時のですよ」

「ああ。そう言えば、いたね。そんな奴……ま、私はこれ飲み終わったらコキュートスと戦って来るかな。リアルの人間は弱くて最近腕が鈍ってるから。期待していた戦車も装甲が柔らかいし、アダマンタイトくらいは使うべきだよ」

 

 こんな相変わらずな調子で良くもまあ、10年も日本に溶け込んで生活している物だと改めて思う隊長さん。

 

「アダマンタイトで戦車を造ったら、重くなり過ぎて燃費や機動性が悪くなると思いますよ……そもそも、彼等は現代戦において、あなたみたいに真正面から殴り合う戦い方は想定していないですから……」

 

 そりゃあ、まあ言ってしまえば、オリハルコンやアダマンタイトの様な鉄よりも硬い金属がごろごろ転がっている世界において、戦車が柔らかく感じるのは仕方が無い。

 それ以前に、そんなアダマンタイトでも凹む様な人外の力を持った存在に至近距離から殴られる事なんて想定して造られていない。インファイトなんてやられたら、近過ぎる所為で為す術も無くサンドバックの如く殴られ続けるしかないのだ。

 その上、恐怖公の眷属がエンジンに詰まって故障したり、砲門から内部に侵入してきた眷属達に操縦者が食われたりで、戦う相手が悪かったとしか言えない。

 ある意味、シャルティアや番外ちゃん並の強さが無ければ倒せない戦車を一方的に蹂躙できる恐怖公の眷属達は実は強いのかもしれない。

 

「はあ……やれやれ。隊長さんや番ちゃん達が羨ましいねぇ……リグリットやラナーが居なければ、強いて言えばモモンガさんが居なければ、今みたいに有意義な仕事に在り付けなかったからな。たっちさんだって、ラナーの巨大複合企業からの組織票か何かで裏に付いてるから政治家になれたんだろ?実際の所は」

 

 そう、よくよく考えてみたら、たっちさんが外務大臣になる前。まだ地方選に出馬したばかりの頃の街頭演説では、巨大複合企業が実質的に支配する今の体制を作り直そうとする革命派的な内容だった故に良くもまあ、このご時世で当選した物だと驚いた事は記憶に新しい。

 

「国民による、国民の為の民主主義を取り戻そうではありませんか!巨大複合企業の!家畜として!生かされているのが今の日本の社会なんです!一体、これの何処が民主主義と呼べるのでしょうか?私は以前、警察で働いておりました。巨大複合企業の何らかの秘密を知った友人が殺害されても上からの圧力が掛かり捜査は打ち切られました。司法機関も彼等の手によって腐敗しているのが現実なんです!……なんて堂々と街頭演説したら潰されると思っていたんだけどね」

 

 正々堂々と真正面から今の腐敗した体制と戦わんとする姿勢はたっちさんらしいと言えばらしいが、流石のウルベルトさんでも『いやいやいや、家族がいるんだからもう少し冷静になろうよ』と心配したものだった。その姿は正義の味方と言うよりも、義憤に駆られた革命家に近かったのだ。

 まさか、たっちさんが支配者層に怒りの炎を燃やしていた嘗ての自分の様になるとは完全に予想外である。

 間違いなく、理想とはかけ離れていた警察を自分を騙しながらでも続けていたあの男に火を着けたのはベルリバーさんの件だろう。

 

「……まあ、馬鹿正直で実直なアイツなら日本を悪くはしねぇと思うから、俺としては大歓迎だけどな。あの頑固な野郎と国会討論しないといけない政治家達が可哀そうだ」

「お待たせ致しましたウルベルト様。こちらがナザリックになります」

「おお、ありがとう」

 

 ピッキーからカクテルを受け取ると、10種類のリキュールが層の様になっており『なるほどね』と納得する。

 しばらく日本に売ってる酒が不味くて飲めなくなりそうだな、なんて思いながら飲んでいるとデミウルゴスとモモちゃんの二人が来店してくる。

 

「もぉ、ドラウさん。まーた飲み過ぎてこんな所で寝ているんですか……後で竜王国の宰相にナザリックで泊って行くと連絡しないといけないですね」

 

 額に手を置いて『やれやれ』となっているモモちゃんの隣では、ウルベルトさんに再会出来た喜びでデミウルゴスがプルプル震えている。

 

「ウルベルト様……お会い出来て感極まる思いでございます。もし宜しければ後ほど第七階層にお越しください。きっとシモベ達も喜ぶ事でしょう……ピッキー、私も同じ物を貰おうかな」

 

 モモちゃんとデミウルゴスの二人がカウンターに座ると、番外ちゃんは『じゃあね』と手をピラピラ振りながらショットバーを後にする。

 ウルベルトさんとデミウルゴスは言葉を交わすことも無く、モモちゃんは『男の人って何で素直に喜べないのかしら?』と困りつつも、シンミリと静かに飲んでいる場の空気を変えようと話題を振る。

 

「……えーっと、ウルベルト様。初めまして。私はモモと申します。お父様からお話を聞いて育ちまして――」

「……なあ、デミウルゴス。もしかして……日本を政権交代させて、たっちさんを総理大臣にするつもりなんじゃないか?『世界征服』の前段階として。ワールドイーター達から世界を盗むのか……愉快だな。アイツが政治家に成れたのも、俺が今の職に就いているのも全てモモンガさんがラナー達を送り込んだからなんだろう?俺の勘だけどな、モモンガさんは1300年前に転移した直後から『今日』と言う日を想定して魔導国を建国したんじゃないか?」

「流石はウルベルト様……!その通りでございます!アインズ様――いえ、モモンガ様は転移した直後に夜空をご覧になられて、こう仰られました。()()()()()()()()()()()()()()()()、と」

 

 モモンガさんが凡人だと知っている隊長さんは横で『あちゃー……全然勘が当たってないですよ』と思いつつも、言えない空気なので黙って見守っている。

 

「なんてこった……話が全て繋がったよ。それで地球側の技術やインフラが必要だからラナー達を送り出したのか。自然環境再生事業も、地球が自滅して滅んだら計画を進める上で困るからという事かい」

 

 いやいやいや、違いますよ。モモンガさんはあなた達に幸せに暮らして欲しかっただけで、そんな事は考えていません、と冷静に脳内ツッコミを入れる隊長さん。

 

「はい。私も当初は『世界征服』の比喩だと思っておりましたが、まさか言葉通りの壮大な万年単位の御計画だったとは思いにもよりませんでした。一番最初の時点で壮大な御計画の最終目的をお話になられていたのに、ウルベルト様に知者としてご創造されたにも関わらず、思い込みによる狭い視野の所為で千年以上も気付かなかった私はなんと愚かなのでしょう……」

 

 横では『えっ!そうなの!?』とモモちゃんが驚いた表情をしている。まさか、父親が万年単位の視野で宇宙に本格的に進出して行く世界を創造する一環としてリアルワールドを征服しようと考えていたとは、と。

 確かに魔導国で独自に研究したり開発するよりも、リアルワールドを利用した方が圧倒的に早い。

 

「そんな事は無いさデミウルゴス。1300年も安定した国家を築き上げた人物なんて地球の歴史上誰もいない。キリスト教の聖書で『千年王国』なんて表現されるレベルで実現困難な事をやってのける恐ろしい深淵な智謀を持ったモモンガさんを相手に今まで良く頑張ってきたよ」

「あぁ……ウルベルト様。そのお言葉だけで全ての苦労が報われる思いでございます……!」

 

 全くの的外れな方向に行っているのにデミウルゴスと会話が成立しているウルベルトさんは何者なんだ……と、違う意味で隊長さんは驚いていた。

 

「成る程ねぇ……それで先を見越してEGH――ラナーの企業がアメリカの民間宇宙航空会社を傘下に収めたり、NASAと提携しているのか。月面資源開発は『宝石箱の様な星空』を手に入れる為の第一歩と言う事かい。未来の世界が楽しみに思えるなんて……古き良き時代の夢物語だと思っていたよ」

「ご安心くださいウルベルト様。御息女の為にも必ずやモモンガ様が御計画する壮大な未来を実現致します……その為にはまず――」

「分かってる。トライセンデンス社のウイルス漏れをでっちあげて、彼等からの組織票で当選していた政治家達を失脚させるんだろ?北朝鮮を乗っ取ったのも、魔導国と日本を守る為の核兵器を手に入れる事だけじゃなくて、あの国を隠れ蓑にしてサイバー攻撃を日本に仕掛ける事で政治家や総理大臣の汚職や賄賂の証拠を世に露わにして、前代未聞の一大スキャンダルで衆議院解散と政権交代を狙う。おまけに世界各国からのヘイトが全て北朝鮮に集中するから魔導国はお咎め無しと……モモンガさんすげぇな。一体、どんな景色が見えているんだろう?」

 

 言おうとした事を先にウルベルトさんに言われてしまって、『流石はウルベルト様』と喜んでいるデミウルゴス。

 

「そんな……!ウルベルト様もモモンガ様に引けを取らない叡智をお持ちになっておられます」

「いやいや、過大評価し過ぎだって。俺にはモモンガさんみたいに『千年王国』なんて絶対無理だから。なんとなく勘で言ってみただけで深くは考えてねえよ。点と点を線で繋ぐ辻褄合わせするだけの唯の職業病だから。一応これでも公安だし」

 

 ウルベルトさんとデミウルゴスは斜め上にモモンガさんを深読みする話に花を咲かせながら酒を飲み、平和に夜が更けて行くのであった。

 

 

 

 

 一方、竜王国では……

 

『夜分遅くに申し訳ございません。ドラウさんがナザリックのショットバーで泥酔してしまって、今日()ナザリックに泊って行く事になりそうです……』

「はぁ……ウチの陛下がいつもご迷惑をお掛けしてしまって、こちらこそ大変申し訳ございません。貴国にはビーストマンの侵攻から助けて頂いたと言うのに恩を仇で返すような事を……スレイン法国と聖王国から神を冒涜する行為だと抗議文章が届いているのに陛下は何をやっておられるのか……せめて、お詫びと言っては何ですが、農耕都市カルネの復興作業は竜王国が自腹で……」

 

 モモちゃんから伝言(メッセージ)が届いて頭を抱えているのは竜王国の宰相。

 

『お気持ちは大変有難いのですが、日本国の自衛隊と呼ばれる軍が異世界から派遣されて復興に手を貸してもらえる事になっていますので……』

「は!?プレイヤーの国の軍隊がですか!?」

 

 宰相も彼等が生身の人間である事は知っているのだが、プレイヤーの国は天にも届く様な超巨大建造物が(ひし)めき合い、音よりも早い速度で空を飛ぶ乗り物や月に行ける乗り物が存在する、魔導国よりも高度に発達した文明である事は知っている。

 魔導国の首都エ・ランテルでは『熱鉱石』を利用した蒸気機関車や『ルーン魔法』を利用した飛行船が存在するが、それよりも遥かに進んだ物だと聞いているのだ。

 何よりも、あの魔導国の都市であるデス・ナイトに厳重に警備された農耕都市カルネを一日で落とした軍事力が只者では無い事ぐらい誰にでも理解できる。あの評議国の白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)始原の魔法(ワイルド・マジック)を使わなければ勝てない様な相手だったのだ。

 

 もしも、ワールドイーターの機械兵団が竜王国に現れていたら、半日も持たずに国が陥落していた事だろう。あのデス・ナイトが全滅する様な『多脚戦車』や『VTOL』と呼ばれる兵器を作れる文明に勝てる筈が無い。従属神や竜王(ドラゴンロード)或いは神人で無ければ勝てない相手だ。

 そんな代物を剣や弓と同じ様に大量生産できるのだから恐ろしい。こうなれば、魔導王を信じる他道は無いと改めて覚悟する宰相だった。

 

 

 

 

 その頃、バハルス帝国では……

 

「陛下。こちらが先程ラナーが転移魔法で送ってきた日本国の『育毛剤』と呼ばれる霊薬でございます」

「すまないな、バジウッド。魔導国でも作れない霊薬を作る事が出来るとは、流石はプレイヤーの世界だ。直ぐに魔法省へ送り成分を分析させろ」

「はぁ……しかし、陛下。ワールドイーターへの対策は宜しいので?」

「何、我々に出来る事は何も無いさ。魔導王に全て任せておけば良い。一応、軍だけは何時でも動かせるようにしておけ。レイナースは何処だ?追加の人員が必要ならば帝国からは彼女を日本国に送ろう」

「彼女なら今、神殿で魔導王に祈りを捧げていますぜ……」

 

 色んな意味で悟りの境地に到達して頭が輝いているジルクニフは日本国の霊薬に一筋の希望を託していた。

 何せ、髪を再生させる為には超位階魔法〈星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)〉及び『強欲と無欲』のワールドアイテムも併用して100万もの民の魂を犠牲にしなければいけないと魔導王から聞いていたからだ。

 

「呪いを解いてもらった上に、永遠の若さと命まで与えられれば、彼女が魔導王の信仰者になるのも仕方が無いか……しかし、不老不死よりも髪の再生の方が困難と言うのは解せぬな」

「そりゃあ仕方が無いですぜ陛下。不老不死と言ったって、フールーダ殿やリグリット殿も独自に禁術を使って延命していた程で俺達でも到達できる方法なんですから……ほら、従属神のオーレオール・オメガ殿も人間で在りながら不老不死じゃないですか。たぶん、魔導国では簡単な事なんですよ」

 

 六大神や十三英雄ですら寿命で亡くなったと言うのに、今や彼等よりも圧倒的に長生きしているので不思議な物である。

 スレイン法国の改訂版の教義では、六大神や邪神の八欲王達よりも上位の万物を司る『最高神』としてモモンガさんは崇められている。

 ちなみに不老不死化した者達は『神に選ばれた使徒』として信仰の対象にもなっており、地球で言うところのイエス・キリストとかイスラム教のムハンマド的な感じである。

 

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