AFTER LORD   作:フリーマスタード

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Dark Angel's Tragedy①

 時は数時間程進み翌日の朝。場所は王都リ・エスティーゼ。魔導国歴1300年。

 

「号外!号外!我らの慈悲深き神で在られるアインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下がスレイン法国とアーグランド評議国で編成された救世軍を霧の世界(ミスト・ワールド)に派遣!さらに皇女モモ様と永久議員の白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)が魔導国を代表して、霧の民の代表者達と対談予定だ!詳しい事を知りたきゃ値段は銅貨1枚だ!さあ、買った買ったぁ!」

 

 早朝から王都の市場では新聞売りのゴブリンが威勢よく声を上げており、情勢に敏感な商人や市民、或いは熱心な信仰者だったり貴族の使いが新聞売りに銅貨を渡して新聞を購入している光景が目に入る。

 当然、ワールドイーターが農耕都市カルネを壊滅させた件で、市民の間では義憤が高まっており、一番の関心の的となっている。

 魔導国に暮らす市民にとっては大虐殺など1300年前の創世記神話に過ぎない程平和だった故に、現実離れしたショッキングな出来事だったのだ。

 

「そんな……本当に別の世界が存在するなんて……ああ、神よ。どうか私達を御導き下さい」

「この先、一体どうなるんだ?本当に俺達は大丈夫なのか?」

「アルベド様が魔導王陛下の故郷である聖地を属国に加えようと交渉しているらしいぞ!」

 

 一般市民は事の詳細をほとんど知らないので、正式に指導者達が知っているのと同じレベルの情報が開示された事により各所で動揺が走り、多くの市民が不安から魔導王に祈りを捧げていた。

 とはいえ、核兵器を手に入れた事などの魔導国の安全保障に関わる機密情報は当然、デミウルゴス・アルベド・パンドラ・ラナー・リグリット・ツアー・モモちゃん及び各階層守護者しか知らない。

 後は直接作戦に関わったウルベルトさん・隊長さん・番外ちゃんのみ。

 

 で、自分達が知っている物が何も残っていない孤独感と不安を感じながらも、見違える程変わった王都を散策しているラキュース達。

 

「今の時代ではプレイヤーでは無くて、『霧の民』と呼ばれているのね。あれ?……ねえ、あれってもしかして、私達がよく使っていた宿屋じゃないかしら?」

「ほんとだ。まだ残っていたのかよ……景色が変わっていて気が付かなかったぜ。折角だし何か飯でも食って行かねえか?」

「ガガーランに賛成」

 

 嘗て、八本指の黒粉畑を焼く時の打ち合わせなんかに使ったりしていた懐かしの宿屋が残っていた事に、なんとも言い難い感情を覚える。

 

「まさか、普段なんとなく使っていた宿屋を我が家の様に感じるだなんて夢にも思わなかったわ……」

「ああ、同感だ」

 

 宿屋に入ると、給仕のラビットマンの娘が愛想よく『いらっしゃいませ!宿屋「蒼の薔薇」へようこそ!』と迎えてくれる。創世期に活躍した英雄達が使っていた歴史ある宿屋である事をニコニコと元気に説明してくれる彼女を見て、流石に『本人です』とも言えずに苦笑いである。

 

「それにしてもよぉ……随分と、その……多種多様になったんだな」

「ええ、人間が5割、残りは各種亜人と言った割合かしら?評議国を思い出すわ」

「あら、あなた達が望んでいた平和に何か不満があるのですか?」

「ラナー!?」

 

 王宮に住んでいるイメージのあったラナーが澄ました顔で葡萄酒を宿屋で飲んでいる姿に困惑するラキュース。さらにリアル世界のパンツスーツ姿で一段と浮いている。

 

「おいおい、御姫様がこんな所で飲んでいて良いのか?しかも朝から……」

「私が離れていた間にこちらでは300年経っていますから、私が王族である事を知っているのはお兄様ぐらいしかいませんからね。それに、向こうの世界で自由に暮らしていましたら、昔の堅苦しい生活に戻る事は今更出来ないですね」

 

 ウフフ(*´艸`*)と相変わらずな感じで余裕たっぷりなラナー。クライムと結婚してから少し丸くなった所があったりなかったり。ラキュース達が蘇っても全て想定内と言わんばかりに動揺しない彼女は流石である。

 

「すみません、彼女達にエールを。後、私はピニャ・コラーダで」

「はい!直ぐにお持ちします!」

 

 ちなみにピニャ・コラーダとはライト・ラムとココナッツ・ミルクとパイナップル・ジュースを混ぜた甘くて美味しいカクテルである。グラスの縁にはパイナップルを飾っているのが一般的。パイナップルやチェリーが飾り付けられてストローが刺さっている、所謂『南国っぽい』イメージがある飲み物はたぶんこれ。地球に存在する飲み物であるのだが、巨大図書館(アッシュールバニパル)やスレイン法国の神殿最奥部に蓄えられた知識を有効活用して、かなりリアル世界由来の物が魔導国内で再現されている。

 

「私が日本国に旅立つ前の時代でも海上都市から来た人魚(マーマン)やシー・リザードマン、アベリオン山岳から来た山羊人(バフォルク)は王都にもいましたよ?……それにしても、どうですか?今や十三英雄と同じ神話の英雄に仲間入りした気分は?」

「別に悪くはねえけどよ……あんた、意外と飲むんだな」

 

 朝から大衆の宿屋で堂々と飲んでいるラナーの姿を見て『御姫様』のイメージが音を立てて崩壊して行くラキュースとガガーラン。

 今のラナーの家はロサンゼルスにあるビバリーヒルズ・アーコロジー内の豪邸だったりするので、休日は庭のプールで夫のクライムとまったりと飲んだり、バーベキューを楽しんだりするのは当たり前の生活である。

 

「はぁ……昔ここで八本指の事で話し合ったりしていた頃が嘘みたいね」

「ああ、あの時はチビさんとクライムもいたよな。まさか、クライムがアダマンタイト級の実力になるなんて思わなかったぜ。一度手合わせをしてみたいもんだ……あいつはどうしたんだ?」

「クライムなら王宮で貴族達が客人に無礼を働かない様に目を光らせていますよ。お兄様一人ではストレスで痩せてしまいますからね。一人で王都をぶらぶらと散策するのも新鮮で良いものです」

「客人と言うのは例の彼等の事ね……あなたは応対しなくても良いの?」

 

 一瞬だけ、アルベドから『そこまで至高の御方々に気を遣わなくても良いから、気負わずに適当にやって頂戴』と言われている事を伝えようか迷ったが、いずれ向こうに行けばイビルアイなりリグリットからプレイヤーについて真相を聞くことになるだろうと考えて彼女達に任せる事にする。

 いずれにしても、昔とは違って同じ次元で考えて話せる相手がいるのは良い物だと思うラナー。夫のクライムを喜ばせる為に仕事に精を出す充実した生活に満足しており、心にかなり余裕がある。

 クライムが手料理を作って家で待ってくれている『一般人』の生活が真底気に入ってしまっていた。

 

「もぉ、ラキュース。私は王国の関係者では無いのですよ?」

 

 人差し指を立ててエッヘンと説明するラナー。向こうの世界で『エイトフィンガー・グローバル・ホールディング』と呼ばれる商会の会長をしていて、王国とは何の関わりも持っていない事を話す。

 

 将来的にトウモロコシを原料にした『エタノール』で走る日本車を魔導国向けに輸出する事業展開を考えている事や、前世紀の『産業の空洞化』を防ぐ為に工場は日本国内に集中させて雇用も増やし、魔導国からは『熱鉱石』を輸入して『熱鉱石発電』を新たな次世代再生可能エネルギーとして日本国内に展開して、日本国と魔導国が互いに成長できる貿易関係を築くために根回ししている事等。

 

 ラナーが構想している熱鉱石発電は『減らない石油を使った火力発電』の様であり、熱鉱石で蒸発した水蒸気を利用して発電タービンを回転させるだけなので、魔導国の蒸気機関と同じくクリーンである。

 原子力発電にしたって、ウランは地球上にマンハッタン2つ分の体積しか無かったりするので、いずれ枯渇するだろう。その点、熱鉱石は使い勝手が良い上に消耗もしないので千年でも万年でも使えるのだ。

 もちろん、魔導国の資源だけで地球の国家全てのエネルギーや食糧需要を賄うのは不可能である為、月に眠っている膨大な『ヘリウム3』を利用した核融合発電への着手も視野に入れている。

 

「インサイダー取引になってしまいますけど、ウチの株を買うなら今がチャンスですよ?うふふ……そうそう、これ、ウチの傘下の民間宇宙航空会社がやっている『宇宙旅行』のチケットなのですが、良ければイビルアイさんも誘って楽しんで来てください。私からのプレゼントです。プレイベート機を会社で用意していますので、アメリカへの旅をゆっくりと楽しんでください。その時はロサンゼルスのビバリーヒルズにある我が家に泊って行ってくださいね。プールで映画でも観ながらバーベキューをしましょう」

 

 映画のチケットでも渡すような感覚でチケットを5人分渡すラナー。ISS-IV(4代目国際宇宙ステーション)で宿泊して月面に半日滞在する、富裕層でも手に入らないプレミアムコースのチケットである。

 

「あ、ありがとう、ラナー。良く分からないけど楽しみにしてるわ……」

「でもよぉ……宿屋の名前が『蒼の薔薇』って言うのは、なんか恥ずかしいな」

「まあ、気持ちは理解できますよ。それよりも、あなた達は知っておいた方が良いでしょう。恐らく、モモちゃんからは聞いていないと思いますので……」

 

 急にラナーがラキュース達に見せた事が無い深刻な表情になり、『これは只事では無い』と息を飲むガガーラン。

 

「実はアルベドが魔導王を苦しめ、彼の母親を過労死させたリアル世界を叩き潰す為にナザリックの最終兵器である『ルベド』を起動させたのです。私もクライムの為ならば同じ事をするでしょう。愛の為に。私自身、クライムを侮った相手は葬って来ましたので……八欲王の首都であったエリュエンティウにいた難度300の従属神20体を魔導国と法国と評議国が合同で倒した事に表向きはなっていますが、実際の所はルベドが単騎で全滅させました。100年毎に現れたプレイヤー達をギルド拠点ごと単騎で滅ぼして来た史上最強の存在でしょう。新たに現れたプレイヤーの存在を魔導王が知る前にアルベドによって闇に葬られて来たのが平和の裏にある歴史の真実です。当然、評議国の竜王達はこの事を知っては居ますが、世界の安定の為に黙認しています」

 

 ちょっと待て!となるラキュース達。自分達の死後に『100年の揺り返し』で現れたプレイヤーを殺しまくってきた神殺しの化け物に真っ青になる。

 

「ね、ねえ、ラナー?それって本当なの?」

「残念ながら本当です。強さは私でも測りかねますが、ナザリックの全戦力を単騎で相手にしても勝てるでしょうね。『至高の41人が全員揃っていて倒せる強さ』特にたっちー・みーさんとウルベルトさんの二人が居ないと倒せない強さと聞いておりますので。当然、ワールドチャンピオンやワールドディザスター不在のナザリックでは無理でしょう」

 

 

 

 

「お姉様……?」

「久しぶりね、ルベド。実はあなたに倒して貰いたい悪しき悪魔達がいるの。その人達は無実の民を苦しめている悪い人達なのよ」

「うん、わかった。誰を助ければ良いの?」

「そうね、あなたには違う世界に行ってもらう事になるけど、中東と呼ばれている地域で『イスラム過激派組織』を根こそぎ地上から消し去って欲しいの。土地ごと消しても構わないわ。後、彼等を支援する国家も地図から消して貰って構わないから、正義を成し遂げて頂戴」

「わかった。正義の為に悪魔を倒してくる」

 

 そう、自分達が『ゲームのキャラクター』に過ぎないのに愛してくれた夫であるモモンガさんの為に、この理不尽なリアル世界を作り変える決意をしたアルベド。

 娘のモモちゃんを一緒に育てて家族の絆でモモンガさんと繋がる事が出来て、今のアルベドは凄く幸せを噛み締めている。

 しかしながら、母親が過労死したと言う壮絶な過去をベッドで打ち明けてくれた時は涙を流し、モモンガさんを優しく抱いて慰めた事もあり、NPCでは無く『家族』として支え合っているのだ。

 

「……私は許さないわ。例え凡人でもモモンガ様はナザリックのシモベ達をずっと愛して期待に応えようと頑張ってくれていたのよ。そんな優しいモモンガ様が何をしたって言うの!?あんまりの仕打ちだわ!全てを破壊して作り直す。首を洗って待っていなさい」

「お姉ちゃんの旦那さん可哀そう。リアル世界は好きじゃない」

「そうね、酷い所よ。だからこそ、私達が導いて誰も悲しまない世界にしないといけないの。出来るわよね?」

「うん、誰も悲しまない世界を作る為に戦うよ。だからお姉ちゃん、安心して。私頑張るから」

 

 アルベドはプレイヤーと同じレベルで全てを知っている。夫である鈴木悟がナザリックを維持する為に奴隷の様な待遇の会社で碌な睡眠時間も取れずに働いて得たなけなしの給料を課金したりして、一人で支えていた全ての真実を。

 故に、アルベドは愛する夫がそんな過酷な環境にいたにも関わらず、貫いた愛の尊さとリアルに対する義憤が爆発しているのだ。

 

「後、悪しきテロリスト達に利用されている子供や女性は殺さずに無力化しなさい。夫が悲しむから」

「うふふ、大丈夫だよ、お姉ちゃん。私は最上位天使だから、そんな残酷な事はしないよ?」

「……良いルベド?向こうは私達から見ても残酷な世界よ?ちゃんと覚悟しなさい」

 

 

 

 

 ダーン、ドドドと響いている中東某国の市街地に白い翼を羽ばたかせて舞い降りた最上位天使ルベド。

 

「……惨過ぎるよ。この子が何をしたって言うの?お姉さまが言う通り、この世界は間違っている。正さなければいけない」

 

 想定を上回る悲惨な光景に、守れなかった子を抱えて静かに涙を流す。

 

「ごめんね……必ずあなたの世界を誰も泣かない場所にするから」

 

 戦車の砲弾の直撃を受けて腕の中で死んでしまった子供に涙を流して謝る。

 

「ねえ、どうして人間同士で殺し合うの?私はあなた達を許さない……」

 

 AK-47やピックアップトラックの荷台に設置された固定銃座を撃ちまくりながら『アッラーバクハル!』と叫んでいる人間を一掃する為に魔法を使用する。

 

「〈魔法最強化(マキシマイズ・マジック)〉〈究極の善なる極撃(アルティメット・ホーリースマイト)〉」

 

 射線上に存在する戦車や建築物や人が光に吹き飛ばされれて消滅する凄まじい威力を発揮しても尚、生き残りが叫び声を上げて撃って来るので俊足の速さで殺して最後の一人の首を掴んで問いかける。

 

「ねえ……なんでこんな事をするの?あなたが信じている正義を説明して貰えないかしら?天使の私にも理解出来る様に。あなたの祖国に天罰を下さないといけないから話して頂戴」

「悪魔め!お前に話す――グギャ」

「理解した。あなたを許すかどうかは神が決める事。でも、神の元に送るかどうかは私が決める」

 

 喉を握りつぶして放り投げるルベド。その白い翼は血で染まって赤くなっている。第十位階魔法を使用して生命が息絶えて更地になった元市街地を眺めながら、アルベドが言う通りトンデモ無い世界だと実感していた。

 そんな中、無実の民を救わなければという強い想いが沸いていた。天使である自分を受け入れてくれた無垢なる子供の為にも。

 

「さあ、御婆さん。もう大丈夫ですよ。あなた達は悪から解放されました。敵は滅びたのであなた方は自由です」

 

 ルベドが老人に手を差し伸べるも、石を投げられる。

 

「悪魔め!こっちに来るな!ほって置いてくれ!何てことをしてくれんたんだ!」

「そうだ!お前の所為で俺達はお終いだ!報復を受けるに決まってる!」

 

 助けた相手に憎まれる想定外の事態に『え……?』となり戸惑うルベド。お姉様のアルベドから聞いた通りの顛末になってはいるが、そんな事は無いと聞き流していたのだ。

 

(もしかして、これがお姉ちゃんが言っていた『世界は残酷』と言う事なの?だとすれば、一度壊してゼロから作り直す必要があるね。意図が分かったよ)

 

「超位階魔法〈天地改変(ザ・クリエイション)〉」

 

 神々しく光る魔法陣が弾けると共に、潜伏する反政府軍や市民を問答無用で都市ごと地殻変動に巻き込んで数分で虐殺する。世界では中東でマグニチュード9.9を記録した史上最大の大災害が起きて大パニックになる。

 

 

 

 

「あら、ルベド。悲しい顔をしてどうしたのかしら?」

「うん、お姉ちゃんが言う通り、人間達は愚かだった」

「そうね、私も彼等は生きるに値しない害虫と変わらないと思うわ。だからこそ、私達が管理してあげる必要があるのよ?彼等が殺し合わない様に。それが愛と言う物よ。ルベド?そうね、ペットを世話するのと同じ感じかしら?」

「……彼等の可能性を信じていた私は間違っていたの?怒りで中東を一掃してから何を信じれば良いか分からなくなった。惨過ぎるよ……正義って何なの?」

 

 ぐすんと泣いている妹のルベドをよしよしと慰めるアルベド。

 

「良い?ルベド?中にはモモンガ様の様な素晴らしい人間がいる事も確かよ。その少数を救う為にあなたは戦わないといけないの。わかる?彼等にも確かに可能性は在るわ。思う事があれば話して」

「うん、実はね、助けた子供が腕の中で鋼鉄の象の攻撃を受けて死んじゃったの……大丈夫だよって約束したのに……」

 

 大方、全て計画通りに事が運んで満足するアルベド。正義感が強く単騎で八欲王の首都を制圧した彼女をコントロール出来ればリアル世界が相手でも負ける事は無いだろう。

 アルベドは絶対にモモンガさんを苦しめて見て見ぬふりをして来た世界を許す気など無いのだ。中東を単騎で壊滅させた性能からもルベドの桁違いの強さはリアル世界でも通用すると判断する。

 今頃、向こうは中東が丸ごと消滅して大パニックだろうとほくそ笑む。特に石油に頼っていた国家は絶望のどん底にいる事だろう。石油が無ければ飛行機や戦闘機を飛ばせないのだ。今あるストックが無くなれば戦闘機や爆撃機はいずれ鉄屑になるだろう。

 

(これで、彼等の燃料補給先は潰したわね。制空権は魔導国が手に入れたも同然)

 

「あなたにはとても辛い現実かも知れないけど、人間達はそんな地獄を直面しながらも希望を失わずに生きているのよ。天使であるあなたが絶望に負けてしまってはダメじゃない。良い?暗闇に負けては駄目よ?あなたはカルマ善の数少ない存在なんだから……でも、私はあなたが堕ちても見捨てないわ。姉妹だから。自由に生きなさい」

「ありがとう、お姉ちゃん。私頑張るよ」

「……でも、あなたは怒りに任せて無実の人間を殺した罪を一生背負わないといけない。きっとモモンガ様が知ったら動揺するでしょうね……私達には覚悟と信念があるから耐えているけど、娘のモモちゃんだってそうよ。あなたには覚悟や信念があるのかしら?」

「それは……よくわからない。ごめんなさい」

「ちゃんと私の目を見なさいルベド?あなたは守れなかったその子供の為に、リアル世界を変える為に最後まで頑張れば良いのよ。娘が蘇らせたラキュース達と行動して人間の良い面を学びなさい。私達を纏めて倒せるあなたからすれば難度90程度の存在は弱いでしょうけど、人間には強さでは測れない部分が存在するのも確かよ。私の夫の様に。それを学ぶといいわ……それと同時にそんな彼等が敵でもある事を忘れないで」

 

 目がウルウルしてぐすんと半泣き状態なルベドはコクリと頷く。そう、物理的な強さはシャルティアでも足元にも及ばない最強な存在なのだが、メンタルが弱かったりするのがルベドでもある。ちなみにナザリックでは珍しい最上位天使の種族レベルを持っている。

 

(良いわね。全ては計画通りに進んでいるわ……ルベドを上手く操れば地球国家全てが相手でも負けないでしょう。それに核兵器を手に入れたモモは流石は私の子ね。ラナーは先を見越して準備を整えているし)

 

「ねえ、お姉ちゃん。私はラキュースさん達と一緒に何をすれば良いの?」

「そうね。彼女達はあなたに似ているから気に入ると思うわ。時に悪夢の様な真実を見て絶望する事もあるでしょうけど、彼女達と支え合いながら勉強しなさい」

「うん、わかった」

 

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