AFTER LORD   作:フリーマスタード

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Dark Angel's Tragedy②

「これは流石にやり過ぎだ……」

 

 テレビのニュースでは、早朝から中東で発生した『地殻変動』でイランやイラク、シリア付近が壊滅状態で、平地だった場所に山脈が出来上がっていたり、沈没して海になっていたりで地形が完全に変わってしまっている。

 

 日本政府も含めて世界では魔導国どころでは無く、災害で運良く生き残った難民がヨーロッパ等に押し寄せたり、数少ない石油の産地が壊滅した事で事態を重く見た石油輸出国でもアメリカがタンカーを全て自国に呼び戻して石油の確保に走ったりで混乱が発生している。

 

 壊滅状態の元市街地だった場所に降り立ち、手の中の『流れ星の指輪(シューティング・スター)』を眺めるモモンガさん。

 

「これを使ったら、後はやまいこさんの指輪のみになるのか……」

 

 しかしながら、死者数億人を出したルベドによる大災厄を放置すれば世界は混乱して第三次世界大戦が起きてしまうかもしれないし、そうなれば当然ギルメン達も戦争に巻き込まれる。それだけは避けなければと『最後の一回分』を使う決意をする。

 

「I wish――我は願う!ルベドがこの地で起こした事を全て無かった事にしろ!」

 

 瓦礫の山となった市街地で生き残った人々は『神の御業』を目撃して、膝から崩れ落ちて唯々、涙を流す事しか出来なかった。

 変わってしまった地形や破壊された市街地は見る見るうちに元通りに修復されて、地殻変動に巻き込まれて命を落としたテロリストや一般市民も全て元通りに蘇る信じ難い光景が目の前に広がっているのだから。

 

 生き返ったテロリスト達も、目の前で起きている奇跡に嗚咽を漏らしながら武器を落とし、この地に降臨した神に平服して許しを請う様に祈りを捧げている。

 政府軍も反政府軍も一般市民も皆一つとなり、モモンガさんの周りに集まってメッカの様な感じで、蘇った人々が感動に打ち震えて涙を流しながら祈りを捧げている異様な光景に『え……?』と戸惑う。

 中東で行われてきた宗派の違いによる紛争は、神の奇跡により幕を閉じたのだ。

 

 

 

 

「た、た、大変です!」

「はぁ……今度はどうしましたか?」

 

 このままだと日本ヤバいかも知れないと、額の冷や汗をハンカチで拭いている磯野総理。任期が終わったら政治家を引退して孫達と平穏に暮らそうと考えていたり。

 この数日の間に急に老けた様な感じがしており、このままでは過労死するかも知れないと感じていた。

 

「中東の死者数億人が全て蘇りました!全て元通りなんです!」

「は?……何を言っているのですか?」

 

 中央情報統括官組織では、突如発生した地殻変動で壊滅した筈の中東諸国が全て元通りに復活して、死者が全員蘇ったと言う、神話か何かの様な信じ難い情報が入って来て大騒ぎになっている。

 磯野総理はそれで首相官邸の前に『神と和解せよ』と書かれたプラカードを持ってる人達が集まっているのかと納得する。

 

「はぁ……それで、アメリカやEUの反応はどうなっています?……想像は出来ますが」

「向こうもかなり混乱している様ですね。ホワイトハウスも大騒ぎになっている様で回線が繋がりません。EUに押し寄せていた難民達も『神が降臨した奇跡の地』に引き返しています」

 

 報告を聞いて、絶対に任期が終わったら政治家を引退すると決心する磯野総理。

 

「更に、復活した中東諸国全てが連合を組んで一つに纏まり、『神への冒涜を止めよ。我々は宗派の違いを越えて神の奇跡の元、一つに結束した。我々は神の戦士として聖戦を行う事も吝かでは無い』と、魔導国を独裁国家認定しているG7加盟国へ声明を出しています」

 

 当然、各国はあの中東諸国がテロリストも含めて、全て一つに結束した前代未聞の事態に度肝を抜かれていた。『神聖中東連合』と言うエジプトとインドに隣接している、面積的にはEUよりも広い新勢力が突然誕生したのだから今までのパワーバランスも変化するだろう。

 

(これは、次期総理に橘さんを推薦した方が良さそうですね。()()からいくら金を積まれても割に合わないですよ……もう、身内同士で勝手にやってください)

 

「あとエリュエンティウが存在する臨海副都心に巡礼者を受け入れるよう、中東連合長老議会から要請が届いていますが……神に選ばれた日本国にも加盟して欲しいとも……」

「もう知りません。全て責任を取るので許可してください……観光収益で潤うでしょうから、財務省も喜ぶでしょう」

 

 今後、日本はスレイン法国・ローブル聖王国・中東連合の巡礼者達が溢れて賑やかになるだろう。当然、オリンピックや万博並の経済効果が予想されるが、政治家達は胃潰瘍で入院したりゲッソリとしていた。

 日本で最も人気が無いブラックな仕事第1位に政治家がランクインする事になるのであった。

 結果的に、富や権力が目当ての人達は揃って『胃がいくつあっても足りない』と辞退していき、スレイン法国みたいにやる気のある人達だけが残る事になる。

 

 

 

 

「あぁ……疲れた。どうしよう……中東がスレイン法国みたいになってしまった……」

「あら、お帰りなさい。アナタ」

「お帰りなさいお父様!」

 

 火消しを行った結果、リアル世界でも『神』として扱われて散々な目に遭い、ようやく帰ってきたモモンガさんを妻と娘の二人のサキュバスが迎える。

 

「ただいま、モモちゃん。ウルベルトさん達の事ありがとう。あとアルベド、話があるんだけど……ルベドの件で」

「え!?お母様……リアルで発生した大災害って……」

 

 これは確実にアルベドがルベドを騙して行ったと見当が付いていた。と言うか、妻は中東を壊滅させるし、娘は北朝鮮を乗っ取るし、『家庭を持つ事が、こんなに大変だったなんて……』と独身時代を懐かしく思うモモンガさん。

 その姿には疲れた中年のサラリーマンの様な哀愁が漂っていたり。精神的な疲労を癒すためにハムスケを撫でながら話す。

 

「ねえ、アルベド?別に復讐なんて望んでいないんだ。皆が幸せに暮らしてくれたら、それ以上の物は何も望んでいないんだよ?」

「でも……私は……彼等が許せないわ。それに……私達を捨てて御隠れになったギルメ――至高の御方達も許せないの……何日も、何年も、必ず帰って来ると信じて待ち続けたのよ……せめて、仕事が忙しいなら『さようなら』ぐらい言ってくれても良いじゃない。そんな彼等が今更現れてモモンガ様やナザリックのシモベ達がバラバラになって行く事が耐えられないのよ……」

 

 翼が『シュン……』となり、涙を浮かべるアルベドを抱き寄せて背中をさする。

 その様子を眺めながら、ハムスケの鼻を突いたり顎をモフったりしているモモちゃん。

 

「姫、くすぐったいでござるよー」

「私達は向こうに行きましょ、ハムちゃん?」

 

 空気を読んでそそくさと退場するモモちゃん。流石に両親が抱き合ってる姿を見るのに抵抗があったりなかったり。

 そんな我が娘を横目で見送りつつ、アルベドが抱えてる心の闇にちゃんと向き合ってやらねばと思うモモンガさん。

 

「……確かに昔はギルメン達が何処かに、もしくは後から転移してくる可能性を信じたり他のプレイヤーを探す事に夢中だったけど、今は家族が一番大事だから大丈夫だよアルベド。ただ……シモベ達がギルメン達と暮らす事を望んだのなら引き留めるつもりは無いから……そこは理解してやって欲しい」

 

 ナザリックの戦力が減る事は痛いし、何よりも千年も共にした仲間が居なくなるのは耐え難い辛さや寂しさがある。

 しかしながら、シモベ達にとっては創造主と一緒にいる事が一番の幸せだと分かっているので、無理に引き留めるつもりは無いのだ。

 嘗てギルメン達が引退した時と同じ様に。

 

 そして、その時は魔導国を全て娘に任せようと考えている。現地住民からの信頼が厚い娘ならば、魔導国を新しく再編出来るだろうと。

 今の時点でも階層守護者からはシャルティアが抜ける可能性が高く、プレアデスでも既にルプスレギナは獣王メコン川さんのアパートに同居していたり(事後報告)、今後ギルメン達と暮らす事を選んだシモベ達の穴埋め、或いは抜本的に組織体制を変えるかは全てモモちゃんの裁量に任せるつもりでいる。

 

(シャルティアに日本の法律をちゃんと勉強させないと、ハハハ……)

 

 アルベドとシャルティアの喧嘩が見れなくなると思うと急に寂しさが込み上げて来るが、この1300年の間にシモベ達を家族であり一人の個人として尊重しなければと強く思うようになったのだ。

 特にアルベドと対等な関係になってからは強くその様に感じている。

 もっとも、最初の内はアルベドが嬉しさの余りに大暴走して大変ではあったが……

 

(本当に、あの頃は大変だったけど楽しかったな)

 

 アルベドやシャルティア達が女子風呂で、るし☆ふぁーさんが作ったゴーレムと戦闘沙汰になって大騒動になった時などのシモベ達との思い出を振り返るモモンガさん。

 ルプスレギナも目を離すとトンデモナイ事を仕出かす破天荒な性格で、『自由研究っす』と言ってジルクニフの髪が薄くなって行く様子を観察して記録していたり、冒険者組合が解体されてからハムスケがアウラに毛皮を剥がれそうになったり、フールーダに根負けして巨大図書館(アッシュールバニパル)を自由に使わせたら2世紀ぐらい引きこもった上に司書J達やヘジンマールと仲良くなっていたり、色々とトラブルもあったが今を思えば全て良い思い出である。

 

 ちなみにリアル世界の物理学や機械工学に最も精通しているのはシズとヘジンマール。特にヘジンマールはフロスト・ドラゴンとしては残念な体形でどちらかと言えばデブゴンではあるのだが、リアル世界の宇宙の図鑑に目を輝かせてからは死獣天朱雀さんが選んだ大学院レベルの専門書や論文を全て読破してしまっており、蒸気機関を再現したのも彼であり、魔導国内で唯一相対性理論や量子力学を理解しているドラゴンでもある。

 特定の分野、とりわけ科学の分野においてはデミウルゴスやラナーをも凌駕している程。

 ヘジンマールはリアル世界のニュートンやアインシュタインを心から尊敬しており、いつか凄い発明をする事が夢であるそうだ。

 魔法こそが真理としているフールーダとはよく口論しているらしい。ちなみにヘジンマールは某光る剣を振り回す『私はお前の父だ』『嘘だぁああ』で有名な銀河帝国な映画の大ファンでもある。リアル世界の人間が持つ卓越した想像力に憧れているのだ。

 

 今は個性豊かな仲間達に囲まれてはいるが最初こそ、しがない営業職の端くれで人生を悲観していた物が、千年に渡り共に暮らして行く中で本当の仲間や家族と思える様になって充実した人生を過ごして来たと思っているのだ。

 実際にアルベドとはリアルに家族になってしまったわけではあるのだが……

 

 兎にも角にも、これからの魔導国に必要なのは”物理的な強さ”では無く”組織としての強さ”である。いずれリアル世界の技術が更に進歩すれば守護者レベルでも勝てない兵器が登場するだろう。

 今の自分に出来るのは『ユグドラシル』の経験が通用する範囲までであり、リアル世界と事を構えた今は娘のモモちゃんやヘジンマールにリグリットやラナー等の適応能力が高いメンバーに主導権を譲る時が来たと思っている。

 

「……そんなわけで、本当は静かに暮らせれば良かったんだけどね。そうも行かないみたいだからモモちゃんに全てを委ねようと思っているんだよ。百年後を見据えた大局を見て欲しいのだアルベドよ……なんて言える立場でも無いけどね」

「ウフフ、懐かしいですわねモモンガ様。でも、サトルとしての優しくて頼りないあなたの方が好きよ……ごめんなさい。あなたが離れてしまうのではと不安で仕方が無くて……あなたがそれで良いのなら私は一切手を引くわ。娘に全てを任せて私達は隠居生活で一日中一緒なのですね!?もちろん覚悟は出来ております」

「いや待て、アルベド。確かにお前の方が頭は良いが、お前が今考えている事は手に取る様に判る」

 

 蛇の様に縦に割れた瞳孔をギロリと鋭く光らせる妻を見て身構えるモモンガさん。

 

「冗談ですよアナタ……少なくとも今はですけどね。抵抗は無意味だ……なんて宇宙を舞台にしたドラマの名台詞があったわね……実はあなたに言わなければいけない事があるのよ」

 

 アルベドは過去に現れたプレイヤーを全てルベドを使用して滅ぼして来た事実をモモンガさんに打ち明ける。さらにリアル世界も滅ぼすつもりであった事も。

 やはり、『ゲーム感覚』或いは『第二の人生を』と野心を抱いている、メンタルと力が釣り合っていないアンバランスな者達にモモンガさんと暮らす幸せな生活をめちゃくちゃに破壊されては堪らないので評議国と密かに組んで水面下で処理して無かった事にしてきたのだ。

 仮に彼等を仲間にした所で、支配者面して意見を図々しく言ってくる事は明白であり、転移直後で混乱している隙にルベドを送って抹消した後にユグドラシル産の消耗品を回収した方が合理的であると判断したのだ。

 

 その真実を打ち明けてくれた妻のアルベドに、しばらく沈黙した後に口を開くモモンガさん。

 

「昔なら怒ったかも知れないけど、実はもしもプレイヤーが現れたら消そうと前々から考えていたんだよ。今は大切な娘もいる。もしも娘が転移直後のゲーム感覚が抜け切っていないプレイヤーの所為で傷つけられたらとずっと考えていたんだ。もちろん言える立場では無いけど、だからと言って娘を危険に晒す気は無いし、娘を守る為なら喜んで手を汚す。せめてそれぐらいは親としても背負わないといけない。そもそも正解なんてないんだ……それに他人よりも家族が大切だし。だから気にしなくても良いよアルベド」

 

 大切な娘もいる中で、折角安定した世界を実現したのにプレイヤーと言う巨大な力を持つ第三者を迎え入れる行為は良くて現状維持、控えめに言ってもかなりの確率でわざわざ安定した体制を崩す事になる。ならば、初めから問答無用で排除した方が論理的選択である。

 

「俺も冒険者を続けて理解したんだ。英雄と言うのは人に言えないような事を一人で背負うから英雄なんだとね。時にやむを得ない事もあるし周りの人達には決してその決断の重さを理解してもらえない。現に英雄と聞けば華々しい物だと思っている人が大半だからね……だから、普段何にも役に立ってないし、せめてアルベドの重荷を俺にも背負わせて欲しい」

「あぁ、モモンガ様……」

 

 

 

 

 一方で時が進んでリアル世界に旅立ちイビルアイと合流したラキュース達とルベド。

 

「ラ、ラキュース!?それに皆……ぐすん、うわぁああ!」

「ごめんなさいイビルアイ。ずっと寂しかったのよね?もう一人にはしないから」

 

 イビルアイはこれが夢であるなら覚めないでくれと願いながらも、ラキュースにしがみ付いて泣きじゃくっていた。

 そして、そんなイビルアイの首根っこを猫の様に掴んでぶらーんと持ち上げ観察するルベド。

 

「お、おい……嘘だろ……まさか……こいつは……」

「どうしたの?続けて。私は蒼の薔薇の人間性を学習しなければいけないの」

 

 流石にツアーとも関わりの深いイビルアイは『神殺し』のルベドを知っており、恐怖のあまりに硬直していた。

 蒼の薔薇で束になるのは愚か、あのナザリックの階層守護者が束になっても勝てない相手が目の前にいるわけであるからして。

 要はスレイン法国秘蔵の秘密兵器が番外席次ならば、ナザリック秘蔵の秘密兵器がルベドなのだ。現地勢でツアーに匹敵する強さを持ちリアルで敵無しの番外席次ですら、模擬戦の1v1では一瞬で敗れている。

 その光景を見て隊長さんは何かを悟ったらしく、更に謙虚な性格に変わったらしい。そういう経緯もあってウルベルトさんと親しいのだが。

 

「おう、悪いなイビルアイ。ルベドは俺達の新しいメンバーなんだ。お前も吸血鬼だしよ、天使が一人ぐらいいても良いじゃねえか。それに随分と世界が様変わりしてるしよ。別に良いんじゃねえか?」

「待て……ガガーラン。こいつは……次元が……違い過ぎる……ヤルダバオトの10倍以上は強いぞ……」

「ん?じゃあ難度3000?」

「蒼の薔薇は敵無し。魔導国にも勝てる」

「ねえ、あれに登りたい。人間って凄い物を作るんだね。あの光ってる丸い奴が綺麗。人間の未来への可能性を感じるよ」

 

 イビルアイがガクブルな中、呑気に『みなとみらい』の横浜ランドマークタワーや大観覧車を指差して登りたいと言うルベド。いつの間にやら観光用のパンフレットを手にしており、8枚の天使の翼をバサバサさせながらマリーンタワーで鳥に餌をあげるのも良いかな?と悩んでいたり。ちなみにルベドは光り輝く物と無垢な動物が大好きである。

 

「ま、まあ、特に今の所目的も無いし、私達も初めてだから異文化を勉強すると言う事でどうかしら?」

「鬼ボスに賛成」

「デートスポットに使えそうな町だから異議なし」

 

 なにやらモモちゃんから大量に変なオジサンもとい、日本国の皇帝か王族と思われる人物が描かれた”紙幣”と呼ばれる紙を一人数百枚単位で渡されているが、唯の紙なので価値が本当にあるのかは今一不安ではある。描かれている絵は精巧で芸術的な価値は少なくともありそうではあるが……

 

 で、とりあえず横浜ランドマークタワーに登る為にクイーンズタワーC棟からクイーンズスクエアに入る蒼の薔薇一同だが、見た事も無い規模の立体的な市場が広がっており唖然とするしか無かった。

 

「うぉー。すっげーな……巨大建造物の中って一つの街みたいになってるのか。俺は王宮に入った事はねえけどよ、ぜってーこっちの方が凄いって確信を持って言えるぜ。おお!階段が動いてるぞ!ちょっと乗ってみようぜ!」

「え、ええ……実際に目にすると凄いわね。しかも、皆貴族では無くて一般市民が自由にここで買い物を楽しんでいるんでしょう?いつか王国もこんな風になるのかしら?硝子で造られた壁が凄く綺麗だわ。それにしても、いろんな服が売ってるのね……ってティアとティナ!?」

 

 ラキュースとガガーランが話してる間に既にファッショナブルな服を買って着替えているティアとティナ。行動が早い。

 

「このオッサンが描かれてる紙を3枚渡したら、2枚の違うオッサンが描かれた紙と知らない金属の硬貨が帰ってきた。たぶん、この紙は王国で言う金貨と同じ様な物だと思う。この違うオッサンが描かれた紙は銅貨みたいな物」

「この国の衣服のデザインは凄く良いし機能的。向こうに帰ったらエンチャントしてもらう」

 

 大体2万8千円相当の露出度高めの(機能的らしい)セクシーな服をセットで購入して着こなしている忍者姉妹。要はモモちゃんから一人数百万円単位で渡されているので、余程馬鹿な豪遊でもしない限り当面は大丈夫な金額である。

 実はナザリックに有り余ってるダイヤモンドやエメラルドなどの価値が無い宝石類を日本で現金化していたりする。

 

「わー!可愛いイルカさんですね!ヨシヨシ」

 

 一方ではお腹を押すと鳴くイルカのぬいぐるみを買ってご満悦なルベド。8枚の天使の翼が凄まじく目立っているのだが、ルベドに気付いた人達は3秒ほど凝視した後に何事も無かったように過ぎ去っていく。

 ラキュース達は知らないが、これが日本である。厳密言えば、ゴスロリやメイド服のコスプレをした人達もいるので同類と思われているのだ。ラキュース達も蒼の薔薇の装備で歩いているわけであるからしてルベドの事を言える立場でも無かったり。

 

「ところでよ、俺はあの動く階段に乗ってみたいんだが……」

「それなら、一人で行ってくれば良いだろう?私達は何処にも行かないぞ?……おお!この兎と言う動物は可愛いのだな!私もこの筆を土産に買って行こうか」

 

 そうイビルアイに言われて『シュン……』とするガガーラン。一方で某国民的人気を誇る兎のキャラクターが付いているボールペンが気になるイビルアイ。

 そんなウサギグッズに『はわぁ』となってるイビルアイを見て内心クスクスと笑っているラキュース。

 

(イビルアイにもこんな側面があったのね。この世界は凄く良いわ……でも、私は恨まれようともこの世界を変えないといけない。例え私に眠る闇を解放してでも)

 

「ほら鬼ボス。展望台に登るチケット購入してきた」

「ありがとうティナ。それじゃあ、また後で戻ってくれば良いから先に行きましょう」

「凄く楽しみ!ね?イルカちゃんもそう思うでしょ?」

 

 空中に浮かんでいて流石に目立っているルベドだが、魔導国の件があるのでそこまで周りの人は驚いてはいない。

 

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