AFTER LORD   作:フリーマスタード

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ファーストコンタクト②

 早速、アルベドの提案や事の詳細を伝える為に急いで国会議事堂に向かっているたっちさんだが、こりゃあ大変なことになったわと。

 今後の日本の在り方が明治維新以上に大きく変化し、世界のパワーバランスも変化するだろう。

 まず、異世界の膨大な食料や資源が日本に入って来るのであれば、変な話が『今までお世話になりました』と他国との関係を捨てようが、経済制裁を受けようが関係ないのである。

 もちろん、たっちさんは元ユグドラシルプレイヤーであるわけであるからして、魔導国が日本に提供する魔法道具(マジック・アイテム)にどんな物があるかは大体見当が付いている。

 これはきっと日本国民の生活を一変させるだろう。魔法と科学が共存する社会になった時、日本がどう変わっていくのか?そして、世界各国は日本と魔導国をどう思うのか?歴史上、全く前例の無い未知の領域に足を踏み入れようとしていた。

 

(そもそも、イージスシステムが交換条件とは……あなたはナザリック地下大墳墓にイージス弾道ミサイル防衛システムを取り入れるつもりなんですか?)

 

 難攻不落だったナザリック地下大墳墓がイージス弾道ミサイル防衛システムでさらに強固になった姿を想像するたっちさん。

 異世界の大魔王を倒すために核ミサイルを発射したら、VLSから迎撃ミサイルが飛んでくるとか何処のチートな魔王の城なんですか?と心の中でツッコミを入れる。

 

 たっちさんの車が国会議事堂に着くと、やはりここでもパニックが起きているのか駐車場に凹んだりバンパーが外れかかっている車がやたらと目立つ。余程慌てて駐車したのだろう。

 この22世紀の国会議事堂は少しパワーアップしており、地下に某人型決戦兵器の本部みたいな感じの内閣総理大臣直轄の中央情報統括指令センターが存在する。主に外務省中央情報統括官組織と防衛省が共同で活動を行っている。

 

 この外務省中央情報統括官組織とは集団的自衛権の一環として拡大解釈され22世紀初頭に外務省に設立された日本版CIAである。21世紀に存在した外務省国際情報統括官組織という国際情勢に関する情報の収集・分析をして政策に反映していく組織が元になっている。ウルベルトさん達の公安第一特務課との違いは、海外で諜報活動や秘密工作活動を行い危機を未然に防ぐことである。

 要はスレイン法国の六色聖典みたいな物だ。

 当然、内閣や世間で擦った揉んだと大荒れしたのは言うまでもないが、それはまた別のお話。

 

 つまり、この国会議事堂の地下にある『中央情報統括指令センター』とは、言ってしまえば防衛省と外務省中央情報統括官組織が内閣総理大臣の元で共同で防衛や諜報活動を総合的に行う日本版ペンタゴンみたいな場所である。

 21世紀の複雑化していく国際情勢の中でアメリカ合衆国に頼る事が出来なくなり、日本にもアメリカ合衆国にあるような組織の必要性が生じて誕生したのだ。

 

 で、当然ここはここでロシアと中国とイスラエルが国連から脱退したもんだから『遂に第三次世界大戦が始まるのでは?』と防衛大臣や中央情報統括官が顔面蒼白になって各国の動向について情報を集めているのである。

 

 たっちさんが中央情報統括指令センターに降りて来ると部下でもある外務省中央情報統括官組織のトップである佐藤中央情報統括官が慌てた様子で話しかけて来る。

 

「橘外務大臣!って……あの、部外者の方をここに入れるの、不味いと思うのですが……」

「はい?」

「あなたの後ろにいるメイド服や魔女みたいなコスプレをした人達です」

 

 え?……まさか、と思い後ろを振り返ると目を輝かせてキョロキョロと中央情報統括指令センターを見回しているルプスレギナと慌てている占星千里。

 

「うひゃー。超凄いっす!流石は至高の御方々の住まわれている国っすねー!」

「ちょっと!ルプスレギナさん!不味いです!周りの人に見えてますよ!」

「ありゃりゃ。うっかり不可視化の魔法解いちゃったっす」

 

 一体、出入りするのに指紋認証や虹彩認証が必要な日本一セキュリティが厳重なこの場所から、どうやって帰るつもりなのだろうか?

 なんか付いて来ちゃったルプスレギナの大胆不敵で少し天然な所に獣王メコン川さんを思い出すたっちさん。

 どうやらNPCは製作者に似た性格になるらしいと一人ごちる。

 

 ……後でウルベルトさん達公安に頼んで飼い主(メコン川さん)を国会に呼ぼうと心に決める。

 

 磯野総理大臣にどうやって魔導国の事を説明しようか悩んでいたので、この際、総理や官房長官の目の前で魔法を実演してもらう事にする。

 

「佐藤さん、御存じかと思いますが、この人達が件のアインズ・ウール・ゴウン魔導国から来た方々なんですよ。あそこのメイド服を着ている女性は人間じゃなくて人狼です」

「え!?……あ、そうなんですか……人狼……」

 

 百聞は一見に如かず。ルプスレギナの帽子を取って髪と同じ色のケモ耳を佐藤中央情報統括官に見せるたっちさん。

 ルプスレギナは頭の上に『?』と浮かべている。

 

「おぉ……本物のケモ耳娘を生きているうちに拝めるとは……もしかして東京湾に現れたアレって魔法で浮いてるんですか?」

「はい。私達の世界で1800年前に『八欲王』と呼ばれた邪神が建てた結界に護られた都市で、魔導国と法国と評議国が合同で陥落させてからは宗主国である魔導国の管理下に置かれています」

 

 と、漆黒聖典第十一席次の占星千里。

 

「……と、言う事は、ウチの国の護衛艦もアレと同じように浮遊させたり、魔法の結界とか張れるんですね?これは直ぐに防衛大臣に知らせなくては……フフフ」

「え、ええ……魔導国でも木造船をルーン魔法で浮遊させたりしているので、できるとは思いますが……ルーン魔法の力で日本国の重そうな鉄の船が浮くかどうかまでは解らないですよ?」

 

 不敵な笑みを浮かべてメガネが光っている佐藤中央情報統括官に引いている占星千里。

 この人、防衛省と共同で某宇宙戦艦でも勝手に開発する気じゃないよな?と思うたっちさん。そんなものを造ったら世界各国が黙っているわけが無いし、流石に野党やリベラル派議員が揃って反対して予算が降りないだろう。

 

「佐藤さん、流石にそんな超兵器を造るのは色々と不味いと思いますよ……絶対世界各国からブーイングが出ます。特にお隣の国とかが絶対にまた難癖をつけて嫌がらせをして来るので止めてください」

「え!?……駄目なんですか?……ウチが情報操作して勝手に造っちゃえばバレませんよ。きっと国民も空飛ぶ戦艦を待ち望んでいる筈です。名前は大和にしましょう。ね?」

「はぁ……佐藤さん、趣味に国家予算を注ぎ込んだり職権乱用するの止めてください。わざわざ世界を敵に回してまで空飛ぶ護衛艦を造るのよりも、戦闘機を運用した方が現実的です。却下です却下」

 

 大きく落胆している佐藤さん。造る気満々だったらしい。この人に好きにさせるとゴーレムを利用して某白い悪魔なロボットとか造りそうである。下手に魔法を組み合わせると日本の珍兵器大百科が出来上がりそうで恐ろしい。

 

「……ところで、橘外務大臣。ウチの諜報員からの情報が入ってきたのですが、ロシアと中国とイスラエル、EGHのラナー会長が何かを話した影響で国連を脱退した様です。何を話したのかまでは解りませんが、少なくてもG7参加国が異世界の土地を占領するのを間接的に妨害するのが目的の様です」

「なるほど、『敵の敵は味方』ですか。確かにロシアと中国が何をするか解らない以上、アメリカは魔導国に構ってる暇が無くなりそうですね……おかげで助かりました」

「ええ、是非ウチに欲しいぐらいです。彼女にだったら喜んで自分のポストを譲りますよ、ハハハ。ま、安月給ですけど」

「……こちらの話ですが、これで魔導国との外交に集中できそうで良かったです。引き続き各国の動向に目を光らせておいてください。日本と魔導国が国交を持った場合に彼等がどう動くか未知数なので」

「任せて下さい。ウチはそれが仕事ですから」

 

 さて、そろそろルプスレギナの飼い主(メコン川さん)をウルベルトさんに連れて来て貰いますか、と歩きながら()()()()()を掛ける。

 

『もしもし、たっちさん?どうしたの?映像付きで電話なんかして』

「あー、ウルベルトさん。申し訳ないんですけど、獣王メコン川さんの所在地を公安の方で調べて国会議事堂に連れて来て貰えます?」

『うぇ!?別に良いけど、あの人今度は何やったの!?』

「今、目の前にルプスレギナがいるんですけど、手綱を握ってて貰おうと思いまして」

『あー、はいはい、了解しました……え?』

「え!獣王メコン川様に会えるんすか!?超楽しみっすー!」

「……というわけで、彼女は凄く楽しみにして待っているので、よろしくお願いします」

『……』

 

 自分の苦しみを友にも分かち合ってもらおうと、敢えて何も説明しないたっちさん鬼である。

 ルプスレギナは『パァ』とキラキラ輝いていて、ふんふんと鼻歌を歌っていたり凄く御機嫌だ。

 

 この時、精神的に疲れていてルプスレギナが駄目犬になった原因である獣王メコン川さんを呼んだら、どんな騒動が発生するかまで頭が回っていなかった。駄目犬x2になった時の破壊力はモモンガさんでさえ経験が無い未知の領域だ。

 ちなみに獣王メコン川さんはうっかり『ほうれんそう』を忘れて上司に怒られたり、怒られても3分後には忘れる強靭なメンタルの持ち主である。まさにこの親してルプスレギナ在り。

 

 他にもペロロンチーノさんとシャルティアで変態×2になってしまったり、出会うと大変な事が発生しそうな組み合わせが多数あり、今後の行く末が心配である。

 

「さて、じゃあ、ルプスレギナと、えーと、あなたは……」

「遅れました。私は魔導国漆黒聖典第十一席次の占星千里と申します」

「占ちゃんは予知能力のタレントを持ってて凄く便利っす」

「とは言いましても、意図的に予知できるわけではなく、見える物も断片的なのでアルベド様やデミウルゴス様の考察力が無いと、余り使い勝手の良い物ではありませんが」

「察するに、タレントは個人の特技、特殊能力みたいな物と解釈すれば良いのですね?」

「はい、その様な御理解で差し支えありません」

 

 占星千里が予知したビジョンをアルベドやデミウルゴスが推理・考察して、そこから対応策を練っていくとは驚異的な組み合わせである。

 確かに話した感じアルベドには深い叡智が感じられ、『頭が良い』と設定されているNPCにはそれが反映されているのだろうと理解する。

 これでもたっちさんは警察をしていたから観察眼は職業柄鋭いのだ。さらに外務大臣と言う仕事上、各国の重鎮との腹の探り合いは日常茶飯事だ。

 

 そこでたっちさんは、頭の中でパズルのピースが揃ってある仮説に辿り着く。

 そもそも、魔導国が侵略された事がこちらに来た真の理由なのか?そもそも何故イージスシステムを欲する上に日本と手を組もうとするのか?

 そして、予知能力を持った占星千里という存在……

 

(……ナザリック地下大墳墓が未来に核攻撃を受けて壊滅する?)

 

 確かにナザリックのLv100NPC達はこちらの世界ではそれこそ、『個』としては最強の存在だろう。

 しかしながら、国と国の全面戦争になった場合は、正直どちらが優勢かは不明瞭だ。

 

 そして、物凄くタイミングよく、()()()()()()()()()()()()()()()()フォローを入れてロシアと中国とイスラエルを国連側にぶつけてヘイト稼ぎをしてきたEGHのラナー会長って、もしかして魔導国側の人間では?と。

 もしも、そうだった場合、魔導国側が日本に現れただけで国連が魔導国を侵略しようとしている事を見抜く底の知れない智謀は恐ろしい物がある。

 

 言われてみれば10年前、突然現れて経済界で無双し、次々と傘下企業を増やしていき、言い方は悪いが、あまり旨味の無いヘロヘロさんが勤めている会社を吸収してホワイト企業に変えた事も全て繋がる。

 そして、ラナー会長が進めている自然環境再生事業……

 

(なるほど、モモンガさん。あなたでしたか。フフフ、あなたは相変わらず律儀な人ですね)

 

 ルプスレギナの方を見ると、製作者の獣王メコン川さんに会える事を心の底から凄く嬉しそうにしており、まるで無邪気な子供が親に会えるのを楽しみに待っている様だ。今や、NPC達は魂を持ち、生きている存在なんだな、と思う。

 彼等にとっては、親でもある製作者と一緒に居られることが一番の幸せなのだろう。

 

「今度、セバスを我が家に呼んで妻と娘を紹介するのも良いかもしれないですね」

「おー!たっち・みー様、きっとセバス様も喜ぶっす!」

 

 そして、モモンガさんが千年も守ってくれた子供達を―――この2つの世界を守る為に一緒になって戦おうと固く決意する。

 いずれにしても、今はまず、魔導国との国交を結び様々な種族と共存する世界に日本を馴染ませなければならない。

 内閣総理大臣と内閣官房長官に全ての事の詳細を説明して、何者かが魔導国で暮らす一般人を大量虐殺し、国連を使って魔導国を本格的に軍事力により侵略しようとしている事を伝えなければ、と。

 

「それでは、ルプスレギナと占星千里さん。申し訳ないんですけど磯野内閣総理大臣と春日内閣官房長官に会ってもらえますか?魔導国がどの様な国で、今どういった事態に直面しているのかをあなた方から直接説明して頂きたいのです」

「スレイン法国にとって聖地である日本国の指導者にお会いできるなんて!とても光栄です!」

「占ちゃん良かったっすねー!」

「うん!こっそり付いて来て良かった!」

 

 宗教国家であるスレイン法国では魔導王や六大神の故郷である『日本国』は聖地として認定されており、占星千里も含めて多くの人々に取って憧れの地なのだ。

 

 磯野総理大臣や春日官房長官達がいる緊急対策本部に入ると、目を丸くして『おぉ……』とルプスレギナの方を見て来る。今は帽子を被っていて耳は隠れているのに、何故にこんなに驚くのだろうかと思うたっちさん。

 そして『まさか……もしかして……』と嫌な予感が脳裏を過る。

 

「いやぁ……橘さんにどうやって『アインズ・ウール・ゴウン魔導国』の事を伝えればいいのか悩んでいたのですがね。特にあなたが一番驚くでしょうから。まさか、生きている()()()()()を見る事が出来るとは……」

「あの……磯野総理。何故ご存知なのですか……」

「橘君。磯野総理はね、これでも『ネコさま大王国』のギルドメンバーだったんだよ」

「……」

 

 如何にも総理大臣って感じの貫禄が漂っている磯野総理(56)がユグドラシルにログインしてネコを愛でている姿がイメージ出来ず困惑するたっちさん。プレアデスを知っているとは、かなりやり込んだプレイヤーだったのだろうと戦慄する。

 

(……これなら、エントマとかコキュートスを日本に連れて来ても問題なさそうですね。ハハハ……)

 

「私も最後まで残っていれば、橘さんの所のギルド長さんみたいにNPC達(ネコ達)と暮らせたのですかね?実は私ね、猫が凄く好きなんですよ」

「知ってます。というか総理大臣が日本を放り出して異世界に行くのは不味いです。行政が混乱します」

「ハハハ!まあまあ、橘君。磯野総理だって別に10年前は唯の一介の政治家に過ぎなかったんだから別に良いじゃねえか。ワシもよお、孫がユグドラシルやってたから知ってるよ」

「……」

「とりあえず、魔導国との国交が樹立したら両国間でそのまま定住希望者が出たり色々あるでしょうから、法務省の方に帰化申請手続き等を色々出来る様に伝えておいてもらえますか?」

「いいよいいよ、法務大臣に伝えておきますわ」

「後は魔導国大使を選ばないといけないですが、できれば元ユグドラシルプレイヤーの方が良いですよね?」

「アインズ・ウール・ゴウンの元メンバーだと話が円滑に進むよねぇ?」

「……でしたら、丁度ここにいるルプスレギナの製作者を国会議事堂に連れてくるように公安に頼んだので、彼はどうでしょう……」

「お!橘くーん。仕事が早いねぇ。じゃあそれで決まりと」

 

 たっちさん、面倒な仕事を獣王メコン川さんに押し付ける。彼は一般人から日本政府を代表する魔導国大使に大出世する事が約束(強制)された。

 話が勝手に国交を結ぶ方向で進んでいるようなので、とりあえずアルベドの提案の要点と、魔導国を侵略しようとする謎の勢力について伝える事にする。

 

「……ゴホンッ、で、先ほどアルベド特命全権大使と対談してきたのですが、まず、国交が樹立した際に我々の工業製品やノウハウと引き換えに、食料・資源を提供する事、並びに日本の移民を彼らの土地に受け入れるとの事です。また希望する場合は日本の自然環境を数年で蘇らせる事も可能だそうです。で、一つ問題があるのですが、占星千里さん宜しいですか?」

 

 今まで緊張してそわそわしていた占星千里さんは『キリッ』と急にお仕事モードの顔つきになる。流石は漆黒聖典だ。

 

「はい。この度はお会いできてとても光栄です。私はスレイン法国出身の魔導国漆黒聖典第十一席次”占星千里”と申します。魔導国は人間種を含み様々な種族が共存共栄している平和な理想郷とも呼べる国なのですが、私達の世界にこの世界の軍隊が攻めて来て『農耕都市カルネ』は壊滅し、数千の犠牲者が出ました。そして―――」

 

 淡々と説明を続ける占星千里の話を静かに聞く磯野総理と春日官房長官。

 まさに今、日本の新たな歴史が始まっているのである。

 




ルプスレギナ製作者の獣王メコン川さんは某オバロのスマホゲームより。
また、ルプスレギナの耳につきましては『シュレディンガーの耳』という事ですので、当二次小説におきましては、便宜上『ある』という解釈で進めております。

pp2061様、誤字報告有り難うございます。
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