透中仮想 - トウチュウカソウ -   作:しばじゃが

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戦闘シーン書きたかった(`・ω・´)
めっちゃ読みにくいです、はい。
すみません(´・ω・`)

あとこれ、スティミュレーターの変形イラストです。イメージのご参考になればっ!

【挿絵表示】



Stimulator(2)

「……ここらか」

「もう少し西に進んでも良いと思います、部隊長」

「いや、もうじき日が暮れる。今日はここで待機だ」

「はっ!」

 

 アンセクタが人類に牙を剥いて、早くも一年が経とうとしていた。

 国という籠がなくなった今、人々は各地で共同体をつくり、手を取り合って暮らしていた。地上に蔓延(はびこ)るアンセクタの影に怯えながら、必死に逃亡生活を続けていた。

 

 畑は燃やされ、家畜は野に放たれ。地表は恐ろしい炎で焼き尽くされ、猛毒を撒き散らされた。故に、人々は地下へと潜ることを強いられた。日の当たらないところへ逃げるしかなかったのだ。

 はっきり言えば、人類は窮地に立たされているのである。

 

「……ただ、襲撃を受けないという保証もない。各員、警戒は怠らないように」

 

 老朽化した高速道路で、戦車部隊を引き連れる男はそう溢す。

 それに数人の男たちは頷き、各々の戦車へと身を隠した。

 

 高速道路。

 それはまさに、高速道路だ。

 

 荒れ果てた大地に聳え立つ、階層状の巨大な都市。階層都市と呼ばれるそれを繋ぐ大規模な高速道路の上で、彼らの戦車隊は夜営を張ろうとしていた。

 

 

 

 ――――近年、黒いアンセクタの目撃例が上がっている。

 量産機ではない。橙色の光を灯す、より重厚なアンセクタ。それがここより西に進んだ部隊から報告されているのだ。そしてみな、今では行方不明となっている。

 故に彼らの任務は、消息を絶った部隊の捜索、並びに件のアンセクタを撃破すること。そのために、この地を訪れていた。

 

「……本当にいるんでしょうか。そんなアンセクタは」

「どうだろうな。だが、脅威となる敵がいることには変わりない。今のところ、それは単身だと聞くが」

「自分、それが不可解なんですよ。いくらアンセクタといえど、単身で戦車の一個小隊を撃破するのは不可能だと思うんです」

 

 部隊長に抗議するように、兵士が一人声を荒げた。

 

「我々の戦車は、非常に高性能です。並のアンセクタには負けません。単身のアンセクタなんて、格好の的だと思います」

「俺もそう思いたい。だが、現にいくつかの部隊が消えてるんだ。不気味だぜ」

 

 ぶるりと、彼は身を震わせた。

 

 彼らの部隊は、これまでにもある程度の戦果を残している。つまり、多数のアンセクタを撃墜している。

 隊員の言葉は、妄言などではない。それだけの実績に裏打ちされたものなのだ。

 しかし、それだけの自負があっても、やはり今回の件は不穏でならないようだった。

 

「……ここよりさらにさらに西に行ったところに、俺の実家があってな。その近くには、研究所があったんだ。新型のアンセクタを開発する研究所がな」

「……それは……」

「でもまぁ、未完成のまま戦争が始まって、そのまま炎に呑まれたらしいんだが。だから、ないとは思うんだが、もしかすると……な」

「隊長……その機体、どのような……?」

「あぁ。確か、名前は――――」

 

 彼がそう言いかけた時だった。

 橙色の斜陽の下で、別の男の声が響く。

 

「誰だっ!」

 

 突然のことだった。

 突然の、されど警戒の色を強く含んだ声。

 誰もが、反射的に銃を手に取る。訓練された兵士たちは、即座に臨戦態勢へと切り替わった。

 同時に当てられる、スポットライト。高速道路の奥に立つ人影が、黒く影を伸ばした。

 

「……人間?」

 

 そこに立っていたのは、一人の青年だった。

 薄い茶色の髪で耳を覆う、青い瞳の青年。整った顔立ちに、大柄な体を外套で覆ったその姿。

 それはどう見ても、人間だった。人間のように見えた。

 

「まさか、生存者か」

「良かった! ここらでも生き残りがいたのか!」

「我々は救助隊だ! 君を保護するよ! 早くこちらに!」

 

 敵襲か、なんて。

 彼らの心を蝕むそれを払いのける、ふっと湧いた希望だった。

 他の部隊が次々と消える未知の領域から、生き残りの同胞が現れた。それはきっと、筆舌し難い喜びだったのだろう。みながそれを共有し、歓喜の声が溢れ始めた。

 ただ一人、冷や汗を流す彼を除いては。

 

「……熱探知カメラを取ってくれ」

 

 部隊長は、ただ一言そう告げる。

 

「やだなぁ隊長。彼は人間じゃないですか。そんなの――――」

「いいから早く取れ!!」

 

 ドスの効いたその声に、一瞬にしてみな静まり返った。

 そうまで言われては、と渋々手渡されたカメラ。そのレンズの中央に、あの青年が映る。

 

 色によって表される体温が――――人間のそれを、悠に越えていた。

 

「……原子炉か、あいつ」

「え?」

「総員、構えろ」

「……!!」

 

 その一言で、彼らは再び臨戦態勢をとる。

 同時に、青年が歩き出した。ゆったりと、しかしまっすぐに。部隊に向けて、一歩一歩踏み出してくる。踏まれた金属製のパイプが、重みに耐えられずに割れた。

 

「……人型……」

「嘘だろ、あいつ……どんな重さだよ」

「隊長、あれって……」

「あぁ、きっとあいつだ」

 

 表情一つ変えずに、戦車へと歩み寄ってくるその姿。

 明らかに、人間ではない。

 

「撃てぇッ!!」

 

 戦車の前で列を組んだ兵士たち。自動小銃を握る彼らに向けて、部隊長は力強い声を上げる。

 同時に、轟音が鳴り響いた。火薬が炸裂する激しい音が、この夕闇のハイウェイに木霊する。

 

「……撃ち方、やめッ!」

 

 十数秒経って、彼がそう言った頃には。

 既に青年は舞い上がった埃に包まれて、視認が困難になっていた。

 銃弾は当たったのか。

 そもそも、これで仕留められるものなのか。

 兵士たちは不穏に思う。戦車を繰る兵士は、手に汗を滲ませながら照準を埃に当て続けた。

 

 次第に、埃が薄れ始めて。

 すると、ぼんやりとした橙色の光が顔を出す。

 まるであの夕焼けのように、鮮やかな橙色だった。

 

「……な」

 

 剣が、伸びている。

 青年の腕から、橙色に光る剣が伸びている。

 

「……やっぱり、アイツは……ッ!」

 

 右手から伸びる剣。その根元は――いや、彼の右腕は、黒い装甲で覆われた機械と化していた。

 

 兵士たちに戦慄が走る。

 腕が剣になっている?

 剣で、あの掃射をしのいだのか?

 やはりあれは、人間じゃないのか?

 そんな疑問が渦巻いて、照準がぶれる頃だった。

 

 彼が、走り出した。

 

「……ッ! 迎撃ッ!」

 

 はっと、部隊長が指示を出す。それに続いて、鼓膜を破りかねない音が響いた。

 いよいよ、戦車が火を吹いたのだ。量産機を一撃で粉砕する砲塔をもって、あの青年を迎え撃った。

 

「……速い……っ!」

 

 しかし、躱される。

 軽く身をよじって、彼は砲弾をすり抜けた。そのまま滑り込むように戦車との距離を詰め、跳躍。砲身が定められる前に、彼は跳び上がり――――空中からその刃を突き立てた。

 最前列中央の戦車に、橙色の光が溶け込んで。

 即座に、それは炸裂した。

 

「ぐっ……!」

 

 中にいた兵士ごと呑み込んだその炎は、巨大な戦車を一瞬で吹き飛ばす。装甲が剥がれ、周囲に撒き散らされる。

 焼け焦げた肉が、ハイウェイに転がった。

 

「……撃てッッッ!!」

 

 一瞬怯んだ隊長が、しかし歯ぎしりしながら吠えた。

 同時に、轟音が響く。一両の戦車を、周囲に並ぶ戦車が撃ち抜いた。その背中に立つ青年を、討つために。

 燃え盛る戦車に、さらに火を足したその衝撃。

 囲うように並んだ歩兵を大きく跳ね飛ばすほどの衝撃。

 

 空気が震えた。

 それもそうだ。鋼鉄の人形を一撃で粉砕する砲弾が、十発近く、同時に叩き込まれたのだから。

 

 まるで火山が噴火したかのように、恐ろしい火柱がそそり立つ。戦車が融解するほどの熱に、兵士たちは顔を(しか)めた。

 部隊長が汗を流すのは――――その熱のせいだけではなかった。

 

「……っ」

 

 ゆらり、と炎の中で黒い影が動く。

 まるで陽炎のように、ぼんやりとした影だった。

 されど、太陽の黒点のように、異質な存在感を放つ影だった。

 

「……伏せろッ!」

 

 そう、隊長が吠えるのが早いか。

 橙色の熱線が、火柱の中から解き放たれる。

 

「ぐあああっっ!?」

「ぎゃあッ!!」

 

 その熱線は、灼熱でできた極太の丸太のようだった。太い光が、一台の戦車を射抜き、そのまま横へと薙ぎ払われる。

 戦車はそのまま炸裂。焦げた肉の臭いを撒き散らす。

 同時に薙いだ光の筋に、数人の兵士が呑み込まれた。伏せ遅れた彼らの断末魔が、一瞬で蒸発する。

 

「くっ……!」

「ひっ……」

「じょ、冗談じゃねぇぜ……ッ!」

 

 同胞の変わり果てた姿を前に、怯む兵士に背を見せる兵士。

 朽ち果てたハイウェイは、凄惨な地獄と化した。

 

「……コイツは……ッ!」

 

 隙を見せた兵士を射抜く、橙色の光弾。

 燃え盛る炎の奥から伸びる、独特の意匠をした銃口。

 そこには、一体のアンセクタが立っていた。

 黒い装甲に橙色のラインを灯す、重厚な機体が立っていた。

 

 流線形を描く頭部の装甲には、まるでヘッドフォンのような装飾が(かたど)られていて。

 顔部を覆う装甲は白く、目を覆う液晶は妖しい橙色を淡く照らしていて。

 全身の鎧は黒く重く、そこから伸びる腕は武器の姿をしていた。

 右手に剣を、左手に銃を。

 

「……怯むなッ! 撃てッッ!!」

 

 青年の姿は、もはや見る影もない。

 今まで見たこともないアンセクタの姿に兵士たちは戦慄するものの――――部隊長だけが、声を張り上げた。

 

「こいつは我々の怨敵だ! 西区域を破壊した悪魔だッ! 誰がこいつを仕留めるッ、誰がこいつを破壊するかッ!」

 

 その声に、歯を鳴らす兵士が銃を構え直した。

 未だに膝を震わせる兵たちが、必死の形相で隊列を組み直した。

 

「そうだ! 我々だ! 我々しかいない! オーダー、目の前のアンセクタを破壊せよ!!」

「うっ……うおおおオオォォォォォッッッ!!」

 

 兵が、吠える。

 人間たちが、全身全霊をもって叫ぶ。

 

「……排除、する」

 

 黒いアンセクタが、そう小さく呟いて。

 直後、強く踏み切った。燃え盛る戦車の装甲を、凹むほど強く踏み抜いた。

 悲鳴も出ぬまま、胴体が分離する兵士。

 振り抜いた剣で、鮮血を振り払う黒き機体。

 

 その実力差は、圧倒的だ。

 性能の差は、もはや歴然だった。

 ――――だが。

 

「人間の意地を、見せてやれ……ッ!」

 

 自動小銃が、火を吹き続ける。

 装甲を粗削りするように、けたたましい音が鳴り響いた。

 

 その兵士らに向けて、黒いアンセクタは火を放つ。左手の銃口から、淡い光が瞬いた。

 がらんと銃がこぼれ落ち、火だるまがアスファルトを焼き始めたら。その脇を抜けるように二人の兵士が飛び出した。手に対アンセクタ用のナイフを持って、黒い鎧へと斬りかかる。

 かつて量産型機体を接近戦で破壊した。それが彼らの誇りだった。その誇りを刃に乗せ、その黒い装甲へ肉迫する――――。

 

「がっ……!」

 

 喉仏を、光の刃で穿たれる。

 鮮血が舞い、ナイフがからからと音を立てて地を滑った。

 

 その瞬間に。

 血潮が舞って機体の視界を奪った、その瞬間に。

 

「おら……ッ! 動くな糞野郎……ッ!」

 

 もう一人が、背後に回る。背後に回って、そのアンセクタを羽交い絞めにした。

 

「隊長、今です! 俺ごとこいつを……ッ!」

「よくやってくれた!! ……すまない……ッ!」

 

 彼が吠え、それに呼応するように部隊長が声を振り絞る。

 そんな彼が握るは、特殊な形状をした銃火器だった。

 青い電光を放つ、新兵器。電流を押し留めて放出する、ショッカーと呼ばれる銃。

 それが、轟く。轟音を上げて、青いスパークを撃ち放った。

 

「…………ッッ!!」

「ぐああぁぁッッ!!」

 

 兵士もろとも、アンセクタを包み込む。

 激しいスパークに宵闇が照らされ、大量の火花が舞った。

 

「今だッ! 砲撃用意!!」

 

 ショッカーの特性は、アンセクタの回路にショートを起こすこと。

 強烈な電撃を注入することで彼らのシステムに支障を起こし、行動不能に陥らせることを目的とした武器であった。

 部下の犠牲の下それを受けたかのアンセクタは、今や無防備な状態だった。全身から青い光を迸らせ、まるで麻痺したかのように体を震わせている。

 

「撃てッッッ!!」

 

 部隊長が、吠えた。

 渾身の叫びをもって、黒い機体に引導を渡す。

 数両の戦車が咆哮する。

 極太の砲弾が、撃ち放たれる――――――――。

 

「――――はぁ……しんどいな」

 

 そんな声が、轟音の中で響いた。

 

 撃ち抜かれて、粉砕する――――そう見えたはずのアンセクタの姿が、ぶれる。

 確かに撃ち抜かれ、全身を粉々に砕かれた。この場にいた全ての兵士が、その光景を捉えていた。

 けれど、そこにあるのは異質な機械音。黒い機体が、その姿を完全に変貌させた。

 人型を保っていたそれが、人型ではないなにか(・・・)になる。ズタズタになった両腕を重ね、前方へと突き出して。砕かれた装甲はむしろ長く鋭く伸びて、奇妙な線を描き出す。

 宙に浮かび上がる巨体。

 長く伸びた二重の砲身。

 先程の面影を残さない、無機質なボディ。

 

「……銃?」

 

 その姿は、まるで銃だった。

 上下二連型の散弾銃を思わせる、銃のような出で立ちだった。

 

「……バカな……そんな、全身変形――――」

 

 部隊長が、そんな言葉を溢した頃に。

 目も眩むほどの光が瞬いた。あの光弾が散弾銃の如く放射される。

 日が完全に没したハイウェイで咲き乱れる、鮮血の花。月明かりが照らすそれは、それはそれは華やかだった。

 

 

 

 

 

「……かはっ……」

 

 ハイウェイを彩る赤い花の一つが、小さな吐息を漏らした。

 その腹に大きく開いた風穴。噴水のように溢れ出る血潮。誰がどう見ても手遅れだと、部隊長は自らのことを他人のように感じていた。

 

「……貴様……貴様は……」

 

 そんな彼が、手を伸ばす。

 銃の姿を解いて、ゆらりと立つ一体のアンセクタ。そんな異質な影に向けて、震える手を伸ばした。

 

「スティ……ミュレーター……」

 

 掠れそうな声で、怨嗟を絞り出すようにそう言うものの――――その手は届かず、地に墜ちた。

 その瞳に、虚ろな影が映る。何も映さなくなった瞳に、そのアンセクタ――――スティミュレーターは手を当てた。

 

「……ごめんな」

 

 彼は、そう小さく呟いて。

 部隊長の瞳を閉ざす傍らで、頭を覆っていた装甲を解き放つ。

 外気に晒された青年は、ただ虚しそうに息を吐いた。人を模されたその仕草。人と何ら変わらぬほどに、虚無を乗せた溜息だった。

 

『敵部隊、殲滅致シマシタ。次ノ標的ヲ捜索シテクダサイ』

 

 無機質な声が、彼の頭に響く。

 アンセクタに備えられた、『母体(マザー)』からの命令音声。その無機質な音に彼は眉を歪ませつつ、ハイウェイの先へと踏み出した。

 

 

 

 部隊の傍受装置から、彼の存在が人類へと伝わった。

 人類の敵アンセクタの、とりわけ危険な機体。スティミュレーターの存在を、人類が認知した瞬間だった。

 




ここまではスティミュレーターの誕生のお話。
その変形機構と全身装備の描写がしたかった。自己満足で申し訳ない。いや文章で表現するの難しすぎでしょ。一割も表現できてる気がしない。
このあとはたぶんもっと変形します。良かったらお付き合いくださいませm(_ _)m

ショットガンは、上下二連型のダブルバレルがすき。
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