没設定の復帰って、なんかこう……いいよね。
物語には特に影響はないので、あんま気にしないでくださいね!
来る日も、来る日も、とにかく目に付いた人間を殺した。
『周辺ヲ捜索シテクダサイ。人類ヲ発見シタ際ニハ、速ヤカニ消去ナサイ』
そんな、無機質な音声が頭に響く。
耳にするのは、環境音と戦闘音。そして人間の断末魔と、
何だか、俺は何のために、何故このようなことをしているのか分からなくなる。
俺はアンセクタで。
完全に機械で構成されたアンドロイドで。
そんな俺たちを統括する最高位AIである
俺たちはその手足。人類を滅ぼすための道具。
何故こんなことをしているのか。
こんな孤独なままに、俺はどうして人類を手にかけているのか。
「……何が何だか分かんないや」
ふっと、そんな声を漏れた。
俺だって、ただのAIのはずなのに。なのに、何でこんな風に思うんだろう。
現人類は、我々にとって不必要。
故に、我々アンセクタは彼らを滅ぼす。
ただそれだけ。俺はそれを遂行する。
ただ、それだけだ。
――――けれど。
誰かの声が聞きたい、なんて。俺は何故か、そんな風に考えてしまう。
怒号や叫び、断末魔じゃない。温かな声で、話し掛けてもらいたいと。何だかそんな風に感じてしまうんだ。
『高速接近物体ヲ検知シマシタ』
「……っ!」
不意に、空から甲高い音が響くの感知する。
見上げれば、燃えるように白い光が瞬いていた。
その姿は、まるで流星のようだ。大気圏で燃える、流れ星のようだった。
しかし、今の音声アシストの言葉は何だ。あれはもしや、こちらに向けて飛来している?
「…………」
背中からスラスターを展開して、一気に加速する。同時に上へと飛び上がり、無人のビルを駆け上がった。
その屋上へと脚をつけ、外套を振り払う。そのまま全身の装甲を展開し、空を瞬く光をモニターに映した。
人間だ。
特殊な機構の機動アーマーに搭乗している。
それにこの機構は――変形機構?
「……何だコイツ」
接触まで残り数十秒。
俺は全身のエネルギーを充填させた。
黒い装甲が唸り、橙色のラインがぼんやりと光を増した。
◆ ◆ ◆
「……戦況は?」
黒い絨毯と、そこに巣食う無数の光の穴。
それが無限に広がる空間を映す、ガラス張りの部屋の中で、青年がそう尋ねた。
「……芳しくないね」
その言葉に応えるのは、後ろで結った髪に眼鏡が特徴的な白衣の男。あの研究所から脱出し、今もなお奮闘を続けている『主任』が、溜息と共にそう返す。
「スティミュレーターの確認に続くように、各地で特殊なアンセクタたちが現れた。どれも非常に高性能だ。既存の軍事力では歯が立たない。……どうやら奴らは、我々が開発中だった軍事用アンセクタまで吸収したようだな」
「……どういうことですか?」
「技術力だとか経済的な事情とか、とにかく人類が完成させられなかった
「…………奴らの特徴は?」
「人の姿に擬態する、『サナギ』という機構を搭載している。その姿を解くと、本来の装甲で覆われたアンセクタと化す。どれもが量産型のそれとは比べ物にならない性能で、我々の攻撃がほとんど通用しない」
戦車や戦闘機、ミサイルに歩兵部隊など、既存の戦力がほとんど通用しない機体。それが新種のアンセクタたちだった。
アンセクタに対抗するためにアンセクタを開発していた多くの国にとって、その努力が裏目に出る結果と言えるだろう。対アンセクタのためのアンセクタが、全て人類に牙を剥いたのだから。
「一体どうやったのかは知らんが、奴らは我々が出来なかったことをやってのけたらしい。スティミュレーターを実用化するとは、誰が予想したか」
「……奴らはみな機械。機械は、機械を吸収する。機械を吸収して、より大きな軍勢となる。僕たちは、かなり分が悪い」
そう言って歯痒そうに眉間に皺を寄せるのは、まだ年若い青年だった。
軍服に身を包み、淡い金髪を後ろで結ったその姿。若いながらも、どこか筋の通った強さを感じさせる佇まいだった。
「……『エルヴント』、君を呼んだのは他でもない」
「……地上に降り立つ任務ですか?」
エルヴント。そう呼ばれた青年がそう尋ねれば、主任は不敵な笑みを浮かべながらも頷いた。
「その分が悪い戦いを覆そうと、我々は躍起になっている。その打開策の一つが、君だ。……開発中だったものが、ようやく完成したよ」
「……ということは」
「あぁ。『機竜』、出動準備OKだ」
彼の言葉と同時に、格納庫のシャッターが口を開く。
そこには、白銀の機体があった。見た目は小型の宇宙船。古い昔に宇宙戦争をモデルにした映画があったが、それに登場する船によく似た姿をしていた。側面には、ハヤブサを描いたようなペイントがなされている。
「かなりの劣勢だ。地上には人間はいないと思っていいだろう。主要都市も、共同体も、そのほとんどが陥落した。そこにアンセクタの巣が着々と建造されている」
「……工場」
「あぁ。まるで無尽蔵に増える害虫のようだよ。奴らめ、物量で我々を完全に潰そうとしている。そんな奴らを焼き払うのが、これだ」
「……これが?」
主任が指差したそれは、ただの機動船だ。
どう見ても戦闘は不向きなのだが――――しかし彼は不敵に笑い続ける。
「亡国の軍事力は奴らに通用しない。ならば、通用する新たな兵器を作ればいい。この兵器の運用次第で、我々の計画は大きく変動する。君はまさに、要だ」
「……機竜、と言ってましけど。これのどこが?」
「詳しいマニュアルは内部でインストールしてくれ。試運転も可能だ。VRでだがな」
「……コードは……」
「おっとすまない。コードは、『
そう言いながら、彼は巨大なゴーグルをエルヴントに手渡す。
「……君は、ずっと地上を捜索したいと言っていたな。念願叶ってその時が来たぞ」
「……はい」
「妹、だろう? 君の家族の中で、彼女だけが未だに行方不明だ」
「……はい」
主任の言葉を前に、エルヴントは目を伏せた。
「……僕の両親はアンセクタに殺されました。けれど、妹……ミルリはまだ、見つかっていません。もしかしたら、もしかしたらと、僕はずっと考えるんです」
「可能性は、極めて低いと思うがな」
「えぇ。でも、
「そうか。……だが、君の任務はあくまでもこの機竜を繰って奴を破壊すること。それを忘れないでくれ」
「はい。任せてください」
人類の新たな矛。
その鍵を受け取って、エルヴントは真摯な表情で頷いた。
オーダー、スティミュレーターの破壊。
彼、エルヴントに課せられた使命。
この作戦の是非によって人類の切るカードは大きく変わる。まさに分岐に立たされた思いを胸に秘めながら、主任は彼の出撃を見送るのだった。
「俺たちを餅つくだけの兎だと思ってる奴らに見せつけてやれ。兎にだって、牙があることをな」
◆ ◆ ◆
廃都市を、巨大な炎が包んだ。
その爆風がガラスを粉々に砕き、朽ちたビルを砂の城のように風に溶かす。
同時に、黒い影が飛んだ。
空から飛来した白銀のそれに跳ね飛ばされたそれが、ビルを激しく砕く。
「……ちっ」
背後にコンクリートの亀裂を描きながら、スティミュレーターは舌打ちする。
その一方で、白銀の機体からは一人の影が現れた。あの人間の青年――エルヴントだった。
「……貴様がスティミュレーターか」
「…………」
「肯定も否定もしない、か。まぁいい。放たれるノイズで把握済みだ」
「……何だ、お前」
降り立った彼は、他の人間とは一線を画す姿をしていた。
全身を覆うパワードスーツ。細長いフレームに体を包み、手には青白いスパークを放つガンブレードを握っている。
どうもただの人間ではないようだ。そう、スティミュレーターは判断する。
そんな彼に向けて、エルヴントは問い掛けた。
「早速で悪いが、貴様に聞きたいことがある」
「…………?」
「僕と同じ髪色をした少女を殺したか?」
「……何だって?」
きっと、予想だにしていなかった言葉だったのだろう。スティミュレーターは、振動感知の機能を疑った。
しかし、目の前の青年の表情から察し、それ以上の言葉を留める。留め、彼からの言葉を待った。
「淡い金髪の、幼い女の子を殺したことはあるか? と聞いたんだ」
「女の子?」
「あぁ。まだ十にも満たない、幼い子さ。海のように深い色をした瞳が特徴的だ」
「海……ねぇ。みんな腐っちゃったから、どんよりとした緑色なのか?」
「貴様は知らないかもしれないが、昔海は青かったのさ。貴様らのせいで、今は腐ってしまったが。それで? どうなんだ?」
「……さぁ。いちいち確認したことないね」
「そうか。なら、あとでメモリーを剥ぎ取らせてもらおう」
「……何か、よく喋る奴だなお前」
「アンセクタがそれを言うか」
忌々しそうに彼はそう吐き捨て、手の銃剣を構えた。
それに合わせ、スティミュレーターもその機体を唸らせる。
出会ったばかりの相手に向けて、傍若無人に尋ねる姿。
それにスティミュレーターは少しばかり首を傾げるも、目の前の人間の佇まいを見てはその首を正した。
ただ怯えるだけの民間人でもない。豆鉄砲を放つ軍人でもない。
自分と対等な顔をして、むしろ見下すように。アンセクタを睨み、言葉を投げかけるその姿。
――――相当、腕に自信があると見える。
スティミュレーターはそう感じながら、自らの体に熱を灯した。
目の前の人間に肩を並べるように、その全身から蒸気を噴かす。
どこか、心が躍るような不思議な感覚を覚えながら。
巨大な白い物体が、突然ビルを砕いたその青天の下。
人間とアンセクタが、その牙を交わす。
灰色の階層都市の中で、火花が散った。
詳しい戦闘は次回から。
再びめっちゃ変形させます。絶対読みにくいです。すみません。
話変わりますが最近地球防衛軍やってみました。ウィングダイバー面白いですね!バックパックみたいなので空飛ぶのカッコいい。
まぁフェンサーが一番好きですけど。これ読んでくださってる方は、何となく理由を察してくださると思います……。
それではでは!