神崎蘭子(偽)が逝く戦車道   作:みほ杏という沼に嵌りそうな人

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第2話 偽蘭子、久々の触れ合い

 キーンコーンカーンコーン。

 

 4時間目終了のチャイムが教室に響く。俺は使っていたノートや教科書を整理して机の中へと仕舞い込んだ。例によって皆はすぐさま食堂へと全速前進。俺もそうしたいところだが、それは蘭子がするような事ではないのでのんびりと準備を行った。我が蘭子ムーブに余念はない。

 

 あれから一週間、俺は特に誰とも会話をする事もなく蘭子ムーブに勤しんでいた。行きと帰りはオキニの黒いフリフリ日傘をさして焼けないようにし、ユーチ○ーブの動画で気品のある立ち振舞いを参考にしたりと蘭子ムーブを謳歌していた。最も、気取ってると思われてるのかたまに俺が声を出したらひそひそ話が聞こえるのが少し癪ではあるのだが。

 

 いや、仲良くなる努力はしてるんだよ。自分から声もかけない癖にグダグダ言うなんてダサい真似はしないさ。ただ最初の声掛けから既に会話が続かないのが現状な訳で。

 

「煩わしい太陽ね! 閉ざされた氷河が我が身を凍らせる!(おはようございます。今日は気温が低くて寒いですね)」

 

「なんだァ? てめェ……」

 

 このザマである。武と言うよりは無様な反応だし、「魔力の貯蔵は充分か?(一緒にご飯食べませんか?)」って誘っても何言ってんだこいつって顔されるだけだからね。紙に書けば伝わるんだけどこれ以上変人だと思われたくない。俺は至って常識人なのだ。

 

 蘭子ムーブは非常に楽しいが自動翻訳に関してはオンオフ切り替え出来るようにして欲しかった。蘭子が悪いとは微塵も思わないが、こればかりは恨むぜ神サマよぉ。いや神は死んだのだったか。

 

 そもそもの話、入る学校を間違えたかもしれないな。素直にお嬢様学校である聖グロリアーナ女学院かマジノ女学院にでもしておけば良かったかもしれない。蘭子ムーブはお嬢様とは系統は違うが類似するところは少なからずある筈だ。ほら、すべての道はローマに通ずって言葉もあるわけだし? 決して無関係な訳ではないと思うんだ。俺自身の性格はともかく蘭子ムーブさえ継続出来たらきっと友達は数人くらいは出来ただろう(希望的観測)

 

 おっと、今はそんな事より飯だ。最近の俺は食堂の飯のために学校に来てると言っても過言ではない。友達いないからね! 早く行かないとまた席が誰かと誰かの間という一番嫌なパターンに出くわしてしまう(5勝3敗)

 

「ふ、ふえぇ……」

 

 ……ん? まだ誰か残ってる?

 

 キョロキョロと見渡すが特に見当たらない。そう思った瞬間左の方からガタンと音が聞こえた。怪しがりて寄りて見るに机の下(ひと)いたり。どうやら落としたシャーペンを拾っていたらしい。

 

 ……拾うたびに机にぶつかって別の物が落ちてるが、もしかしてワザとなのか?

 

「……其方、闇の消滅も地の上に」

「はえっ!? わ、私ですか!?」

「我と其方以外の同胞は既に魔力の補給へと出向いておるぞ?」

 

 ここまで来て無視するのもあれなので声をかけてみた。でもだいぶ驚いてるみたいだし、やっぱり声かけないほうが良かったかな。学校に通い始めて二週間も経っていないのではっきりとどうとは言えないが、少なくとも良い感情は持たれていないのは確かだ。

 

「は、初めて認識された……」

「何か申したか?」

「いっいえ、なんでもありません! えっと……」

「くっくっく、我が名は神崎蘭子! 闇に舞い降りし天災とは我の事よ!」

「わっ、私は西住みほっていいます! 10月23日生まれの天秤座で、血液型はA型です!よろしくお願いします!」

 

 西住みほちゃんって言うのか。良い名前だ。10月23日……うん、バッチリ覚えた! 嗚呼、久々のきちんとした会話だ……! 会話がこんなにも心安らぐ物だったとは知らなかった。互いに自己紹介をしただけだが、今まで頑張っても二言程度しか続かなかった会話を考えると大きな進歩だ。この調子でどんどん仲良くなろう!

 

「ふむ、よかろう。それほど言うのであれば盟約に従い其方を我が友として迎えよう」

 

 ば、ばっきゃろーい! な、なに言ってやがるんだ俺の口は! よかろうって何様のつもりなんだよ俺は! 「はい! こちらこそよろしくお願いします!(無垢な瞳)」って言おうとしただけがどうしてそんなに偉そうになるんだよおおおお!!! あああああぁ……今の言葉で絶対に怒らせてしまった……! これじゃあもう話し相手にすらなってくれねぇよ……! 俺だったらならない!

 

「と、友達……! わたっ、私ととっ、友達になってくれるんですか!?」

 

 …………うん? あ、あれ、思ってた反応と違った。寧ろ好反応……?

 

 批難を覚悟した俺が呆気にとられていると、ブラウンの瞳をキラリと輝かせながら彼女は俺にずずいっと迫り手を握ってきた。

 

「ひゃっ!」

 

 いきなりの事で反応が鈍ってしまい思わず後ろへ仰け反り尻餅をついてしまった。握られた手はいつの間にか離されていた。

 

「く、黒のレース……あっ」

 

「へ? ──ッ!?」

 

 俺は咄嗟に両手を太腿の間に入れて隙間を隠した。

 

 み、見られた!? お、俺の神聖な領域が、知り合って間もない女の子に知られてしまったのか……? しかも今日は体育もないからって蘭子ムーブの為に黒レースでチョ→セクチ→なショーツを着て来ているのに。……何? 蘭子のパンツなんて知らねーだろって? 俺の中ではそんなイメージなんだよ!

 

 う、うぅ……きっと彼女の頭の中では「えーマジ黒のレース!?」「エロ過ぎィ!」「黒のレースが許されるのは大学生からだよね!」「ドゥハハハハハハ」とか思われてるんだ……。

 

 ああぁ……これから俺は変態のレッテルを貼られてしまうのか? 違う、違うんだ。俺だって好きでこんなスケスケを履いているわけじゃないんだ。俺はただ……俺はただ、蘭子に──エロいショーツを履いて欲しかっただけなんだ!!(集中線)

 

 俺は履きたくないが、俺は蘭子に履いて欲しくて今日履いてきた。つまりは俺が履いてるのではなく蘭子が履いてると言っても良く、またそれは蘭子()が履きたくて履いている訳ではない。つまり俺は変態ではないのだ(Q.E.D)

 

 ……実際のところ蘭子がこんなエロいの履いてるって思うとちょっと、いやかなり興奮したんだけど(やはり変態)

 

 とはいえこんな姿を見られたらからには……

 

「もう学校に行けない……」

「そんなに!? ご、ごめんなさいっ。見るつもりは無くて、その!」

 

 目の前の彼女は俺の羞恥の様を見てあわあわと狼狽える。そんなに慌てるなら初めから口に出さないで欲しい。見てはいけない物を見てしまった時はなぁ、決して口に出したらいけないんだよ!! 見て見ぬ振りをするんだ!!

 

「決して他言してはならんぞ!?」

「わ、分かりました……あっ」

「どうしたのだ!?」

「こ、これってもしかして……二人だけの秘密ってやつだよね!? 私、絶対に言わないよっ!」

 

 再び瞳をキラリと輝かせながらよく分からないことを言う彼女。確かに二人だけの秘密ではあるが、そんなに喜ぶ程のものか……? まぁでもこの様子であれば他言はしないだらう。だが万が一を考えると、うぅむ。……あ、そうだ!

 

「ま、まぁ良い。それと失念しておったが、其方の背後より消滅せし闇が裏切りを目論んでいるわ!」

「し、消滅? 裏切り? ……あ、消しゴムが落ちてた」

 

 机の下に落ちていた消しゴムに気付いた彼女は後ろを向いてしゃがみ込み、四つん這いになって消しゴムを拾おうとする。

 

 突然だがここの学校はスカートが異様に短いので屈んだり四つん這いの体勢をとるとすぐ下着が丸見えになってしまうのだ。身を以て実感したから信用して良い。今の状況でその情報を伝えたという事は……まぁ、つまりそういう事だ。

 

 因みに彼女のパンツは白の無地に一部のマニアに大人気の「ボコられグマ」のボコがお尻にドドンとプリントされたものであった。

 

「ふむ、内に秘めたるは不屈の心か……」

「不屈の心? …………ボコ……ふぇッ!? み、見ないでくだ──〜〜ッ!!」

 

 俺の言葉の真意に気付いた彼女は立ち上がろうとするが、机の下にいる事を忘れてしまっていたようで思いっきり頭を机にぶつけていた。バコンと良い音が響いた。ぶつかった勢いで机は倒れて周囲は大惨事だ。

 

「おわわっ! け、怪我はないか……?」

 

 倒れる机を避けて彼女の安否を聞く。見られて恥ずかしがってる様子を見て「口にされるのはこんなに恥ずかしいんだぞ!」と憂さ晴らしをしようと思っていたのだが、まさかここまで反応するとは思わなかった。流石に謝っておくか。

 

「あ、頭がいたいですぅ……」

「わ、我の失態だ。意趣返しのつもりだったがこうなるとは思わなかったのだ」

「うぅ……」

 

 涙目で頭をさする彼女。うっ、そんな表情をされると罪悪感が……。

 

 俺はたんこぶが出来ていないかを確認する為に近付いて頭に優しく撫でるように触れる。

 

「ふえっ!?」

 

 さすりさすり。一通り探ってみたが……どうやらなさそうだ。たんこぶが出来ない程度の衝撃で良かった。それでも痛いのは痛いんだろうけど。ほんとごめんね?

 

 ……それにしてもこの子の髪、サラサラで凄く健康的なキューティクルだ。撫でていて非常に気持ちが良い。もう少しだけ堪能しとこ。俺は人との絡みに飢えているのだ。

 

「あ、あの……」

「……」

「えっと……」

「……」

「……うぅ」

「……」

「……えへへ」

「……」

 

…………。

………………。

……………………。

 

 はっ!?

 

「なんたる失態!」

「へぁっ!? ど、どうかしましたか……?」

「我としたことが、魔力の補充を失念していた……!」

 

 バッと教室の時計へと振り向く。その短針は1、長針は12……つまり13時を指していた。昼飯の時間が12時40分から13時20分までなので残すところ後たったの20分のみ。どう足掻いても食堂で食べていては間に合わない。

 

「まりょく……?」

 

 小首を傾げながらこちらを伺う彼女。くりくりお目々をキョトンとさせてる様子は愛らしいが、今の状況だと鈍臭い対応だと言う他ない。だいたい俺が悪いんだけど!

 

「くっ、時が加速している!? これもゼウスの陰謀か!」

「時? ……って、ああ!? も、もうこんな時間!?」

()く魔道具を仕舞うのだ! 案ずるな、我に秘策あり!」

 

 二人で周囲に散らばった筆記用具をせっせと片付ける。この時間ならばまだ望みはあるのだ。

 

「ひぃん! ひっ、秘策ってなんの事ですかぁ!?」

 

「──宝物殿よ」

 

 

 そう、売店だ。売店であれば俺たちの希望に沿ったものも存在するだろう。

 

 売店とは筆記用具や上履など学校生活における必需品を取り扱う店だ。その他にもお菓子やアイス、惣菜パンなどの食べ物も売っているため何処の学校でも大人気の存在で、今回は俺たちもそこを狙う。

 

「ほ、ほうもつでんってなんですか〜っ!?」

「良いから同行するのだ! いざ、鎌倉!」

 

 そして俺たちは廊下へと出ると一目散に売店へと駆けるのであった。

 

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