神崎蘭子(偽)が逝く戦車道   作:みほ杏という沼に嵌りそうな人

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第3話 偽蘭子、はじめてのともだち

「はぁ……はぁ……ほ、ほうもつでんって、はぁ……売店の事だったんですね」

「宝物殿は宝物殿よ。しかし其方、生命力が零れ落ちておるが……逝くのか?」

「死なないよ!?」

 

 売店についた俺たちは急いで昼飯を購入した。それから売店のある広場に置いてある椅子に腰をかけながら俺たちは購入した惣菜パンと飲み物に手を付ける。

 

 彼女は紙カップのコーヒー牛乳にピザパンとメロンパン、後パル○ムを購入し、俺はド○リッチに塩パン二つと凍らせた蒸しパン(結構美味い)

 

「……ふぅ、そういえばなんでこんなに急いでたんですか?」

「ん? だから時が加速していると……」

「お昼休みの時間もあるからそんなに急がなくても良かった様な……」

「……む」

 

 言われてみれば……。そういえば昼飯の後には昼休みが20分間あるので今の時間帯でも余裕は割とあるのだ。……す、すっかり忘れていた。あ、で、でも話す時間は欲しかったし! それが多い事に越したことはないし! あと別に忘れてた訳じゃねーし!(前言撤回)

 

「……ふ、決して心象風景より幕間が途絶されていた訳ではないぞ? 刎頚(ふんけい)の交わりとは一朝一夕で得られるものではないのだ!」

 

 俺に偏見を持たずに接してくれる人は非常に少ない。ここまで俺に付き合ってくれたんだ。彼女は確実に性格良し器量良しの良い子だ。こんな子を逃す手はない。でも刎頚は重過ぎィ! 刎頚ってあれだろ!? きみのためなら死ねるってやつ! (理解されたら)引かれる!引かれる! 話す時間が欲しかった的なニュアンスの事を伝えたかっただけなのに拡大解釈しすぎだわ! このポンコツ自動翻訳め! 俺はちょっと話しただけで勘違いするタチの悪い喪女か!

 

「えっと……それってもしかして私と仲良くなりたいって事ですか?」

「ま、まぁそう解釈するのは自由だが?」

 

 ツンデレ乙。

 

「ふわぁ、う、嬉しい! えへへ、ありがとうございます! ……実は私、神崎さんに憧れてたんだ」

 

 憧れ? 蘭子ムーブしてただけでそんな大層な事はしてない筈だけど。

 

「むむ、こんな刹那の間にか?」

「うん! 自己紹介の時から、なんでこの人はこんなに堂々と話せるんだろうって思ってて……ちょっぴり羨ましかったんだ」

 

 あれは少しやり過ぎなんだよなぁ。

 

「だから、私も神崎さんのように堂々としたくて毎日ずっと話しかけようとしたんだけど……中々気付いてもらえなくって」

「そうか。それは残念であったな」

「え?」

「む?」

 

 え? なに? 何か食い違いでもあったか?

 

「えっと、毎日声を掛けてたのは神崎さんになんだけど……」

 

 な、なにィ!?

 

「食堂でも隣に座ったり正面に座ったりしてアピールをしてたんだけど……やっぱり気付いてなかったんだね」

「そ、それは誠か……? だとしたら我は……」

「う、ううんっ、大丈夫! 寧ろ無視されてる訳じゃなくって凄くホッとしてて……!」

 

 瞳が潤んでいる。どうやら俺は知らぬ間に彼女に酷い事をしてしまったようだ。そして彼女と仲良くなるフラグを無意識にへし折っていたらしい。なんて勿体無いことをしてしまったんだ! もっと早くから知り合っていれば必修科目の見学も一緒に行けたのに!

 

「それにこんな私と仲良くしたいって言ってくれたのも、とっても嬉しくて……えへへ」

 

 本当に嬉しそうな様子で朗らかにはにかみながらピザパンを口に運ぶ彼女……いや西住さん。可愛い。なんというか守ってあげたい可愛さが彼女にはある。これがカリスマってやつか……?

 

 正直に言うと俺も喜ばれてるのは素直に嬉しいし既に西住さんに情すら湧いている。蘭子が世界で一番可愛いのは人類普遍の原理だが西住さんは多分その次くらいにくる。

 

「……ふっ、歓喜に打ち震えるのも良いがそれはまだ早急というもの。これより次なる段階へと移行する!」

「はい! 仲良し大作戦ですね! 作戦内容は!?」

 

 俺は懐からサッとスマホを取り出し、思い出したかのように(実際忘れてた)蘭子っぽいポーズ(スマホを顔の横にそれっぽく添える)を構える。

 

「──魔道具による契約よ」

「けいやく?」

「まずは我から。080-○○……」

「連絡先だね、分かります! ちょっと待ってね……」

 

 ポチポチと電話番号とメアドを交換する。

 

「えへへ、家族以外で初めて登録しちゃった」

 

 嬉しそうに悲しい事を言う彼女に俺は涙がちょちょぎれそうになる。いや、もしかしたら入学に合わせて買ったのかもしれないし見当違いかもしれない。そんな勝手に哀れんだらダメだ! まぁ、そういう俺は前から持ってて、しかも友達を追加するのは初めてなんだけど。あれ、本当に涙が……。

 

「ええっ!? な、なんで泣いてるの? どうかしたの……?」

「何でもない……何でもないのだ」

「……?」

 

 うぅ、塩パンがしょっぱいぜ(普通)

 

 俺はこの日の塩パンのしょっぱさを忘れない! そうだ、友達なんて今から作ればいい。たくさん居なくたっていい。本当に気が合う友達が数人いればそれで良いのだ。

 

 ……その為にはまずはこの子と親睦を深めないとな。

 

「其方は不屈の心を抱く弱き肉食獣を好んでいるのか?」

「それってボコの事だよね!?」

「ひゃあっ!」

 

 急に顔を迫られてびっくりする俺。急な事に弱いのでこういうのはやめてほしい。

 

「ボコはね、とっても凄いんだよ! なにもしてないのにやられちゃったり、喧嘩っ早くていつも自分から仕掛けるくせにボコボコに負けちゃうんだけど、絶対に諦めないの! 神崎さんの言う通り凄く弱いんだけど不屈の心でどんな相手にも果敢に立ち向かうの! 次こそは絶対に勝つんだって!」

 

 語るじゃん。それ程好きなんだろうなー気持ちは分かる。俺も蘭子について教えてと言われたら軽く一時間は語ると思うし。

 

「ふむ、それは賞賛に値するな」

「だよね! ボコは凄いの!」

 

 そこまでは割と知られている。あんまり知らない俺でも知ってるし。

 

「で、勝つのか?」

「え?」

「ボコは勝てたのか?」

「えっと、もしかして聞いてなかったの? ボコは絶対に勝てない──」

「無論聞いていた。だが勝てるやもしれぬだろう?」

「無理だよ! ボコは絶対に勝てないの!」

「何故?」

「だって、それがボコなんだもん!」

 

 す、凄い語るじゃん……。そうムキになって言われると俺も引かざるを得ない。少年漫画に慣れてるせいでなんだか凄くもやもやするキャラクターではあるが、そこが魅力なのだろう。俺にはよく分からない。

 

「し、謝罪をしよう。否定するつもりはなくて……」

「う、ううん。こっちこそごめんね? つい熱くなっちゃった」

「……う、うむ」

「……」

 

 少し気まずい雰囲気になってしまった。……仕方ない、こういう時は……。

 

「そういえば其方の内に秘めたる不屈の心だが……」

「そ、それ聞いちゃうんですか……? うぅ……」

 

 もじもじと恥ずかしそうに頬を赤く染める西住さん。よし、少し雰囲気が和らいだ。

 

「幼子が如き所業。我でなければ見逃すところであった」

「ううう〜! だ、だって、私のお気に入りなんだもん……」

「確かに愛らしくはあった」

「それを言うなら神崎さんのぱ、ぱんつは……え、えっち過ぎるよぅ……」

 

 ぐっ……パンツの話題を出すからには覚悟してたけど、面と向かって言われると思った以上に恥ずかしい……。

 

「す、スケスケだったなぁ……」

 

 やめてぇぇええええ!! そんな恥ずかしそうに言わないでえええええ!!

 

「神崎さんって……へ、変態さんなの……?」

 

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

 

 俺は両手で顔を覆いながら頭を伏せる。ああ、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい! マジで泣きそう。多分耳まで赤くなってると思う。あのショーツ、別に俺の趣味じゃないのに。いやある意味で俺の趣味ではあると言えるが。ぐううう! あかん、そろそろグズりそう。

 

「……! か、神崎さん!? ご、ごめんなさい! まさか泣くと思わなくって。もう絶対に言わないから!」

「……ぐすっ……暫し待て」

 

 西住さんが必死に謝ってる。西住さんは何も悪くないのに。なんならパンツの話題を出した俺が100%悪いのに。謝らせてごめんなさい。変態でごめんなさい……。

 

 そ、そうだ……! こんな時は鏡、鏡を出さないと……!

 

 ポケットから手鏡を取り出してパカリと開き、今の俺の様子を確認する。

 

 予想してた通りぱっちりと綺麗な二重が涙で潤んで頬は限界まで赤く染まっており、顔全体に羞恥が表れている。普通の人であれば目にも当てられない状態だろうが、絶世の美少女である蘭子は羞恥に染まってもなおその麗しい(かんばせ)が崩れる事はない。見られると恥ずかしい顔の筈なのに寧ろそれがアクセントとなり蘭子の美しさを引き立てている。実に艶美である。涙が女の武器と言われる所以はこれか。

 

……ふぅ。よし、少しずつだが段々落ち着いてきた。

 

「…………こ、今後先の言霊を司る事は禁戒とする。無論、我ももう言わない!」

 

 俺から言い出しておいてなんだが、これは互いにダメージが多大に過ぎる。これ以上言われると心が壊れちゃう。

 

「うん……し、趣味は人それぞれだよね!」

「うむ……」

「……」

「……」

「……ぱん──」

「──ッ!?」

「……パン、食べよっか……」

「……う、うむ」

「……」

「……」

 

「「……………………」」

 

 

 この日から俺はパンという言葉にちょっとだけ反応するようになった。

 

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