神崎蘭子(偽)が逝く戦車道   作:みほ杏という沼に嵌りそうな人

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コソ…コソ…


第6話 偽蘭子、面談する

 

 

結果から言うと、西住さんは喜んで手伝ってくれた。というかほぼ主体で動いてくれて、俺は餌を待つ雛鳥状態だった。

 

いやあれ、経験者とかそんなレベルじゃないよ。授業料取れるぜ? なんかもう、戦車と一緒に育ったと言われても信じれるレベルで西住さんは博学だ。西住さんは戦車だった……?

 

戦車の種類は勿論のこと、それぞれがどの時代に設計及び何台製造されたか、正面装甲の厚さとか避弾経始とか表面ビスの有無によって何が変わるかとか、西住さんはなんでも知っていた。へへっ、俺の西住さんはすごいだろ?(彼氏面)

 

最初はルールとか陣形とかそんな感じの事を教えてくれるもんかと思ってたけど、まったくもってその程度で収まるほどの知識量ではなかった。

 

ちなみにだが、俺は彼女に事情は話しておらず、戦車について教えてほしいと言っただけだ。いや、隠したい訳じゃなかったんだが、事情を説明する前に色々と教えてくれたものだから、別に良いかなって。

 

というかちょっと教えてって言っただけでこんなにも色々と教えてくれる彼女はマジで天使。嫌な顔一つせずに懇切丁寧に教えてくれた彼女に感謝の念が絶えない。後は俺が頑張って覚えるだけだ。

 

というか戦車道ってやっぱり対戦系みたいな感じだった。武道っていうか話だけ聞いてると普通にスポーツっぽい。正直薄々勘付いてはいたけど、あ、危なくない? 人に向けて弾を打つんだぜ? 実弾をだぞ? サバゲーとかFPSとは訳が違うんだぞ? カーボンだのなんだので弾が戦車の中まで貫通する事はないらしいけど……どうなんだ?

 

まぁ大丈夫だから今まで続いてるんだろうけど。要は慣れの問題だろう。全く慣れる気はしないけど……。

 

 

さて、一夜漬けは俺の最も得意とする分野だ。自慢ではないが過去何度もこの手法によって俺は試験を突破してきたものだ。就活や国家資格もこの手法で合格してきたし。俺、その場凌ぎが得意なんだよ。

 

あっ、ちなみに勉強は西住さんの部屋でしました。とてもいいにほひがしました。

 

俺の部屋に呼ぼうかとも思ったんだけど、見られたらアレな奴があるから急遽お邪魔させてもらっているのだ。いや、むしろ見られたことにより羞恥に染まる蘭子()の顔を……だっ、ダメだ! 今はそんな事を考えてる暇はない!

 

ちょっと迷惑かなと思ったりもしたが、当の本人は

 

「えへへー♪ 何か分からないところとかある? あっ、この場合はね──」

 

この様にめちゃくちゃ嬉しそうだ。尻尾が合ったら千切れるほど振ってそうだ。ほんともう、すっごいニコニコ。……ははーん、さてはこの子、ぼっちだな?()

 

正直気持ちは分かる。というか俺も多分同じ気持ちだと思う。いやもうなんか、すっごい楽しいのなんの。友達の家って響きだけで1日絶食出来るわ。まじテン上げかも。目が爛々としてるのが分かる。蘭子だけに()

 

自分の家に戻った俺は、そんな深夜テンションで夜通し暗記に勤しんだ。そして気力で起きてた授業という名のラリホーを経て、俺は今──。

 

 

「──さて、よく来た。蘭子」

 

 

黒森峰女学院中等部、戦車道隊長を前にしていた。まぁつまり犬の散歩仲間のお姉さんなんだけど。

 

てか、あの、なんか、いつものお姉さんと雰囲気が違うんスけど。なんなんこれ。圧が凄いんだけど。取り敢えずなんか言っとくか。

 

「ふっ、久しいな。先生よ」

「いや、昨日会っただろう」

 

ちなみにここは戦車道履修者専用の部屋……の更に隊長専用の部屋、らしい。放課後お姉さんの教室に行ったら丁度出てきたので一緒にここまで来たのだ。だからなんで今挨拶したのかは俺にも分からん。

 

昨日顔真っ赤にして俺に怒ってた人も来てたけど、今この場にはいない。お姉さんが練習に戻らせたのだ。正直助かった。どうせこのア翻訳が怒らせるんだろうし。

 

「早速だが面談を始める」

「それは構わぬが、我が真の力を刮目させんと……」

「それもそうだが、まずは昨日の発言の真意を改めて確認するのと、後は単に話したかっただけだ」

「ふむ、承知した」

 

照れる。お姉さんに俺と話したいって言われちゃった。仲は良い方かもーとは思ってたけど、こうもはっきりと言われると込み上げてくるものがある。胸が熱いな。

 

……というか、あれ? なんか、別に怒ってない? 圧が凄いから昨日の電話とは裏腹にやっぱり怒ってたのかと戦々恐々としてたんだけど、圧が凄いだけで後は普通だ。口調も優しいし、もしかして戦車道モードという奴だろうか。面談とは言ってたけど堅苦しい雰囲気でもなさそうだし。なぁんだ、心配して損した。

 

「ならば早速始めようではないか。まず我の朝は一杯のコーヒーから始ま──」

「いや、まずは昨日の件からだ」

 

あ、はい。

 

ピシャリと言われてしまった。まぁそれもそうだ。俺が悪い。いや、このア翻訳が悪い(責任転嫁)

 

「それで改めて聞くが、昨日お前が口にした言葉の意味……本当にわかっているのか?」

 

これは……チャンス! お姉さんは俺の昨日の言葉を疑っている。もしかするとここで誤解を解く事ができるかも知れない。頼みやすぜ、翻訳の旦那っ。

 

「ふん、二度も言わせるつもりか?」

 

くそぅ……ッ!!

 

この翻訳機能にはオートとマニュアルがあるようだが、その切り替えを俺自身が出来ないからこういった肝心なところで言いたい事が言えないんだよな。しゃしゃりでてくんじゃねーよ(憤怒)(憤怒)(憤怒)

 

「そうか。私もどうにかしたいところではあるんだが、様々な事情が重なり中々上手く行かなくてな。蘭子、お前は何か考えがあってあのような事を言ったのか?」

「ふむ……」

 

考えなんてある訳ねーだろ。

 

ていうか戦車道という言葉すら最近知った俺が何か語れる訳がない。ここは天下の翻訳機能様になんとかしてもらうしかあるまい(手のひらドリル)

 

……。

 

…………。

 

………………なんとか言えや!

 

「なん」

 

「……?」

 

は?

 

はぁ?

 

はぁ〜〜〜??

 

おっ、お前……つまんねー返ししてんじゃね〜よ! 反抗期か! 俺でももっと面白い事言えるわ!

 

……いや面白さとか求めてないんだよ! この状況を打破しろっつってんの! どうすれば黒森峰はもっといい感じになるのか、解答をどうぞ!!

 

「……ふ、先生よ。其方は我が真言に惑わされる哀れなる者に過ぎぬのか? 我が言の葉には力が宿っている。望む未来を引き寄せる、圧倒的なパワーがッ! 旋律を奏でるのは容易い事。しかし、先に調べを耳にして何が変わる? 先生は餌を得て満足するのか? 餌の取り方も分からずに。……安らぎを求めるには早すぎる。今一度、その類い稀なる才能を持ちし頭脳にて考えるが良い」

 

「……いや蘭子。これは私だけでなく、今後はお前にも関係してくる問題だ。そして対策を練るならば早い方がいい。忌憚無く意見を述べてくれ」

 

だってぜ、ア翻訳さんよぉ!

 

「黒森峰は柔軟性が足らぬ。良くも悪くも規則的だ」

 

へー、そうなんだ……。

 

このア翻訳……あ、いや、この翻訳さんって俺が得た知識をなんかいい感じにまとめてくれるんだよな。

 

……いやごめん。見栄張った。いい感じなのかどうかすらよく分からん。お姉さんが普通に反応してるからそうなのかなーと。こんなので本当に戦車道やっていいんですか?

 

「それは昨日も言っていたな。道理だ。しかし、それが黒森峰の強みでもある。重火力、重走行、高機動力により速攻を仕掛ける。これは歴史が証明しているように、非常に有効的なドクトリンだ。特にその場で勝つ事だけを考えるだけでいい戦車道にはうってつけなんだ。そして崩すつもりもない。長所はそのままで短所をなるべく無くしたい」

 

あかん、もう訳分からなくなった! 話に全く付いていけぬぅ!

 

「ならば自由の翼を授かるのだ! 我らは鳥のように飛べぬが、立ち塞がる壁を難無く突き抜く事が出来る」

 

「なるほど、遊撃隊か」

 

「そして任せるに値する勇者を、我は目を付けている」

 

それは西住さんの事かな!? おいおい、勝手に人の事を推薦していいと思ってんのか? いやダメでしょ(自問自答)

 

こら! いい子だからこれ以上勝手な事を言うのはやめなされ!

 

「……みほか。確かにみほは西住流、それも私と同じく本家の者だ。ならばこそ反発は少ない……いや、だからこそか? 私ではなくみほに──」

 

なんでこの人、誰の事を言ったのか分かったの?(震え)

 

もしかしてお姉さんって西住さんと知り合いなのかな。みほって呼んでるくらいだし、結構親しい仲なのかも。あーあ、俺もな〜みほって呼びたいな〜。でもまだ知り合ったばかりだし、厚かましいよなー。馴れ馴れしいって思われるのも嫌だし……。あんな天使に嫌われるとか考えたら俺もう生きていけないぜ。もうちょっと仲良くなったらもう一度考えてみるか。

 

「遊撃となるとグロリアーナのクルセイダー部隊を参考にすべきか、いやそうすると本隊の火力に影響が出るか? 飽くまでメインは電撃戦による速攻でなければならない。そもそもマウスもある訳だから──」

 

なんか言ってらぁ(他人事)

 

よく分からんが、もうこの話は終わりでOK? これ以上難しい事なんて考えられないぞ。ただでさえ寝不足なのに。

 

だから強制的に断ち切ってやる!

 

「先生!」

 

「だからIII号を──どうした、蘭子?」

 

「一緒にお話ししようぞ!」

 

「……ふっ。ああ、そうだな」

 

……とは言ったものの、こんな口調でいったい何を話せばいいんだ? 俺は訝しんだ。

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