キャスターが調査をしている間、何もしないというのは生産的ではないので、ギルガメッシュにカノンの能力についていくつか質問をする。
「ギルガメッシュ、早速だが、エルキドゥがどのような能力を持っていたか教えてくれるか?」
戦闘を終え、落ち着いた士郎はギルガメッシュにそう訊いた。
「そうだな…。奴は自身の身体を変化させることが出来た。主にこのような鎖のような形をして戦っていた」
ギルガメッシュは王の財宝から先端がナイフのように尖っている鎖を出現させた。
「別にこの形のみではなく、如何様なものにも
「それは全身を変えていたのか?それとも部分的にか?」
カノンがギルガメッシュに問う。
「どちらも然りだ。手のひらから射出したり、全身を変えて特攻したりとな。まあ鎖はひとつの変化の形でしかないゆえ、カノン自身で別の戦い方を編み出すのも良かろう」
「そうか。それでは、想像したものが形になると言ったようなイメージでいいのか?」
「…それはよく分からんな。
ギルガメッシュのその言葉を聞いて試してみたくなったのか、カノンは何かを思い浮かべるかのように天を仰いた。
「えっと、そうだな…。…ああ、こういうのは良いな。これにできたら、強いんじゃないか…?」
そう言うと、カノンの腕が太い刀のようなものに変化した。
「おお…」
「オレが使う投影魔術みたいだな」
「…セイバー、その
「いや、いいのか?斬れちまったらどうするんだよ。復活するのか?」
セイバーは心配してくれているようだ。
「大丈夫だ。私は治癒の魔術の心得がある。まあ何かあれば美凪が何とかしてくれるだろうさ」
いきなり名前を出された美凪は目を丸くしてカノンの方を見た。
「なんだ?」
「い、いや。なんでもないよ…」
「そうか。ならそれで…。
時刻は11時20分。あまり大きな衝撃や音を出すとかなり近隣に迷惑がかかる時間帯だ。
「あまり騒がないようにするように」
士郎がそう言った。
「心配するなよ、兄さん。大声は出さないようにする。美凪も間桐くんもな」
「分かっている。別に叫ぶようなことが起こるようなわけでも無いだろうしな」
カノンは腕を元に戻し、退出した。それに続いて他の彼らも庭に移動した。
カノンたちは、居間から、未だ士郎とギルガメッシュが戦い合った痕跡が残っている庭に移動した。
「なあマスター。本当に大丈夫なのか?」
「ああ。さっきも言っただろうが、治癒の魔術の心得はあるからな。もし腕が吹き飛んだとしても大丈夫だ」
「そ、そうか。そういうなら従わねえ訳にはいかないよな」
「ああ、あと一つ。さっき腕を攻撃してみてくれって言ったが、10分間の戦いにしようか。完全に殺し合いだ」
カノンがそう言うと、周りの全員が驚愕を漏らした。
「おい花音!何言ってんだお前!相手はサーヴァント、英霊だぞ!いくらお前でも…」
「私がそう決めたんだ。自分の責任くらい、自分で負うさ」
「チッ。お前いい加減にしろよ」
「やめとけ」
士郎が清隆を制止する。
「カノンが決めたことだ。俺たちがどうこう出来る問題ではない。というより、手を出さない方がいい。あいつは戦闘においては、英霊に及ばないまでも、太刀打ちできるくらいの力を持っているだろう」
「士郎はあいつが死んでもいいのか!?」
「いい訳ないだろ。もし本当に危険だと思ったら俺らが介入すればいい。今はカノンのやりたいようにやらせてやれ」
激昴している清隆とは反対に、士郎は落ち着き払っている。それが清隆の心にさらにイラつきをもたらした。
「チッ、クソ!」
「美凪」
士郎が美凪の名を呼んだ。
「な、なんですか?」
我関せずを貫いていた美凪は寝耳に水と言ったように驚いていた。
「ガンドでうなじの近くを撃ってくれないか。気絶させて黙らせてくれ。そんなに強くなくていいからな」
「わ、分かった」
居間に戻ろうとしている清隆の首の後ろを美凪は指さし、赤黒い弾丸を射出する。
見事に命中し、清隆は気絶した。
「こいつがこれ以上暴れていたら話が進まない…」
「士郎、なんか言った?」
「いや。なんでもない。さ、カノン。始めてくれ。10分間測っていてやる」
「分かった。さあ来いセイバー」
カノンがそう言うとセイバーは、腕にはめた円盤から2枚のカードを抽出し、手に持った剣に魔力を送った。
「いくぞ、エクスカリバー」
そう呟き、剣を大きく振りかぶった。それを野球バットのように、力の限り振った。
振った剣から魔力の波動が発生し、カノンに襲いかかってきた。
「へえ。だが…」
その波動をカノンはなんの防御もせずに受け止めた。
「かのん!」
砂埃が辺りを覆う。
「…はぁ…。なめてるのか?セイバー。殺す気でかかってこいよ」
ほぼ無傷で立っているカノンがいた。
手のひらから鉄を伸ばし、日本刀を形成した。そしてセイバーとの距離を一気に詰めた。
「このくらいさ!」
「ッ!」
下から切り上げるような斬撃。
不意をつかれたセイバーはよろめいた。
「クソッ…」
「ハァァ!」
腕を思い切り振り上げ、頭目がけて振り下ろす。
ガキィィン!!
しかし体重をのせたその一撃はセイバーの剣によって防がれる結果になった。
「チッ」
「マスター。まさかお前、俺を殺すつもりなのか…?」
「愚問だな。当たり前だ。殺す
「7分」
「そうだよな。あんたが本気でやるって言うなら、俺もそうする。これからの為にも」
セイバーの周囲に風が巻き起こる。
「あ…」
「俺の…俺の力を解放する。マスター。お前を本当に殺すことになるかもしれない。だが許せ。これが俺の…お前への忠誠だ!」
セイバーが手に持つ剣…エクスカリバーから超高濃度の魔力が溢れ出し、セイバーの体を包む。
「行くぞ!エクスカリバー!『
「あれは…!」
聖杯の泥に飲まれた訳では無いが、あの時のものに似ている…。
「少しまずいな…。あれがあの時のものと同じなら…」
だがしかし、発生した条件や場所なども違う。彼が自ら発したように見えた。
「まあ多少警戒しておくだけで、あまり気にしなくてもいいか…」
魔力が弾け、セイバーの姿が見えた。
鎧が半分無くなり肌が露出し、右眼は黒く染まり、エクスカリバーの先端に付いている岩が巨大化している。
「ほう」
「マスター。この姿は俺のもう一つの側面だ。そしてこの状態の時は更なる力を発揮できる。本当に死んじまうかもしれないが、良いんだろう?」
「ああ、構わない。全力でかかってこい」
「ではそうさせてもらう。アビリティ2,3を発動」
エクスカリバーが反応し、セイバーの腕に刻まれた紋様から力が流れ込む。
「妖精達よ、俺に…エクスカリバーに力を!」
エクスカリバーの岩が黒紫色に光り輝き、紫電を発する。雷が切り裂いた空中から、ほぼ裸の女が数体出てきた。
「ちょっとまずいかもな。…巨盾!」
手を地面につくと、地面から巨大な盾が出現した。
「エクスカリバー…応えてくれ!」
エクスカリバーを大きく振りかぶり、カノンの盾を強く叩きつけた。女たちもそれに呼応して盾に殴りかかった。
「くッ…」
「うおおォおぉおオぉオあああァあ!!」
盾にヒビが入る。
「く…うぉぉあああ!!」
盾に鎖を巻き付け強度を強める。
「守るだけじゃ…敵は倒せねえぞッ!」
「自分より…強い力を持つ相手と戦うには…死なないためには…守るしか…ないんだ!」
「なら守らせない。城は崩す。それが傭兵の俺ができる最善の方法だ!」
セイバーの後方から無数の紫色の
(これじゃ…割れる…)
「これで、終わりだ」
巨大な雷が盾に衝突する。
衝撃で盾が砕け散り、セイバーとカノンが対面する。
「さらば。我が主」
セイバーがエクスカリバーを頭の上に振り上げてそう言った。
「まさかここまでとはな…」
エクスカリバーをカノンの頭目がけて振り下ろした。
「そこまでだ!」
その声が庭に鳴り響く。
セイバーが頭の直前で剣を止め、剣を投げ捨てた。
「時間だ。危なかったな」
「ああ…。死んだかと…」
「もう少し俺がこの姿になるのが早ければ、お前は死んでいたな。まあ、そうならんように調整したんだが」
自らのマスターを見下ろし、そう言った。
「というより、なんで
自分の口を指さし、カノンに言った。カノンが有する令呪のことだろう。
「それじゃあ本気の戦いにはならないだろう?死を覚悟するからこそ本当の力を発揮できると言ったものだ」
「くだらん理論だ」
そう吐き捨て、セイバーは家の中に戻って行った。清隆の頭を叩きつつ。
「ぁ…?なんだ?」
「あ、戦いは終わったよ。どっちも死ななくって、かのんは見ての通りピンピンしてるよ」
「戦い…?…ああ、花音お前引き受けたのか」
清隆はカノンに詰め寄り、そう言った。
「当たり前だ。私が死ぬはずない」
「よく言うな。セイバーが死なないように考えてくれたんだろう?」
カノンの言葉に士郎が突っ込む。
「なっ…。兄さんそれは言わない約束だろう?」
「そんな約束知らないな」
「やっぱり死にかけたんだな…。お前が死んだら俺達は…どうすればいいんだよ…」
清隆が胸倉を掴み、泣きそうな声でそう言った。
「馬鹿らしい。士郎や美凪がお前にはいるだろう。私がもし死んでも大丈夫だ。ま、私は死なんがな」
ハッハッハと大きく笑い、カノンは家の中に入っていった。
「クソ…ちゃんと取り合えよ…」
「まあいいじゃないか清隆。
清隆の肩を抱え、士郎は部屋に入って行った。
幕間:陣営A、最後まで読んでくださりありがとうございます。
今回は、キャスターが柳洞寺の巨大魔力について調べている間の、カノン達の話でした。カノンが自分の力を計るためにセイバーと戦い、その中でセイバーが『聖剣解放』という力を発動する、という流れです。『聖剣解放』はセイバーの宝具の1つ目だと思ってもらって結構です。概要は下に載せておきます。
宝具名:エクスカリバー=カタストロフィ
種別:対城宝具
能力:セイバーの宝具であるエクスカリバーの力を最大まで発揮し、極限の力を発動させる。代償として自己犠牲の感情に飲まれた裏の人格になってしまう。