部屋に戻ると、キャスターが戻ってきていた。
カノンは何か収穫があったか訊いた。
「お寺の方向から女の子が飛んできたんだけど、その子がさっきの魔力の原因かもしれない!」
収穫はあった、と。
「じゃあその女の子を探さないとな」
「大丈夫。彼女にはマーキングをしておいたから。今それをアーチャーに辿ってもらってる」
「そうか」
なら安心だ、とはならない。
廊下に飛び出し、士郎を呼びに行く。
(ギルガメッシュ…。従うとは言っていたが、一人にすると何をするか分からない…。早急にマスターである兄さんを向かわせなくては)
走っているとすぐに士郎を見つけた。
「兄さん!」
「カノン。どうした?」
「キャスターが情報をつかんで、今アーチャーをその情報の根源に向かわせたらしい!早く兄さんも行ったほうが…」
最後まで言う前に士郎に口を押さえられた。
「焦らずとも、奴は…ギルガメッシュは何もしないよ。念のため私も向かうが、お前たちはここにいろ。…というより寝ていろ。もうこんな時間だ。明日も学校があるだろう?」
時計を見ると11:30。まだ「こんな時間」という時間ではない。
「私も行く。兄さんが危険な目にあったらイリヤたちに顔向けできない」
「何のためのサーヴァントだ?私を心配するのならお前のサーヴァントを遣わせろ。あと、お前は先ほどの戦いでそれなりに怪我を負っているはずだ。治癒魔術だけでは申し分ない。良いから私の言うことを聞くんだ」
私を信じろ。そう言って士郎は駆け出し、家を出て行った。
「待…」
「だめだよ。かのん。ここは従おう?私もかのんをこれ以上危ない目には遭わせたくないよ」
「でも…」
「うるせえよ。良いからいうことを聞け。花音。ランサー、士郎を追え」
『了解した』
姿は見えないが、声が聞こえてきた。霊体化しているのだろう。
「協力したいなら、自分のサーヴァントを向かわせろ。俺たちが行く必要はない」
「それに、情報なら向かわせたサーヴァントから受け取っていればいいよ」
「…分かったよ。セイバー、無理はするな。何かあれば私を呼べ」
「大丈夫だ」
セイバーは三人に頷き、走っていった。
「待てセイバー!」
その背中を呼び止めた。
「行くのなら、霊体化して行け。その格好では街中は歩けない」
「…ああ、なるほど。市民の目とかケーサツとかとかの心配か。分かった』
最後のほうは霊体化していたので空間に響き渡るような声になっていた。
「俺たちの仕事は終わりだ。さ、寝た寝た」
「清隆は私たちとは別の部屋で寝てよね」
美凪が睨み付け、そう言った。
「なっ…。俺を何だと思ってるんだお前は。そんなこと分かってるよ」
「いや、でもお前この間私たちが寝てるところに入ってこようとしたよな?」
カノンがニヤニヤしながら言う。
「バ…!お前のこの間は何年前まであるんだよ!」
5歳くらいの時の話だ。だから、16歳である彼らにとって11年前のことになるのだ。年頃の少年にとってそれは話題に出して欲しくないほど恥ずかしいことだ。
「さぁ?ま、いつも男の人が来るとこの部屋を使っているからここを使えよ」
少し歩いたところにある和室に案内した。二つ並んでいるうちの北側だ。反対側は士郎が使っている。
「ああ。分かった」
「布団とかは持ってくるから、少し待っていろ」
カノンがいなくなり、部屋の中には美凪と清隆のみとなった。
「家に連絡しないとだな」
「うん。…あ、でも連絡すると凛、来たがっちゃうかも…」
「あー士郎にご執心なんだっけ?いつまで恋する乙女なんだっての…。今年いくつだよ」
「あんた本当デリカシーってものがないのね」
女の年齢に関することを口にするものじゃない。そんなこと中学生でも分かることだろう。
「そんなものを学ぶ暇があったら、学習に必要なことを学ぶ」
「そんなんだから…」
「なんか険悪な雰囲気になってるな。なにかあったか?」
カノンがタイミングを計ったかのように戻ってきた。
「あ、いや。なんでもないよ。布団、ありがとな」
「?ああ…。礼なんていい。さ、美凪。私たちも行くぞ」
「うん」
美凪は去り際に清隆に向け舌を出した。
「あんにゃろ」
物申したかったが、時間も遅いのでやめることにした。
…ということにしておこう。
「ただいまですー!」
アルスは教会の扉を勢い良く開けた。
「どうだった、アルス。何かあったか?」
「このとおり、
服のボタンをはずし、露出狂のように前面だけを斯詠しえいに見せた。
「ああ、そうか。外ではやらないようにな」
斯詠も聖職者であるが、多少動揺していた。
(子どもの裸に動揺してしまうとは…。情けないな)
顔を片手で抱え、自らを糾すように心で思った。
「で、どうするんだ?俺をお前のマスターにするのか、お前自身が英霊を呼び出すのか」
姿勢を正し、アルスに訊く。
「わたしがますたーにも、さーゔぁんとにもなるです。シエイはわたしのえんごやくになってほしいです」
それは主と従を共に担うということ。かなりの才能が無いと難しいことだが…
「危険だが、大丈夫なのか」
「わたしをなんだとおもってるですか?」
「…そうだったな。分かった。お前の補助をする」
そうだ。アルスは普通の人間じゃない。アルスは■■■■なのだから。
「さて、さっきから盗み聞きとは趣味が悪いな。誰だ、そこにいるのは」
窓の方を向き、虚空に向け言い放つ。
「盗み聞きなどと、そこまで
斯詠が見た方向に黄金の王が出現した。
「ほう。アーチャーか。
「お前こそ、キレイに似た風貌よな。何者だ?」
「俺は言峰斯詠。言峰綺礼の従弟だ。お前は…」
「ギルガメッシュ。貴様の従兄のサーヴァントだった者だ。まあ、過去のマスターのことなどどうでも良いがな」
自ら真名を開示するなど愚の骨頂だが、まあこいつにならば知られているだろうから気にせずとも良いだろう。
「先ほどの話についてだが、
ギルガメッシュが煽るように告げる。
「ハッハッハ―――――――!別にそのようなつもりはないよ。だが、この
「そうか。なら死ね。危険な芽は摘んでおくのが道理よ」
まったく全力ではない。これで傷一つついているようなら見込みはない。ここで消さずとも危険はないということになる。
3つの宝剣はアルスの胸に直撃した。
――が、突き刺さることはなく、鋼の如く弾き返した。
「ほう…」
「シエイ、このひとえっちです。おんなのこのおっぱいねらってくるなんて」
アルスはギルガメッシュを指さしながら斯詠に訴えた。
「ああ、そうだな。こいつヤバい奴だな」
「はっ、童女の身体なんぞに興味はないわ。もう少し成長してから言えよ、子供」
吐き捨てた。ギルガメッシュもデリカシーが無いらしい。
「しかし、我が宝剣をものともしないとは、どのような魔術を使った?」
「なにもしてないです。アルスはつよいですから!」
胸を張り、そう言った。
「そうか。ならば、尚更、生かしておくことは出来んな」
乖離剣エアを取り出した。
「出力を弱めれば、被害はこの教会のみで済むだろう」
エアが回転を始め、魔力を放出し始めた。
剣先を地に向けていたため、床が少しずつ崩壊を始めた。
「詠唱は無しだ!
ギルガメッシュが宙に浮き、アルスの方向目掛けて腕を振り下ろした。風のようなものがアルス(と斯詠)を巻き込んだ。
「
アルスが手を前に差し出すと、禍々しく黒い竜巻が現れ、天地乖離す開闢の星とぶつかり合った。瞬く間にギルガメッシュの放った魔力が吸収されていく。
「チッ」
「アーチャー引け!そいつを倒すことは出来ない!」
教会の入口から士郎が叫んだ。
「なめるなよ雑種!」
「従え英雄王!こんな所で令呪を使いたくはない!」
そう叫んでもギルガメッシュは止まることは無い。
「なら仕方がない…。いるだろランサー!行け!」
『了解』
ランサーが実体化しながらギルガメッシュに走っていく。
「衛宮士郎…。何故貴様は2人の英霊を使役している?」
しえいは士郎に問いを投げかける。
「俺のサーヴァントじゃないさ。というか、あんたは把握してるだろう言峰!」
ランサーは黄金の槍を出現させ、エアに向けて投げる。
「なに!?」
すかさず2つ目の槍を出現させ、飛び上がった。
1つ目の槍は見事にエアに命中し、ギルガメッシュの手から落下させた。
「アーチャー、己の主の命令は聞き入れるものだ。無視など言語道断だ」
「だが、ここでこやつを殺しておかねば、いずれ世界が崩壊するやもしれんのだぞ?」
「正当な手順を踏まねば殺せぬと言っているだろう!」
槍をギルガメッシュに叩きつけ、地面に叩き下ろした。
「貴様…ァ!」
「これ以上!この場を破壊されるのは聖堂教会としても、俺としても、許すことはできない。これ以上続けるようならば、共々、消えてもらおう」
斯詠が二人の間に入り、静かに告げた。
「『令呪を持って命じよう。アーチャー、そしてランサーよ。それぞれの根城に戻り、明朝8時まで謹慎せよ』」
斯詠の両腕が光り、絶対的な命令を放った。
「それより先は何をしても構わん。俺の令呪の効力は朝8時までだ」
アーチャーとランサーがその場で光となって消えた。
「強制送還とは驚いた。そんなに大事なものかね?この場所は」
士郎が斯詠に尋ねた。
「絶対不可侵の領域だと忘れたのか?衛宮士郎。ここを攻めてはいけないのだよ」
「ああ。そうだったな。だが、オレの判断ではないからな。…それはそうと、令呪を使ってしまったが、良いのか?」
斯詠は袖をまくり、腕を露出した。消えているのは1画のみ。
「2人に使ったが、1回分しか消費されていない。私の魔力を使えばまた元に戻す事ができるゆえ、大した出費ではない」
「令呪を元に戻すだと?」
1度使用した令呪は元には戻らないはずだ。マスターには預託令呪を持っている監督役の神父から復活してもらえばいいが、その分の預託令呪は消失する。どちらにせよ、元には戻らない。
「一種の錬金術だよ。自然の魔力を自らの魔力とし、凝縮して令呪にする。超高度な魔術師ならできるはずだ。もっとも、そんなことができる魔術師はこの世に10人もいないだろうがな」
「常軌を逸した、言わばチート能力か。では、あと一つ質問を」
斯詠に向け人差し指を立て、そう言った。
「なんだ」
「その彼女、名は…」
「アルス・リュアリアム」
「そうか。では、アルスは何者なんだ?ここで殺しておかねば世界が崩壊するとかなんとか、アーチャーが言っていたよな。あれはどういうことだ」
それを聞くと斯詠はふっ、と笑い、答えた。
「それについては答えることは出来ないな。俺もこいつについてはよく知らないからな。知りたいのなら君が掘り下げていけよ」
「はは。そうか。分かった。もうすぐ日が昇る。明日…というかもう今日か。私は色々忙しいのでな。帰るとするよ。また何かあれば訪ねることになるだろうから、その時はよろしく頼むよ」
「ああ。聖堂教会の監督役として、支援させてもらおう」
扉を勢いよく閉め、士郎は教会を後にした。
第四話:■■■■――――――
この話は前回の幕間と同じ話にしようとしたのですが、思ったより長くなってしまったため、第四話として投稿させて頂きました。
アルスが異常な存在であるという説明がありましたね。これから分かっていきます、という前にも書いたような説明を書きますが気にしないでください。きっと気のせいです。
おっぱい。