GOD EATER2 ~Nam Oratorium~ 作:〆渡
「残念だなー」
「しょうがないよ、本当に大変だったんだろうしさ」
いくら神機使いが一緒だからと言って、対抗手段を持たない人間が外に出た場合、その精神的疲労は大きいだろう。
神機使いである二人だって、それを全く感じない訳ではないのだから。
「それは解るけどさ。…あーあ、しゃーない。食事がてら、エミールって奴から聞いてみるとするかあ!」
「一応、歓迎会も兼ねてるんだから、それ忘れちゃだめだよ?先輩」
「解ってるって、ナナ。でも、気になるだろ?」
ロミオの言葉に、「まあねー」とうなずくナナ。
聞きたいのは、極東から来たというデイトの事だ。エミールとは知り合いの様だったし、色々聞いてみよう、という事になった。
勿論、折に触れ本人にも聞いてはいるのだけれど、どちらかというと、本人の事より、極東の事に内容が偏りがちだ。
なので、と今回の事を考えた2人であった。
デイトとしても、わざと自分の事を話さない訳ではないのだろうけれど。本人の性格故か、端的な事実しか口にしないようなところがある。そのため、彼自身の思い出を聞くというよりは、記録を報告されている、という感が否めなかった。
今回は、せっかくの機会なのだから、他の人間から見た以前のデイト、というものも聞ければ。そう思ったのだ。
「まあ、エミール辺りは、結構話してくれそうだしな」
「ああ。あの金ぴかの人?凄かったよねーっ。いきなり出てきて、アラガミをドカーンって」
「向こうは激戦区って話だからなあ」
そんな風に他愛のない話をしながら移動する二人。ロビーに着いたとき、話題に上っていた2人を見つけた。
そういえば、と口を開くロミオ。
「正確な時間、伝えて無かったな」
と、ナナを連れて2人に近寄る。
合えなかったら、フラン当たりに連絡を頼もうと思っていたから丁度いい。
そう思って近づくけれど、どうにも重い空気だ。
喧嘩をしているような雰囲気ではないようで、二人とも一見普通に会話をしている。けれども、周囲を取り巻く空気はどこか重いのだ。
「おーい。なんかあったのか?」
「だいじょうぶー?」
ロミオとナナ、二人そろっておずおずと声をかける。
その声に、わずかに肩を跳ねさせて振り返るデイト。その顔が、少し頼りなく映る。
「あ、お二人とも、どうしました?」
「あー、いやー。さっき、何時にって、伝えてなかったから」
ロミオが言えば、「ああ」と頷くデイト。そのまま「聞きに行こうかと思ってたんですよ」と続ける様子からは、どんどん先ほどの頼りなさが消えていき、普段と変わりないように感じられる。
ロミオが気のせいかと思い始めたとき、唐突にナナが口を開いた。
「んー…。痛かったら、ちゃんと『痛い』って言わなきゃだめだよ、デイト」
内容も唐突すぎて、その場の全員が、ポカンと口を開ける。
「なんだよナナ、いきなり」
「うーん、なんだかデイト、痛そうな顔してたから…つい」
どうやら何かを確信して口にした訳ではないらしい。その事に脱力するロミオ。
「あはは」と、誤魔化すように笑い、頭を掻くナナ。
デイトはポカンとした顔のままだし、エミールに至っては、何故かプルプルと震えている。
「素晴らしいっ!
上からスポットライトにでも照らされそうな程、芝居がかった動作で感動を表すエミール。慣れているデイト以外は若干引いているが、彼はそんなことは気にせず、自分の感動に浸っている。
「ありがとうございます。…今はちょっと、痛いかどうか解りませんけど。もし、痛いって思ったら、その時は相談させていただきますね」
「おう!」
「うんっ」
笑顔で応える二人に、ここに来て良かったと、確かにデイトは感じた。
その後は、ナナとロミオが考えていた通り、食堂へ集まる時間を告げて分かれる事になった。
*
ナナさんとロミオ先輩が、手を振りながらエレベーターに乗り込んでいく。
そういえば、きっとギルさんとエミールさんの歓迎会なんだろうに、僕も企画側にいなくていいのだろうか。と少し思ってしまう。
そして、そう思う余裕が出てきた事に驚いた。
二人が来るまでは、何を言われてもそんな余裕出来なかったのに。
どうやら僕は、僕が思っている以上に、この場所で出会った人達に感化されてきているみたいだ。
そう思うと、極東の人たちに申し訳ないような、でも誇りたいような、くすぐったい気持ちになる。
なんだか、柊さんの事ですら、大した事ではないと思えてくるから不思議だ。
ナナさん達ではないけれど、『なるようになる』そう思えてくる。
「よい友人に巡り会えたようだな、デイトよ」
「ええ。極東の皆さんにも自慢できる『家族』です」
フッ、と笑い「そうか」と静かにいうエミールさん。彼に「ええ」と頷き返す。今なら、気持ちを切り替えられるような気がした。