GOD EATER2 ~Nam Oratorium~   作:〆渡

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第19話

任地へ向かうヘリの中、ミッションの最終確認が行われている。

このときばかりは、ロミオ先輩もナナさんも、緊張が滲んだ表情を見せる。もちろん、僕も。

 

「今回の討伐対象はコンゴウ、聴覚に優れたアラガミだ。距離が離れていても戦闘音を関知し、群を形成しようとする。その為、早急な各個撃破が求められる。今回偵察班のからの報告では、コンゴウ種は2体。幸い距離が離れている為、俺たちも二手に分かれ、それぞれが目標を撃破。周囲には小型のアラガミ反応も見られるが、そちらは相手にしなくていい」

「相手にしなくていいってのは、どう言うことだ?小型とはいえ、度外視出来るほどのものじゃ無いってのは、あんたも理解してるはずだろ、隊長さん」

 

隊長の作戦に疑問を持つギルさん、確かに、隊長とギルさんはベテランとしての経験を持っているだろうけれど、僕たちはまだまだとしか言えない。

こんな事を言うのは失礼かもしれないけれど、ロミオ先輩は腰が引けている事が多いし、ナナさんとエミールさんは、逆に突っ込んで行きすぎて、アラガミの目の前で息切れしやすい傾向が伺える。

僕も人の事は言えず、突出し過ぎる傾向があると判断できる。

…理解していて、尚修正出来ていないというのは、前述の3人より性質が悪いかもしれない。

まあ、それは置いておいて。

如何に2人の経験が豊富だからといって、僕たち4人のフォローをしながら、小型アラガミの襲撃を警戒して、尚目標を討伐するというのは、少々どころか、大いに大変なのではないだろうか。

 

「ああ、それは認識している。確かに、何の策も無いままなら、それは厳しいだろう」

「ならば、その策を聞かせて貰おうか。なに、どんな策であろうとも、このエミール・フォン・シュトラスブルクにかかれば、想定以上の成果を上げることができるだろう!」

 

カッと、どこからともなく照らされ、スポットライトを浴びるエミールさん。そんな状況にもみんな慣れてきたのか、隊長は何事も無いかのように話を続ける。

 

「現在コンゴウは、C地点と、D地点でその反応が確認されている。そして、A地点からB地点に、小型アラガミ3体の反応があることが判っている。A,B地点、そして以降出現が予想されるアラガミは、デイト。おまえに任せる」

「―っ!?」

突然の事に驚く僕。当然、周りのみんなも同じように驚いていた。

まだ新兵としか呼べない。実績も経験も無い。そんな僕に小型とはいえ、群を任せるなんて。

 

「なにも、乱戦で立ち回れというつもりはない。お前には、奴らの頭上から狙撃してもらう」

「狙撃、ですか?」

「ああ。訓練の実績は、俺の方にも届いている。最近、ミッションで装備している事は少なかったが、スナイパーの方も、好成績を納めているそうだな」

 

隊長の言いたい事はわかった。けれど、訓練と実戦は違う。訓練では、失敗しても誰も死ぬことはない。

もし今回、僕が引きつけに失敗したら。

そう思うと、また音が遠ざかる。感覚が遠くなって、頭の奥から声が―。

 

「大丈夫だよ」

 

そんな音と一緒に、手の甲が暖かくなった。

見れば、僕よりも少し小さくて、柔らかそうな。けれど、守るために固くなった手が乗っている。

 

「隊長ー。私も残っていいでしょ、ほら、狙撃中の護衛って事で」

「問題ない。最初から、誰か一人は護衛として残すつもりだったからな」

 

「決まりだねっ」という明るい声と一緒に、感覚も戻ってくる。

のろのろと顔を上げれば、隊長が人の悪い笑顔を浮かべていた。

 

「俺が、お前一人にすべてを背負わせるとでも思ったか?」

「……」

 

目から鱗、とは、今の自分のような状態を指すのだろうか。

僕は、家族になれて嬉しいと思いながらも、どうやら本当に彼らを見ていた訳じゃなさそうだ。

 

「すみません隊長。…僕、やります」

「ああ、頼んだ」

 

小さく、けれどしっかり頷く僕。ナナさんも、隣で笑ってくれた。

 

「まあ、お前がちょっとくらい失敗したって、俺たちが何とかしてやるよ」

「"先輩"のお手並み拝見といくか」

「お、おう。きっちり見とけよ、ギル」

 

そんな二人のやりとりに、みんなが笑う。

程良く緊張がとれた状態で臨む事ができそうだ。

その後は、話し合ってペアと担当を決める。結局、C地点を隊長とエミールさん、D地点はギルさんとロミオさんが担当する事になった。

 

 

 

僕たちの作戦開始地点で、神機の最終確認をする。オラクルの残量は当然問題ない。別れる前に渡されたOアンプルを、すぐ取る事が出来るように納める。そして、下からよく見えるような位置に立った。本当は伏せた状態が一番やり易いのだけれど、今回僕は囮でもある。姿を晒して、目標を引きつけておく事もしなければ。

 

「では、お願いしますねナナさん」

「オッケー。任せて」

 

袖は無いけれど、腕まくりの仕草をするナナさん。神機を構えて、周囲に気を配り始める。

 

「隊長。ギルさん。こちらは大丈夫です」

『了解だ。では、ミッションを開始する』

 

隊長の声の向こうから、みんなの『了解』という声が重なる。

拡大されて見える景色。十字の中央に映されたオウガテイルに向かって神機の引き金を引いた。

 

 

 

 

「始まったようだな」

 

公園跡へ続く道、その上につながるアーチを潜りながら

ジュリウスは呟いた。

ヘリの中で伝えた時は、急な事もあって驚いていたようだが、一度覚悟を決めればその後は早かった。

敢えて逃げ場の無い場所に追い込んで告げたけれど、その必要は無かったのかもしれない。

彼に必要だったのはきっと、自身に及ぶ危難ではなく、周囲に立つ仲間だったのだろう。

 

(こうして気づかされるとは、俺もまだまだだな…)

 

以前は気にもしなかった事に気づかされる。2人の後輩が増えてからは、特にそう感じていた。

ロミオ、ナナ、デイト。そして新たに加わったギルバート。

ブラッドのメンバーが、家族が増えて、いつの間にかジュリウス自身も影響を受けていた事に気づかされた。

 

(変わらないものなど、無いという事か。…ならば、せめてより良い方向に変わっていきたいものだ)

 

カーブに差し掛かり、右手側、崩落した図書館の通路から、少し遅れてギルバート達が走っていくのが確認できた。

そのまま坂道を上っていけば、無秩序に繁茂した植物の中に、異様なものが見え始める。

類人猿と木彫りの仏像が融合したような姿のアラガミが、こちらに背を向けていた。どうやら、何かを補食しているらしい。

その好機をジュリウスが逃す筈もなく、一足飛びに近づくと、そのまますり抜けるように切りつけた。

 

「ギョァアッ」

 

ダメージによる悲鳴ではなく、単純に攻撃された事に腹を立てているらしい。

こちらに向き直ると、それこそ類人猿のように、ドラミングで威嚇してくる。

その音が、戦端を開く合図の如く耳朶を打った。

 

 

 

 

背後で微かに雄叫びのような音が聞こえる。どうやら、わずかな差で、ジュリウス達が交戦を開始したようだ。

ゴッドイーターとはいえ人間に気づける音を、より聴力に優れたコンゴウ種が、気づかない訳が無かった。

雄叫びを上げつつドラミングを行うコンゴウ。そこに、既にチャージを終えているギルバートが迫る。

その滑空は、コンゴウの面部分に吸い込まれるように刺さり、弱点とされているそれを割ることに成功した。

 

「はっ、ざまあねぇな」

 

鳴き声を上げうずくまり、割れた仮面を押さえるコンゴウに、ギルバートの嘲笑が浴びせられる。

さらに、その体をロミオの放射弾に焼かれ身を捩る。

 

「よっしゃ、楽勝じゃん」

「まだ気を抜くな」

 

アラガミの様子に快采を上げるロミオに、ギルバートから諌める声があがる。

ゴッドイーターとして磨かれてきた彼の勘は、まだ終わってはいないと告げていた。

 

「解ってるよ。あいつが頑張ってるんだから、俺がここで負けないのだって当然なんだ」

「…言うじゃねえか」

 

その言葉に、いつものふざけるような響きは無く、その表情には頼もしい笑みが浮かんでいる。

ギルバートも、仲間の意気に笑みを浮かべた。

 

「だったら、見せてもらおうか"ロミオ先輩"」

「任せろって!」

 

応え、バスターブレードを降りぬくロミオ。まだ相手は立っているが、確実にダメージは与えているはずだ。

 

(そう、俺だって"先輩"だからな、後輩達に情けないところなんて見せられないんだ!)

 

降り下ろされた2撃目が、コンゴウの背を破壊した。





戦略や戦術といったものは難しいですね…
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