GOD EATER2 ~Nam Oratorium~ 作:〆渡
背中に堅い感触。
天井には、自分には用途の判らない赤い機械。
いや、正確には少し違う。
用途の想像なら付く。そして恐らく、それは当たっているはずだ。
覚悟はすでに出来ている。
そうでなければ、ここでこうしてはいない…筈だ。
天井から聞こえてきた声をきっかけにして、一つ、深呼吸をする。
そうして、下からせり上がってきたもう一つの台に左手を伸ばした。
どうやら、相手から呼ばれただけあって、自分の事もある程度は調べられているらしい。
台の上に置かれている武器、神機の柄を握ると同時に、手首に黒いものが絡み付く。
その様子をまじまじと見ていると、スピーカー越しに軽やかな笑い声が聞こえてきた。
「怖くはないのですか?」
「特には」
「そう」
手首が固定されているために、軽く首を振って答えると、自分をここへ招いた女性は、どこか満足そうに聞こえる声を返した。
そんなやりとりの間に、黒い腕輪はすっかり手首に填められていた。
数年前まではこの腕輪一つ浸けるだけでもの凄い痛みがあったらしいけれど、どうやら今は、そんなことは無いらしい。今まで無かったものが付いているという違和感はあるけれど、痛みは全く感じられなかった。
これで適合試験は終わりなのだろうか。確かに、これならパッチテスト程度、という宣伝にも納得だ。―結局、天井から下がっている赤い機械の出番は無かったけれど。
そう、少しほっとした時だった。
「あなたに祝福があらんことを…」
そんな、心からそう願っていると判る声と共に、赤い機械が口を開いた。
ドリルのような器具の先端には、何かの部品がある。
そう、たとえば今自分の腕に填められている黒い腕輪。その赤いラインにぴったりとはまり込みそうな形の。
嫌な予感を感じる間もなく、それは落ちてきた。
「ーーー!?」
激痛。
息も止まるような、理解できないような、いやしたくない激痛。
今までの経験してきた怪我なんかの痛み、それらとは根本から種類が違う。
それこそ、内側から食われ、浸食されるような痛みだ。
本能的に、動くことで痛みを紛らわせようと動いていた体が神機毎台から解放され、そのままの勢いで狭い検査台から転がり落ちる。
その衝撃に、一度波が引くように痛みが落ち着く。けれど、また直ぐに、より大きな波になって返って来た。
「ぅあああぁぁぁぁぁぁっ」
今度の絶叫は、音として認識できた。
痛みが落ち着いてきたのか、それとも慣れてきたのか。
どちらでもいい。もう終わって欲しい。
―でもっ。
今度は手首を中心とした痛みではなく、左の肩も痛い。
けれどそれは、無意識に押さえていた自分の指の痛みだ。
痛みを堪えて、左手首を睨むように見る。
負けない。
今の時点で負けてなんていられない。
自分は、
「こんな…っ、とこ、ろでぇ…っ」
歯を食いしばっているせいで、くぐもった音にしか成らない。
それでも声を出して自分を鼓舞する。
痛みに投げ出しそうになっていた神機を辛うじて握っている左手に、ありったけの力を込める。
「負けるかあぁっ!!」
逆手に握った神機を振り上げる。
ギインッ、と言う硬質な音とは反対に、意外なほどあっさりと神機の刀身が床に刺さる。
それを支えに、ゆっくりと立ち上がると、その反動で一滴の汗が床に落ちた。
おそらく今、自分はひどい有様になっているに違いない。
けれど、そう悪い気分ではなかった。なにしろ、やっと自分の目標への一歩を踏み出せたのだから。