GOD EATER2 ~Nam Oratorium~ 作:〆渡
あの後シエルさんは、自分が悪かったと思うところ、みんなの日常管理を止める事を、皆に直に伝えた様だった。
すでに話を通してあった座学担当の人達にも謝罪して回ったらしい。
言ってくれれば、と思う反面。そこも察せるような広い視野を持てるようになりたいとも思う。
また、新しい目標が出来た。
結局、落とし所を模索しようとした僕の提案は意味が無くなったけれど、元々は生まれ始めた軋轢をどうにかしようと思っていただけだから、この結果でも十分だ。
むしろ意外なところで意見が上がった。
ロミオ先輩やナナさんから、定期的な座学の時間は合ってもいいんじゃないか、と言われたらしい。
シエルさんも想定していなかった反応だったので、もう専門家の人たちには断りを入れた後だった。
すぐに発言を翻すのはどうかと思ったシエルさん。悩んで居るところに、ナナさんがこう言ったそうだ。
「じゃあさ、シエルちゃんが教えてよ」
一緒にいた先輩も賛成し、今までと同じように部屋だけ借りて、シエルさんが教鞭をとることになった。以前と同じく、時間のあいた隊長も顔を出す事がある。
二人に乞われて知識を共有していくシエルさんの表情は、とても楽しそうだ。
けれど、ここでそれを眺めて油断していると、厳しい先生の声が飛んでくるので注意が必要だった。
ギルさんとも、あの後お話をしたらしい。
あまり積極的な会話はないけれど、お互いがお互いを尊重しているような雰囲気は感じられる。
まあ、シエルさんの方は、若干ぎこちなく見えるけれど。
「デイトさん。随分機嫌が良いようですが、聞いていましたか?」
「え!?」
慌てて僕以外の4人を見る。
ギルさんは呆れた様子だし、ロミオ先輩はあからさまに笑うのを我慢している。ナナさんの視線は「あーぁ」と言っていた。
そして、僕の前に立つシエルさんはちょっと不機嫌そうだった。
「…ごめんなさい…」
「いくらご存じとはいえ、そう集中力を途切れさせてもらっては困ります」
ご存じ、とは何のことだろうかと思いつつ、また素直に「ごめんなさい」と謝る。
気を取り直したシエルさんが席に着き、講釈を再会する。
今日の内容は、アーコロジー、エイジスから続いて極東支部の話だった。
少しばかり懐かしい気分になりながらも、シエルさんの講義に耳を傾けていた。
「それにしても、どうして今日は極東支部の事を話していたんですか?」
「デイト、本当に聞いてなかったんだね…。これから合流するみたいだよ、向こうに」
「そうそう。なんか、まあ、いろいろあるんじゃない?」
なるほど、つまり予習ということか。
僕にも聞いてもらえれば、とも思ったけれど、シエルさんもあの時間を楽しみにしているようだし、邪魔するのは気が引ける。
「その事ですが、後でラケル先生からお話があると思います」
「お話、ですか?」
僕と同じように首を傾げる二人に、シエルさんは頷いて続けた。
「はい。我々が極東に行くことに対して、局長の許可が必要な事は理解いただけると思います」
「え?なんで?」
「一応、僕たちはフライアに所属していて、そのフライアの一番偉い人がグレム局長だから…ですよね、シエルさん」
「ああ」と頷くロミオ先輩。その隣でシエルさんが、綺麗な銀髪を揺らして「はい」と頷く。
その目が、何故か教え子を褒める先生のような光を放って見えた。
「おそらく、局長からも説明を求められるでしょう。その場に同席する事になるかと」
「でもちょっと面倒だよなあ」
まあ確かに、上からの命令を唯々諾々と受けているのは簡単で楽だけれど。
「でも、こういう場に慣れておくのもいいと思いますよ?」
「そうですね。経験しておくべきだと思います」
僕とシエルさんの言葉に、先輩は「うへえ…」と言いたげな表情になり何事かつぶやいた。
「ナナぁ、俺たちは緩く行こうぜー」
「えぇー?一緒にしないでほしいなぁ」
「なんだとーっ」と腕を振り上げる先輩から、楽しそうに逃げるナナさん。
今日もお二人は平常運転だ。
「置いてくぞお前ら」
「あ、待てってギル!」
ギルさんが呼んで置いてくれたエレベーターに乗り込む。
出撃用とは違うので、5人で乗ると少しばかり狭く感じる大きさだ。
「にしても、極東かあ…デイトはそこから来たんだよなあ」
「あ、はい」
「じゃあ、里帰りだ」
まるで自分の事のように嬉しそうなナナさん。里帰りか、そう言っていいのかは解らないけれど、その言葉はなんだか素敵だ。
「おお、じゃあ、ついたら案内してくれよ」
「そうですね。私も、もっと詳しく知ることができればと思います」
「そんな事言われても…」と返しそうになるのを押さえる。皆が満足できるかは解らないけれど、それに応えるのを、まずはやってみよう。
「…そう、ですね。それじゃあ、時間が取れたら皆で色々行きましょうか」
「よっしゃ!じゃあ、ジュリウスにも話しておかないとな」
みんなが笑ってくれてほっとする。
どこが良いか考えていると、ロミオ先輩がまた首に腕をかけてきた。
真剣な顔で隅に寄り、小声で話し始めた内容とは。
「極東って、可愛い子とか、多い?」
「……」
先輩は安定の先輩だった。