GOD EATER2 ~Nam Oratorium~   作:〆渡

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今回は短めになっております。


第44話

歓迎会もお開きになったところで、今日のところはみんな部屋に引き上げる事になった。

結局、ネームプレートの交換を忘れたままになっているのだけれど、先輩はそれすら忘れてしまうほど楽しんだのか、「また明日な!」と最初に割り当てられた部屋に戻ってしまった。

声をかける間もなく閉められる扉。

部屋の交換だけなら明日でもできるし、今日のところはこのまま休ませてもらうことにする。

 

 

 

その夜。

完全に寝静まるという事は無い支部の中が、それにしても騒がしい。

何かあったのかと廊下に向かうと、隊長にシエルさん、そしてギルさんの姿があった。

 

「お前も出てきた所を見ると、これが普通という訳では無いようだな」

「そう、ですね。支部内に寝泊まりしたのは数回ですが、それでもこんな雰囲気は初めてです」

 

「なにがあったのか、確かめましょう」というシエルさん。それに頷いて、隊長がエントランスへ向かう。

僕もそれに付いていこうとしたのだけれど、何かあったとき、直ぐに先輩とナナさんを起こす役割を与えられ、ここで待機する事になった。

 

「なにもなければいいんですが…」

「…そうだな」

 

言葉少なに答えるギルさん。その表情はやや固い。

待つ時間というのは、それだけで長く感じる。引き延ばされた一分一秒が過ぎていき、どれだけそうしていたのか。

上着のポケットから振動が伝わり、隊長からの連絡を知らせた。

 

『至急二人を起こし、エントランスまで来てくれ』

「了解しました」

 

逼迫はしていないものの、緊急性の高い声でそう伝えられ了解する。

ギルさんにも隊長からの連絡を伝え、二人を起こすことにした。女性の部屋に勝手にはいるのは罪悪感が沸くけれど、そう言ってられる状況ではなさそうだ。

 

「ナナさん、起きてください。隊長から召集がかかりました」

 

ベッドの脇で震えているナナさんの通信端末。その音と僕の声とで目を覚ましたナナさんは、当然というべきか、まだ完全に覚醒してはいないようだ。

 

「んんー?…もう朝…?」

 

僕が入ったことで自動的に部屋の明かりが点いたからだろうか、余計に目を覚ましやすい状況になった。

 

「起きてください、召集命令です」

「消臭…?しょうしゅう…」

 

何度か反復し、とうとう意味が頭に伝わったらしい。

元々大きい目を更に見開いて、慌ただしく出ていってしまう。

流石に、女性の部屋に僕だけ残る訳にはいかず、慌てて後を追う。

 

「デイト、早く早く!」

 

すでにエレベーター前にいるナナさん達。急いで乗り込みエントランスへ向かう。

そこは、廊下よりさらに慌ただしくなっていた。

カウンターの内側ではヒバリさんがオペレーションに集中している。その表情からして、そう余裕はなさそうだ。

 

「来たな」

「ジュリウス!一体なにが…」

 

合流する僕たちの横を、新しく出撃していく極東のゴッドイーター達が通り過ぎていく。

「極東支部周辺に、複数の中型種が確認されたらしい。内数体は、周囲の装甲壁に取り付いて捕食を開始している。俺たちも出るぞ」

隊長の決定に、無言で頷いて出撃ゲートをくぐる。

慌ただしく行き来する流れ。

人いきれと熱気に満ちた通路で、リッカさんが手を振っている。

 

「ブラッドの神機はこっちだよ!」

 

示された方には、ケースから取り出された状態の神機があった。

6台の神機がメンテ台を離れ、それぞれの適合者の手に渡る。

「気をつけて」という言葉を背に、夜の外部居住区へ踏み出した。

 

 

 

避難誘導が行われ、今のところはパニックにならずスムーズに事が運んでいるようだ。

まだ直接はアラガミが進入していない事も、大きな要因だろう。

 

『こちら第一部隊、アラガミは今んとこ装甲壁で止まってる。念のため、アラガミの居ない南側に避難させてくれ』

『了解。誘導と護衛は任せてくれ』

 

次々情報が入ってくる中、僕と先輩は東側へ向かっていた。

それぞれアラガミの反応が確認されている、南以外の場所へ向かう事になり、僕たちは東側を担当することになった。

途中、どちらに向かえば良いか解らなくなっている人たちに、南へ向かうように伝えながら先を急ぐ。

 

「にしても…いくら激戦区だからってなにも夜に来なくてもいいじゃんなあ」

「同感ですけど。後にしておきましょう」

 

今は、一刻も早く現場へ向かい、より正確な状況を把握しておくべきだ。

装甲壁に近づくにつれて、段々と人も少なくなる。

それでも残っている何人かの人に、急いで逃げるよう指示しながら進む。

目の前の金属の壁。厚さも高さも、僕何人分かなんて考えるのも馬鹿らしいその壁が、今内側に撓んでいた。

 

 

 

 

 

 

事が起きる数時間前。

極東支部の支部長室で、二人は会っていた。

部屋の主である、極東支部長を勤めるサカキ博士と、フライアに所属するラケル博士だ。

 

「お久しぶりです、サカキ博士。以前は、用件のみで失礼しました」

「いやいや。彼も元気でやっているようで、安心したよ」

 

取り留めのない会話。

立場を踏まえた挨拶も交わし、そろそろ退出するべく、ラケル博士が車椅子を動かしたとき、卓上端末がメッセージの受信を告げる。

 

『サカキ支部長、現在極東支部周辺に、アラガミの反応が複数みられます。そのどれもが、こちらに向かっているようです!』

「なんだって!?」

 

珍しく動揺を露わにするサカキ。端末を通じて指示を出す彼に、ラケルから部屋を辞する声がかけられる。

 

「お忙しくなるでしょうから、今日はこれで失礼させていただいますわ」

 

小さく、けれど優雅に会釈する彼女に余裕無く答え、その背中を見送るサカキ。

こうも激しいアラガミの襲撃は、3年前。ノヴァが育成されていたとき以来だ。

 

 

 

扉一枚隔てた廊下で、ラケルはいつもと変わらず微笑んでいた。

いや、幾分機嫌は良さそうだろうか。

この来客は、王への供犠か。

それとも肥沃な地に根付こうと飛ぶ種子か。

どちらにしても、彼女の計画も、考えも。どちらとして揺らぐ事はないのだろう。

そう思わせる態度で、彼女は周囲の慌ただしさを眺めていた。

 

「そう。これはまだ、通過点に過ぎないのですから」

 

楽しそうに笑うラケル。現状と釣り会わないその表情も、周囲には認識されることなく、またいつものアルカイックスマイルに上書きされた。





読んでくださっている皆様、有り難うございます。
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