GOD EATER2 ~Nam Oratorium~   作:〆渡

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注意

・本編より進んだ時間軸です。
・GE無印、バーストのキャラも出てきます。
・本編未登場のキャラが盛りだくさんです。
・時間軸が進んでいるため、主人公の性格も変わっています。
・また、2意外からもキャラが出ているからと言って、好きなキャラが名前だけの可能性もあります。
・1の主人公も、オリキャラ、東雲アラキとして登場します。神薙さんや、加賀美さんではありません。
以上の事が1つでも気になる方はご注意ください。


番外編 H.M.Xmas

12月某日。如何に祈るべき神を失ったとはいえ、人は逞しいもの。

旧時代から続くそのイベントに、ブラッドを迎えた極東支部も浮き立っていた。

 

「この飾りって、どこだっけ?」

「ちょっと、こっち足りないよ」

「あれ、ここに置いておいた奴、どこいったっけ」

 

ここ、極東支部内にあるラウンジでも、準備で賑わっていた。

普段から賑やかではあるが、季節を装った様は、いつにも増して楽しげである。

 

「極東って、何時もこんな感じなのか、デイト」

「いつもはもうちょっと穏やかだと思いますけど。イベントの時とかは、やっぱりみなさん張り切ってますよ。FSDとか」

 

苦笑しながらも懐かしそうに応えるデイトに、質問したロミオは生返事を返しながらラウンジで動き回る人々を眺める。

極東に所属しているものはもちろん、ブラッドメンバーの姿もちらほら見える。

シエルはカルビの檻にも飾りをつけているようだし、ナナはカウンターの中で、ムツミやカノンと一緒に料理の仕込みをしている。

因みに、3人の手伝いを名乗り出たデイトは、その場にいた全員から「それは止めておけ」と言われて少しばかり凹んだ。

ジュリウスやギルバートら、比較的背の高いメンバーは、壁やツリーの飾りを手伝っている。

 

「お前はなんか手伝わないのかよ」

「ロミオ先輩だって、さっきみていたでしょう?お手伝いを申し出たら、みなさんから止められました」

「だって、お前料理はひどいもん」

 

ロミオの率直すぎる意見に、デイトは胸を押さえうずくまる様な姿勢になる。

因みに、デイトの料理を以前見たときは、食物だと認識できなかった。

表面は炭の黒、しかし切ってみれば生肉の赤。しかしそれでいて材料に肉は入っていないという。

唯一、勇気をだして一口食べたクレイドルの隊長は、その場で倒れた。

激戦区である極東、そこで第一部隊の隊長を勤め、現在は極東に止まらない活躍を見せ、内外に名のしれたベテランのゴッドイーターを一撃でしとめた魔性の料理。

それを作り出しておきながら、よくもまあ料理の手伝いを申し出ようと思ったものである。

 

「ここに居て手伝わないのでは邪魔でしょうから、少し出てきますね」

「どこ行くんだ?」

 

首を傾げるロミオに、「少し外まで」とデイトは答えた。

 

 

 

12月も半ばを過ぎ、いくら体が強化されたゴッドイーターと言っても、外套がなければつらい時期になってきた。

今デイトが歩いている場所は、外部居住区の中でも商店が立ち並ぶ場所だ。

食料品を売る店、衣服を売る店、何に使うのか分からないような物を扱っている店などもある。

そんな商店を歩き、店の主人達の呼び込みを流しながら歩く。

一応目的はあるのだけれど、どれも今一で、ピンと来る物がない。

装甲壁の外に出て、任務がてら花でも摘もうかとも考えたけれど、帰投するまでにしおれてしまったら意味がない。

考えながら歩く内に、商店もまばらになってしまった。

この先にあるのは、本当の居住区くらいだろう。

しかたなく引き返そうとするデイトの視界に、がらくた屋が入った。

旧時代の遺物などを扱っている店だ。

奥には、旧時代の世界地図が飾ってある。大陸などの配置を見るに、極東で使われていたものではないらしい。

商品を見てみると、値段のつけかたも大ざっぱで、一体何を基準にしているのか分からない。

壊れかけた地球儀や、用途の不明な瓶など、大凡ガラクタと評されるものばかりが置いてある。店名と照らしあわせれば間違っている訳ではないけれど、どうにも店主のやる気が伺えるものではなかった。

別の店をのぞこうと、デイトがきびすを返そうとしたとき。

他のガラクタの隙間から、小さな箱型のものが見えた。

何かと手に取れば、どうやらオルゴールらしい。

しかし、あけても音はならなかった。

 

「……」

 

値札はない。

 

「おじさん、これ幾らくらいですか?」

「んん?…あー、それなあ。こわれちゃいるが元はいい造りだからなあ」

 

そう言いつつ、デイトの全身を値踏みするように見る店主。その目が、左手首の腕輪で止まった。

 

「あんた、神機使いか。なら、そうだな。嗜好品配給チケットと交換でどうだい?」

 

嗜好品配給チケットとは、その名の通りの物だ。嗜好品であるため、純粋な食料ほど生産はされず、それゆえに一般住民の手に渡ることは殆どない。それと交換できるチケットと交換するなら、と店主は言った。

壊れたオルゴールとチケットでは、大凡釣り合いはとれない。

けれどそれは、一般的に考えればという話であって、デイト本人はすぐに頷いていた。

 

「分かりました。これでいいですか?」

 

そう言って、自分の端末から店主の古い端末に、チケット情報を送信する。

無事に情報を取得できたようで、店主は満足そうに頷いた。

 

「取引成立だ。それはもう、あんたのもんだよ」

「ありがとうございました」

 

礼を言い、足取り軽く支部内へ戻るデイト。

それから数日、任務の度に集めた素材を少しずつ使い、整備班が働く神機保管庫の隅で、機材を借りながら何かの作業をしていた。

 

「日暮くん、なにしてんの?」

「内緒です。あ、使った道具はきちんと元に戻しておきますから」

「まあ、そこら辺は信用してるけどさ」

 

顔見知りの整備士からの質問もはぐらかし、作業を続けるデイト。

その姿は、イベント前日まで見られた。

 

 

 

そして、待ちに待ったイベント当日。

この日ばかりは支部に所属する者達も、仕事をある程度忘れ楽しむ。

 

「今日アラガミが出たら、殺気漲るこいつらにぼっこぼこにされんだろうなあ」

「ハルさんが一番率先してそうっすけど…」

「あっはは。バレたか」

 

楽しげに酒を呷るハルオミとギルバート。周囲には他にも、飲酒できる年齢の人間が居る。

この日に合わせてわざわざ帰投したクレイドルのメンバーも加わり、賑やかさが増していた。

前第一部隊隊長であり、現在はクレイドルに所属している東雲アラキもそこに加わっていた。

今年やっと成人に達し、その席に加わっている。

 

「いやー、にしても、極東はホント賑やかになったよなー」

「だなあ、帰ってくる度に、後輩達も成長してるし…」

「リンドウさん、今のオッサンくさいです」

 

しみじみと言ったリンドウに軽口を叩くアラキ。それに怒ったフリをしてヘッドロックをしかけるリンドウ。

その周りでけしかけ、ヤジを飛ばす極東のメンバー達。

そんなジャレあいを見て目を細めるのは、リンドウの姉であるツバキと、妻であるサクヤだ。

彼女達は彼女達で、成人女性のグループ同士で飲んでいた。男性陣のノリに着いていけない、ともいえる。

 

「…フフ、ほんと元気ね」

「そうですねぇ…、でも楽しそうですよ」

 

「かもね」と言い、グラスを傾けるジーナ。その隣で、包むようにグラスを持っているカノンは、すでに頬が赤く染まり、半分酔っているようだ。

 

 

 

更には、クリスマスというイベントにかこつけて、より積極的にアプローチをかけるタツミ。それを何時もの様にスルーするヒバリの姿や、何やら賭事を行っているのか、隅で金銭のやり取りをしているカレル達の姿もあった。段々と混沌の様相を呈してきた会場。

察したサツキは、ユノをつれて既に退避している。

サカキも研究を理由に、早々に引き上げていた。

そんな会場内。

 

「はいっ台場カノン、花火を打ち上げますっ!!」

 

いきなりそんな事を言い出すカノン。確かに空は薄暗くなってきているが、まだ夜ではない。花火を打ち上げてもそこまで映える事はないのではないか。そんなことを考える一同。

それをよそに、カノンはなにやらごそごそと準備をしている。

 

「!?」

 

準備が整ったのか、上体をあげたカノンを見て、その場の全員が固まる。

その両手には、彼女の神機が握られていた。

 

「ちょっと、どう言うこと?持ち出しの申請なんて全然来てないよ!?」

 

リッカの悲鳴の様な声、それを合図に、カノンの周囲からまるで潮が引くように人が居なくなる。

 

「…あのー。そんなにあからさまだと、流石に私も傷つくんですが…」

 

そう言っても、元に戻る気配はない。

落ち込むカノン。しかし、彼女は決意した表情で、グッと顔を上げた。

 

「いいえ、これ位じゃへこたれませんっ、教官先生に協力して頂いて解除になったオラクルリザーブで、台場カノン、空に大きな花を咲かせて見せますっ」

 

言うなり、神機を窓の方に向けるカノン。酔っている為か、それとも緊張しているのか、ガラスが閉められている事に気づく様子はない。

このままでは、ガラスが破損、修理で済めば御の字、仮に誰か怪我人でも出た場合、支部として責任をとらなくてはならなくなる。

それに気づいた比較的冷静な人間が、ある意味でこの騒ぎの発端とも言える人物を捜す。

そう、教官先生と呼ばれていた日暮デイトだ。

しかし…。

 

「どこに居るんだ?」

 

ラウンジの何処にも見つからない。

幾らなんでも、この人数の目をかい潜れるものではない。だと言うのに、事実として彼の姿は見つからない。

カノンは既に一人でカウントダウンを開始している。

万事休す。

せめて、ガラスが割れるだけで済むようにと、祈りとも諦めともつかない心境になった時、救いの扉が開けられた。

 

「カノンさん!忘れ物ですよ!」

 

短く整えられた白髪。暗めの赤い瞳に、黒縁の眼鏡。

彼こそ、探していた教官先生その人だ。

 

「いい所にっ!」

「なんとかしてこいっ」

「頼んだぞ、教官先生」

「え?え??なんですか一体」

 

流れが把握できていないデイトを、周囲の全員が押しやり、カノンの近くに送り出される。

未だ頭の上に疑問符を浮かべながらも、カノンに近づくデイト。そういえば、その手には何かが握られている。

 

「ほら、みんなをびっくりさせるって言ってたオラクルバレット、忘れてましたよ」

 

どうやら彼らは、自分達で寿命を縮めたらしい。

また騒然となるラウンジ、照れつつ受け取り、それを装填するカノン。

周囲の人間は、デイトに「カノンを止めろ」とジェスチャーを送る。

そのジェスチャーをどう勘違いしたのか、デイトはガラス戸を全開状態にする。

ある意味では正しい。けれど、周囲の最善手としての総意とは、決定的にズレていた。

 

「はい。おまたせしてすみませんでしたー。―じゃあ、今から一発、派手に打ち上げてあげる!!」

 

戦闘時の性格が降臨し、バレットを発射するカノン。

それは、外に迫り出した銃口から斜め上に放物線を描いて、その頂点で破裂した。

 

「うわぁ…」

 

円を描くレーザーに併せて、放射弾がオラクルによる光を振りまく。

オラクルリザーブによって、まだ余裕があるのだろう。

次々と打ち上げられるバレットの花火。

単一属性の物から、複合属性の物まで。

暮れ始めた空に咲く花を、その最後のひとひらが消えるまで見上げていた。

 

 

 

感動の余韻が残るラウンジ内で、オラクルの尽きたカノンが座り込む。

近くに居たデイトが、若干及び腰で近づくと、普段のカノンに戻っていて安心する。

 

「お疲れさまでした、カノンさん」

「はい、私やりました、教官先生」

 

疲れは見えるものの、嬉しそうなカノン。

それをねぎらう様に、二人の周りにも人が集まってきた。

口々に誉められ、照れたり恥ずかしがったりと忙しいカノン。

普段は『固定砲台』、『誤射姫』などと言われているから、余計に嬉しいのだろう。

 

「いやー、カノンちゃんが銃を取り出したときは、いろんな意味で驚いたけど…」

「綺麗だったでしょう?」

 

デイトの言葉に、近くに居た全員がうなずく。

 

「まあ…本人はやっぱり、戦場でガンガン撃つのがお好きみたいなんですけど…」

 

途中で言葉を切るデイト。その姿が、何故か哀愁をもって煤けて見える。

 

「ああ…、解るぜ。激しいんだよなぁ、彼女」

 

その隣で、同じように煤けるハルオミ。

 

「ええ…。まあ、彼女のそんな所を矯正するのは諦め…、いえ、彼女らしさを伸ばす方向で、今は訓練中なんですけど。みんなをあっと言わせる事の出来るバレットって無いでしょうか?と聞かれたので。じゃあ、一緒に作ってみましょうか?って…。シエルさんから、バレット制作の事は教えて貰ってましたし」

「いま、さらりと聞き逃せない事言わなかったか?」

 

ハルオミの言葉に、「なんの事ですか?」と笑顔で返すデイト。彼も、日々逞しく成長しているようだ。

 

「…ま、いいか。こんな綺麗なもんが見られたんだから、余計な詮索は野暮ってもんだな」

「はい。…あ、そろそろ僕は失礼しますね」

「ん?あー、はいはい」

 

「いってらっしゃい」と気だるげに手を振るハルオミに軽く会釈して、慌ただしくラウンジから出ていくデイト。

そのままエレベーターに乗り、ヘリの発着場へ出た。

見渡しても、誰かが居る様子はない。

それでも構わず、真ん中まで歩いていった。

既に日は沈みきり、じき完全に暗くなるだろう。そんな中、まだ青さの勝る空から、白い物が降ってきた。

 

「雪だ…」

 

任務に赴いた際、場所によっては見飽きる程見ている物のはずなのに、何故かこうしてみると特別に感じられる。

白い息を吐きつつ、空から降るそれを眺めていると、背後で扉の開く音が聞こえた。

どうやら待ち人が来たようだ。

お互いに近寄り、丁度中間点で、手を繋げる距離になる。

少し躊躇いながら手を握ると、相手の暖かさにほっとした。

見れば、向こうも少し照れたような、はにかんだ表情を浮かべている。

しばらくそうして居た二人だったけれど、不意に、デイトが思い出したように、上着のポケットから包みを取り出し、相手の手のひらに乗せる。

開けても良いかと聞かれ、うなずくデイト。少しばかり緊張の勝っているその表情に微笑み、ゆっくりと包みが開けられている。

小さいけれど、確かな感動の声を聞いたとき、デイトの肩から力が抜けた。

 

「メリークリスマス。今日という一日が、貴方にとっても良い日だったなら、僕も幸せです」

 

雪が降る中、二人の間から流れる旋律は、何処までも上っていった。




サンタ衣装のDLCを見て勢いで書きました。
反省はしますが、後悔はしていません。
ここまで読んでいただいて、有難うございました。
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